グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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お待たせしました。
今回の話を書くのと並行的に、新しい小説のプロットを書いていたり、ドルフロやアズレンをやっていたりしたら遅くなりました(土下座)
今回の戦いは前後編でお送りします。
それではどうぞ!


Round15~切り裂き理人・前編~

―ドォン!ドォン!

 

 太鼓の音が鳴り響く。

 野太い太鼓の音であった。

 それを聞きながらベートは目を瞑り、深く深呼吸をした。

 それだけで、雑音は消え去り心が研ぎ澄まされていく。

 

―これが、ベルの奴が相手ならどんなにいい事か・・・。

 

 深呼吸しながらそんな事を考える。

 相手は、理人と呼ばれる地下闘技場の選手である。

 これは光成によって組まれた試合であった。

 

―ベルと戦いたければ勝ち続けい。

 

 ベートは光成の言葉を思い出していた。

 いいだろう。

 だったら勝ち続けてやる。

 そして、いつかベルと戦って勝つッッ!

 目を開き、リングへと向かう。

 

『青龍の方角ッ!あの凶狼が地下闘技場に殴りこみだァッッ!ロキ・ファミリア、ベート・ローガッッ!!!』

 

―ワアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 歓声を一斉に浴びながら、ベートはリングインした。

 

―その頃、観客席では。

 

「オッ?やってるねィ」

 

 声がした。

 太い声であった。

 ヘスティアとエイナがその声の方へ振り向くと、太いスキンヘッドの男と狐目の平坦(何処がって言うのは皆さんのご想像にお任せする)な女性がいた。

 独歩とロキである。

 

「オロチさんに、神ロキ!?」

「やぁ、独歩君についでにロキじゃないか。ヴァレン某の試合はもう終わっちゃったぜ」

 

 大物の登場に目を丸くするエイナを他所にヘスティアは、2人にそう言った。

 

「あちゃー・・・、アイズたんの試合終わってもうたかー。でもまぁ、ベートの試合もあるしええか」

「ベートって言うと、あの時『豊穣の女主人』でベル君と立ち会ったアイツかい?アイツも出るのか?」

 

 残念そうに言うロキにヘスティアはそう言った。

 ええ。と独歩がロキの代わりに答えた。

 

「ベートの奴もデビュー戦です。これに勝って一気にベルの所に上り詰めてやるって張り切ってましたよ」

「だけど、そう簡単に行くかしらね?」

 

 独歩ともロキとも違う声が聞こえた。

 反射的にヘスティア達、会話をしていた全員が声の方を振り向く。

 そこには、右目を眼帯で覆った赤い髪の女性が立っていた。

 

「「(神)ヘファイストス!?」」

 

 ヘファイストスであった。

 エイナ、ヘスティアが異句同音に叫ぶ。

 

「ファイたんがここに居るって事は今回のベートの相手は『超人』って事かいな?」

「超人・・・?と言うと、あのヘファイストスファミリア期待のルーキー『切り裂き理人(リヒト・ザ・リッパー)』・・・ッ」

 

 ロキの言葉に、独歩が反応する。

 ええ。とヘファイストスが頷き、続けた。

 

「理人には『アレ』がある。いくら、かの凶狼とは言え分が悪いんじゃないかしら?」

「ベートだってチャンピオンに勝つために血のションベン流して頑張ってきたんや。超人相手に遅れはとらへんで」

 

 ふふふふふ。と静かに火花を散らすロキとヘファイストス。

 その時である。

 

―ドォン!ドォン!

