無職転生 -魔王になりし転生者-   作:心葉詩

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別れ

 俺は月に何度か狩人の方々と山狩りをしている。

 

 今日もハーフエルフのロールズと組んで山へ入った。

 俺の力を使えば索敵も楽だし魔術で遠距離から狙撃で仕留められる。

 本日は二足歩行で腕が四本あるイノシシ型の魔物、ターミネートボアを2匹、ドーベルマンのように獰猛なアサルトドッグを1匹、丸々と肥えたイノシシを1匹仕留めて村へと帰ってきた。

 

「いやぁ、今日も大量ですね。

 このまま村の猟師になりませんか?」

「フハハ、魔大陸でも良く狩りをしていたからな。

 申し出はありがたいが、俺が村専属の猟師になってしまっては近辺の魔物を全滅させてしまうだろうから遠慮させてもらおう」

「魔大陸ですか…、行ったことはないですがやっぱり魔物って強いんですか?」

「うむ、この近辺の魔物が数十匹がかりでないと倒せないような魔物がそこら中にいる。

 ただの人間が生き残るには辛い場所だろうな」

 

 感心したように頷くロールズ。

 

「はぁ、それはまた想像もできないような魔境ですねぇ」

「確かに生きにくいところではあるが、住んでみれば中々良いところだぞ。

 行きは良いが、帰りは怖い場所だ」

「ははは、私みたいなのは行く機会がなさそうですね。

 そうだ、今晩は家内がシチューを作っているんですが食べに来ませんか?

 シルフィも貴方の冒険譚の続きを聞きたがっていましたし」

「フハハ、では御相伴にあずかろうか……むっ?」

 

 ふと空を見上げると先ほどまで晴れていたはずの空が雲に覆われて暗くなっていた。

 

「おや、いきなり天気が変わりましたね……どうかしましたか?」

「あぁ、いや、突然なのだがな、俺もそろそろ旅立たなければいけなくなったようだ。

 今晩はお別れ会も兼ねて特性のベーコンと酒を持っていこう」

「突然ですね…いや、確かロキシーさんのお伴として来たのですからいつかはいなくなると思っていましたがね。

 シルフィは泣くでしょうが、今晩は飲み明かしましょう」

「うむ、楽しみにしているが良い」

 

 おっと、降り出してきたか。

 雲の中に魔力の残滓を感じる。

 これは間違いなく、水聖級攻撃魔術『豪雷積層雲(キュムロニンバス)』だろう。

 水王級攻撃魔術『雷光(ライトニング)』へと派生する前段階の魔術だ。

 これが使えるだけでも魔術師としては一人前だろうな。

 

 原作知識の通りならばこれは卒業試験。

 ロールズにも話した通りすぐにでも旅立たないといけないだろう。

 この村は自然が豊かで腹に一物持たない者ばかりだったから過ごしやすかったために、多少愛着を持ってしまった。

 これが数年後には無くなると思うと少し腹立たしくなる。

 だがあの災害こそが、オルステッドがヒトガミへと行きつくための唯一のルートだ。

 私心を殺してでも、成し遂げなければならない。

 犠牲になった者達のために。

 

 

 

―――――

 

 

 

side:ルーデウス

 

 翌日。

 

 ロキシーは旅装を整え、二年前に来た時と寸分変わらない格好で玄関にいた。

 隣には二年前と変わらない姿をしたキコエルもいた。

 父も母もロキシーが来た時と、あまり変わらない。

 俺の背だけが伸びていた。

 

「ロキシーちゃん、まだウチにいてもいいのよ?

