【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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一週間(四日間)
18話書きあがっちゃったからね、しょうがないね

ともあれ新キャラの登場となります。ジジイと青年……一体何者なんだ!?
バレバレとか言ってはいけない

ヒロアカ3期楽しみなんですが……何故か緊張するヨ……
ヒロアカに限らずシリアスなアニメってハマると何故か見返すのに体力使うようになりました
多分感情移入しすぎてるんですね。「轟焦凍:オリジン」なんか出久を応援する反面、終始「もうやめよう!?痕が残るレベルの怪我はやめよう!?」状態でしたし、多分作者の心境に一番近いのは引子ママです


EPISODE 18. 化け物 1/3

 雨が降り続いている。

 

 

 そこは麓の村からも離れた人気のない山奥だった。鬱蒼と生い茂る木々に覆われ、獣道には蔓が生い茂る。あらゆる来訪者を拒むその地に、たった一軒、小屋があった。古びた外壁はところどころ剥がれ落ち、かろうじて雨風を防ぐ役割を果たしているにすぎない。存する場所も相俟って廃墟としか認識しようのないそれは……しかし、汚れた窓ガラスの向こうに仄かな灯りをともしていて。

 

 その一室では小柄な老人がひとり、座椅子に腰掛けて新聞を広げていた。一面にはもはや馴染みとなってしまった未確認生命体関連の記事。

 

 

――事件発生からきょうで2ヶ月、被害者総数1000人を超える。

 

――第23号死亡にまたしても第4号が関与か。

 

――問われる警察の対応。専門対策班新設で状況打開も。

 

 

 淡々とした文字列が、かえってその事件の凄惨さを想起させる。かの怪人たちに直接相まみえたことのない老人ですらそうなのだから、事件にかかわる者たちはなおさらだろう。嫌な世の中になったものだとこぼしつつ、ぱたんと新聞を閉じる。ふと眼球に怠さを感じ、軽く瞼を揉みほぐした。

 

「ったく……この歳になるとこれだから参るわい。――おまえも、そんな暗がりにばかりいると終いにゃ目ぇ見えなくなっちまうぞ」

 

 それは独り言ではなかった。彼が視線を向けた先……薄暗い部屋の片隅にもうひとり、男の姿があった。壁にぴったり身体を押しつけるようにして座り、無地の黒いパーカーのフードを目深に被っている。覗く口許から推察するに、老人の孫くらいの年若い青年のようだが。

 

「一応は都内とはいえ、奴らもこんな寂れた山奥にまでやって来ンだろうよ。だからまあ……ンな怯えるな」

「………」

 

 青年は、応えない。あるいは彼のことだから、何がしかの予感があるのかもしれない。――だとしたら、ここも潮時か。

 

(重荷だってンなら、いっそ棄てちまえりゃよかったのにな……)

 

 それを選ぶことができない、選んだとてもはや運命から逃れられないであろう青年を、老人はほんの少しだけ哀れに思った。そんな彼を救ってやれずにいる己のことも。

 

 

 

 

 

――警視庁

 

 午前八時を過ぎた食堂は、スーツや制服姿の警察官たちで賑わっている。妻帯者などは別として、彼らは朝食を庁内でとることが多いのだった。担当案件を抱えていれば三食すべての場合もありうる。

 警察官ではなく、ヒーロー・爆心地である爆豪勝己もまた、その中のひとりだった。未確認生命体関連事件合同捜査本部に招聘され、警視庁に詰めるようになってもうすぐ二ヶ月が経つ。にもかかわらず解決に向かうどころかより激化の一途を辿る事件に、その苛立ちは深まるばかりだった。増え続ける犠牲者。歯止めをかけているのは、自分ではなく無個性の幼なじみで。それを許さざるをえない自分にも、心底腹が立つ――

 

「……ッ」

 

 勝己が歯を噛み鳴らしていると、「ここ、空いてる?」と真正面から問うてくる者があった。ただでさえ近寄りがたい自分が苛立ちを露わにしているときに堂々と声をかけてくるような人間は、極めて限られている。

 

「や、おはよ」

「……ども」

 

 森塚駿――同じく捜査本部に所属する若い刑事である。若いといっても勝己より五つ年長なのだが、小柄な体躯と童顔のせいで相変わらず学生にしか見えない。この若さで捜査一課に配属されているくらいだから、実力はあるのだろうが。

 

「ふあぁ……参ったよ、デッキ組み直してたら朝ンなってた。こんな雨空だとまいっちゃうね、夜明けのタイミングがわかんなくて」

「………」

 

 実力は……あるのだろうか?

