【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
拙作でも水着回やりたいですが必然的に死のコンダクターさんが張り切っちゃうのでどうしたものか思案中。何かいいご意見あったらくだちゃい。
渋谷駅前に、未確認生命体が出現――その情報は即座に本庁の合同捜査本部にももたらされた。
「エンデヴァーの言うとおりになったか……くそっ、」
毒づく塚内。彼が通信指令室から捜査本部のうち半分のメンバーに帰庁命令を下した矢先の連絡だった。
いまは管轄のヒーローと所轄が対応してくれているが、それとていたずらに犠牲を増やすだけかもしれない。渋谷に現れた未確認生命体も、これまでで一、二を争う殺傷能力を見せつけているというから。
本部に駆け戻りつつ、塚内は考える。あかつき村は都内だが、渋谷までの到着は二時間近くはみないといけない。それを待ってはいられない。
(エンデヴァーは当然動かせないとして……あとは、インゲニウムか……)
インゲニウム――飯田天哉は現在科警研にいる。所属が変わったわけではないから、こういう状況なら動いてもらうことはできる。科警研からなら一時間はかからない。
ならばと、塚内は迷うことなく携帯を取り出した。連絡を試みたのは、Gプロジェクトの責任者――
その頃の飯田天哉はひととおりのレクチャーを受け終え、G2の鎧を纏おうとしているところだった。
軽量ながら銃弾をも弾く強化ラバーのアンダースーツで首まで包み、その上から各種パーツを装着していく。なかなか手間のかかる作業ではあるが、そのぶん装着者に合わせたパーツの変更・改造が容易なのだと発目明は語る。実際、膝から下はエンジンに干渉しない設計となっていた。自分の戦闘スタイルを保ちつつ、4号並みの力で戦うことができる――
「本当に凄まじいものを造り上げたな、発目くん……」感嘆の溜息をつきつつ、飯田がつぶやく。
「ウフfF、お褒めに預かり光栄です!とはいえスペックのぶんだけかかる負担も大きいでしょうから、キツイと感じたら遠慮なくおっしゃってくださいね」
「わかっている。そのためのテスターだからな、役目はきっちり果たさせてもらうさ!」
ぐい、と張られる飯田の胸に、計ったかのようなタイミングで胴を守るアーマーが装着された。クウガのそれに酷似した装甲は、その分厚い体格をより強靭に見せることに成功している。
「掴みはばっちりですねぇ、ホンモノより強そうですよ見た目は!」
「お、おぉ、そうか……」
見た目は、と注がつくのが引っ掛かったが。
ともあれ、あとは頭部パーツを装着するのみ――となったところで、プロジェクトの統括責任者のもとへ塚内から着信があった。すぐに飯田に渡される。
『インゲニウム、渋谷で事件だ。他の捜査員はあかつき村に派遣していてすぐには戻せないし、4号もいない。すまないが現場に向かってくれないか』
「は!?いや、しかし……」
既に現場で管轄のヒーローたちが応戦しているとはいえ、実務的にも面子的にも捜査本部のメンバーは必要――それが理解できない飯田ではなかったが、自分はもうG2をほとんど装着してしまっている。なんという間の悪さか。
――いや、そうではない。
飯田は閃いた。ほとんど装着してしまっているのはむしろ、チャンスかもしれない。
出動を了承して電話を切ると、発目に対して即座に「頭をくれ」と告げた。
「へ?出動なさるんですよね?」
「うむ、だからだ。これ以上ないG2のテストになるだろう!」
「まさかそれを着て実戦に出るというのか!?無茶だ、いくらなんでも時期尚早すぎる!」
慌てて制止する責任者の男性研究員。それはそうだろう、G2が発揮するクウガ並みのマニューバーが人体にかける負担は未知数。戦闘が長引き、飯田の身体が限界を迎えて動かなくなってしまったら――そのあとは想像したくもない。
