グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~ 作:じゃすてぃすり~ぐ
戦闘描写が上手くかけているか不安ですが温かい目で見守ってくれると幸いです。
ベルVSイズミ・宗一郎ッッ!
勝つのはどっちだッッ!!?
10月5日、文章追加しました。
「♪~」
地下闘技場の控え室、鼻歌交じりでベルは準備を済ませていた。
トランクスタイプの試合用ズボンを穿き、両手両足にテーピングを済ませたベルは、鏡の前に立っていた。
「ふふん」
笑みを漏らすとファイティングポーズを取り、軽くジャブを放つ。
初めはゆっくりと、そして段々とスピードを上げていった。
「嬉しそうですなチャンピオン」
髭面でタキシードを着た男がベルにそう言った。
シャドーを止め、ベルは男の方は向かずに己の手を見ながら口を開いた。
「何でかな?テーピングを終える頃には全身がむずがゆくなってくる」
そして、男の方を見やる。
「早く相手を八つ裂きにしたくて堪らないんだ」
笑顔を浮かべながらこわい事を平然と言った。
対する男もそんなこわい事を聞きながら笑みを崩さず答えた。
「面白いものですな。先ほど対戦者のイズミを見てまいりましたが、貴方と同じ事をおっしゃってました」
「僕と同じ事を、ですか?」
「ええ、『竹宮流と自分の全てをチャンピオンにぶつけたい』と」
「はは、そりゃ楽しみだ」
男と談笑しながらベルはふと時計を見る。
そろそろ試合が始まる時刻であった。
「それじゃあ、行くか」
「―ご武運を」
そう呟きベルは部屋を出た。
―ドォン!ドォン!
『ワァァァァァァァァァァァァッッ!!!』
太鼓の音と共に、会場が一気に湧いた。
「いよいよメインイベントじゃ」
光成が言った。
『ベール!ベール!ベール!ベール!』
「すごい人気だねぇ、ベル君って」
会場から鳴り響くベルコールにヘスティアはそう感想を漏らす。
「チャンピオンじゃからなぁ、ベルは」
「ごっつ凄い戦いっぷりを見せてくれるんやで。ほーんと、ドチビに勿体無いわ」
光成に便乗するように、ロキが言った。ロキの一言余計な言葉にヘスティアはムッと顔をむくれさせる。
『皆さん!お待たせいたしました。これよりメインイベントを開始いたしますッ!』
会場にアナウンスが鳴り響いた。
『ここ、オラリオ地下闘技場が出来て以来!最も若く、最もエキサイティングなチャンピオン!青龍の方角ッ!格闘スタイルクラネル流格闘術!【ヘスティア・ファミリア】所属ッッ!ベル・クラネルの入場だァーーーッ!』
「ッシャアッッ!!!!」
『ワァァァァァァァァァァァァァッッ!!!』
『今日も魅せてくれよチャンピオン!』
『ヘスティア・ファミリアって聞いたことないけどファミリア入りおめでとー!』
勇ましい掛け声と共に、試合コスチューム姿のベルが姿を現した。
それと共に会場から凄まじいまでの歓声が沸き起こる。
「ンで、今日ベル君の試合相手のイズミ・宗一郎・・・だっけ?どんな人なんだい?」
そんなベルを見ながらヘスティアは光成に問いかける。
「イズミは『竹宮流』と呼ばれる実戦柔術の使い手なのじゃ」
「竹宮流?」
聞きなれぬ単語にヘスティアは首をかしげる。
「極東に僅かに残る実戦柔術の一派ですよ、神ヘスティア。起源はトクガワ時代中期、イズミ・彦次郎によって立ち上げられたとされています」
「独歩ちゃん、何でドチビには敬語やねん・・・。ウチにはタメゴトで話すくせに・・・」
そんなヘスティアに竹宮流について説明する独歩。
その傍らではロキが恨みがましい目で独歩を見ていた。
「おっと、イズミも入場するみたいじゃぞ。白虎の方角じゃ」
光成の言葉に、一斉に白虎の方角へと視線を向ける。
『続きまして、白虎の方角!格闘スタイル竹宮流柔術ッ!【スサノオ・ファミリア】所属!イズミ・宗一郎ッッ!!!』
現れたのは灰色が特徴な古武術の道着を着た初老の男であった。
髪は既に白く、頭頂部が禿げている。
だが、体の方は鍛えており引き締まっている。
入場する時の動きは無造作であったが、どこか軽やかで、動きに無駄が無かった。
その動きは猫科の肉食動物のそれであった。
「この人が・・・」
初老の男、宗一郎を見ながらヘスティアはぽつりと呟いた。
「ここでは、武器以外の全てを認めます!」
(―この人、強いな)
試合を行う前にスタッフが説明を行っているのを聞きながらベルの視線は宗一郎を見ていた。
ベルは宗一郎を見ながら自分と同じ臭いを感じ取っていた。
それは獣の臭いであった。
そして、直感する。
肌で、目で、否・・・全身で。
イズミ・宗一郎は強い。と。
「クラネル君。礼を言わせてもらうよ、私の挑戦を受けてくれて」
不意に宗一郎がベルに話しかけてきた。
「いえ、お気になさらず。挑戦をされて受けないのではチャンピオン・・・いや、それ以前に格闘士とは呼べませんからね」
「ふふ、そうか」
ベルの言葉に、宗一郎は柔和な笑みを浮かべた。
場所が地下闘技場でなければ、極普通の優しそうな中年の笑みである。
「すまないねぇ、クラネル君。今日、私は君をここで殺す事にした」
その笑みのまま、凄いことを言ってのけた。
つまりは『本気で当てる』
それは、すでに約束されていたことを確認するための台詞であった。
果たし合いであることの確認であった。
「ふふん、そうこなくっちゃ面白く無いですよイズミさん」
対するベルも笑みを浮かべながら言う。
「でもさ、竹宮流ってのがどんなのか知らないけど必殺技の一つや二つで勝てるなんて思わないで欲しいな」
「ほう」
「ここは、地上最強を決める聖地なんだからね」
―ぐにゃあ。
ベルの言葉と同時に、両者の間の空間が圧縮された闘気により歪んでいた。
正しくそれは一触即発の空気であった。
「両者!元の位置にッッ」
スタッフに言われ、ベルと宗一郎は互いのリングサイドへと移動する。
そして・・・、
「始めェいッッ!!!」
―ドォン!!!
