【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我   作:たあたん

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繁忙期なので明日出勤や……。
まああとで振替休日とれるだけホワイトなんですけどね。

アニメつらい展開になってていやーキツイっす。
かっちゃんヒロインだと思って乗り切るしかない???
ちょっと凶暴で筋肉で♂なだけだ問題ない!!


EPISODE 23. 血染めの生物兵器 2/4

 

――警視庁 未確認生命体関連事件合同捜査本部

 

 未確認生命体のアジト捜索のため捜査員らがことごとく出払うなか、本部長たる面構犬嗣の執務室には三人の男の姿があった。

 ひとりはこの部屋の主たる犬頭、面構犬嗣警視長。もうひとりは捜査本部のNo.2である管理官、塚内直正警視。そしてもうひとり……病床から復帰したばかりの元No.1ヒーロー、エンデヴァーこと轟炎司。

 平均年齢46歳という三人組、その中では一番若い――それでも齢40は過ぎているが――塚内が口を開く。

 

「アジト捜索を開始したと鷹野から報告がありました。爆心地からは、4号……そして轟焦凍にも協力させると。私の判断で許可を出しましたが、構いませんか?」

「うむ。いまは猫の手も借りたい状況、致し方ないワン」

 

 大まじめにそんな返答をする上司に肩をすくめつつ、管理官は改めてヒーローに向き直った。

 

「しかしエンデヴァー……あなたは4号の正体をもう知っているんだよな?それをこちらに報告するつもりはないのか?色々と因縁のありそうな爆心地はともかく、あなたが隠しだてするのはどうも解せないんだが」

「……だろうな。俺自身、もう彼の正体を隠しておく必要性は感じていない」

 

 「だが、」と続く。

 

「それが爆心地の判断なのだから、尊重すべきだろう。彼に4号とそれにかかわるものすべてを委任している以上はな」

「……爆心地と犬猿の仲とは思えない発言だワン」

「個人的な好悪などどうでもいいのはあなたが一番よくご存知だろう。人格は褒められたものではないが……優秀であることに間違いはない。矜持もある。――俺の息子も、負けてはいないがな」

「あぁ、……ソウデスネ」

「………」

 

 焦凍が帰ってきてからというもの、こういう親馬鹿な本性を隠さなくなりつつあったエンデヴァー。昼どきにどう考えても商品ではない弁当を食べているのを見かけることもあるからして、いまは妻ともうまくやっているのだろう。あかつき村で負った二度目の重傷のためにもう一秒たりとも戦えない身体になってしまったが、だからこそありふれた幸福を噛みしめているのではなかろうか。

 

(最初から大事にしてやれば……ってのは、いまだから言えることか)

 

 それでも大切なモノに気づけただけ、この男にも周囲の人々にも救いはあったのだろうと思う。失われた過去のピースは取り戻せないけれども、未来を形作ってゆくことはできる。

 

 それができぬままに後悔を抱えて死んでいく人間のほうが、この世界には圧倒的に多いのだ。

 

 

 

 

 

「……異常なし、か」

 

 すべての部屋を確認し終えて、轟焦凍はふぅ、と息をついた。

 勝己から割り当てられた経堂の廃団地を数十分かけて偵察したわけだが、めぼしい手がかりは何も発見できなかったのだ。見つからないということは、つまりいないということ。そもそも焦凍は邪悪なものに対して敏感になっているから、そうした事実に疑いはもてなかった。

 入口に駐めたバイクに戻り……ふと思い立って、スマートフォンを取り出す。"緑谷出久"の名を選び、コールした。

 

『――はい』

「おう。……こっちはなんもなかった。そっちはどうだ?」

『まだ全部は捜せてないけど……たぶんこっちも』

「そうか……」

 

 まあ、"世田谷区及び近隣区の廃墟"というだけの場所を虱潰しにあたるローラー作戦である以上、そうそう当たりを引けるものでもない。こういう場合はとにかく足で稼ぐほかないのだ。

 

