【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
やっぱアニメはいいですね、観るのに物凄く体力使うけども。
あと出久のいなかった雄英の様子についてもちょこっとだけ触れてみました。ちょこっとだけ。
そして皆さん、母親はなるべく大切にしましょう。byマザコン作者
陽が落ちすっかり空が暗闇に染まっても、未確認生命体捜索を続ける合同捜査本部の面々。しかし都内は広く複雑であって、目印もないのに発見できる確率は天文学的なものと言うほかなかった。
――だとしてもあきらめるわけにはいかないし、無駄な努力とせせら笑う者もいはしない。応援に駆けつけた各地の警官やヒーローたちも皆、懸命に動いてくれている。
「………」
捜査本部の一員であるヒーロー・爆心地――爆豪勝己もまた同じ。と同時に、思う。少年の……出久を虐げていた頃の自分なら、無駄なことと切り捨てていたのではないだろうか。何もわかっていなかった、ただヒーローというものを一面的にしか見ていなかった頃の自分なら。
爆豪勝己は何ものにも負けないヒーローでありたいと望み続けていた。でも気づけば、それだけではなくなっていた。いつからだ?己が、それまでとは違う己たろうと足掻きはじめたのは――
気づけば目の前の交差点の信号が赤に変わろうとしていた。性格や容貌に不似合いな落ち着いたブレーキで停車する。ほどなくして、目の前を横切っていくヘッドライトの群れ。本当はこいつらを突っ切ってでも急ぎ走らねばならない状況であるはずなのに……いまの勝己のこころは、その苛烈な熱情が嘘のように鳴りをひそめてしまっていた。
何かが足りない、足りない。――あのときと同じだ。幼なじみと……その憧憬に煌めく瞳と訣別した、あのときと。
(それでいいはずだ。……正しい判断をしたんだ、俺は)
自分は、間違ってなどいない。独りよがりな価値観ではなく、普遍的に――もとはと言えば、対照的な性質の飯田天哉が考えたことなのだから。
勝己が心のうちで自分に言い聞かせ続けていると、携帯電話が着信を示す電子音を鳴り響かせた。同時に、ナビに発信者名と電話番号が表示される。
「!、切島……?」
切島鋭児郎――高校時代から現在に至るまで、勝己の相棒であり続けた男。それだけに連絡は頻繁に来るし、勝己もそれを――表向きウゼェと罵りながらも――よしとしているが、この状況下では予想の範疇にない名前だった。
それでも無視はすることなく、勝己は電話を受けることを選んだ。
「……あぁ」
『もしもし。悪ィ、大変なときに』
「チッ、なんの用だよ?」
"大変なときに"と形容している以上、未確認生命体が出現していることも当然認識はしているのだろう。それでも電話をしてきたということは、なんらかの差し迫った事情があるということ。ゆえに勝己も用件くらいは聞くつもりでいる。
すると、さらに予想だにしない人物の名前が、相手の口からもたらされた。
『電話があったんだ、轟から』
「……轟から?」
なんで――その問いに、切島は答えようとしない。勝己の中には既にその答えがあると、見透かしているかのように。
『とにかく、そのことで会いたい。少しでいい、時間作っちゃくれねえか?』
「………」
わずかな逡巡のあと、
「……じゃあ上野の恩賜公園に来い」
『おう』
短いやりとりののちに、通話が切れる。
病床から離れることのできない、いまこの瞬間にも爆炎とともにその命を終えるかもしれない轟焦凍。彼からの依頼を受けた切島の呼び出しとあっては、さすがの爆豪勝己も無碍にはできない。
ちょうど信号が青になった。明確な進路を見定めた勝己は、そのままアクセルペダルを踏み込むのだった。
