【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
まあ大枠としては皆さんお分かりかもしれませんが
細かい部分ではサプライズかもしれなかったり
緑谷出久は科警研を訪れていた。最初はかなり緊張したエントランスも、幾度となく訪れているうちにすっかり慣れてしまった。つい二ヶ月前は縁もゆかりもなかった場所であることを考えると、やはり人の運命というものはどこで狂うかわからないものである。良くも悪くも。
「出久く~ん!」
「!」
呼びかけに我に返る――と、「こっちこっち」と大きく手を振る女性の姿が目に入った。その隣で小さく手を振る長身の白人男性の姿も。
「沢渡さん、ジャン先生!」
年上の友人である沢渡桜子と、発掘専門の講師であるジャン・ミッシェル・ソレル――彼女らと、出久はここ科警研で待ち合わせをしていたのだった。
「おはようございます!」
「おはよう」
「Bonjour、緑谷クン!」
挨拶もそこそこに、ジャンは出久の肩をバシバシ叩いてくる。妙に鼻息荒く。
「ど、どうしたんですか?なんか妙にテンション高いですけど……」
「そりゃテンションも高くなるヨ!完全体のゴウラム、生で見られルのボク初めてなんだヨ!!」
「あ、あぁ……なるほど」
実のところ、今日桜子とジャンも科警研を訪れているのはそのためだった。超古代そのままの姿形、機能を取り戻したゴウラムをその目で確かめ、検めたい――接収されているとはいえもとは城南大学の所有なので、それが通ったというわけである。
「そういえば、沢渡さんも初めてだよね?」
「うん、だから今日はなんとしても新発見するつもり。ゴウラムの活用法、増やせるかもしれないし」
「……ありがとう、沢渡さん」
「ふふっ、どーいたしまして。でも、出久くんのためだけじゃないのよ?」
「?」
首を傾げる出久に、桜子は一枚の葉書を手渡した。考古学研究室が宛先になっている。記された送り主の名は――
「夏目、実加さん……?」
夏目実加――未確認生命体第0号に殺害された夏目教授の娘。教授の遺品である金属器の破片――ゴウラムの霊石――をもって研究室を訪れ、それが縁で出久とも知己になった。その日に発生した14号事件とも相俟って、彼女とかわした会話は非常に思い出深いものとなっている。
あのあと無神経な言動をとってしまったことを詫びるジャンと和解して、晴れやかな表情で帰っていったが。
葉書の裏には、彼女からのメッセージが綴られていた。桜子、ジャンへの挨拶とゴウラムが役に立っていることを喜ぶことば。
そして、出久へも。
《私なりにいまできることをがんばってます。受験勉強と、あとお父さんがすすめてくれたフルートなんですケド……》
《今度お会いできる機会があったら、ぜひ聴いてもらえたらうれしいです。できれば爆豪さんもいっしょに!》
「実加さん……」
じんわりと温かいものが胸の奥から滲み出してくるのを、出久は自覚した。
自分なりに、かの少女の心を想って告げたことばの数々。きみにもいつか、何かやるときが来る――
それはなお、実加の心に生き続けているのだ。
「実加ちゃん、律儀なのよ。私とはたまにラインでやりとりしてるから、それだけでも十分なのに。心をこめたかったんだって」
「……そっか。なんか、嬉しいよね……こういうの」
瞳を潤ませつつ、出久は思う。このことは、勝己にも伝えるべきだろう。実加は自分だけでなく、彼にも自分のフルートを聴いてほしいと書いたのだから。
「サテ!」ジャンが手を叩く。「そろそろ行きましょうカ、ゴウラムが待ってますヨ」
「……ですね!」
三人が歩き出そうとしたそのとき、
「あぁいたいたっ、見つけましたよ緑谷さ~ん!!」
「!」
周囲の視線を気にかけることなく、猛ダッシュで駆け寄ってくる桃髪の女性。白衣の下はサイズの小さいタンクトップで、胸の膨らみがこれでもかというくらいに揺れている。出久は顔を真っ赤にして目を逸らした。
「はっ、発目さん……?」
「いやぁ~、どうもおはようございますっ!」
「お、おは……いや近っ、近い近い!?」
後ずさりながら横目に映るのは、肩をすくめる桜子の姿。似たような性質をもつ女性同士でありながら、こうも違うものかと出久は痛感した。
なんとか首から下を視界に入れないようにしつつ、改めて訊く。
「えっと……ど、どうしたの?」
「実はですねっ、緑谷さんにご協力いただいていた例のアレが一応の完成をみまして!」
「えっ、本当!?」
