グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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今回は、ケンガンアシュラから一人。餓狼伝説から一人登場しますッッ!

その内の一人はサブタイトルに関係する人物です。
それではどうぞ!


Round10~嵐を呼ぶ男~

 

「ふぅ・・・」

 

 豊穣の女主人でのベートとの立ち合いから何日か後、ベルは元気にダンジョンに潜っていた。

 とは言っても無傷ではなく顔のあっちこっちに絆創膏を貼ってはいるが・・・。

 ちなみに、ダンジョンに行く際、エイナに驚かれ心配されたのは言うまでもない。

 

「しゅっ!」

『ゲゴッ!?』

 

 カエル型のモンスター『フロッグシューター』の舌攻撃をかわし裏拳で沈める。

 

『ギシャアッ!』

「おっと」

 

 影のような『ウォーシャドウ』が爪を振るいベルを襲うがそれを紙一重で回避する。

 続けて攻撃を叩き込もうとした次の瞬間である。

 

「クラックシュートォッッ!!!」

『~~~ッッ!!?』

 

 一瞬の隙をついて放った、軽く飛び上がって放つ空中踵落としがウォーシャドウの頭にある弱点の宝石に直撃する。

 ウォーシャドウもまたフロッグシューターと同じ運命をたどった。

 

「さて、と・・・6階層(ここ)のモンスターはあらかた戦ったかな」

 

 魔石を回収しつつベルは呟く。

 6階層のモンスターは『初心者殺し』と呼ばれるものが多く出没しており、1~5階層に慣れてきた駆け出しの冒険者にとっては脅威である。

 先ほど倒したウォーシャドウも初心者殺しのモンスターである。

 ベルもここに来た当初は少し苦労はしたものの、今では軽くあしらえるようになっていた。

 

「そろそろ、エイナさんに下層に行ける様に頼んでみようかな・・・。う~ん、でも了承してくれるかなァ・・・」

 

 魔石をポーチに入れながら考え込むベル。

 暫く考えた後・・・、

 

「まぁ、イザとなったらステータスを教えるかァ。ステータスを見せれば納得すると思うし」

 

 そうあっけらかんと答えダンジョンを後にするのであった。

 

 

―ところ変わって・・・。

 

 カコン。と遠くの庭でししおどしが傾く音が聞こえる。

 極東によくある和風の屋敷であった。

 トクガワ・光成の屋敷である。

 その一室で光成はキセルをふかしていた。誰かを待っているようである。

 ふと、ふすまが開く。

 

「失礼します、御老公」

 

 黒服の男である。光成の配下だ。

 

「ガオラン様がお出でになられました」

「オオ、そうか!すぐに通しなさい」

 

 黒服の言葉に光成は目を輝かせながらそう言った。

 一礼をした後、黒服は去った。

 入れ違いに、褐色肌の男が入ってくる。

 スーツ越しではあるが、鍛えられている肉体を持つ男であった。

 

「お久しぶりです、御老公」

「元気にしとったか、ガオラン」

 

 会釈しながら光成に言う男・・・ガオランに、光成は満面の笑みで返した。

 

 この男の名はガオラン・ウォンサワット。

 『闘神』の二つ名を持つ冒険者であり、元ナックモエ(ムエタイの選手)であり現役プロボクサーである。

 そして、彼もまた独歩同様に地下闘技場で戦ったことのある格闘士であった。

 

「それで、今回はどういったご用件で?」

「ウム、地下闘技場の件についてじゃ」

「チャンピオン・・・、ベル・クラネルの事についてですね?」

 

 ガオランの言葉に、光成は左様。といいながら続ける。

 

「今度行うメインイベントにベルとヒガシ・丈・・・『ハリケーンアッパーのジョー』をぶつけたいとおもっとるんじゃよ」

「ジョーを、ですか?」

「うむ、そうじゃ」

 

 無邪気な笑顔で光成は答えた。

 

