グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~ 作:じゃすてぃすり~ぐ
まずはプロローグですがどうぞ。
序章~出会い~
序章~出会い~
ヘスティアがその少年を見たのは偶然であった。
バイトの帰り、疲れた体を休めようと教会へ帰路へと急いでいた時である。
ふと、一人の少年と擦れ違った。
白い髪に赤い目をした兎のような少年である。
少年はゆったりとしたジーンズのズボンに綿のシャツを着ていた。洗いざらしの生成りのシャツである。
その上に、革のジャンパーを無造作に引っ掛けている。
元は鮮やかな赤いジャンパーだったようだが、長い間着続けているのであろう、色が褪せてしまい、全体が赤茶色に変色してしまっていた。
ヘスティアは何故だか知らないが無性にその少年が気になっていた。
何故なのか分からない。
だが、どういう訳か少年の後をつけてみたくなったのだ。
こっそりと少年の後をつけたのであった。
―それから暫くして・・・。
ヘスティアが、少年をつけてやってきたのは繁華街であった。
迷宮都市オラリオのメインストリート。
夜であっても魔石灯の光によって周囲に様々な原色の光を映し出している。
ヘスティアと少年が歩いているのは人通りの多い道であった。
ふと、少年が路地裏へと入る。
―何で路地裏に?
首をかしげるヘスティアだが、次の瞬間、
「このガキッ!」
怒号が聞こえた。何事かと思い、路地裏を覗く。
すると、先ほどの少年が男3人にからまれていた。
3人ともモヒカンヘアーの世紀末感バリバリの格好である。
「どうするよ、この装備。おろしたてなのに台無しだぜ」
口ぶりからして冒険者であろう男の一人が、泥の付着した装備を指差しながら少年に凄む。
どうやら、ぶつかるか何かして男の装備が汚れたようである。
「だから、こうして謝ってるじゃないですか」
「謝って済めば、警察はいらねぇぜ。ボウズ、5万ヴァリスだ。そんだけ置いて帰んな」
声音を変えながら男は少年にそう言った。
明らかなカツアゲ行為である。
対する少年はと言うと、怯えるどころか笑みを浮かべながら言い放った。
「すいませんねぇ、僕ァあんた等チンピラに払う金なんか1ヴァリスも持ってないんですよ」
「ンだとテメェ!!!」
少年の言葉に男の一人が激昂して掴みかかった。
殴りかかる気だ。
ヘスティアは思わず止めろ!と叫び止めようと飛び出そうとした。
そのときである。
「~~~~~~~~ッッ!!!?」
一瞬で決着がついた。
少年に掴みかかった男が苦しそうにのたうち回っている。
彼を掴んだ右腕を左手で押さえながら口をパクパクとさせている。泡が口の両脇からだらしなく溢れていた。
男は叫ぶべき言葉を口から吐き出す事が出来ずにそれを飲み込んでいるのである。
「ボヒュッ!」
一瞬、男の口から呼気が漏れた。そして次の瞬間。
「いィィィィィィィィィィッッ~~~~!!!」
甲高い声であった。通常の「い」の発音よりも数オクターブ高い声であった。
「腕の骨が折れた位で大騒ぎしちゃってまぁ」
そんな男を見下ろしながら少年は呟く。
少年の言ったとおり、男の右腕は折れていたのだ。
あの時、男が少年に掴みかかった瞬間―。
男がしたことは少年の胸倉を掴む、それだけだった。
少年の襟を掴み自分に引き寄せようとしたその瞬間、男の体がストンと地面に落ちたのだ。
少年は襟を掴まれた瞬間、重心を前に倒したのであった。その動きだけで、男の右腕は逆間接に取られ、ひざまづいたのである。
右腕だけが少年の襟を掴んだまま、真っ直ぐ棒のように天を向いていた。
そして、少年は襟を掴まれた状態のまま、一気に体重を前方に落としたのであった。
その刹那―
めち めち めち
肘の靭帯が逆の方向へ伸ばされ、断ち切られる音が響いたのであった。
(す・・・凄い・・・)
それを一部始終見ていたヘスティアは胸中で感嘆の声を上げる。
「このガキィ・・・ッッ!」
仲間をやられ激昂したもう一人の男が懐からあるものを取り出した。
ボウガンである。
だが、少年はボウガンを突きつけられてもまだ、笑みを浮かべたままであった。
「悪いね、ボウガン突きつけられた位でおたつくタマじゃないんだ」
少年の一言にボウガンを持った男の目の奥に凶暴なものが宿った。
それを少年に向かって構える。
同時に、少年が動いた。
拳が届く距離ではないのに右手を大きく振りかぶる。
色褪せたオープンフィンガーグローブをはめた右手であった。
―一体何をする気なんだ?