「もちろん!なので特別にお見せしたくっ、チャンスはいましかないのです!さぁさぁ!!」
「わ、わかったから引っ張らないで……!――ごめん沢渡さんジャン先生、先行ってて!」
「あぁ、うん……」
発目に引きずられるようにして、出久は廊下の奥へと消えていった。呆気にとられる桜子とジャンを残して。
「……どゆコト?」
「まあ、それは追々……。とりあえず先、行きましょう」
あのぶんだと、合流はだいぶ先になるかもしれない――出久の性格及び彼づてに発目の性格も知っている桜子は、ほとんどそんな確信をもっていたのだった。
*
都内某所に存在する、古びた洋館。もはや所有者もなく、しかし手つかずのまま残されているそこは、いずれ人間社会に脅威をもたらすであろう魑魅魍魎の蠢くアジトとなりつつあった。
「………」
雨の降りしきる荒れた庭園を窓越しに眺める仮面の男。彼もまた、そのひとりで。
やがて背後から響いてきた足音に、彼は振り返ることもなく声をあげた。
「話は、ついたようだな。――バルバ、」
バルバ――バラのタトゥの女。彼女は是とも否とも反応することなく、彼の隣に並んだ。
「これで我らは、新たなステージに進める……」
「だがリントには、クウガがいる。力あるリントの戦士も」
「誰にも邪魔はさせない。そのためのガドラだ」
「……勿体ないことだな。彼にその気があれば、今頃は――」
と、何かを思い出したかのように、ドルドはバラのタトゥの女に顔を向けた。
「ところで、次のムセギジャジャはもう決めているのか?」
「決めている。――ガリマだ」
「ガリマ……ほう」感心した様子で、「ようやく現れるか……成功者が」
その先を愉しみとするかのように。ドルドは露出した口許を歪め、笑う。
それに対しバルバは、能面のような表情のままにつぶやいた。
「リントは、どうするかな……?」
*
出久は感嘆していた。処は科警研の発目のマッド・ルーム(通称)、彼女からプロジェクトの"完成品"について、あれこれ説明を受けたところであった。
「すごいね……ここまでクウガに近づけられるなんて……」
「フフフ、これぞ科学なのですよ緑谷さん!」
椅子を蹴倒すように立ち上がって、この女史は舞うように両腕を広げてみせた。
「現代は超常社会などと謳われてはいますが、その基盤たる"個性"は所詮偶然の産物です。しかぁ~~しッ!!」ビシッと出久に指を突きつけ、「科学は違ぁう!!人類が太古の昔から多くの犠牲を払いながらも積み重ねてきたものッ、その叡智と血涙の結晶こそがッ、科学なのですッ!!」
――………。
「発目さん……」
「なんでしょう!?」
「きみ、政治家にでもなるの……?」
「現在のところ検討もしてません!」
「その発言がもうちょっとそれっぽいよ……」
発目明候補の演説をなんとか受け止めつつ、しかし出久はふと湧いた懸念を口にする。
「でも、大丈夫なのかな?クウガってほら、身体を完全に作り替えて強化してるわけだし……。生身に装着してそれに迫る性能をってなると、人体に与える負担も相当なものになるんじゃ?」
「……そこはまぁ~、検討課題ではありますね。ただその負担がどの程度のものか見極めるにも実験が必要でして……」
「そうなんだ……。よかったら僕が着る……ってわけには、いかないよね……」
「ありがたいお話ではありますけどねぇ~。民間人に着せるとなると色々ややこしいですし、何より緑谷さんは"常人"に括れませんからね!」
「クウガですし!」と発目。出久は力なく笑ってうなずくほかない。
「まぁご心配なく。私の知る限り一番屈強な方がテスターになってくれるので!」
「一番屈強な方?」
出久が小首を傾げていると、不意に部屋の扉がコンコンと音をたてた。
「あっ、どうぞ~」
「失礼しますッ!!」
「……!」
その威勢の良すぎる声は、もしかしなくても――
「おぉ、お待ちしてましたよ、飯田さん!」
「うむ、おはよう発目くん!」
「い、インゲニウム……」
ターボヒーロー・インゲニウムこと、飯田天哉。出久にとり、会うのは初めてである――この姿では。
彼もようやくこちらに気づいたのか、やや目を丸くしながらも「これはどうもはじめまして!」と礼をしてくる。出久もつられて会釈し返すほかなかった。
「発目くん、この方は?」
「……!」
しまった。明らかに職員ではない男が機密だらけの発目のオフィスに入り込んでいる。やや厳しい表情でそう問うのは当然のことだった。
額にじわりと冷や汗を滲ませる出久――それとは対照的に、訊かれた当人である発目は顔色ひとつ変えず、
