グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~ 作:じゃすてぃすり~ぐ
それと、ちょっとばかりオリ設定があるので、苦手な方はご注意を。
それではどうぞ!
ジョーとの試合から1週間が経った。
あの試合を見たエイナは唖然としていたものの、ベルの強さを認め更に下層に行く事を許可した。
そして、ベルはその下層へと潜り、モンスターと戦い魔石を稼ぐ。
今日もまた・・・。
「ふっ!はっ!チェリャアッ!!!」
拳、蹴り、バーンナックル!それらがベルを取り囲んでいたモンスター『キラーアント』を砕き、蹴りちぎり、貫く。
それでも、キラーアントは怯まずに数にモノを言わせてベルに襲い掛かってきた。だが、
「パワーウェイブ・アラウンド!」
ベルはそれをものともせずに拳を地面に叩き付けた。その時である。
―ドワオッ!
衝撃波が吹き上がり、キラーアントを吹き飛ばした。甲殻の硬さと数の暴力で襲ってくることから『新米殺し』として恐れられているキラーアントではあるが、ベルにとってはこれ位など朝飯前であった。
そして、もう一人キラーアントを蹴散らしている男が一人。
「オラオラオラァ!何匹でもかかってきやがれ!」
ジョー・東である。
群がるキラーアントを拳で、蹴りで、踵で、膝で、肘で、粉砕する。
嵐の如き連撃であった。
「ベルよォ!お前、今何体ぶっ倒した?!」
疲れなど微塵も見せない様子で、キラーアントにハリケーンアッパーを放ちながらジョーはベルに聞く。
「僕は、今ので45匹ですかね」
近寄ってきたキラーアントの頭をクラックシュートで蹴り潰しながらジョーに返すベル。こちらもこちらで疲れを微塵も感じていないようである。
「俺は44体だ!1体差だったかァ、惜しいなァ・・・だけど・・・」
ちらりと、暗がりの方を見やる。そこには押し寄せるほどのキラーアントがこちらに向かって歩いてきていた。
「まだまだ、お客さんはタンマリいるようだなァ・・・」
「ですね・・・」
だったらどうするか?狼達の答えは決まっていた。
獰猛な笑みを浮かべ、構えた。
たまらぬ笑みであった。
「全員纏めて・・・」
「ぶっ倒すッッ!!!」
―それから数時間後・・・。
「くっそー、今日も引き分けかぁ・・・」
「ですね・・・」
死屍累々となったキラーアント達から魔石を回収しながらジョーとベルは嘆息する。
こうして、顔を合わせてはモンスターをどれほど多く倒せるか勝負するのが彼らの日課となっていた。
だが、何度やっても引き分けに終わってしまうのである。
そして今日も、引き分けであった。
「よぉ、今日も励んでるなァ!チャンピオン」
そんなベルの背後から声がかけられる。
振り向くと、男がいた。
太い、岩のような身体の男であった。
トロールやミノタウロスを絞め殺せそうな太い腕だ。
オリハルコンの鎧を蹴り潰せそうな太い足だ。
そんな巨体の男であある
堪らぬ男であった。
その男を見て、ベルは顔を輝かせながら言う。
「セキさん!珍しいね、ダンジョンに来るなんて」
「今日は、興業は休みでなァ!若ェモン達の手伝いでここに来てんだ」
男は体格通りの野太い声で、笑いながらベルに答えた。
男の背後には、彼と負けず劣らずに太い体格の男達がソードスタッグや、シルバーバック、オークと言ったモンスターの入った檻を荷車に乗せて運んでいた。
「もうすぐ『
「怪物祭かぁ、もうそんな時期なんですねぇ・・・」
男の言葉に、ベルは感慨深げにそう呟いた。
―怪物祭
オラリオのビッグイベントの一つである。
ガネーシャファミリアの主神である『ガネーシャ』が主催するお祭りで、モンスターの調教と彼が社長を勤める『ガネーシャプロレス』によるプロレス興行がメインイベントである。
今回は、特別ゲストとしてトールファミリアが主神『トール』が社長を務めている『アズガルドプロレス』の面々とスペシャルマッチをするとの事である。
「なぁ、ベル。このオッサン誰だよ?」
男を見ながらジョーはベルに問いかける。そんなジョーに、おいおい。と男が口を開いた。
「このセキバヤシ・準様を知らねぇたァ、お前テレビ見てねぇのか?」
「テメェこそ、俺をしらねぇのかよ?俺は嵐を呼ぶ男、ムエタイチャンピオン『ジョー・東』様だぜェ!」
「・・・何だソリャ?つーか、ムエタイなんてテレビ中継やってねぇだろ」
胸を張りドヤ顔で言うジョーに男は尤もらしいツッコミを入れる。
仰向けにつんのめりながら踏ん張り、ジョーはジト目でこう言った。
「まぁ、そりゃそうだけどよ。・・・そういや、今思い出したけどセキバヤシ・準、といやぁ『獄天使』って二つ名で知られてるプロレスラーの冒険者だったっけ?」
―セキバヤシ・準