 教えてないお料理も一杯あるし……」

「そうだぞ。

 家庭教師が終わったとはいえ、君には去年の干ばつの時にも世話になったしな。

 キコエルさんも魔物狩りには助けられたし、久しぶりに聞いた冒険譚は面白かったしな。

 特に迷宮の話は興味深かった……。

 二人とも、村の奴らなら歓迎するだろう」

 

両親はそう言ってロキシーとキコエルを引きとめようとする。

 

「いいえ。

 ありがたい申し出ですが、今回の事で自分の無力さを思い知りました。

 しばらくは世界を旅しながら、魔術の腕を磨くつもりです」

「フハハハハ、長きを生きる魔王である俺でも、この二年という時間はかけがえのないものだったがそろそろ行かなければならないところもある。

 残念だが断らせてもらおう」

 

 ロキシーはどうやら、俺にランクで追いつかれてしまったのがショックらしい。

 前に、弟子に追いつかれるのは嫌だと言ってたしな。

 

「そうか。まぁ、なんだ。悪かったな。うちの息子が自信を失わせてしまったようで」

「いえ、思い上がりを正して頂いたことを感謝すべきはこちらです」

「水聖級の魔術が使えて思い上がりってことはないだろう」

「そんなものが使えなくとも、工夫しだいでそれ以上の魔術が使える事を知りました」

「フハハ、そうだぞロキシー。

 まだ百年も生きていないのに思い上がりをするとはな。

 只人ならともかく魔族ならば長い時間をかけて研鑽を積むべきだ」

「うぐぐ……貴方に言われると何も言い返せません…」

 

 ロキシーはコホンと咳払いして、俺に向き直った。

 

「ルディ。

 精一杯頑張ったつもりですが、わたしではあなたを教えるのに力不足でした」

「そんな事はありません。先生は色んなことを教えてくれました」

「そう言ってもらえると助かります……ああそうだ」

 

 ロキシーは、ローブの内側に手を入れると、ゴソゴソと中を探り、

 革紐についたペンダントを取り出した。

 緑の光沢を持つ金属でできていて、三つの槍が組み合わさったような形をしている。

 

「卒業祝いです。

 用意する時間が無かったので、これで我慢してください」

「これは……?」

「ミグルド族のお守りです。

 気難しい魔族と出会った時にこれを見せてわたしの名前を出せば、

 少しぐらいは融通してくれる……かもしれません」

「大切にしますね」

「かもですからね。あんまり過信してはいけませんよ。

 それに5歳の誕生日にキコエル様にもらった指輪を見せた方が効果的かもしれませんが…」

「フハハ、ルーデウスよ、もう会う機会も無いかもしれない師匠からの贈り物だ。

 俺が贈ったものよりも大事にするが良い」

「はは、どちらのも大切に持ち続けますよ」

 

 それから一言二言交わして、二人は旅立った。

 俺はいつしか泣いていた。

 

 二人から教えてもらった事を決して無駄にはしないと、そう心に誓い、俺は二人の背中が見えなくなるまで見送った。

 

 手元には、ロキシーにもらった杖とペンダント、首にはキコエルからもらった指輪。

 そして数々の知識だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 と、思ったら、

 数ヶ月前に盗んだロキシーの染み付きパンツが自室にありました。

 ご、ごめんなさい。

 

 

 

―――――

 

 

 

「ふむ、そろそろ村から充分に離れたし別れるとするか」

「貴方ともお別れですか。

 幼少期以来でしたね、こんなに長く一緒にいたのは」

「ああ、そうだな。

 ロキシーはこれからどうするんだ?」

「……私は、貴方がパウロさんに語っていた迷宮の話に興味を持ったので迷宮探索にでも行こうかと思います。

 落ち着いたらまた家庭教師の仕事を受けてもいいかもしれませんね。

 貴方はどうするのですか?」

「俺は…一度魔大陸に戻るか、ラノア王国の住処に戻るか…飛びながら考えるさ。

 …そうだ、一つ忠告しといてやろう」

「忠告…ですか?」

「ああ。

 今回教えたルーデウスはな、生徒としては異常な存在だと思っておけ。

 一を知って十を理解するようなのはかなり特殊な部類だとな。

 他の生徒になる人間にルーデウスと同じような才能を求めてはいけない」

「…そ、れは、わかってます。

 私だってルディの才能には驚きましたし」

「ならいい。

 俺はそろそろ行く。

 元気でなロキシー。

 『飛翔』」

「ええ、また会いましょう。

 あ、姉さんによろしくお願いします」

 

 そうして俺達は別れた。

 

 次に会うのは…いつになるだろうな。

 まあなるようになるだろう。

 どこへ向かうか思案しながら、俺は空を駆けた。


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