「彼は城南大学の方です!例の未確認飛行体の調査にいらしてまして、私とも顔見知りなのでこちらにお呼びしました!」
「!」
出久がはっと顔を向けると、彼女と目が合った。さりげなくウインクをぶつけてくる。想定外のありがたい気遣い。一応は嘘もついていない。
「ムッ、そうでしたか」
「はっ、はい。えっと……緑谷、出久です」
「これはご丁寧に。飯田天哉と申します、ヒーロー活動に際しては兄の名であったインゲニウムを引き継ぎまして……」
つらつらと口上を述べる飯田。よく知っている……といっても本人の口から語られるのは嬉しいオタクな出久であった。
そして素顔で出会ったからには、やはり挨拶だけでは気が済まないわけで。
「あっ、あの、ご活躍、雄英に在籍されていた頃から拝見してました!まさしく韋駄天のごとき疾走、かかかっカッコいいです、すごく!!」
「お、おぉ……ありがとうございます!自分のようなものにそうおっしゃっていただけてまことに光栄です!」
「い、いやそんなご謙遜を……。あ、それでですね、もしよろしかったらサインを……」
恐る恐る手帳とペンを差し出すと、飯田はキラリと白い歯を覗かせ、
「勿論ですッ!"緑谷さんへ"……でよろしいでしょうか?」
「ひゃいっ」
声が上擦ってしまうが、かのターボヒーローはそれを笑うこともなくサラサラと手帳にサインを書いていく。流石人気ヒーローのひとり、ずいぶんと手慣れた様子だと思った。
「どうぞ」
「わあっ、ありがとうございます!」
年甲斐もなくはしゃぎかける出久だったが、ピシリとスーツを着こなす飯田のいでたちを見て即刻自らを戒めた。彼も遊びに来ているわけではないのだ。
「じゃ、じゃあ僕はこれで……。発目さん、またね」
「ええ、ではまた~」
発目と飯田に見送られ、出久は部屋を辞した。ドアが閉まると同時に、「ふうぅ」と大きく息を吐く。
「きっ、緊張したぁ……。インゲニウム、かっちゃんより大きいんだもんな……」
いままで直接相まみえたときには、2mの身長を誇るクウガの目線で見ていた。ゆえにあまり実感がなかったが、彼は本当に体格がよかった。それでいて自分のような――表向き――民間人には誠実そうな印象だけを与えるのだから筋金入りだ。出久の緊張は、ただ単に相手がヒーローであることに起因している。
「とりあえず僕のことはなんとも思わなかったみたいだけど……にしても……」
発目の言う、"私の知る限り一番屈強な方"。このタイミングだ、彼がきっとそうなのだろう。もし"アレ"を纏い戦場へ出てくるのだとしたら、いままでよりぐっと近い距離で共闘することになるかもしれない。
と、なれば。
「クウガ……4号が僕だって、知られる日が来るのかな……」
かの英雄の姿とはかけ離れた自分を、どう思うのだろうか。期待も不安もあったけれども、やはり少しだけ後者のほうが大きかった。
――その一方で、部屋に残った飯田はというと。
「まったく、駄目じゃないか発目くん!顔見知りとはいえ、民間人をここに入れるなんて!!」
説教をしていた。
「ここには機密データがたくさんあるッ、そんなものを彼に見られてマスコミにでも売られたらどうする!?責任はこの科警研全体で負うことになるんだぞ!きみにはそういう、組織人としての自覚が足りなさすぎる!!」
「み、緑谷さんはそんなことしませんよ~」
「彼がどうという問題ではないんだよ!!」
発目は内心辟易していた。飯田の怒りはもっとも、至って正論だ。だが発目とてそんなことは重々承知している――出久をここに入れているのは、彼がただの民間人でなく未確認生命体第4号だから。そして当初から機密に触れているから。
それを白状してしまえば、この青年は納得するかもしれない。だがそうなるとより厄介な問題が頭をもたげる。無断で出久=4号を明かしたとあっては、爆豪勝己が黙っていない。かの爆ギレヒーローを爆ギレさせるほうが発目にとっては厄介なのだった。
「……スミマセン」
「ッ、とにかく気をつけてくれ。ぼ、俺も彼がそんな人間だとは思わないが、もしも何かあったとき、彼にも迷惑になるんだからな……」
「ハイ……」
発目が殊勝に自らの非を認めたことで、飯田の怒りもどうにか収まった。ふぅ、と溜息をついたあと、彼は改めて切り出してくる。
「それで……例のものを見せてもらいたいんだが」
「ハイハイ――これです、これコレ!」
デスクトップのモニターに映し出されたのは、
「これが……」
飯田は思わず息を呑んだ。