 ヒガシ・丈。

 名前から分かる通り、極東出身のムエタイ最年少王者である。

 ムエタイに転向する前は、ボクシングをやっており少年ボクシング大会でも4連覇を成し遂げている。

 その後、ムエタイへと転向。最年少で王者に上り詰めたのだ。

 『ハリケーンアッパーのジョー』の異名の由来は彼のフィニッシュブロー、『ハリケーンアッパー』から来ている。

 

「お言葉ですが御老公、何故ジョーをベル・クラネルの対戦相手に?ジョーは確かにムエタイ王者ですが日が浅い、ベテランのムエタイ王者はいる筈ですが・・・」

「普通のムエタイ使いではベルの相手にはならんからのぅ。・・・それに、ジョーはおぬしが直々に指導をした弟子じゃ」

 

 キセルの中にある吸殻を灰皿に落としながら続ける。

 

「ムエタイとボクシングを学び打撃を極めたお主の拳・・・それを受け継いだジョーならばベルといい試合をする。ワシはそう思ったんじゃよ」

 

 ジョーの強さの秘密。ムエタイとボクシング・・・、その二つを極めたガオランの拳。それを直々に教えられた事によるものであった。

 現代ムエタイの弱点。それは、パンチを軽視する傾向である。それを克服する為、ボクシングに転向したのである。

 ジョーは、ガオラン譲りのパンチ重視の戦い方で順調に勝ちを進め、そして最年少の王者となったのであった。

 光成の言葉にガオランは暫く黙った後、口を開いた。

 

「そこまで知っていたとは・・・、流石はミスター・トクガワだ。わかりました、この話を受け入れましょう」

「オオ!受けてくれるんじゃな」

「ええ、丁度ジョーの奴も『ムエタイのリングじゃ燃えねぇぜ!』と言ってましたから」

「そうかァ~。いやァ~、楽しみじゃあ。これは凄い試合になりそうじゃぞ」

 

 楽しみでしょうがないと言った風に光成はそう言った。

 

―そして、話は元に戻りベルはと言うと・・・。

 

「もっと下層に行きたいィィィ~~~~~~ッッ!?ダメに決まってるでしょッッ!!!レベル2になったと言ってもまだまだ駆け出しなんだから、ダンジョンを舐めてると本当に死んじゃうよッ!」

 

 ギルドにて、エイナからお説教を受けていた。

 理由はいわずとも分かるだろう。もっと下に行きたいとエイナに言ったからである。

 

(あ~・・・、やっぱこうなっちゃったかァ・・・)

 

 エイナの説教を受けながら、ベルは胸中で呟いた。

 下層に行ける様に頼もうと決めた時から覚悟はしていたが、真逆コレほどまでに凄まじいとは思っても見なかった。

 顔を真っ赤にして凄まじい剣幕である。

 口で説得を試みたものの、結果はご覧の通りだ。全く聞き入れて貰えない。

 

(―そういや、地下闘技場の試合の日って一週間後だっけか。その日にエイナさんを連れてこよう、そこで実力を見せれば納得するはず・・・)

 

―ピリリリリ、ピリリリリ。

 

 そう考えていた直後、電話が鳴る。

 携帯を見ると『トクガワさん』と表示されていた。

 光成からである。

 

「(トクガワさんから?ひょっとして、次の対戦相手の事かな?)あ、すいませんエイナさん。ちょっと席外しますね」

「え?ちょっとベル君、話はまだ・・・」

 

 ベルはエイナに一言断ると、少し離れた位置に移動し通話する。

 

「どうしたんですか?」

『おお、ベルか。実はの・・・』

「次の試合の対戦相手の事ですか?」

『そうじゃ。良くワカったのォ』

 

 電話越しに驚いたような光成の声である。

 

「何となくそんな気がしたんです。で、対戦相手は一体誰ですか?」

『聞いて驚け、今回お主が戦う相手はの・・・ヒガシ・丈じゃ』

「ひ、ヒガシ・丈って・・・まさか『ハリケーンアッパーのジョー』ですかッッ!!?」

 

 思わず大きな声が出てしまった。

 一斉に注目されたので、周りにすいませんと謝り再び光成と話す。

 