 

 太鼓が鳴った。どうやらその理人と言う男がリングインするらしい。

 

『続きまして、白虎の方角ッッ!今宵もやってきたぜ、ヘファイストス・ファミリアのスーパールーキー!『超人』・理人の登場だァァァァァッッ!!!』

「オッシャアッ!」

 

 裂帛した気合と共に入って来たのはふてぶてしい表情を浮かべた短い金髪の男であった。

 鍛え抜かれた肉体である、相対した者を根こそぎ喰らい尽くすようなそんな威圧感のある肉体だ。

 たまらぬ肉体であった。

 

 一方のエイナは・・・、

 

「私って夢でも見てるのかな・・・?」

 

 余りに現実離れした光景に半ば放心状態に陥っていた。

 

―そして、視点を元に戻しリング。

 

「武器の使用以外全てを認めます!」

 

 両者がにらみ合うなか、審判がルールの説明をしていた。

 ベートは無表情、理人はふてぶてしい笑顔のままだ。

 

「へぇ、アンタが俺の対戦相手かい?」

「おう、理人ってんだ。ま、本名は他にあるんだがそれはオフレコでヨロシク♪」

 

 ベートの問いにふてぶてしいまでの笑顔で男、理人は答えた。

 

「だけどまぁ、アンタも運がねぇな。俺に当たっちまうなんてよ」

「ほう」

「俺は強いぜ。今のうちに脱退届け書いとけよ?下手すりゃ冒険者引退って事になっちまうかもしれねぇからな」

 

 理人は笑顔のまま、ベートに返す。ふてぶてしいまでの笑顔であった。

 対する、ベートも笑顔であった。そして、そのまま理人に返す。

 

「そのセリフ、そのまま返すぜ。それに俺より強いだと?寝言ぬかしてんじゃねーぞ」

 

 鬼のような笑顔でそう言った。

 たまらぬ笑みであった。

 

―ぐにゃあ・・・。

 

 二人の殺気により、周りの空気が歪む。

 

「ハハッ、さすがは凶狼と呼ばれるだけあるな。いい試合になりそうだぜ」

「両者、元の位置へ!」

 

 理人がふてぶてしい笑顔を崩さず、そう言うと同時に審判が指示を飛ばす。

 離れる両者。

 そして、同時に構えた。

 ベートは、スタンダードな空手の構え。理人は腰を深く落としたレスリングの構えである。

 

―ドォン!

 

「始めィッッ!!!」

 

 太鼓がなった。

 それでも、両者は動かない。

 だが、始まっているのである。

 それはまるで一太刀で勝負がつく剣豪同士の立ち合いであった。

 

 

「二人とも、あのまま動かない・・・。いや、動かないんじゃなくて動けないのか」

 

 観客席にてピクリともしないベートと理人を見ながらヘスティアが言う。

 

「正解やドチビ。互いに隙をうかがっとるようやけど・・・どっちが動くんや?」

 

 ヘスティアにそう返しながらロキがそう言った。その時である。

 

「今、動くようだぜィ」

 

 独歩がそう言ったと同時に両者が弾かれるように動き出した。

 

 先に動いたのはベートであった。

 

「しゅっ!」

 

 右ストレートを理人の顔面目掛けて放つ。

 対する理人はそれを避けようとせずに突っ込んだ。

 

―めちっ。

 

 当たり前のように右ストレートは顔面にめり込み、鼻の軟骨がつぶれる音がした。

 

「痛ェな、コラ」

 

 だが、怯むどころかふてぶてしい笑みを浮かべながら右の拳で殴りかかる。

 それをガードする。

 続けて左の拳。

 スウェーで回避し、フックを放つ。

 理人が防ぐ。

 叩く、防ぐ、蹴る、避ける。打つ、避ける。

 どちらも一歩も譲らぬ乱打戦であった。

 暫く打ち合ううち試合が大きく変化した。

 理人がベートに向けて廻し蹴りをしたときであった。

 それをベートが飛び上がって回避し、そのまま廻し蹴りを放った。

 それが顎に当たり、理人がよろける。

 その隙を見逃さず顔面に膝蹴りを叩き込む。鼻血を噴出し、理人が倒れた。

 追い討ちをかけるように、マウントを取る。

 そして、そのまま拳を叩き付けた。

 叩いた。

 叩いた。

 叩きぬいた。

 理人の顔面は血に塗れ、真っ赤に染まっていた。

 目からは生気が抜けている。

 

「どうした?終わっちまうぜ、このままだと」

 

 ベートはそう理人に言いながら拳を振り下ろす。

 刹那―。

 

―ざしゅっ!

