グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~   作:じゃすてぃすり~ぐ

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今回はタイトルから分かるように、前編と後編に分けて投稿しております。
本当なら、店でのいざこざまでも書きたかったのですが、書き手の体力が追いつかないのとこれ以上書いたら結構な文字数になっちゃう可能性があるので前後編にしました。
すまない・・・本当にすまない・・・。

それではどうぞッ。


Round7~豊穣の女主人 前編~

 荒野であった。

 荒野で赤い怒髪の男と、黒髪の男がにらみ合っていた。

 赤い怒髪の男は両手を広げるような構えを、黒髪の男はマーシャルアーツの構えである。

 黒髪の男が動いた。光り輝く拳を振りかざし赤い怒髪の男に迫る。

 ベル自身も使用したバーンナックルである。

 

―どごっ!

 

 黒髪の男の拳が赤い怒髪の男の胸に突き刺さった。

 ごぷり。と赤い怒髪の男の口から血があふれ出す。

 これで、決着か・・・?否ッッ!

 赤い怒髪の男は広げた両手をそのまま黒髪の男の両耳に振るった。

 

―ぱんっ!

 

 音が響いた。

 黒髪の男の眼球から光が無くなっていく。

 両手を離すと黒髪の男の耳からずぶずぶと血があふれ出した。

 だが、それだけでは赤い怒髪の男の拳は止まらない。

 己の力、全てを使い放たれる一撃が、黒髪の男の胸に吸い寄せられ・・・。

 

 音が響いた。

 形容できない音であった。

 骨、肉、魂、全てを根こそぎ破壊するような―

 そんな音が荒野に響いた。

 拳が黒髪の男の胸に突き刺さっていた。

 たまらぬ拳であった。

 

「と、父さァァァァァァァァァァァァァんッッ!!!」

 

 叫び声がした。

 幼い少年の声だ。

 幼い自分の声と共に、ベルは夢から覚醒した。

 

 目を開ける。

 そこは見慣れた部屋であった。

 ヘスティア・ファミリアのホームである。 

 近くにはヘスティアがすやすやと寝息を立てて寝ていた。

 

「また、この夢か・・・」

 

 手元に置いてあった愛用のオープンフィンガーグローブを見ながら呟く。

 義父『ジェフ・クラネル』が今際の際に渡してくれたグローブであった。

 

―強くなれ・・・。

 

 ベルにそう言い遺して渡したのである。

 ベルが10歳の頃であった。

 

「アレから四年・・・か。僕は強くなってるんだろうか・・・」

 

 呟きながらグローブをはめた。

 そして、一張羅のジャンパーを羽織り装備をつける。

 

「行ってきます、神様」

「ん~・・・いってらっしゃーい・・・」

 

 そして、夢現なヘスティアにそう言うとホームを出るのであった。

 

―最近、誰かの視線を感じる。

 

 街中を歩きながらベルはそう思った。

 ランクアップから何日か経った早朝である。

 思いながら視線の感じる方向を見やる。

 バベル、その上の方からであった。

 

―キミは4週間でランクアップを果たした、これは未だ誰も成し遂げていない事だ。良くも悪くもキミに目をつけてくる輩は居るだろう、表の世界であろうと裏の世界であろうとね。

 

 ベルはふとこの間、ヘスティアが言った事を思い出していた。

 

「もう僕に目をつけてる(ヤツ)がいるって事か・・・」

 

 バベルの方を見上げながら呟く。

 光成やヘスティアから、バベルの上の階には神々が住んでいると聞いている。

 ならば、目をつけているのはそこに住まう神々なのだろう。

 

「面白れェ」

 

 ベルは口角を吊り上げ笑う。

 どんな事をするのか?

 どんな手を打ってくるのか?

