グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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ベルVSジョー決着ッッ!!!
勝つのはどっちだッッ!!?


Round18~「またやろうぜ!」~

「トゥラァ!」

 

 ベルの拳がジョーの頬に突き刺さる。

 

「ぐっ・・・オラァッッ!」

 

 よろけながらも、ジョーはベルのわき腹を目掛けて左でミドルキックを放った。

 

「ぐぬぅ!」

 

 ベルはそれをガードするが、そんな事などお構い無しにジョーは振りぬいた。

 吹っ飛ぶも、ベルは受身を取る。

 

「ハハッ!楽しいなぁ、ベルよォッッ!!!」

 

 ジョーはそう叫びながら、ベルへと向かっていく。

 そして、拳をぶつけ合う。

 

―そういや、こんなに楽しいケンカをしたのは何年ぶりだろうか?

 

 ベルとの激しい拳の応酬を繰り広げながら、ジョーはそう思っていた。

 

 ジョーこと、ヒガシ・丈は極東の都市『大阪』の医者の三男坊として生まれた。

 裕福な家庭ではあるが、上の兄達のように明晰な頭脳を両親から受け継いではいなかった。

 怠ったのか、それとも生まれつきなのか。

 とにかく、同じように育てられた同じ血を分けた兄弟たちの中で彼だけが異端であったのは間違いない。

 

 それゆえに、ジョーは周囲から『落ちこぼれ』の烙印を押され、蔑みの眼で見られていた。

 本来なら守るべき立場であるはずの両親や兄弟でさえも、そんな眼でジョーを見ていた。

 左利きであることすらも、蔑みの対象とされていた。

 そんな視線の中で彼は育っていき、自然と捻くれた性格となった。

 ギラギラと野犬のように眼を滾らせ、誰彼構わずケンカを吹っかけては、殴って、殴られ、殴り倒して、常に満たされない思いを拳にぶつけていた。

 それによって家族からの蔑みの視線は深いものとなっていく。

 それでも、ジョーは闘うことをやめなかった。

 この拳しかなかったからだ。

 闘う事でしか生きることが出来なかったからだ。

 

 そんなジョーに理解を示していたのは彼と同じくヒガシ家で才を持たなかった祖母であった。

 才を持たぬ代わりに明るく温かい心を持っていた。

 彼女がいなければ今のジョーの性格は無かっただろう。

 ジョーの才がケンカであるのならば彼女は豪快に笑って受け止めていた。対してジョーも、彼女の前では歳相応の子供となっていた。

 

 しかし、両親との確執は成長するごとに強くなっていった。

 彼の勉強の不出来は年々明確に露呈し、そして育ち続ける成長期の腕力は、何人もの怪我人を生んだ。

 

 両親との口論の末、ついに彼は家を出る。

 ヒガシ・丈、13才の時の出来事である。

 

 当然、泊まる場所も食べ物を買う金も無い。当ても無く彷徨い続け、空腹が限界に達し食糧を奪うべく通行人を襲い、返り討ちにあった。

 その通行人は神の恩恵を授かった『冒険者』だったのだ。

 

「ふむ、チンピラにしてはパンチは中々いい。磨けば光る逸材やもしれんな」

 

 その冒険者の男は打ちのめされ倒れ伏したジョーを見下ろしながら、そう評価した。

 

「小僧、名をなんと言う?」

「ジ、ジョー・・・。ヒガシ・丈・・・だ・・・」

 

 男の問いに、晴れ上がった口をモゴモゴさせ、ジョーは名乗る。それを聞いた、男はジョーか。と呟いた後、こう言った。

 

「俺はガオラン、ガオラン・ウォンサワットだ。ジョー、ボクシングをやってみる気はないか?」

 

 これが、ジョーの師であるガオラン・ウォンサワットとの出会いである。

 ガオランの申し出に、ジョーは二つ返事で承諾した。

 そして、なし崩し的にジョーはガオランが所属しているボクシングジムのジム生となる。

 試合で闘って、勝てば蔑みではなく、歓声が受けられる。

 いや、負けたって、引き分けだって、魂の底から燃えられる。ジョーにはそれが楽しくて仕方が無かった。

 

 リングの上には、全てを削られ、失っていくことを理解しながらも、それでも拳を振るうしかなかった恨みのケンカとはまるで違った高揚感があった。

 ヒガシ・丈にはそれが全てだった。燃えるケンカが、彼の全てだった。

 