*
空はすっかり漆黒に染まり、人工灯の光も彼方の、寂しい暗闇に覆われた某沼地。
水面もまた同様……しかし、どこか違和感があった。四六時中絶えず響き続ける凪ぎの音……それがこの日、まったく沈黙してしまっている。なぜか。
答えは至ってシンプルだった。――音をたてるべき水が、ない。一滴も残さず消えうせていたのだ。
大きく抉れたクレーターの中で、ゆらりと人型のシルエットが浮かび上がる。纏った服は燃え尽きて焦げカスと化し、かの男はほとんど一糸まとわぬ姿と化していた。――それも一瞬のことで、次の瞬間にはその姿は異形のそれへと変貌を遂げていた。
「ウォオオオオオ……!」
おぞましい咆哮をあげる烏賊を模した姿……メ・ギイガ・ギの邪悪な姿は、本来の白ではなくなっていた。全身が真紅に染まり、後頭部から生えた触手がうねうねと蠢き続けている。そしてその足が踏みしめた地面は白煙を……やがては炎すらあげていた。
もとより血の色そのままだった双眸は、人工灯の光にぎやかな彼方へぎょろりと向けられて。
「ゲゲル……ガギバ、ギザ……!」
――悪夢は再び。よりエスカレートした形で、はじまろうとしていた。
*
切島鋭児郎が上野恩賜公園にたどり着いたときには、既にその片隅に目当ての相手の姿があった。その紅い瞳はいずこか彼方へ向けられ、物憂げな表情をつくり出している。
それは当初――勝己と友誼を結んで間もない頃から、彼が時折覗かせる一面だった。常に苛烈で目の前のことに全力なのに、どこかに魂を置き去りにしている……そんな姿。その"どこか"をずっと切島は捜してきたし、勝己は見せようとはせずに来た。だが……。
と、現実の勝己がこちらに気づいたようだった。どこか茫洋としていた整った顔立ちが、にわかにきつくなる。
「わり、待たせた」
「……あぁ」ぶっきらぼうに応じつつ、「ンだよ、半分野郎からの電話って」
神妙な表情で、相棒はうなずく。上鳴電気に次いでうるさい奴だが、その一方でこうした大人びた一面も覗かせる。それが誰しもと親密になれる秘訣なのだろうと思う。自分ですら、忠犬のようについてくる彼を憎からず思っているのだから。
その表情を変えることなく、切島は語った。焦凍が"アギト"として、出久や勝己らとともに未確認生命体と戦っている事実――それらを当人の口から聞かされたうえで、懇願されたのだと。
『頼む、切島……。
『俺じゃ、まだ駄目なんだ……。あいつらに救けてもらった、俺なんかじゃ……』
『緑谷のことは、きっと、爆豪にしか救えねえ……。爆豪のことは、おまえにしか……だから……!』
「……あいつ、そうやって必死ンなって頼んできたんだ。自分がいつ死んでもおかしくないってのに、そんなこと忘れちまったみたいに」
「………」
押し黙ったままその経緯を聞き届けた勝己は……「ハッ」と、捨て鉢な嘲笑を漏らした。
「あの死にかけ半分野郎……何ワケわかんねえうわごとほざいてやがる。テメェもテメェだクソ髪、ンなモン真に受けやがって 」
「……うわごと?」
「そうに決まってンだろうが。なんで俺があのクソナードを救けてやらなくちゃならねえ?テメェに救けてもらわなくちゃならねえ理由もねェわ、馬鹿馬鹿しい」
心底呆れたような口調を――演じる。そうして糊塗した本心を悟られるわけには……それ以前に、自分自身が認めてしまうわけにはいかない。それをしてしまえば、ずっと封じていた何かが、解き放たれてしまう……そんな気がしていた。
だが切島鋭児郎を相手に、それは無駄な努力というほかなかった。彼はずっと、一番近いところで、揺れ動く勝己の心に触れ続けてきたのだから。
「……オメー、昔からそうだよな」