「爆豪のほうはどうなんだろうな」

『どうかな……かっちゃんが向かったところはちょっと距離あるし、まだ着いたか着いてないかくらいじゃないかな?連絡とるにはちょっと早いかも』

「だな……まあココにいねえのは間違いねえし、俺はあいつんとこ行ってみようかと思う。おまえは?」

『……そう、だね。僕もそうするよ』

 

 やや躊躇があるように感じた焦凍ではあったが、それを捉えて追及することはしなかった。状況も状況であるし、そこまでお節介になってよいものかもわからない。

 

 ひとまず目的地で再会することを約して、通話を終える。――ふと見上げた夜空には重々しく雲が覆いかぶさり、星ひとつ見えない暗黒をつくり出していた。

 

 

 

 

 

 同時刻。爆豪勝己は自身の担当である大田区京浜島一丁目にある廃ビルにたどり着いていた。

 手榴弾型の籠手を装着し、車を降りる。傍らの漆黒の滞留がわずかに流動するその音以外、静寂そのものの空間。その静寂がつくり出す澱んだ空気は、宵闇の中の廃墟という場所柄なのか、それとも――

 

 結論をいまこの瞬間に出す必要はない。すべては内部を探ってから判断することだ。紅い瞳で睨めつけながら、勝己はゆっくりとビルに近づいていく。

 

――そのために彼は、自身が踏みつけたものに気づくことはなかった。闇に溶けることなく鮮烈に浮かび上がる、真っ赤な薔薇の花片に……。

 

 

 ビル内に入った勝己は獲物を狙う獣のように姿勢を低くし、足音をたてぬよう慎重に進んでいく。……万が一ここが未確認生命体の根城だとしても、自分ひとりで対処するわけではない。遭遇(エンカウント)する事態はなるべく避けたいところだった。

 

――のだが、

 

(チッ……いねえな)

 

 ある程度奥まで捜してみて、姿はもちろんのこと気配も感じないことが確実になっていく。ここは外れか。先に捜索を終えているだろう出久や焦凍、その他捜査本部の面々もなんの連絡もないあたり、まだヒットはないのだろう。

 

 とにかく、もう少し調べたらここは切り上げだ。そう考えながら最後の一室に足を踏み入れたそのとき……不意に風が吹き込み、むせ返るような濃い薔薇の香りが、鼻腔をくすぐった。

 

「――!」

 

 忘れえぬそれに反射的に振り返るのと、

 

 闇に映える真白いドレスの美女が、やおら姿を現すのが同時だった。

 

「B……1号……!」

 

 未確認生命体B群1号――通称"バラのタトゥの女"。グロンギが出現して間もない頃、一度だけあった遭遇の記憶はまったく色あせていなかった。

 そしてそれは、彼女のほうも同じだったらしい。妖艶な笑みを浮かべて勝己を見つめてくる。爆破したくなる衝動をこらえ、唸るように訊いた。

 

「……35号はどこだ?」

「35号……ガルメのことか」笑みを保ったまま、「奴はもうここにはいない。いまいるのは私だけだ」

「じゃあ、どこにいる?」

「敵に縋るか。ヒーロー・爆心地の名が泣くな」

「――!!」

 

 安い挑発ではあったが、既に暴発寸前だった勝己にきっかけを与えるには十分だった。地面を蹴って跳躍し、と同時に最大限の爆破を美女めがけて浴びせかける。付近の窓ガラスが粉々に割れ、静寂を劈くような爆音が辺りに響き渡る。

 

「――やはりリントも変わったな」

「ッ!?」

 

 背後から響く、声。どういうわけか、バラのタトゥの女は爆炎の中から姿を消し、まるでワープしたかのように勝己の振り向いた先に立っていた。その勝己に負けず劣らず白い肌には、火傷の痕ひとつ刻まれてはいない。

 

「かつてとは違う、我々と遜色なきものになろうとしている。力も……心も」

「!、――寝言は寝て死ねクソアマがぁッ!!」

 

 その意味深なことばに――少なくとも表面上は――惑わされることなく、勝己は爆破を続けていく。

 しかし明らかに爆炎に包囲されているにもかかわらず、女はいっこうに傷つくことがない。――美しい薔薇の花片が舞い散り、幻惑する。

 

 気づけば彼女の姿は炎の中にはなく、遙か彼方へと立ち去ろうとしていた。

 

