無職転生 -魔王になりし転生者-   作:心葉詩

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大魔王

side:ルーデウス

 

「ええっと、魔王って……さすがに冗談ですよね?」

 

 と若干引き気味に尋ねたのはパウロだった。

 

「いえ……この方は本当に魔王なんです。約400年前のラプラス戦役で三英雄に助力した魔王っていえばわかりますか?」

「フハハハハ、魔王だと信じられぬのはわかるが話を進めたらどうだ。

 こちらのロキシーが家庭教師になるという話だったろう」

「うーん…昔読んだ本の内容と特徴は似ていますが…まぁこの件は置いておきましょう。

 ロキシーさん、あちらにいるのが私の息子のルーデウス・グレイラットです。

 私の名前はパウロで、こちらが妻のゼニスとメイドのリーリャです」

「はい、よろしくおねがいします」

 

 パウロ達との挨拶を済ませてこちらに来るロキシーへ一言

 

「小さいんですね」

「あなたに言われたくありません」

 

 ピシャリと言い返された。

 コンプレックスなのだろうか。

 胸の話じゃなくて背の話だったのに。

 

ロキシーはため息を一つ、

 

「失礼ですが、本当にこの子に教えるのですか?

 到底魔術の理論を理解できるとは思えませんが……」

「大丈夫よ、うちのルディちゃんはとっても優秀なんだから!」

 

 ゼニスの親馬鹿発言。

 再度、ロキシーはため息を付いた。

 

「はぁ。わかりました。やれるだけの事はやってみましょう」

 

 これは言っても無駄だろうと判断したらしい。

 こうして、午前はロキシーの授業を、午後はパウロに剣術を習うこととなった。

 

 ちなみに例の魔王は外でパウロと話してたみたいだけど、どうしたんだろう。

 

 

 

―――――

 

 

 

side:キコエル

 

 ふむ、邂逅は何事もなく済んでよかった。

 

 やはり初対面だと魔王だとは信じられなかったが、ルーデウスに強力な印象を抱かせられたと思えば良いだろう。

 

 これからの展開はどうしようか。

 ロキシーの授業が終わるのに合わせて出ていく気だがその後は?

 大人しくラノアで待つのも良いが将来への布石も打っておきたい。

 原作知識なんて主要なこと以外最早あってないようなもんだし…ルーデウスの幼少期なんて完全にうろ覚えだ。

 そもそも俺がいる時点で――いや、俺程度の運命力では世界の流れは大きく変わらないのはわかっているだろう。

 ヒトガミへの忠告も……今しても無駄だと思うが適当なタイミングでしておこう。

 まぁ追々考えるとするか。

 

 俺は今グレイラット家に向かって歩いている。

 これから狩人の方々と共に魔物退治に向かうので一応挨拶でもしておこうかと思ってだ。

 

 のどかな田園風景をどこか懐かしい気持ちになりながら進むとグレイラット家の方向から木の倒れるバキバキという音がした。

 

「――――無し!? ……そう。いつもは無し。なるほどね。疲れは感じていますか?」

 

 近づいてみるとロキシーのびっくりしたような声がした。

 ふむ、詠唱無しで魔術を行使したのだろうか。

 

 俺は力のおかげで詠唱はいらないが、普通の魔術師は詠唱しないと使えないもんな。

 

 あ、様子を見に来たのだろうか。

 手に持っていたであろうお盆を落とし、怒りの表情を浮かべるゼニスがいた。

 巻き込まれないように見ておこう。

 

 

 

「はい……そのとおりです」

「こういう事は二度としないで頂戴ね!」

「はい、申し訳ありません、奥様……」

 

 言いたいことを言って、木をヒーリングで修復したゼニスは家の中へと戻っていった。

 

 さて声をかけよう。

 

「や、災難だったなロキシー」

 

 にやにやしながら話しかける。

 

「あ、キコエル様……見てたなら助けてくれてもよかったのに…」

「いやいや、あれはゼニスさんの言うとおりでしょ。

 どうもルーデウスくん」

「あ、はい。

 どうも、キコエル・キカセル様?」

「堅苦しくなくてもいいよ。

 ロキシーは小さいころからだから仕方ないけど、気軽に話しかけてくれて構わない」

「わかりました。

 キコエルさんよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」

 

 そういえばルーデウスとはちゃんと挨拶していなかったな。

 

「あの…キコエルさんって本当に魔王なんですか?

 本で読んだんですけど、キコエルさん昔の戦争で大活躍したんですよね?」

「んー俺自身が魔王だって名乗ったわけではないんだけどな。

 では簡単な魔術でも見せてあげよう」

 

『火球弾』

 

 と呟いて手のひらに小さな火の球を作り出し、形状を変えていく。

 数秒の後に手のひらにいるのは炎が形造る不死鳥だった。

 

「どうだ。

 初級魔術だが、これを放てば威力は上級、或いは聖級に届くかもな」

「うーーー、相変わらず出鱈目ですね貴方は…。

 これが初級って…初級って何だろう…」

 

 ロキシーがジト目で睨んでくるが気にはしない。

 年齢お爺ちゃんは子供に尊敬した目で見られたいのだ。

 さてルーデウスの反応は?

 

「…す」

「す?」

「すっげー!本物のカイザーフェニックスだ!」

「フハハ、これはメラゾーマではない、メラだ」

「やはり大魔王は格が違う…!

 ……って、あれ?」

 

 良い反応をしてくれたルーデウスは僅かな逡巡の後に顔を青褪めさせた。

 

「…えっと…えっ嘘、もしかして貴方って…」

「おっと、そろそろ待ち合わせの時間に遅れてしまう。

 その話はまた後でだ、ルーデウス君――――」

 

「あれ、どこか行くんですか?」

「ああ、狩人の方々と魔物退治にな」

「頑張るのはいいですけど、狩りすぎで森の生態系を狂わさないようにしてくださいね?」

「フハハ、そんな事はしないとも。

 では魔術の訓練を頑張るようにな」

「はい、いってらっしゃいませ。

 さて、ルディ、訓練の再開を――って顔を真っ青にしてどうしたんです!?

 大丈夫ですか!? ゼニスさーん! リーリャさん!

 ルディが大変です!」

 

 さて、後々ルーデウスと二人で話す時間を造らねばな。

 後腐れの無いようにロキシーが卒業試験を終える前に話しておこうか。

 そうだ。

 ロキシーにも釘を刺して、パウロにもそれとなく話を振っておかないとな。


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