すべてを悟りきったような落ち着いた声が、夜の公園に響く。
「自分がどんなに苦しんでようが、絶対に弱音吐かねえし誰にも見せようとしねえ。鬼みてえな怖ぇ笑顔浮かべながら独りで立ち向かう……そういうとこすげえ男らしくて、カッコいいといまでも思ってる。――でも、」
「いまのオメー、誰がどう見たって笑えてねえんだよ」
その心が迷い、鬱いでいることを示すかのように。勝己の表情から、あの揺るぎない苛烈さを示す笑みは鳴りをひそめていた。
「昔……オメーが緑谷をどう扱ってたかも、轟から聞いた」
「……!」
勝己がびくりと肩を引きつらせる。それこそが決して誰にも見せられないこの男の核心、その表層なのだと、切島には既にわかっていた。
「オメーのやったことを正しいとは思えねえけど……昔のことを責めるつもりはねえよ。それは俺の役目じゃなくて……いや、それはいいか」
「………」
「なぁ爆豪……俺、ずっと知りたかったんだ。オメーが遠くに見てるモン、それが一体なんなのか。――オメーが緑谷にしてきた仕打ち、そうしなきゃならなかった理由……それが、答えなんだろ?」
これ以上は、余計なお世話かもしれない。そんなことはわかっている。それでも"救ける"と決めた以上、中途半端をするつもりはない。
「それは、オメーが絶対に捨てちゃいけないモンだ」
「爆豪勝己がヒーローである限り、絶対に持ってなきゃいけないモンなんだ」
「……ッ」
堪えがたくなった勝己は、ふいと切島に背を向けた。伏せられた瞳に、ぼうっと浮かび上がった己の影が映る。
「……わかったようなこと、言ってんじゃねえよ」
「………」
「今さら……今さらどうしろってんだ……っ。ンなモンとっくに、見つかんねえんだよ……っ!」
それは――それは初めて、勝己が親友に対して吐き出した弱音だった。それでも「救けてくれ」とは言わない。言わないけれども、その手がよすがを求めてさまよっていることがわからない切島鋭児郎ではなかった。
「見つかんねえなら、捜せばいいだろ」
当たり前のことだと言わんばかりに、切島は言った。
「ゴミ箱ひっくり返して、汚えゴミの山掻き分けてでも、捜し出せばいいんだ。俺が男らしいって思ったオメーは、そういうヤツだったんだぜ」
「………」
勝己はもう、何も言わなかった。切島もまた、これ以上のことばはもたない。
「悪かったな、時間とらせて。……がんばれよ、相棒」
ただそう言い残して、おもむろに立ち去っていく。
――独り残された勝己は、ややあって車に戻った。だが、すぐにアクセルペダルを踏み込む気にはなれない。その視線は暫し、暗闇になった足下に向けられていた。
(見つかるわけねえんだよ……どんだけ捜そうが……)
だってそれは、とっくの昔に自ら振り捨て、その結果なくしてしまったものなのだから。ゴミ箱をひっくり返そうが、そこにあるわけがない。もう二度と、取り戻すことはできない――
親友の説得を無に帰しかけたそのとき…… 不意に勝己の脳裏に、過去の記憶が閃くようにして甦っていた。
――それはいまから五年と四ヶ月前。当時まだ中学三年生だった勝己が、雄英高校入学試験に臨んだ日のことだった。
試験を終え、住み慣れた折寺に戻ってきた勝己。その表情は沈んでいた。
うまくいかなかったわけではない。全力で戦い、間違いなく……勝った。一位を獲った可能性だってある。
だがそれは、何もかもから手を抜くことのできない彼の性質がそうさせただけで――ある意味、惰性とでも言うべきものだった。
「自分がヒーローになった未来」――この頃の勝己には、それが見えなくなっていた。最強のヒーローも高額納税者も、本当はそれ自体に価値なんてない。自分が本当に欲しいと思っていたのは、ただ、
――かっちゃん?