「ッ、待てやゴラァ!!」

 

 それでもなお追いすがろうとする勝己を、バルバは冷たく一瞥し――

 

――その手から、無数の薔薇の花片を放った。

 

「ぐ……ッ!?」

 

 それまでとは比にならない濃い薔薇の香りを吸い込んだ途端、強烈な眠気が襲ってくる。バルバの操る花片には、強力な催眠作用がある――忘れていたわけではなかったが、攻撃に気をとられるあまり警戒が疎かになっていた。そんな後悔も何もかも、加速度的に意識が遠のき霧散していくのだが。

 

「ク、ソ……っ」

 

 全身から力が抜け、がくりとその場に膝をつく。やがてそれすらも保てなくなり、ゆっくりと俯せに倒れ伏した。

 

「………」

 

 幾重にもぶれる視界の果てに、純白のシルエットが遠ざかっていく。

 結局、勝己の意識は浮上することなく、死の女神の祝福に完全敗北を喫したのだった。

 

 

 

 

 

「……っちゃん、――かっちゃん!」

 

 どこからか、デクの呼ぶ声が聞こえる。それも幼い頃の、よく跳ねる柔らかい声。

 なんだあいつは、また俺に助けてほしいのか。本当にどうしようもない木偶の坊だな――悪態とは裏腹に、嫌な気分ではまったくなかった。自分が何かしてやるたびに、あいつは「やっぱりかっちゃんはすごいや!」ときらきらしたエメラルドグリーンを向けてくる。そうするたび、物心ついたときから存在する心の中の空白が満たされていくような気がするのだ。

 

「かっちゃん」

 

 もう一度、呼ぶ声。「しょうがねえな、デクは」――つぶやくように言って、声のする方向へ一歩を踏み出す。

 

 そこには、何もなかった。勝己の身体はあっという間に、暗闇の底に吸い込まれていった。

 

 

 目を開けると、わずかに橙のフィルターがかかったまぶしい青空が視界に飛び込んできた。

 背後からひそひそと話し続ける小声が聞こえてくる。まだ茫洋としたまま振り返ると、後部座席をちゃっかり占拠するふたりの青年の姿。

 

「――オイ」

「!」

 

 声をかけると、ふたり――とりわけ幼なじみのほうは弾かれるようにこちらを見た。

 

「あ、か、かっちゃん目が覚めたんだね。よかった……」

「……テメェがかっちゃかっちゃうるせぇから起きたわ」

「え、」なぜか当惑したような表情を浮かべ、「呼んでない、けど……呼んでないよね?」

「駆けつけたときは呼んでたけどな。俺もだけど」

「いやそりゃそうだけど。……かっちゃん、大丈夫?」

「………」

 

 純粋に心配しているのがわかっても、自ずと眉根がきつく寄っていくのがわかる。

 

「……テメェに心配されなきゃなんねえほど、俺ぁ落ちぶれたつもりはねえ」

「あ、……そう、だよね。ごめん」

 

 ふたりの間に流れる、どこか冷ややかな空気。互いに敵意や悪意があるわけではない。それなのに――

 ともあれもうひとり、轟焦凍に言えるのは、そうしたふたりの実情からはかけ離れた正論しかなくて。

 

「そんな言い方ねえだろ。緑谷と俺のふたりで、ビルん中倒れてたおまえをここまで運んだんだぞ。つーか、一体何があったんだ?」

 

 ふん、と鼻を鳴らしつつ。勝己は後半の問いにのみ応じた。

 

「B1号……バラのタトゥの女にやられた」

「!、じゃあ、ここに未確認が……!?」

「俺らが来たときにはもう誰もいなかった。……逃げられちまったんだな」

 

 逃げられた――いや、そもそも読まれていたのだ。あの遭遇の時点で、ビル内にバラのタトゥの女以外の気配はなかった。あの妖艶な美女にとり、こちらの出方を察知するなど造作もないことだったのだろう。改めて苛立ちが湧いてくるが……それをぶつけるべき相手は、いずれにせよここにはいない。

 

「……いま、何時だ?」

「あ、えーと……五時前だね、朝の」

 