「それ、本当ですか?」

『ホントもホントじゃ。ひょっとして怖気づいたかの?ベルちゃん』

 

 光成の言葉にまさか。と笑って返す。

 

「願ってもないことですよ。是非とも戦ってみたかった」

 

 ベルはそう言って笑った。

 餓狼の笑みである。

 たまらぬ笑みであった。 

 

『そうかそうか。ジョーを対戦相手にして良かったワイ』

「あ、そうだ。僕の方もお願いがあるんですけどいいですか?」

『なんじゃ?』

「エイナさんを地下闘技場に連れて行きたいと思うんですが、いいですかね?」

『エイナと言うと、おぬしのアドバイザーじゃったか?まぁ、構わんが』

「そうですか、ありがとうございます」

『おう、そうか。試合、楽しみに待っとるぞ~』

「はい」

 

 通話を打ち切る。

 そして、エイナの元に戻った。

 

「ベル君、誰から電話だったの?」

「アハハ、お世話になってるお爺さんからです。それよりもエイナさん」

 

 エイナの問いに苦笑しながら答える。

 そして、改めてエイナの目を見て言った。

 

「一週間後空いてますか?」

「空いてるけど、どうしたの、藪から棒に」

「エイナさんをある場所に連れて行こうと思います」

「ある場所?」

 

 目を瞬かせ問うエイナにベルはそう告げる。

 益々訳が分からなくなったエイナは頭に『?』を浮かべて首をかしげる。

 

「まぁ、所謂おとぎの国みたいなものです」

 

 そんなエイナに苦笑しながら、ベルは言う。

 そして、真顔になって続けた。

 

「そこで、僕の強さを知っていただきたい。僕が下の層でも戦えるって事を」

「・・・ッ!」

 

 いつになく真剣な表情で言うベルにエイナは言葉を失った。

 却下しよう思ったが、ベルの決意の篭った真剣な眼差しを見てそれを改める。

 

「分かったわ。その『おとぎの国』と言う所に連れてってもらうわよ」

「ありがとうございます。僕が、『そこ』に連れて行くのはエイナさんがその事を口外しないと信頼してるからです。『そこ』はちょっと特殊ですから・・・」

 

 信頼してる。それを聞いたエイナは少し顔を綻ばせると、すぐ真剣な表情となる。

 

「そこで見るものは誰にも他言しないって約束するよ。もしそれが明るみになるような事になれば、私はキミに絶対服従を誓う」

「ふ、服従ってそこまでしなくても・・・」

「それ相応の責任は取るって事だよ」

 

 まぁ、そんなこんなで試合当日エイナを連れて行くと言う事で話は纏まったのであった。

 

―オラリオの入り口にて・・・。

 

「ここが、オラリオか・・・」

 

 男が立っていた。

 奇抜な男であった。

 逆立った髪に日の丸のハチマキをした日焼けした肌の男であった。

 全身は黒いマントで覆われている。

 

「オッシャー!このヒガシ・丈様がこのオラリオにジョー伝説を打ち立ててやるぜッッ!!!」

 

 両腕を上げて凄まじい声で吼える。

 はだけたマントから鍛え上げられたたくましい肉体が露になった。

 早い話がパンツ(ちなみにトランクスタイプ)一丁である。

 通報不可避な格好であった。

 

 この男がヒガシ・丈。

 ベルと戦う男である。

 

 

 続 く ッ ッ ! ! !




ではでは、今回登場したお二人の解説をば・・・。

 ガオラン・ウォンサワット(ケンガンアシュラ)
 この作品で初めて出したのケンガンキャラです。(名前だけでニ虎さんが登場してますので、それを含めると2人目ですが)
 本作ではジョーの師匠となっており、オリジナルの必殺ブローも用意してますがそれは後々紹介したいと思っております。

 ヒガシ・丈こと、ジョー・東(餓狼伝説)
 餓狼伝説の主人公の一人、ジョー・東満を辞して登場ッッ!!!とは言っても、最後らへんでちょびっと登場ですが・・・。
 次回から活躍させたいと思っておりますのでご容赦を・・・。

 それでは次回もお楽しみに。

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