 

 音がした。

 肉が切れる音であった。

 同時に、ベートの右腕に痛みが走る。

 理人から離れて腕を見やると、右腕に赤い線が5本ほど走っていた。

 そこからとめどなく血が溢れている。

 

―何だァ・・・!?

 

 予想外な攻撃にベートは驚愕を隠せない。

 そんなベートを尻目に、目から生気を取り戻した理人が立ち上がり不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ド突き合いじゃあ負けるけどよ、削りあいなら負ける気がしねぇ。散々ド突いてくれた礼だ、ズタズタに切り刻んでやらァ!」

 

 そう言って、ベートに向かって右腕を振るう。

 ベートは傷を負っていない左腕で防いだ。

 

―ざしゅ!

 

 また、音がした。

 ベートは左腕を見やる。

 そこにもまた赤い線が5本ほど走っていた。

 鮮血が迸る。

 

「出たァ!レイザーズ・エッジだッッ!」

「ヒヤヒヤさせやがるぜ、理人のヤロウ!」

「いけすかねぇ凶狼の鼻っ面をへし折ってやれッッ!!」

 

 観客席にて、歓声が上がる。

 熱狂的な歓声であった。

 そんな中、ヘスティアとエイナが驚きの声を上げる。

 

「なんだ、あれ!?」

「指に風か斬撃の魔法を付与(エンチャント)しているの?」

 

 そんなエイナの疑問をヘファイストスは一蹴する。

 

「違うわ、理人に魔法の才など無いもの」

「えっ!?じゃあ、何であんなふうになってるんですか!?」

 

 ヘファイストスの言葉にエイナは声を上げた。

 そんなエイナに、ヘファイストスは静かに告げた。

 

「簡単なことよ、アレはね・・・ただの単純な『指先だけの力』で凶狼の肉を削ぎ落としたのよ」

 

―人間の握力は大きく3つに分類される。

 一つは握りつぶす力、『クラッシュ力』

 一つは物を保持する力、『ホールド力』

 そして、指先の力、『ピンチ力』である。

 

 ベートと対峙している理人、彼のピンチ力は人の領域を大きく超えている。

 身一つでロッククライミングすることなど、彼にとっては散歩するようなものである。

 まさに、超人である。

 

 そんな超人的な力を攻撃に使用したら、どうなるか?

 想像に難しくない。

 彼の指先が触れた部位は急所となる。

 肉と言わず、骨と言わず悉く削がれてしまうのだから。

 正に剃刀の如し。

 

「それが理人の力。彼はこれを『こそぎ落とす十指(レイザーズ・エッジ)』と言ってるわ」

「「~~~~~~ッッ!?」」

 

 ヘファイストスの説明に、ヘスティアとエイナは驚きのあまり声が出なかった。

 その傍らで独歩は険しい表情でベートを見ていた。

 

「さぁて、どう出るベートよぅ」

 

 そう、静かに呟いたのであった。

 

―カミソリを制する策はあるのか・・・ッッ!?

 

 

 続 く ッ ッ ! ! !




 何か、書いていてなんだけどベートがケンガン主人公の王馬さんになってきてるような気がする・・・。カッコイイからいいけどね(ぇ
 さて、今回登場した理人の紹介をしたいと思います。

 理人(本名はネタバレの為伏せます。ケンガンファンならワカるかも)

登場作品『ケンガンアシュラ』

概要:ケンガンアシュラ本編にて主人公、十鬼蛇王馬が拳願試合で戦った闘技者。
 王馬戦後、拳願絶命トーナメントに出場している。結構いいキャラで、作者が好きなケンガンキャラの一人である。
本作では、ヘファイストスファミリアに所属している。勿論、今後もベルやベートたちと絡ませる予定です。

次回、後編。その後、ベルVSジョーをやってから怪物祭に入りたいと思います。
次回もお楽しみに~。

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