試合開始の
それと同時に、しなやかに宗一郎の体がゆるゆると動いてきた。
ベルも動いた。
二人の距離が急速に縮まっていく。
ベルの間合いに宗一郎が入って来た。
「ちぇあっ!」
同時にベルの右足が跳ね上がった。
細いながらも鍛え上げられた足がぶん!と唸りつま先が宗一郎の胸元にぐんと槍のように伸びた。
「ひゅっ!」
鋭い呼気を吐き、宗一郎はベルの足を難なく両の腕で絡めとる。
このまますぐに、膝と足首を極める関節技に入る体勢であった。
「オワッ!?」
(―やばっ、極められる!?)
関節技のコースに入られる前に何とかしなければならない。
ベルは地に着いた軸足で地を蹴っていた。
「オワァッッ!!!」
その左足は、宗一郎のこめかみ目掛けすっ飛んでいく。
それを宗一郎は体を沈みこませかわす。
右足から拘束ははずされていた。
「ッッ!」
(―もう、攻撃に転じるのか!?)
ベルの両足がつく前に宗一郎が動いた。
「邪ッ!」
「くぅ!?」
持ち上げた頭部に宗一郎の左足が襲ってくる。
それを右肘を曲げて受ける。
(―お、重てェ~~~~~ッッ)
初老の男の体が生み出したとは思えない、鋭い蹴りであった。
鍛えていない常人ならば、受けた腕が蹴り千切られている。
そのパワーを、肘を曲げたベルの右肘が、がっちりと封じていた。
立ち上がる。
「ッッ!」
「シッ!」
すぐに攻撃が来た。
拳。
拳。
肘。
足。
肘。
指。
拳。
見事な攻撃であった。
そのこと如くをベルは弾いていた。
肘で受け、膝で受け、手首で叩き、掌底で跳ね上げていた。
しかし、自分から攻撃をしようとはしない。
「ベル君・・・どうして反撃をしないんだ?」
観客席のヘスティアはそんなベルを見てそう言った。
「
「葛?」
独歩の言葉にヘスティアは問いかけた。
「竹宮流では関節技を総称して葛と言うんですよ。下手に攻撃を加えようものなら先ほどのように関節技に入られる恐れがある。それが、竹宮流のような柔術の怖い所です」
「しっかし、関節もやけど打撃の方も凄いなぁイズミセンセ。人体の弱点を的確に突いてきよる。胴なら秘中、胸尖、章門、背梁。頭なら天倒、人中、牙顎、村雨。一発当たれば悶絶間違いなしの場所や。こらさしものチャンピオンもキツいか?」
独歩の説明に便乗するように、ロキは宗一郎の動きを見てそう解説した。
「・・・ベル君」
それを聞きながらヘスティアはベルの名をそっと呟いた。
(―強いとは思ってたけど真逆これほどとはねぇ・・・)
宗一郎の攻撃を受けながらベルは思った。
まだ、相手のリズムがつかめない。
(一か八か・・・、此方から仕掛けてリズムを狂わせるか・・・)
そう思った矢先である。
ふっ・・・。と相手の攻撃の手が、一瞬ゆるんだ。
その隙を、ベルは逃さなかった。
(今ッ!)
攻撃をしかけようとしたその時だった。
―くるり。
「な!?」
(後ろを向いた?)
