【完結】僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我 作:たあたん
アニメの方もちょうどOPEDが変わり仮免編へ突入したということでいいタイミングです。
仮にアニメだったら拙作もOPED変わるタイミングなんだろうなー。どんな曲がいいと思う?関係ないかぁズのアンタにはぁ!(ザザル並感)
広漠としたフィールドに、ふたつの異形の声が響き渡っていた。
「うぉおおおおおッ!!」
姿に似合わぬ少年のような高い声とともに、躍りかかる赤――クウガ・マイティフォーム。それに対し、
「はっ!」
同じく姿に似合わぬ涼やかな声とともに迎え撃つは、黄金の胴・赤い左腕・青い右腕・虹色の瞳という鮮やかな超人戦士――アギト。クウガの拳をすんでのところで躱し、カウンターに自らの拳を叩き込まんとする。
「ッ!」
スピード……いや、スペック全体で劣るクウガだが、それでも現実の動きでは負けていない。アギト以上の反応で拳を避け、すかさず蹴りを一撃叩き込む。「ぐ、」とうめき声をあげ、その鮮やかな身体がわずかに後退した。
「ッ、チィっ!」
舌打ちをこぼしたアギトは、青く輝く右腕をかざした。途端に大気中の水分が凍結し、氷山が生み出される。それがクウガへと向かっていく。
「そう来るか……ッ、――なら!」
「超変身!」――そう唱えた瞬間、クウガの姿が赤から青へと変わる。
青。ドラゴンフォーム。鎧を薄くし筋肉の組成を変化させることで、俊敏な動作と高い跳躍力を獲得した形態である。
そうした能力を余すことなく活用し、意志をもっているかのように迫りくる氷の刃をことごとく、鮮やかなバク転で躱していく。
「速ぇな、相変わらずッ!」
そのスピードを称賛しつつ、アギトは跳ぶ。左腕に炎、そして光流を纏わせながら。
(ワン・フォー・オール……!)
「――KILAUEA SMASH!!」
"平和の象徴"より受け継ぎし力を発動させた、最大の一撃。クウガのパワーを遥かに凌ぐそれは、当然喰らったらただでは済まない。まして装甲の薄いドラゴンフォームでは。
「ッ、超変身!」
モーフィンクリスタルが紫に輝き、薄くなっていた身体と装甲がぼこりと膨れあがる。紫の瞳をもつ、タイタンフォームだ。
ドラゴンフォームとは対照的に動きが鈍くなる代わりに、堅牢な装甲と拳の重みを得た形態。逞しい身体つきがオールマイトに近いものを感じさせるので、マイティフォームの次に出久が気に入っている姿でもある。
閑話休題。
鎧が、炎を纏った鉄拳を受け止める。その衝撃たるや凄まじく、紫のクウガをもってしても十メートル以上も後退させられた。
「い゛ッ、たぁぁぁぁ………!――轟くんきみ、結構本気でぶち込んできただろ……」
「ああ。なのにその程度で済むんじゃ、やっぱりすげぇな紫は」
「お褒めに与り光栄です……。なら、僕も
偶然そばにあった木の枝を拾い上げ、構える。クウガ特有のモーフィングパワーが作動し、枝は光り輝いたかと思うと一瞬にしてその姿を変えた。紫に輝く、大地裂く剣――タイタンソード。
「行くよ、轟くん!」
「ああ――来い!」
半冷半燃による猛攻を受け止めながら、一歩一歩踏みしめるように吶喊するクウガ。
――同じグロンギに立ち向かう者として、彼らは特訓に勤しんでいたのだった。
*
鬱蒼とした森の中にたたずむ洋館があった。
主を失い、白昼であっても薄暗闇に覆われた不気味なそこに、純白のドレスを纏う美女の姿があった。どこか物憂げに見えるその表情はひどく儚く、この世のものとは思えない。
――確かに彼女は"ある意味"この世のものではなかった。そしてそうした者たちを、束ねる者でもあった。
集う、者たち。彼・彼女らがグロンギ――巷で"未確認生命体"と恐れられる存在であるだなとと、誰が気づくだろうか。それほどまでに、彼らの姿は現代人のそれに近づいていた。
「ザジレスゾ、――ゲリザギバス・ゲゲル」
集合の中心で、バルバがいつもとなんら変わらぬ淡々とした調子で宣言する。
「ギジョギ……ジョバ」
応じるように、着流しを纏った青年。覗く胸もとにはカブトムシを模ったタトゥーが刻まれている。纏う威圧感は、この場にいる誰よりも強烈――自然体であるにもかかわらず。
「ザセザ、ババグドムセギジャジャパ?」
「――パダギグ、ジャス!」
他を押しのけるようにして出てきたのは、軍服風の衣裳を纏ったショートカットの女性。彼女は名を"ガリマ"と言い、かつてメ集団のリーダー格の座をほしいままにしていた。唯一のゲゲル成功者となり、昇格した彼女はいま"ゴ・ガリマ・バ"を名乗っている。
だが所詮は新参者。ゴ集団の中では末席であり、記念すべきファーストプレイヤーの座が与えられるはずもなく。