未確認生命体第4号に似た、しかし明らかに機械でできていると察せられるメカニカルなパーツの数々。「少し似せすぎた」と以前発目がこぼしていたが、ほとんどそのままサイボーグ化したような姿ではないか。
「個性をもたない、使えない警察官でも凶悪なヴィランを鎮圧できるパワードスーツとしてかねてより開発が進められていた"戦闘用特殊強化外骨格および強化外筋システム"、その
「――"G2"です」
*
出久がようやく桜子たちと合流したときには、彼女らはあらかたゴウラムの全身を調べ尽くしていたようだった。
「ハァ……ごめん、お待たせ」
「いや……そんなにお待たせされてたわけでもないけど……。どうだった?」
「うん、スゴいモノ見たよ……詳しくは話せないけど」
「そっか。なら詳しくは聞かないでおくけど」
出久が極秘プロジェクトに協力していること自体は前々から知っているためか、桜子は追及しないでくれるつもりのようだった。
そしてもうひとりも、出久の見たものを気にかける余裕はないようで。
「コッチもスゴイヨ!色々出てきましたヨ!!」
「そうなの?」
「うん。ほら、この足のところとかね」後脚部を指差し、「新発見の碑文。もしかしたら、ゴウラムの活用方法かもしれないし」
「そっか!新発見……やっぱりふたりに来てもらって正解だったなぁ……」
餅は餅屋。専門家がこのようにしてサポートしてくれるのは本当にありがたいことだと出久は改めて実感した。
「あとは研究室に持ち帰って、解読するだけね」
「あっ、じゃあその前にお昼にしない?ここの食堂、結構美味しいらしいよ。僕も気になってたんだけど、なかなか食べに行けなくて……」
結局のところ部外者なので、ひとりで利用するのはなかなか気が引けたのである。
「ちょうどボクもお腹すいてきましタヨ」
「私はそこそこかな……。でも食べ逃してもあれだし、そうしよっか」
次なる行動が全会一致で昼食に決定し、いざ移動しようとなった瞬間――出久の携帯が鳴った。
「!、ちょっとごめん」
発信者の名前を確認し、表情を険しくした出久はふたりと少し距離をとった。桜子は事情を察した様子だが、ジャンは首を傾げている。
「――もしもし」
『奴らだ』爆豪勝己のぶっきらぼうな声。『西多摩郡あかつき村の集落を複数体が襲撃したらしい』
「複数体!?」
思わず訊き返してしまった。これまでの未確認生命体はほとんど、一体ずつ出現して犯行を行っていた。従来と違いすぎやしないか――
出久の疑問はお見通しだったのか、勝己は即座に付け加えた。
『身体的特徴からすべて未確認生命体と断定したと所轄から報告があがってる。連中もプロだ、ンな初歩的な誤認はしねえ』
「……そう、だよね。わかった、すぐに向かう」
『あぁ、急げ』
通話が切れる。と、出久はいったん桜子たちのもとへ戻り、
「ごめん。僕、行かなきゃ!」
「!、……気を、つけてね」
不安を押し殺した桜子のことばに力強くうなずき、踵を返して走り出す。ジャンだけは何が起きたのかわからない様子のままだったが。
「……ッ」
駐車場に降り立ち、出久はすぐさまトライチェイサーに飛び乗る。漆黒の車体に、ヘッドライトだけがネイビーブルーに光を放つ。
(同時に何体も出てくるなんて……それも人口の少ない山村に……。一体、どうして……?)
いままでとは明らかに何かが違う。勝己とて気づいていないはずがないだろうが……だとしても、自分たちにできることは変わらない。相手が何体いようが戦い、人々を守るほかないのだ。
心を決めた出久は愛馬を嘶かせ、出陣の狼煙をあげたのだった。
G2は超デッドヒートドライブのクウガ版みたいなイメージ
ガタイの良い天哉モンにはちょうどいいかと
そして恒例、いつの間にか倒された皆さん↓
第20号(ハエ種怪人 メ・イバエ・バ)
→ペガサスフォームに倒される
第21号(ウサギ種怪人 メ・ウザー・ダ)
→ドラゴンフォームに倒される
第22号(テントウムシ種怪人 メ・デムド・バ)
→自爆
第23号(キツネ種怪人 メ・ギネー・ダ)
→マイティフォームに倒される
デムドは女性怪人
他者への愛情をもつことのないグロンギでありながら、上位集団にいるカブトムシの怪人に密かに想いを寄せていた。彼に認めてもらうためゲゲルに挑むが度重なるクウガやヒーローズの妨害を受け負傷、最後に彼の顔をひと目見たいという願いすら叶えられぬまま、突然の自爆を迎えたのだった……。
↑元ネタはもちろん電波投げの人
デムドタンからすればクウガ=ジェネラルシャドウ、合同捜査本部=デルザー軍団なのでした。