ベルの目に映ったのは宗一郎の後頭部であった。
それも一瞬である。
「邪ッッ!」
真下の地の底から、魔性の疾さで浮きあがってくるものがあった。
背を向け、身体を前に折った宗一郎の左足の踵であった。
それが、ベルの両脚の間に潜り込んでいた。
踵で、股間の底を蹴りあげられれば、陰茎を潰されて悶絶する。
ヘタをすれば死に至る。
陰茎を潰されなかったとしても、恥骨を砕かれる。
「ぐぬぅッッ!?」
恐怖のためにあげた声なのか、攻撃のための声なのか、ベルには自分で自分のあげた声がわからなかった。
右の拳を思いっきり、自分の脚の間、真下に向かって叩きつけていた。
ベルの拳と宗一郎の踵がぶつかっていた。
互角のぶつかり合いであった。
「ッッ!?」
後ろを向いているため宗一郎の表情は窺い知れなかったが、必殺の決め手が不発に終わり驚愕していたのは見て取れていた。
勝機である。
「トゥラァッッ!!!」
背を向けた宗一郎の上に、ベルが大きく跳んでいた。
左肘の先に体重を乗せ、宗一郎の背骨の上に打ち下ろしていた。
―ゴガッ!
「ガァッ!?」
直撃であった。
宗一郎は溜まらず叫んでいた。
「ひゅっ!」
呼気を短く吐くとともに、ベルの右腕が宗一郎の顔面を左に向かせるように回り込んでいた。
鍛え上げられた腕が、横を向いた宗一郎の右頬から顎にかけて絡んでいる。
「~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!!!」
宗一郎の背と首が、大きく反り返っていた。
ベルの左腕は、自分の背に回されている宗一郎の左腕と、脇腹との間に外側から潜り込んでいた。
その潜り込んだ手を、宗一郎の左の腋の下から肩口へと突き出す。
ベルの左指と、宗一郎の頭を抱え込んだ右手の指とがからんだ。
―みりっ。
と言う音が上がった。
その音は鍛え上げられた肉に包まれた宗一郎の左肩から聞こえた。
―ごりっ。
さらに力を込める。
宗一郎は動かなくなった。
技を解き、宗一郎を放す。
「勝負あ・・・」
動かなくなった宗一郎を見て、スタッフが声を上げた瞬間だった。
ぐったりとなっていた宗一郎が体を起こし、ベルに迫ってきた。
ベルは技を解いたばかりで無防備である。
顔面ががら空きであった。
「しゃあっ!」
宗一郎は折れていない右で指をVサインの状態にしてベルの顔面に放った。
目潰しである。
―ガッ!
肉がぶつかる音が聞こえた。
宗一郎の右手はVサインのままベルの目の前まで止まっていた。
手首のあたりを左手で止められていたのである。
「惜しかったですね」
驚愕の宗一郎にベルは笑顔でそう言った。そして、空いている右の拳を宗一郎の顔面に放った。
―めしゃ。
狙い違わず右の拳は宗一郎の顔面に綺麗に突き刺さり、鼻の軟骨がつぶれる感触と、歯が折れる感触が右手に伝わってきた。
そのまま拳が顔面に突き刺さった状態で振りぬく。
宗一郎は吹っ飛ばされあお向けに倒れた。
「キャオラァッッ!!!」
間髪入れずに飛び上がったベルが宗一郎の胸の上に膝を打ち下ろしていた。
―めりっ!
直撃であった。
あばらの折れる音がした。
ぴくっぴくっと痙攣をしながら、宗一郎は起き上がろうとしたがやがて力尽き動かなくなった。
目を剥き、天井を睨んでいた。
「勝負ありィ!!!」
それを見て、スタッフが声をかけると共に、ドォンドォン!と太鼓の音が会場に響いた。
「よっしゃあッッ!!!」
『ワァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
ベルが右手を挙げ勝ち名乗りを上げると同時に会場から歓声が沸きあがった。
「か、勝っちゃったよ・・・」
そんなベルを見てヘスティアはそう呟いた。
これほどの、これほどの男だったのか。
(すごい・・・すごいぜベル君。君を、眷属にして良かった。君と出逢えて良かったッッ!)
視線の先で観客達に胴上げをされるベルを見てヘスティアは胸中で呟いた。
―そして、暫くして・・・。
「ベル君、いい試合だったぜ」
「はは、ありがとうございます」
試合を終え、普段着に着替えたベルは光成達と別れ、ヘスティアと共に帰路についていた。
「なぁ、ベル君」
唐突にヘスティアが口を開いた。
「なんでしょう?」
「君の夢って、『地上最強の英雄』になることだよな」
「はい。そうですが、どうしたんです?」
「ボクもさ、夢が出来たんだ」
「どんな夢です?」
ヘスティアはベルの方に向き直り、微笑みながら言った。
「ボクたちのファミリアを『地上最強のファミリア』にする事さ。―だから、勝ち続けろよベル君」
そう言って、拳を突き出した。
「はい」
ベルもヘスティアの拳に己の拳を合わせた。
「約束だぜ」
そう言ってヘスティアは笑った。
月明かりに照らされたその笑顔は綺麗であった。
続 く ッ ッ !
次回は、冒険者登録&初めてのダンジョン探索回ッッ!
ベルの暴れっぷりを見逃すなッッ!