ガネーシャファミリア所属の冒険者で、『ガネーシャプロレス』の看板レスラーである。
デスマッチから本格プロレスまで何でもこなすエースレスラーで、悪役めいた風貌とは裏腹に社交的で明るい性格からか、人気がありファンが多い。
冒険者としてのレベルは5で、オラリオに住む冒険者としても5本の指に入るほどの実力者である。
「何だ、知ってんじゃねぇか俺の事を」
「とは言っても、小耳に挟んだ程度だけどな」
準の言葉にジョーは肩をすくめながら答えた。
「何でも、オラリオで5本指に入る実力者って聞いてるが・・・、成る程。確かにその通りだな・・・」
「ふふん、そうかい」
ジョーの言葉に準は鼻を鳴らし答える。
そんな準を見ながら、ジョーは彼の発する闘気に微かに冷汗を流す。
―強え・・・。
セキバヤシ・準を見てジョーは胸中で呟いた。
ジョーの目が、肌が、鼻が、耳が準の強さを見抜いていた。
仮に自分が立ち合いを仕掛けて行っても、勝てるヴィジョンが思い浮かばない。
準は、そんな男であった。
「ボウズ、どうした?震えてるぜ?」
「は。嬉しくってよ、こんな強い奴がいるって喜びでな」
挑発するような準の言葉に、ジョーは獰猛に笑みを返す。
牙をむく狼のような笑みであった。
そんなジョーを見て準はかんらかんらと笑った。
「ガハハハハ!面白い小僧だな!だからこそ潰し甲斐があるぜ」
準もまた、ニヤリと獰猛に笑った。
一瞬で鬼の顔に変わるような笑みである。
―ぐにゃあ・・・・。
ジョーと準の闘気により、2人の間の空気が歪む。
一触即発である。
「はい、ストップ」
その空気は第三者の介入によって霧散する。
ベルであった。
何故止めた。
そう言いたげにベルを見るジョーと準。そんな2人にベルは、悪びれずにこう言った。
「僕としてはお2人がここでおっぱじめても構わないんですけどね。だけど、準さんは怪物祭でメインイベンターを務めるんでしょう?
ヤるんだったら、怪物祭が終わってからでもいいんじゃあないですか?」
「まぁ、チャンピオンの言うことにも一理あるな」
準はそう言って肩をすくめる。
「ケンカでの傷はプロレスラーにとっちゃあ怪我じゃあねぇんだが、ウチの所じゃあうるせぇヤツもいる。
その所為でそいつがギャアギャア騒いで、メインイベントがパァになったら楽しみにしてたお客さんにも申し訳ねぇしな」
そう言うと、ジョーに方へ顔をむけ続けた。
「運が良かったな、ボウズ。お前さんとの勝負は怪物祭が終わった後だ、地下闘技場でヤり合おうや」
「アンタも地下闘技場で闘ってたのかよ」
成る程、道理で強い筈だ。
ジョーは内心納得しながら準に言った。
「オウ!チャンピオンともヤり合った事があるぜェ、良い線行ってたけどギリで負けちまった」
かんらかんらと笑い、準は自分の仲間の所へと戻っていく。
「じゃあ、俺はここいらでお暇するわ。トクガワの爺さんにヨロシクな」
そう手を振りながらセキバヤシ・準は去っていった。
「僕らも帰りましょうか」
「そうだな、帰ろう」
ベル達もそう言う事になった。
―そして、ヘスティア・ファミリアの本拠地の教会。
「へぇ~、キミあの『獄天使』と知り合いだったんだねぇ・・・。しかも、地下闘技場で闘ったんだって?」
「ええ、強い人でした」
教会へと帰って来たベルはヘスティアに事の詳細を話していた。
最近では、大抵の事では驚かなくなったヘスティアであったが、まさかあの有名プロレスラーである『獄天使』セキバヤシ・準とまで一戦・・・しかも
「と言うか、『獄天使』も地下闘技場の闘士だったんだなんてなァ・・・。ひょっとしたら、他の有名な冒険者とかも地下闘技場の闘士だったりするのかね・・・?」
なんて呟きつつ、そう言えばもうすぐ『怪物祭』だな。と言う事を思い出す。
―ベル君を誘うなら今がチャンスじゃないかな?
ならば、善は急げだ。ヘスティアは思い切って、口を開いた。
「ねぇ、ベル君」
「何でしょうか?」
改まって自分の名前を呼ぶヘスティアにベルはキョトンとする。
そんなベルを見ながら、ヘスティアはこう切り出した。
「今度の『怪物祭』でさ、デートしようぜ!」
続くッッ!!!
今回、初登場したセキバヤシ・準について紹介をば。
セキバヤシ・準
元ネタ:ケンガンアシュラの『関林ジュン』
説明:僕の好きなケンガンキャラで5本指に入るお方です。
相手の攻撃を全て受けきる。と言う凄まじいまでのプロレス。そして、その凄まじいまでのプロレスに対する愛。とにかくカッコイイ!
凶悪そうな風貌である反面、社交的で料理上手、世話焼きと言うギャップがマジですこです。
俺的ベストバウトは、VS鬼王山。
今回は、導入だけ。次回から、怪物祭編が本格的にスタートする予定でございます。
お楽しみに~。