無論、飯田にだってそんなことはわかっている。G2での戦闘には大きな危険が伴う。
だが、
「……第4号の助けが期待できない以上、リスクが大きいのは同じです。それどころか、僕自身の力だけでは……」
「インゲニウム……」
「飯田さん……」
「ですがッ、皆さんが不休で造り上げたこのG2ならば!未確認生命体を、この手で倒せるかもしれない……!」
クウガのマイティフォームに迫るスペック。そこに"エンジン"の個性が加われば。
飯田天哉の固い決意は、開発者たちにとってはそれこそ悪魔の誘惑だった。自分たちの手で生み出したものが、初陣にして目的を達する。それを見届けたいという欲望が一度頭をもたげれば、もはや止めることはできなかった。
*
渋谷での事件発生を知るよしもないまま、緑谷出久は薄暗い屋根裏部屋で、轟焦凍の隣に腰を下ろしていた。――そうすることを許された、と言ってもいいかもしれない。
出久が望んだ肝心の"話"の内容は、中には出久がクウガとなった経緯や敵連合との死闘絡みなど深刻な話もありはしたが、ほとんどが他愛のないものだった。轟自身やクラスメイトたちの学生時代の日常だとか、爆豪勝己の今昔だとか、出久にとっても友人となった麗日お茶子のポレポレでの働きぶりだとか――
「――でね、今日はインゲニウムに会っちゃったんだ!生で見るとめちゃくちゃ大きいしガタイも良くて正直ビビっちゃったけど……僕なんかにも誠実かつ丁寧に応対してくれて、嬉しかったなぁ。なんでか動きがロボットっぽかったのが気にはなったけど……」
「飯田……変わってねぇな」
飯田天哉は、彼にとっては特に親しい友人であったらしい。お坊ちゃん的な毛並みのよさと性格の相性――そうした恒常的な要因も長く交わるうえで当然あったが、決定的だったのは保須市襲撃事件だったという。飯田と轟、そしてもうひとり。"ヒーロー殺し"ステインに立ち向かった――
それからの日々を轟が懐かしんでいると、
「やっと、そういう
「は……?」
出久のつぶやきで初めて、轟は自分の顔が弛んでいることに気づいた。それはあまりに久しくて、一度自覚してしまうと違和感が凄まじい。
そうこうしているうちに再び険しい表情に戻ってしまったのか、出久は慌てた様子で両手をばたつかせた。
「あっ、ごごご、ごめん!……轟くんって、かっちゃんとは別ベクトルで怖い顔してるイメージしかなくて。まあここ以外でちゃんと見たのは体育祭とか活動中くらいだから、それも当然っちゃ当然なんだけど……」
「……まあ、否定はしねえが」
ヒーローである以上、それも当然。ニコニコ笑いながらヴィラン退治なんてできるわけがないのだから。
しかし自分の二〇年間は、笑顔をなくしてしまうような出来事の連続で。それを思い返す青年は、"左"を覆う醜い火傷痕をそっとなぞった。
その動きに怪訝な思いを抱きつつ――出久もまた表情を引き締めた。
「訊いていいかな?きみの身に、いったい何が起きてるのか……」
「……やっぱり、目的はそれかよ」
「ごっ、ごめんなさい本当に!……でも、知りたいんだ。それに限ったことじゃなくて、きみのこと、色々」
「せっかく出会えたんだから」と、まっすぐ轟の目を見て出久は続けた。ふたつのエメラルドグリーンが、純な輝きを放っている。この薄暗い屋根裏部屋の中にあって、それはまぶしいとさえ轟には思えた。
やがて、
「……グラントリノには、どこまで訊いた?」
「えっと……"個性の突然変異"が原因かって訊いたら、半分正解って言われたよ。それ以上はきみにしか話す資格はない、って」
「そう、か」
自分にしか――グラントリノは未だ、自分を"後継者"と認めているということか。こんな、どうしようもない自分を。