ぎょっと振り向いた先には、自分と同じ詰め襟姿で、パンパンに膨らんだ黄色いリュックを背負った幼なじみの姿があった。県立高校の入試日はまだ先だ、ふつうに学校帰りなのだろう。
こいつは結局、雄英を受験しなかった。わかりきっていたことだ。ずっとそれを望んでいたし、受験したところで無個性の、相変わらずひょろっちいままのこの少年が合格できる可能性はゼロだった。
でも……それでも勝己は、捜してしまったのだ。やっぱりあきらめきれなくて、出久はここに現れるんじゃないか。ヒーロー科でなくとも、普通科を受けることにしたかもしれない。もし現実になれば再び憤怒が燃え上がるような可能性を、勝己はどうしようもなく求めてしまっていた。そんなこと、あるわけがないのに。
――雄英、受けてきたんだよね。……どう、だった?
それは事務的なもの以外では、およそ十ヶ月ぶりに向けられたことばだった。
対して、
「テメェに、関係ねえだろ」――勝手に滑り出した、冷たいひと言。
――そう、だね……ごめん……。
自嘲めいた笑みを浮かべて、俯く出久。
違う。
こんなことが言いたいのではない。こんな
でも結局、どうすればいいのかわからないのだ。こいつの前ではいつもそうだ。いつも、無力。――それが怖かった。
なのに、
なのに、こいつは。
――かっちゃんなら、きっと……きっと、すごいヒーローになれるよ。
――きみは嫌かもしれないけど……僕、応援、してるから。
――……!
――じゃあ、またね……。
それだけ言い残して、出久は去っていった。勝己は暫くその場から動くことができなかった。
ずっと伏せられたまま、もう二度と向けられることなどないと思っていた翠。でも最後の瞬間だけは、間違いなく自分を映していた。嫉妬や不満、畏怖、あらゆる負の感情に塗り固められていても、その中に封じられたものは、そこから消えうせたわけではなかったのだ。
――いまでもあいつは、俺を見ている。
たとえ離れたとしても。自分が同じ場所に立つことができない現実に、打ちのめされたとしても。
勝己の針路に、光が灯った。それはとてつもなく弱々しいけれど、でも、その事実だけで十分だった。
――俺はヒーローにならなければならない。
――誰よりも強い……そして、誰よりもあいつの憧れを背負えるヒーローに。
そのために勝己は、孤独な戦いをはじめた。
雄英に入って最初の体育祭。父への憎しみに囚われ、半分の力だけで頂点に立たんとしていた轟焦凍。彼に全力を出させる――もとよりそうするつもりでいた。全力の相手に打ち勝たなければ意味が無い。
でも、それだけでは駄目だ。あいつがもし、ここにいたら。あいつがなりたかったヒーローなら、きっと。
だから勝己は叫んだ。出久ならなんと言うか――そんなことはわからない。だから自分なりのことばで、焦凍を説得した。その結果として彼は"左"を使い……自分は敗れた。悔しかったけれど、どこか清々しい気持ちになったことを覚えている。
その直後――職場体験と時を同じくして発生した、保須事件もそうだ。ヒーロー殺しに兄を再起不能にされ、復讐に挑みあわや返り討ちに遭うところだった飯田天哉を、轟とともに救った。余計なお世話だと言われても突っぱねた。出久なら、きっとそうするから。
それからの日々も、勝己は足掻いた。足掻き続けた。その結果として、オールマイトに後継者候補と認められるまでになった。最終的に選ばれたのは焦凍だったけれど。
でも目まぐるしく動く日々のなか、いつしか勝己は忘れてしまっていたのだ。自分の背負った憧れ、それが誰のものであったかを。いつしか自分は、その持ち主の顔を思い出せなくなっていた。
――いま、はっきりと思い出した。
(
それは決して、捨ててはいけない……持っていなければいけないもの。ヒーローたらんとする限り。