 やがて小さな大会から、やや大きな大会まで彼が立て続けに制すると、周囲や家族の目も変わっていった。

 何を今更と以前の彼ならば思ったかも知れないが、今の彼はそれが純粋に嬉しかった。

 祖母もそれを、とても喜んでくれた。

 

 ジョーの最大の武器は、かつていたたまれないケンカで磨き、ガオランとボクシングに出会って、やっと黄金の輝きを手にした、左のアッパーだった。

 蔑まれた左の拳が、今の彼の宝だった。

 

 試合で彼の左が放たれる度に、仲間や後輩達の期待の歓声が上がった。

 人の痛みの解る彼は、友達や仲間には他の誰よりも優しかった。

 

 ジョーはもう今までのようなケンカはしなかった。

 苛立ちをぶつけるだけの闘いは、その場の渇きは潤うかも知れないが、その代償に全てを失ってしまうことを、彼は痛烈に理解していた。

 

 だが、ある少年との出会いをきっかけにジョーはボクシングを辞め、師と同じ冒険者になる事を決意する。

 そのガオランとは違うファミリアの眷属である少年の変則的な蹴りで失神した彼は、少年をライバルと定め勝つためにシヴァ・ファミリアへと入り、ガオランから本格的にムエタイを学ぶ。

 その最中、ジョーは迷宮都市オラリオの存在を知る。

 多くの腕自慢が夢とロマンを求め集う町。

 そこに行けば、『アイツ』とも出会えるかもしれない。

 そんなジョーに、ガオランは条件を出した。それは、『ムエタイでチャンピオンになる事』

 その条件を、ジョーは快く受けた。

 すべてはあの少年に勝つために。

 そしてジョーは、ムエタイの王者となり更なる強敵を求め、オラリオへと向かうことになる。

 

 

―ジョーさん、楽しそうだな。

 

 ジョーの拳打をいなしながら、ベルは思う。

 足をふらつかせながらも楽しそうに笑みを浮かべながら拳を、蹴りを放つジョー。

 それはベルには眩しく見えた。

 

「ハリケェェェェェェェェン、アッパァーーーーーッッ!!!」

 

 ジョーの左の拳から風が巻き起こる。

 パワーウェイブにも劣らない衝撃波が、地面を擦りながらベルを吹き飛ばす。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!?」

 

―痛・・・。

 

 体中にナイフで切られたかのような傷をこさえながら、ベルは立ち上がる。

 

―やっぱり、闘う事が純粋に好きなんだな。

 

 楽しそうに笑みを浮かべるジョーはまるで宝石のように輝いて見えた。

 自分などその光に掻き消されてしまうほどに、ジョーは眩しかった。

 

「オォォォォォォアァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

 咆哮を上げ、地面を蹴った。

 右の拳に気が集まり輝く。ジョーが放つ光に負けぬ輝きであった。

 

「バァァァァァァァァン、ナックルッッ!!!」

 

 輝く拳がジョーの顔面を打ち抜いた。

 ジョーの体が大きく仰け反る。だが、ジョーの目は死んでいない。仰け反りながらも、確りとベルを見ていた。

 

「ッッラァ!」

 

 返す刀で、ジョーが左フックを放つ。

 それをベルは右腕でガードした。

 そしてそのままインファイトで殴りあう。

 拳が、蹴りがベルとジョーの間で飛び交う。

 その光景に、観客達は歓声を上げた。

 

―ジョーさん―

 

 ベルはジョーとインファイトで殴りあいながら胸中で呟く。

 

―アンタ凄いよ―。

 

 ベルの右アッパーとジョーの左ストレート。

 拳が互いの顔に迫る。 

 同時であった。

 

―だからこそ、負けられない。勝つのは―

 

「勝てェェェェェェェッッ!ベルくゥゥゥゥゥゥゥんッッ!!!」

 

―僕だ!!!