(でもきっと……あの人には……)
静かに目を伏せて、轟は首を振った。
「このことだけは、誰にも話せねえ……。話すわけには、いかねえんだ……」
「轟くん……」
「………」
「――わかったよ。でも、何かで力になれたら嬉しいな……ほら、ぼ、僕も化け物、だしさっ!」
「……おまえ、」
「あっごっごめん、"も"はおかしいよね!?きみのは個性が原因なんだし……」
「いや、そうじゃなくて――」
おまえは化け物扱いでいいのか、と至極当然の疑問を轟は抱いたが……それが口にされることはなかった。
「……ッ!?」
「?、どうしたの、轟くん?」
怪訝な表情を浮かべる出久の前で、轟はその場に崩れ落ちた。
「轟くんッ!?」
「ッ、くる……また……!あいつらが……ッ」
そのうわごとのような声と、加速度的に皮膚を侵していく血管のような光流。それを目の当たりにして、出久は否が応にも察せざるをえなくなった。
「あいつらって、未確認……!?まさか、ここにまで……」
「ッ、やめ、ろ……俺は、おれ、は……!」
「轟くん……――大丈夫、僕がなんとかする」
意を決した出久は「ここにいて」と轟に言い含め、階段を駆け下りていった。
(緑谷……出久……)
「――グラントリノっ!」
出久が下階に降りたったとき、当の老人の姿は既に小屋の玄関にあった。険しい表情で外を見据えつつ、背後に現れた青年にとぼけた問いかける。
「誰だキミは!?」
「ええっ!?さっきまで一緒にいたでしょッ、緑谷出久ですよ!」
「緑谷……おう、思い出した」カカカと笑いつつ、「おまえも気づいたか。焦凍の奴か?」
「ええ!グラントリノはどうして?」
「外に妙な気配を感じてな。野生動物にしちゃ殺気立っとる」
ほとんど活動していなかったといえど、流石は銀時代から生き残っているヒーローというべきか。
とはいえ、
「ここは僕に任「僕に任せて、とかくだらんことを言うんじゃねえぞ素人!」うっ……」
年老いていても、実力まで耄碌したつもりはない――そんな自信が見え隠れしている。いずれにせよ、出久にそれを止める手立てはない。
そうしてともに外へ飛び出したふたりが見たのは、木々にまぎれるような漆黒の肌をもつ鼠の怪人で。
「おまえは、さっきの……!」
「!、リント……!」
出久をクウガと気づかないズ・ネズモ・ダが、下卑た笑い声をあげる。
「チョグドギギ……!ゴラゲダヂゾボソギデ、ドブデンビギデジャス!!」
「?、何を言っとるんだ、こいつは?」
「わかりませんけど……ろくなことは言ってませんよ!」
「それもそう……かッ!!」
言うが早いか、グラントリノは個性――ジェットを発動させていた。一気呵成にネズモへ迫る。
「グラントリノ!?――ッ、変身!!」
出久もまたクウガ・マイティフォームへと変身、後に続いた。ネズモが慌てて飛び退く。
「クウガァ!?ゴセビボンジジギ、ダザンリントジャバギ……」
老人の小さな身体から放たれる回し蹴りは、しかしジェットスピードが乗ったそれは、命中せずとも凄まじい突風を巻き起こさせる。
「チッ、かわしよったか」
「~~ッ、バレンジャベゲ!!」
怒りに燃えるネズモが反撃に出ようとするが、
「やらせるかっ!」
咄嗟にクウガが割り込み、その顔面を思いきり殴りつける。「グェ」と蛙の潰れたようなうめき声とともに、ネズモは吹っ飛んだ。
「ウ、ウググ……」
呻くネズモ。あの虎の未確認生命体――ガドラとは比べるべくもない。どういうつもりかは知らないが、こんな奴なら即刻倒してやる――出久はそう思った。
「とどめだ……!」
必殺キックの構え。――しかし次の瞬間、その右脚に電流を浴びたような痺れが奔った。
「痛……ッ!?」
(またか、なんなんだ……!?)