だってそれは、
「――ッ、」
顔を上げた勝己は、すぐさま車を走らせていた。次の目的地は決まった。である以上、全力で突き進むだけだ。
*
駅前に現れたメ・ギイガ・ギは、自らの滾りを発散するかのように殺戮を開始していた。
逃げまどう人々に触手を突き刺し、墨を注入する。時間を置くことなく体内で墨が激しく発熱し、苦悶の果てに大爆発を起こす。それはいままでの比でない大規模なもの。街は一瞬で火炎に包まれた。
「ハハハハハ、ハハハ……ハハハハハハハ……!」愉悦に笑いながらも、「ラザザ……ラザダシバギ……!」
こんなものでは満足できない。もっともっと、派手な花火を。この世界すべてを包み込むほどの獄炎のカーニバルを。
そのためには、まだ力が足りない。この阿鼻叫喚の果てに"ゴ"になり、さらにその先――熱に浮かされた頭で輝かしく血生臭い未来を夢想しながら、ギイガは次なるステージへ踏み出した。
*
――科警研
G-PROJECT担当の研究員らは、突然の闖入者に困惑していた。
「な、何を考えているんだきみは。自分が何を言っているのかわかっているのか?」
とち狂った人間を見るような表情の研究員。それに対し、闖入者は素っ気なく「わかってます」と応じた。
「俺には"アレ"が必要なんです、ヤツをブッ倒すために」
「ッ、だ、だとしても、きみとインゲニウムではわけが違うんだぞ!?ましてアレを……G2を出動させることはもう禁じられてるんだ、我々の一存では……」
「それもわかってます、わかったうえでお願いしてるんです」
口調こそ普段の彼からは信じられないくらい穏やかだが、こちらにイエス以外の答えを許さない頑迷ぶりは変わらない。
研究員らが閉口していると……青年は想定外の行動をとった。
その場に膝を折り――両手を、突いたのだ。
「お願い、します」
「!、ば……」
「爆心地………」
頭を床に擦りつけて懇願する爆豪勝己。若手トップクラスのヒーローにそんな行動をとられるとは微塵も予想しておらず、研究員たちは狼狽した。まして公私ともに極めて傲岸不遜であり、人に頭を下げるという行為から最も縁遠いと思われていた爆心地に。
研究員たちは揺れた。個人としてなら、自分を殺してまで何かを為そうとする彼に力を貸してやりたいと思う。
だが、それをしてしまえば、自分たちの立場は危ういなどというものではない。確実に終わる。保身ではない、そうなればG-PROJECTも凍結されるかもしれないからだ。市民の平穏のために、それだけはあってはならないことだった。
膠着する状況。それを破ったのは、研究員のなかでは最も若い――勝己の同窓である、発目明だった。
「……わかりました。そんなふうに
「は……?」
「発目くん、何を――」
「というか、脅迫って……」
むしろ脅迫とは一番ほど遠い態度だと思うのだが――そう言った研究員のひとりに対し、発目は「ちっちっちっ」と人差し指を突きつけた。
「わかりませんか、"あの"爆豪さんがここまでしてるんですよ?これはつまり、"この俺にここまでさせといて、どうなるかわかってんだろうなコラァ"ってことです!」
「え、えぇ?」
「!」
困惑を深める研究員たち。彼らが恐る恐るこちらを見下ろしてくる。発目の意図を察した勝己は、彼女の発言の真実性を証明するがごとく苛烈な笑みを浮かべて立ち上がった。
「ハッ……わかってんじゃねえか発明女ァ。別に
「えぇっ!?」
「態度急変しすぎだろう!?」
だが、こちらが本来の勝己であることは言うまでもない。勝己なら本気でやりかねない。
しばし考えて……総責任者の男が、溜息を吐き出した。
「……我々にできるのは、見て見ぬふりをすることまでだ」
こっそり侵入していた勝己が、勝手にG2を持ち出したことにする――最悪の場合ヒーロー・爆心地が窃盗犯に堕ちるかもしれないシナリオだけれども、勝己に迷いはなかった。