「――"ブウロ"」
「!」
その名の主は、彼女らの頭上にいた。翼を広げ、一階に降り立つ。
同時に、その姿が人間のそれに変わる。黒い外套を纏い、サングラスをかけた知的な雰囲気の青年。何かカードのようなものを手にしている。
「バギンビンズヅ、バギングドググド、ズガギビ、パベス」
淡々と告げるとともに――カードを、バルバに投げ渡す。そこには禍禍しい象形文字が描かれている――彼らグロンギ、特有のものだ。
「ギブギデ、ボソグ」
宣言する青年――ゴ・ブウロ・グ。彼の腹部に、二本に増えた爪状の指輪の装飾を突き刺すバルバ。ゲゲルの準備が、これで完了する。
颯爽と去って行くブウロを見送るゴの面々。愉しげか、あるいは無感情にか……大抵がそのどちらかである中で、ガリマだけは悔しげに表情を歪めていたのだが。
「――仕方がないわ。あなたはまだメから昇ってきたばかりだもの」
「!、……ベミウ」
そんなガリマに話しかけたのは、ベミウという女だった。スリットの入った漆黒のチャイナドレスを纏った長い黒髪の美女――その儚げな風貌、そして柔和な笑みは、とても同じグロンギとは思えない。
だが、ガリマは知っている。彼女もまたまぎれもないゴ集団のひとり――"
「……私を、侮るな」
睨みつけても、ベミウの表情は変わらない。
「"ゴ"は不当に相手を侮ることはしないわ、あなたは強い。でもズやメのやり方しか知らないのよ、それでは真のゴとは言えないわ」
「なら、どうしろと言うのだ?」
新たな仲間であり、好敵手でもある女の問いに――ベミウは、努めて誠実な答を返した。
「学びなさい、私たちのゲゲルから。ブウロも私も、他の者たちも……きっと、あなたを愉しませてあげられるわ」
*
「ふーっ………」
濡れた頭をタオルで拭きつつ、出久は深々と溜息をついた。
焦凍の変身したアギトとの、初めての本格的な組み手――思った以上に白熱してしまい、炎天下の中で休憩も入れずに二時間近くも続行してしまった。変身を解除した途端地面が濡れそぼるくらい汗が噴き出し、このまま脱水症状で即死するんじゃないか?なんて思ったくらいだった。実際、常人ならそうなっていたかもしれない――出久も焦凍ももうふつうの身体ではないから、無事に生きながらえることができているが。
「緑谷、これ」
「!」
シャワールームから出てくると、待ち構えていた焦凍がペットボトルを差し出してきた。右の個性を利用して冷やしていたのか、表面に氷の粒が残っている。
「ありがと。ほんとに便利だね……」
「あぁ、夏は重宝する」
ということはつまり、毎年この時期にはこういう使い方をしていたのだろうか。巧緻かつ鮮烈な戦いぶりがどうしても印象的になりがちだが、案外地道なところもあるらしい。そこが焦凍の奥の深さでもあるのだが。
その場で内容のスポーツドリンクを半分近く飲み干す。冷たい飲料が五臓六腑に染みわたるような錯覚。――ちなみに、彼らの場合は多少時間を置いているからいいが、真夏に激しい運動をしたあとキンキンに冷えた飲料をがぶ飲みするのはかえって危険である。胃がびっくりして全部吐き出してしまうことにもなりかねない。
閑話休題。
「それにしても、だけど……すごいねエンデヴァー。こんな施設まで持ってるなんて」
こんな施設――いま出久と焦凍がいるのは、山間にあるエンデヴァー事務所所有の訓練施設だった。山を切り拓いて設けられたここには屋内と屋外それぞれに巨大な演習場があり、様々な状況を模した訓練が可能なのだ。
「……まあ、腐りきってもNo.1ヒーローだからな。補助金もたんまり貰ってやがる」
「な、生々しい……」
しかも、なんだか嫌そうな表情まで浮かべて。蟠りも溶け、関係改善に向かったとばかり思っていた……いや実際そうなのだろうが、表向きの態度まで変えられるものではそうそうないらしい。まあ、そんなものなのだろう。
あまり焦凍に不機嫌になられても悲しいので、出久は話題を変えることにした。
「って、ていうかやっぱりすごいね轟くんもっ!センスいちいち抜群というか……ワン・フォー・オールの使用可能時間も延びてきてるみたいだし」
その称賛は心の底から出たものだった。まず基礎的なスペック自体、アギトはクウガのそれを上回っているのだが……生まれつきもっているのであろう類いまれなる戦闘センスが、それをさらに揺るぎないものとしている。もしもアギトへの変身能力を有していなくとも、半冷半燃にワン・フォー・オールまであれば十全に未確認生命体と戦えたのではないだろうか。そう思えるほどに。
焦凍はというと、満更でもなさそうな表情を浮かべつつ、
「アギトになったおかげだな。思ったより身体の回復が速ぇ」