ヘスティアは止めに入るのも忘れ、少年の行動に釘付けになっていた。
右手が光り輝いていたのだ。
それはまるで宝石のように。
「―パワーウェイブ」
少年がそう言うと同時に、輝く拳を地面に叩きつける。
その時不思議な事が起こった。
光がまるで波のように、ボウガンを持つ男の下へと向かう。
それはボウガンの引き金を引くよりも早かった。
―ズアッ!?
「ッッ!!?」
光が男を飲み込み爆発する。
爆炎から男がボロ雑巾のように吹っ飛ばされ仰向けに転がった。
「トゥラァッッ!!!」
追撃する様に少年が飛び上がり、男の胸板に蹴りを叩き込んだ。
ごしゃっ。ともずごっととれる音が裏路地に響いた。
少年が全体重をかけて男の胸板を踏み抜いた音であった。
男はそのまま動かなくなる。
「武器を持ってる奴には手加減は苦手なんだ」
動かなくなった男を見下ろしながらそう言うと、残りの男に向かって声をかける。
「んで?アンタはどうするんだい?さっきの奴みたいにボウガンでも持ってくるかい?それとも、刃物でも使うかい?」
「こ、こ、こ」
残りの男は青ざめた表情で何かを言いかけたが、何を言いたいのかは分からない。
「僕としてはどっちでもいいんだけど、もし武器を持って闘るんだったら目ん玉抉られる覚悟はしておかないとね」
怖い事を言いながら、少年は満面の笑みをへばりつかせて男に歩み寄る。しかし、その表情も一瞬にして鬼の表情に変化しそうであった。
「両方の眼球だよ」
少年がそう囁いた時には、既に二人の距離は拳を伸ばせば届く間合いに居た。
「ひ・・・ひィィィィィィィィィィィィッッ!!!」
叫び声を上げながら男は数歩後ずさり、背後へ全力で逃げ出した。
脱兎―。
まさしく追い詰められた獲物となったその男は、一目散に逃げ出したのであった。
男の背中を追わずに、少年はただ見ているだけであった。
「さて、と・・・そこで何をやってるんですか?」
「き、気づいていたのかい?」
物影に隠れていたヘスティアに声をかける。
対するヘスティアはひょっこりと顔を出しながら少年に言った。
「ええ、貴方とすれ違った辺りからですかね」
「さ、最初からか・・・」
少年の言葉に、自分の尾行スキルの無さに肩を落とす。
「すれ違ったとき、何でか知らないけどつけてみたくなったんだ。・・・流石に、キミがあの3人にからまれた時は神威使って止めようと思ったけど、いらぬお世話だったみたいだね」
「い、いやァ~助けるタイミング潰しちゃってスイマセン」
互いに苦笑いをするヘスティアと少年。
ふと、これはチャンスだと思いヘスティアは口を開いた。
「そういや名乗ってなかったね。ボクはヘスティア、神をやってるよ。君は?」
「ベル、ベル・クラネル。
こうして、一人の『神』と一人の『
―漢と生まれたからには誰でも一生の内一度は夢見る『英雄』・・・そして『地上最強の漢』。
―この物語は『地上最強の英雄』を目指す
グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~
開 幕 ッ ッ ! ! !