 

「ま、それはともかく。今日の朝刊見た?ニュースサイトでもいいけど」

「……専門対策班新設の件すか?」

「なんだ知ってるのか。ったくヤな感じだよね、僕らお払い箱みたいじゃん」

「あんたからしたら、そっちのほうがいいんじゃねーの。仕事が減ってよ」

「そりゃまあ自由時間はつくれますけど、気持ち的にはなんかさー、消化不良というか。つーかチーム乱立させたらお互いやりにくいだけっしょ。歴史が証明してると思うんだけどな~」

 

 どのチームがどこまでの権限をもち行使できるのか、数が増えれば増えるほどその範囲は不明確になっていく。災害や大事件に際して、それが混乱を招く原因となったことは歴史を紐解いても多々ある。確かに森塚の懸念にも一理あった。

 が、

 

「……いまの総監は、ンな脳無しじゃないんじゃないすか」

「おっ、庁舎ン中でチャレンジングな発言キタコレ!……まあ実際、ストレンジではあれフールではないとは思うけどね。ただ同時にミステリアスだったりもして」

 

 「若い頃の経歴とか謎が多いんだよね~」と、パンを頬張りながら森塚。警視総監に限らず、いまの警察上層部はふつうの警察官僚にしては一風変わっているようである。直接相まみえたことがあるわけではないので、真偽のほどは勝己にはわからないが。

 

「しっかし……となると例のプロジェクト、あっちに持っていかれそうだね。このタイミングだし」

 

 「着てみたかったのにな~」と森塚がごちていると、

 

「おはようございますっ、森塚刑事!!」

「うおっ!?」

 

 背後からいきなり大声で挨拶をかまされ、無防備だった森塚は仰け反って危うく椅子ごと倒れそうになった。

 

「だっ、大丈夫ですか!?」

「っぶねー……いい挨拶だとは思うけどさぁ、不意討ちはやめてよ飯田クン」

「これは失礼いたしました!」

 

 謝罪すら堂々と決めるのは、ターボヒーロー・インゲニウム(2代目)こと飯田天哉だ。スーツをジャケットまでピシッと着込んだその姿はさながら若手エリート官僚のようである。あるいは兄がヒーローでなければ、そういう道に進んでいたのかもしれないが。

 

「爆豪くんも、おはよう!」

「……はよ」

「あれ、飯田クン朝飯もう食い終わったの?今日はいっそう早いね~」

 

 トレイの中の食器が綺麗に空になっているのを目の当たりにして、森塚が目を瞠る。それに対して、

 

「はい!実は今日、これから科警研に来るようにと連絡がありまして」

「!、例の推薦、通ったんか?」

「そのようだ、所属は捜査本部のままだから、あくまでテスターということらしいが。――そういうわけですので、本日は終日席を外させていただきます。申し訳ありませんが……」

「ハハッ、オーケーオーケー。こっちは任せて、がんばってきたまえ」

「はいッ、ありがとうございます!!」

 

 「それでは!」と再び直角に背を折ると、飯田はずんずんと歩き去っていく。その背中を見送りつつ、森塚はぽつりとつぶやいた。

 

「……変わりつつあるのかもね。僕らも……連中も」

 

 その予感は、勝己もまた共有するところだった。

 

 

 

 

 

 バラのタトゥの女は、とある山中をひとり歩いていた。獣道を進むにはおよそ不向きなドレスにハイヒールといういでたちでありながら、その足取りは躓くことがない。

 

――見つけたぞ、新たなる扉を開く鍵を。

 

 仮面の男――"ドルド"に昨夜告げられたことばが思い浮かぶ。クウガと、かつてと大きく変容したリントたち――彼らと対峙するなかで、古代と変わらぬグロンギでいるつもりはなかった。少なくともドルド、そして彼女は。

 歩き続けること暫く、彼女は岩肌に穿たれた洞穴を見つけ出した。獣の匂い。それに導かれるように、なんら躊躇いなくその奥へと進んでいく。

 

 そして、

 

「ジガギヅシザバ――"ガドラ"」

「……"バルバ"バ」

 