「そっか、やっぱり促進されてるってことだよね……。僕もクウガになって、鍛えはじめて……三ヶ月ちょっとしか経ってないけど、結構筋肉ついてきた気がするし」
つぶやきつつ、軽く二の腕に力を込めてみる。細かったそれは、運動部でもない平凡な大学生にしてはきちんと鍛えられていると言える程度には逞しくなっている。腕に限らず、全身そうだ。
だが、まだまだ不足だとも感じる。爆豪勝己などは中学の時点で筋肉量がうんと凄かったし――当時もいまもかなり着痩せしているが――、友人になって久しい心操人使も、高校から励んでいるだけあって細身ながらも筋肉質で動きも良い。さすがに全盛期のオールマイトのようにとはゆかずとも、彼らと張り合えるくらいになりたい……そんなふうに思うこの頃である。
「まあ、俺はここ一ヶ月のおまえしか知らねえけど……そうかもな。――でも、センスは間違いなく大したもんだと思うぞ、おまえも」
「そ、そうかな?」
「ああ。いくら変身して身体能力が強化されるっつっても、ふつうはそれに振り回されるもんだ。たかだか三ヶ月で四色使いこなせるようになるなんて、そうそうできるもんじゃねえ」
「それは沢渡さんやかっちゃんたちのおかげだよ。碑文を解読してもらったり、戦い方のアドバイスくれたり……」
(……かっちゃんがアドバイスくれるんだもんなぁ)
自分で言っておきながら、思う。相変わらず言い方はきついし初めてタイタンフォームになったときのような力ずくでの荒療治もあるが……厳しくとも的確に伝え、こちらが真に理解し体得するまで付き合う誠意と粘り強さも感じられる。幼い頃の皆を引っ張っていこうというガキ大将気質が純粋に昇華したものともいえるかもしれない。少年時代にはそれが、非常に見えづらくなっていただけで……主に自分のせいで。
「いい仲間がいてよかったな、緑谷」
「ハハ……轟くんだってそうだよ?」
「……おう」やはり満更でもなさそうにうなずきつつ、「でも研究熱心なとことか、努力家なとことか……おまえ自身の力でもあること、忘れんなよ」
「う、うん……ありがとう」
なんだかこそばゆい――焦凍は態度こそクールでぶっきらぼうに見えるが、いささか天然ぎみなこともあって良いものは良いと素直に言えてしまう点において勝己と異なる。能力的にはかの幼なじみとまったく引けをとらない男がこうして自分を褒めちぎるものだから、そう思えて仕方がない。
「そ、それよりあれかなっ、もう出ないとまずいかな!?」
「ん、もうそんな時間か」
「こっからだと遠いしな」と焦凍。彼らふたりとも、このあと大切な約束があった。遅れれば十数人を待たせることになるから、ある程度余裕をもって出発しなければ。
「でも僕初めてだよ――警視庁に行くの。轟くんは?」
「本庁は俺も初めてだったと思う」
そんなやりとりをしつつ、それぞれの愛馬に跨がる。警視庁――そこが彼らの目的地なのだった。
キャラクター紹介・アナザーライダー編 ドググ
仮面ライダーG2
身長:195cm
体重:150kg
パンチ力:2.5t
キック力:7.5t
ジャンプ力:ひと跳び15m
走力:100mを7.2秒
※数値は装着者によって変動あり
必殺技:G2オーバードライブ
能力詳細:
"戦闘用特殊強化外骨格および強化外筋システム"(通称"G1")とクウガの戦闘データを基に、発目明を始めとする科警研の特別チームが開発したパワードスーツ。
クウガ・マイティフォームを機械化したような外見に違わず、なんとそれに迫るスペックを実現しているぞ!装着者によってはグロンギと互角以上に立ち回ることも可能だ!しかしその代償に装着者の肉体にかかる負荷が凄まじく、長時間の戦闘は困難。最初の装着者である飯田天哉などは数時間に及ぶ激戦のあと、特に反動の大きいオーバードライブを二度も発動させたために吐血するほどのダメージを受けてしまった!
上述の飯田の装着後、その危険性が認識されて持出厳禁とされていたが、36号事件に際して爆豪勝己が強引に装着して出撃したことも(その際、肘から先は爆心地のコスチュームである籠手を装着していた)。36号(メ・ギイガ・ギ)相手に一歩も引かない奮戦を見せ、クウガが戦線復帰したあともその必殺技を支援するなど活躍したぞ!
作者所感:
原典のG1寄りな設定。あとがきか何かにも書きましたが超デッドヒートドライブのクウガ版みたいなイメージです。
出番は少ないですが飯田くんが装着したりかっちゃんがしたり、要所要所で活躍させてあげられたかな~と思います。あとはデチューンされて扱いやすくなった第3世代型に3号ライダーの座を明け渡すのみ……と思わせて意外な形で利用されるかも?