 

 ヘスティアの声援とベルの決意が拳のスピードを速める。

 そして、交錯。

 先に拳が入ったのは、ベルであった。

 ベルのアッパーがジョーの顎を打ち抜いていた。

 

―ぐらり。

 

 ジョーの体が揺らぎ、どう。と大の字になって倒れた。

 そして、そのまま動かない。

 

「勝負ありィッッ!!!」

 

 それを確認し、審判が声を上げる。

 激戦を制したのはベル・クラネルであった。

 

「ッッ!オォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!」

 

 歓声の中m地下闘技場に餓えた狼の勝利の雄たけびが響き渡っていた。

 

 

―30分後

 

「・・・ここは?」

 

 ジョーが目を開けると見知らぬ天井であった。

 

「おォ、目が覚めたかのォ」

 

 自分の顔を覗くように、医者がジョーをみながらそう言った。

 起き上がり、周りを見てみる。

 医務室であった。

 

「目が覚めたか、ジョー」

「・・・ガオラン」

 

 ドアを開け、ガオランが入ってくる。

 

「俺、負けちまったんだな?」

 

 しずかにジョーはガオランにそう問いかける。

 

「・・・ああ」

 

 頷く。

 そうか。とジョーは短く言うと、俯いた。

 しばらく、沈黙が辺りを支配する。

 

「かァ~~~~ッッ!負けちまったかァ、悔しいなァ!」

 

 大きな声が沈黙を打ち破る。

 ジョーであった。

 ジョーは大きな声で、顔を上げ、あっけらかんと笑いながらそう言った。

 負けたとしても、悔しがりはすれど『仕方ない』と割り切り、次へと切り替える。

 それが彼の性格であった。

 そんな彼を知っているガオランは、お前らしいな。といわんばかりに苦笑いをする。

 

「あ、そういやさ。ベルの奴はまだ闘技場にいるのかい?」

「チャンピオンなら、お前が目を覚ます3分前に治療終えて出て行ったぞい」

 

 ジョーの問いかけに、医者はそう答えた。

 それを聞き、分かった。と答えるとジョーは立ち上がる。

 

「ってことはまだこの闘技場を出てないって事だよなこうしちゃいられねぇ!ちょっくら行ってくる!」

「これこれ、まだ安静に・・・」

 

 医者の制止も聞かず、ジョーは勢いよく医務室を飛び出した。

 そんなジョーを見て、ガオランは苦笑交じりに微笑む。

 

「やはり、お前をオラリオに呼んだのは間違いじゃなかったな」

 

 そう笑みを浮かべながら呟いたのであった。

 

 

―控え室

 

「ここに居たか、ベル!」

「ジョーさん、どうしました?」

 

 ベルはもう普段着に着替えており、今から控え室を出ようとしていた。

 治療は終えているものの、顔中に絆創膏などが張られていた。

 

「酷い顔だな」

「ジョーさんだって」

 

 互いに絆創膏だらけの顔で笑いあう。

 

「いい勝負だったな」

「ええ、下手したら僕が負けてたかもしれません。・・・でも、いい勝負でした」

「なぁ、ベルよぅ」

 

 ジョーは飛びっきりの笑顔を浮かべこう言った。

 

「またやろうぜ!」

 

 そしてそのまま続ける。

 

「また、この闘技場でやろうぜ、とびっきりのケンカをよ。だから・・・、負けんじゃねぇぞ誰にも。勝ち続けろよ」

「ええ、勿論ですジョーさん」

 

 ベルもまた飛びっきりの笑顔でジョーに返したのであった。

 

―バベル最上階

 

「ああ、イイわ・・・たまらない」

 

 うっとりと、鏡に映された映像でベルの試合の一部始終を見ていたフレイヤはそう声を漏らした。

 切なげに、情欲に塗れた吐息をほぅ・・・。と吐くその姿は恋する乙女のようであった。

 彼女がベルを見たのはほんの偶然であった。

 偶然、ベルを目にした時、彼女はベルの魂に心を奪われたのである。

 

「そう言えば、もうすぐ『怪物祭』が始まるのよね・・・」

 

 そう呟き、何か思いついたのかにやり。と妖しげな笑みを浮かべる。

 

「ふふ・・・、いい事思いついちゃった。善は急げと言うし・・・トールに相談でもしてみようかしら?」

 

 そう言って、おもむろに携帯を取り出す。そしてちらりと鏡に映るベルの姿を見た。

 

「ベル・・・、もっと魅せて頂戴。アナタの輝きを・・・」

 

 妖しげな笑みを浮かべ、そう言うとトールに電話をかけたのであった・・・。

 

 

 つ づ く ッ ッ ! ! !




 今回は難産でした・・・。どう決着をつけるのかが思いつかなくて、こんな拙い感じになっちゃってすまない・・・すまない・・・(すまないさん)
 さて、次から怪物祭編!色んなキャラを続々出して行こうと思っております。勿論、あの『地上最強の生物』も・・・。
 次回もお楽しみに!それでは~。
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