 五時――となると、ガルメの指定したゲーム再開の時間まであと三時間半しかない。

 勝己の意図を察した出久が、即座に付け加えた。

 

「それと、一時間くらい前に鷹野さんって人から無線で全体連絡があって……アジト捜索は断念して、子供たちの保護されてる施設の警備に総員であたることになったって」

「……場所は?」

「えっと……折寺にある県の施設だって」

「折寺?」

「う、うん。里帰りになっちゃうね……あはは」

 

 それは別に、いまはどうでもいいが。

 

 流石に都内に留めておくことはしなかったか。時間的な制約も考えれば上等な避難先かもしれないが。

 だが、これで万事解決とはいかないだろう確信に近い予感もあって。

 

「あのクソガキも馬鹿じゃねえ、ターゲットが遠くに逃げることだって予想できてるはずだ。ましてや透明になれるんだから、こっちの動きを逐一監視してるかもしれねえ」

「………」再び表情を険しくする出久。

「そこに現れる可能性が高いっつーことか」

「ああ、だから急ぐぞ。とっとと降りろテメェら……つーかンでちゃっかり乗ってんだコラ」

「ひと晩じゅう外に立ちっぱなしでいろってのかよ、自分は寝てたくせに」

「ア゛ァン!!?」

 

 思わぬ反撃に凄む勝己だったが、そんなことで喧嘩している場合でないことがわからないほど彼も子供ではない。「殺すぞ半分野郎」とジャブをかましつつ、実利をとってふたりを車から追い出した。

 

「チッ……」

 

 自然と漏れる舌打ち……しかし同時に、どうしても視線が滑ってしまう。焦凍とひと言ふた言ことばをかわして、トライチェイサーに跨がろうとしている出久に。

 さっき聞いた呼び声は、一体なんだったのだろうか。成人したいまの出久ではなく、幼い頃の出久の声であった以上、現実のものではあるまい。だが夢幻だったとして、なぜそんなものが記憶の奥底から引っ張り出されてきたのか。

 

――もうあいつに囚われるのはやめる、そう決めたのだ。一度決めたら貫き通すのがヒーロー・爆心地のはずなのに、あいつのこととなると何もかもかき乱されてしまう。勝己は己の矛盾を呪った。

 

 




キャラクター紹介・アナザーライダー編 パパン

仮面ライダーアギト(シン)
身長:2m
体重:105kg
パンチ力:左・15t
     右・10t
キック力:15t
ジャンプ力:ひと跳び30m
走力:100mを4.5秒
※いずれもワン・フォー・オール未発動時。
必殺技:キラウエア・スマッシュ
    マッキンリー・スマッシュ
    ライダー・トライシュート
能力詳細:
ワン・フォー・オールの継承により、轟焦凍の肉体が突然変異を起こしたことで誕生した"仮面ライダー"。変異によって生成された"賢者の石"、その作動スイッチであるベルト"オルタリング"によって変身することができる。胸部は黄金の鎧で覆われているほか、左右の腕は半冷半燃の個性に合わせてそれぞれクリムゾンレッドとアイスブルーの装甲に覆われ、個性をさらに増幅・強化しているぞ!
通常時でもクウガを凌ぐスペックを誇るが、オールマイトから受け継いだワン・フォー・オールを発動することでさらなる身体強化を行うことができる。必殺技はそれぞれ50t以上の破壊力を誇るぞ!

ちなみに暴走形態時は常に発動状態であるため、パワーは"シン"より勝る。それでいて破壊衝動に支配されるのだから手がつけられないのだ!もうならないでね!

作者所感:
轟アギト。
スペックはトリニティフォームを参考にこまごまいじってます。目が虹色だったりクロスホーン常に展開してたりと本家アギトとは別物感を出したい。変身ポーズはシャイニングフォーム、右手に左手を重ねる感じで。
マイティフォームの完全上位互換なのがアレですがチート野郎なので致し方なし。アギトが4号(クウガ)に似てるとアギト序盤で評されてましたが、実際には逆、つまりクウガがアギトを模して創られたとするなら?細かいことは本編で触れるかもしれないし……裏設定で終わるかもしれないし……。

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