 そこには、かがり火に照らされた壮年の男の姿があった。黒いタンクトップに迷彩柄のカーゴパンツという恰好で、惜しげもなく晒された腕は太く逞しく、同時にあちこち古傷が走っていた。伸び放題の黒髪を後ろに流したヘアスタイルと相俟って、どこまでも野性味あふれる印象を与えている。

 そして振り向いた表情もまた、風貌に劣らず野獣のようだった。頬にやはり刻まれた傷痕を歪ませ、バラのタトゥの女を睨みつける。視線だけで射殺せそうなほどに。

 が、女はまったくたじろぐ様子を見せない。能面のような表情のまま、淡々と告げる。

 

「ゴラゲン、ダングビダ」

 

 それに対し、

 

「ギダダザズザ。ゴセパギバギド、バゾ、ゲゲル」

 

 その場にどっかりと座り込み、かがり火で焼いた肉をかっ食らう。傍らには猪らしき残骸があった。

 

「ゴロゴロリント、ゾボソギデ、バビンギリグガス?」

「………」

 

 女が応えなくとも、ガドラと呼ばれた男は独りことばを紡ぎ続ける。

 

「パセサンゲダヂバサパ、ギビスバデゾゲス……ゴンダレビ、ヅバグデビロボザ。キョグサブン、ダレゼパバギ」

「キョグサブ、バ」

「ゴグサソグ、ラギデジヅンダヂン、ギボヂロバベス……ブザサバギ」

 

 バラのタトゥの女は小さく溜息をつき、

 

「ザグ……ゲゲルゾゾグ、ビグセダゲギシ……グラデデ、ギスゾ」

「………」

 

 それは脅しのことばだった。容れなければ、ガドラにとって極めて不都合なことになる――そう言明する。

 が、それでもガドラは揺らがなかった。

 

「ゴセパロ、グビレデギス……。ボドダゼギゲダン、リント――"死んだほうがマシ"、だ」

 

 そのきっぱりとした物言い、まったくたじろがぬ誇り高き振る舞いは、他のグロンギとは明らかに一線を画すもの。――やはりこの男を現体制に組み入れることは不可能か。バラのタトゥの女にとり、あくまで予想どおりのことだった。

 だから、彼女の目的はあくまで別にあった。

 

「ならば……明確な"意味"があれば、どうだ?」

「……なんだと?」

 

 日本語での問いに、ガドラが怪訝な顔つきになる。

 

「ズの者どもを連れて、ある場所へゆけ。おまえは降りかかる火の粉を払うだけでいい。事が済めば、おまえは自由の身だ」

「……悪い話ではないが。ある場所……そこに一体、何があるというのだ?」

 

 バラのタトゥの女は妖艶に微笑み、告げた。「我らグロンギの手がかりだ」と――

 

 




キャラクター紹介・リント編 バギンドグシギ

椿 秀一/Shuichi Tsubaki
個性:椿脳(ストレンジ・ブレイン)
年齢:32歳
誕生日:8月14日
身長:176cm
好きなもの:美女・レントゲン写真
個性詳細:
メッチャ頭が良くなる一方、思考回路がストレンジになってしまう……そんな個性である。ただこの超常社会、頭のネジがブッ飛んでいる人間なんて大勢いるので大したデメリットではないかもしれない……いや、大好きな美女にフラれているからやっぱり致命的かも!?

備考:
関東医大病院に勤める司法解剖専門の法医学士。以前は監察医務院の嘱託で回収された"脳無"の解剖なども担当していたらしく、爆豪勝己とはそれが縁で面識を持ったようだ!
勝己の紹介で出久のかかりつけ医となり、こまめに検査を行ってくれている。「(出久の身体を)じっくり解剖して調べてみたい」と発言するなどマッドな側面はあるものの、出久が仮死状態に陥った際は何を置いてでも蘇生を試みるなど熱意と良識はきちんと備えているぞ!
イケメンで良い兄貴分……変わり者でさえなければとっくに"良いパパ"にもなっていたことだろうに……。

作者所感:
原作より少し年齢を上げました。結果フラれたとこぼすシーンがなんかより生々しくなった気がします。
演者の大塚氏曰く「陽気でコミカルな一面とシリアスな面と、振れ幅がある人」(超全集最終巻より)。ギノガ編で顕著に出せたと思います。
蝶野さん関連がないのでそのぶんの見所が削れちゃってますが……「未確認生命体を絶対に許さない」という熱い想いをどう表現していくかが課題でございますね。

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