「――ご協力、感謝します」
もう一度態度を神妙なものに戻して、深々と頭を下げたのだった。
*
専用のアンダースーツに着替えた勝己の前に、かのクウガを模した強化服のユニットが運ばれてきた。頭部ユニットの燃えるようなレッドアイが、こちらを睨みつけている。自分がふさわしいか、品定めされている――そう感じとった勝己は、鋭く睨み返していた。
(俺はなる……あいつがなりてぇモンに)
(俺は、)
意を決した勝己の身に、発目の手で赤き鎧が装着されていく。胴、脚、腕――と来たところで、
「肘から先はいらねえ」
「え、でも……」
「コイツは借りるが、
「……なるほど。了解です!」
そこにはG2のパーツではなく、苦楽をともにした漆黒の籠手を装着する。よく馴染んだ感覚。これが起こす爆発が、どこまで通用するか。
いずれにせよ、自分がやるともう決めた。迫りくるG2の頭部ユニットを、勝己は瞳を閉じて受け入れたのだった。
キャラクター紹介・グロンギ編 バギンドズゴゴ
カメレオン種怪人 メ・ガルメ・レ/未確認生命体第35号
「ゴセゾリダロボパ、ババサズボソグッ!!(オレを見た者は、必ず殺すッ!!)」
登場話:
EPISODE 8. デッドオアマッスル~EPISODE 24. 英雄アイデンティティー
身長:200cm
体重:200kg
能力:周囲の風景に完全に溶け込む擬態
数十メートルも伸びる長い舌
活動記録:
小学校高学年程度という、グロンギの中でも最年少と思われる容貌の少年。外見に違わず無邪気に振る舞い、おしゃべり好きな性格だが、反面陰湿かつ残酷な本性を覗かせることも。ゲームはじめ遊興を好む一面もあり、バヂスやゴオマ、果ては人間の子供たちとも遊んでいたこともあったが、それは知能の高さゆえ早々に日本語を習得したことからできた芸当であった。
勝手にリント(=柴崎巡査)を殺害した咎により順番を後回しにされていたが、メ集団も残り少なくなってようやくゲゲルに臨む。ゲゲルに際しては「高見沢小学校の児童を2日で162人」という条件を自らに課し、前日一緒に遊んだばかりの子供たちをも躊躇なく虐殺した。さらにその際、駆けつけた爆心地らにグロンギの殺人の目的が"ゲーム"だと明らかにした。
結局妨害を受けて一日目は98人の殺害にとどまり、再挑戦となったゲゲル二日目は「強烈な光を浴びると擬態ができなくなる」という自らの弱点を突かれて爆心地の閃光弾の餌食となり、無様に逃走する羽目になる(上記はその際の捨て台詞)。それを阻んだクウガに対して放った罵詈雑言が彼を激昂させる結果となり、舌を引きちぎられて人間体に戻った状態で顔面を何度も殴りつけられ、ぐちゃぐちゃに潰される。そうして虫の息になったところを、粛清される形で爆死するという因果応報の最期を迎えた。
この少年のために引き起こした暴走は、クウガ=出久の心に暗い影を落とすこととなる。
作者所感:
活動記録クッソ長くなりましたがしゃーない、作者お気に入りなので。
ショタキャラにした時点でジャラジの身代わりとなることは決まってました。まあ長い間お疲れ様というところ。
早いうちから日本語ペラペラなのもそうですが割とコミュ力お化けなんですよね。リントの子供とも馴染むし、メ集団みんなと結構仲良いし。例外はギノガとガドラくらい?
本編で言及したとおり「最年少で"メ"にまでなったエリート」という設定があるので、調子に乗りすぎなければゴになってかつ「究極の闇」候補にまで昇り詰めたかもしれません。グロンギの価値観に染まりきってると考えれば、あるいは彼も被害者なのかもなぁ……。かっちゃんと一緒や……。
ちなみに「高見沢小学校」の名前は次々作品の人類皆ライダーおじさんからもらいました、カメレオン繋がり。