第19号B――ギノガ変異体との戦い以来、敵を倒そうというときになると時折こんな痺れが襲ってくる。一瞬動きが鈍ってしまう以上の実害はないのだが……。
「おい、どうした?」
「ッ、大丈夫です!」
気遣ってくるグラントリノにそう返すと、気を取り直したクウガは今度こそ勢いよく跳躍した。一瞬の隙を、ネズモはモノにできていない。結果は、変わらない。
「うぉりゃあぁぁぁッ!!」
そのとき、
不意に横から飛び出してきた灰色の影が、クウガを突き飛ばした。
「ぐあっ!?」
まったく身構えていなかった彼はそのまま横に弾かれ、木に叩きつけられてしまう。
「ぐ、ぅ……」
「ジャサゲンパ、ネズモ!」
「――!」
息を呑んだのは、敵も味方も同じ。無論、その意味はまったく対照的だったが。
「ガビビ!ラデデギダゾ!」
「へへへ……」
「……俺の目がバカになっちまったわけじゃ、なさそうだな」
二体揃ってしまったネズミ種怪人の兄弟を前に、グラントリノが苦虫を噛み潰した。
キャラクター紹介・グロンギ編 バギン
キノコ種怪人 メ・ギノガ・デ/未確認生命体第19号(通常:A、変異:B)※1
「ギビデダボ……"クウガ"……?(生きてたの……クウガ……?)」
登場話:
EPISODE 15. 死命~EPISODE 17. なんでもない日※2
身長:209cm/207cm
体重:138kg/174kg
能力:猛毒の胞子・攻撃に対する適応力/馬鹿力
※3
活動記録:
長い銀髪に薄化粧を施した美貌をもつ中性的な人間体とは裏腹に、猛毒の胞子を人間の体内に注入して殺害する凶悪な能力をもつ未確認生命体。その口づけを前に第4号も倒れ、一時的に心停止にまで追い込まれた。
一方、格闘能力は当初無きに等しく、初戦では逃げ惑いながら赤の4号に負傷させられたほか、特殊ガス弾の前になすすべなく敗走する失態も見せている。しかしその適応力により、再出現に際しては貧弱だったパワーが高まり、胞子を一気に散布できるようになったほか、強化型ガス弾をまったく受けつけない体質となっていた。そのまま爆心地らを追い詰めるが、復活を遂げた第2号(白い4号)の妨害を受ける。パワーで劣りながらもインゲニウムの支援を活かした彼によって河川敷へ追い込まれ、三連続キックに耐えきれず呪詛を吐きながら爆散。
しかしその凄まじい生命力のために破片に付着していた菌糸が急成長、数時間で知性のないクローン体が誕生。本能のまま暴れ回るゆえにインゲニウムらヒーローにも歯が立たず、また駆けつけた赤の4号をも苦戦させるが、最後は爆心地の爆破を背に受けることで勢いを増した4号のキックを受け、その身は爆発せず溶け崩れてしまった。
作者所感:
個人的にギャリドニキなんかメじゃない(ズくらい?)トラウマグロンギ。やらかしたことは耳タコなほど語りましたので省略しますが、まず見た目が生理的にダメでした。男か女か判別つかない感じが、幼児的にはあかんかったのかな~と。当時流行ってた慎吾ママとかKABAちゃんとかは大丈夫だったんで、単に女装してるとかオカマってはっきりわかるならよかったんでしょうけど。なんか中途半端な感じがダメだった……たぶん。???「中途半端に関わるな!」
変異体はあの孵化前のグロさはまだ理解できなかったので大丈夫でした。しかし数時間で育ちすぎやろ……。
※1 原作では未確認生命体第26号。
※2 A:EPISODE 15~16、B:EPISODE 17
※3 19号A/Bで表記。