 挑戦?闇討ち?それとも・・・。

 どんな手を使って来てもいいと思う。

 挑戦だろうと、なんであろうと。

 自分はそれに受けて立てばいい事だ。

 

「あの・・・」

「ん?」

 

 後ろから声がかかり振り向いた。

 少女であった。

 薄鈍色の髪と瞳をしたヒューマンの少女である。

 ウェイトレスの格好をしている事から何処かの飲食店で働いているのであろう。

 可愛らしい少女であった。

 

「これ、落としましたよ」

「ん?あれ・・・?」

 

 少女から手渡されたのは魔石であった。

 ふと、ベルは疑問に思い首をかしげる。

 魔石は全て昨日換金したはずである。

 

「(―まァ、うっかり忘れてたんだろうな)すいません、ありがとうございます」

 

 胸中でそう納得し、少女に礼を言う。

 

「いえ、お気になさらないで下さい。ところでこんな朝早くからダンジョンに行かれるんですか?」

「そうですね、まだ収入が少ない方なので少しでも収入上げようと・・・」

 

―ぐぅ・・・。

 

 言いかけて音が鳴った。

 ベルの腹の音であった。

 

(あ、そういや朝飯食べずに出たんだっけ?)

 

 参ったなぁ・・・。と胸中で呟くベル。そこへ、

 

「おなか空いてるんですか?」

「いやァ~、恥ずかしながら朝食を食べ忘れてまして・・・」

 

 少女から声がかかり、苦笑いでそう返した。

 暫く少女は考えるそぶりをした後、パタパタと踵を返してとある店の方へ走っていく。

 『豊穣の女主人』

 その店の看板にはそう書かれてあった。

 

「お待たせいたしました。これ、よかったらどうぞ」

 

 暫くして、少女が小さなバスケットを持ってきてそれをベルに渡した。

 

「いいんですか?これって貴方の朝食じゃ・・・」

「大丈夫です。私の場合は、お店で賄いが出るので問題ないですよ。それにこのまま貴方を見過ごせば私の良心が痛みますし・・・ダメですか?」

 

 そう言って、上目遣いで甘えたようにベルに言う少女。

 たまらぬ少女であった。

 ベルはそんな少女に困ったように苦笑いしつつ答える。

 

「分かりました。お言葉に甘えていただきますね。その代わりと言っちゃ何ですけどお礼にいつか貴方の働いてる店で御飯を食べに行きますから」

「本当ですか?ありがとうございます、私待ってますね」

「はい。あ、自己紹介がまだでしたね。僕はベル・クラネルと言います」

「ベルさんですか、私はシル・フローヴァです」

 

 バスケットを受け取ったベルは少女、シルと自己紹介をかわし別れたのであった。

 ダンジョンへと向かいながらバスケットを開ける。

 中に入っていたのはサンドイッチであった

 ハムサンド、サラダサンド、たまごサンドと言った色とりどりのサンドイッチである。

 それを手に取り一口食べる。

 

―もにゅ・・・もにゅ・・・。

 

(~~~~ッッ!うんめェ~~~~~~ッ)

 

 咀嚼しながら胸中で呟く。

 そのまま、二口、三口とサンドイッチを口に運びあっという間に一つ平らげた。

 そして、他のサンドにも手を出し、ダンジョンへ着く頃にはバスケットの中は空になっていた。

 

「もし、シルさんの所で食べにいくならちゃんとお返ししとかないとね」

 

 ベルはそう言って、バスケットをバッグの中に入れるとダンジョンの中へ入っていった。

 

―暫くして・・・。

 

「ふぅ・・・、結構稼いだかなァ」

 

 換金したヴァリスがたっぷり詰まった袋を見ながら呟く。

 外へ出ると日は傾き始めていた。

 

「よォ」

 

 声が聞こえた。

 鍛え込まれた体の男だ。

 オロチ・克己である。

 

「克己さん、こんな所でどうしたの?」

「迎えに来たんだよ。今日だぜ、約束の日」

「約束・・・?ああ、今日だったんですね」

 

 克己の言葉に一瞬首をかしげるベルだったがすぐに思い出す。

 ミノタウロスの一件にて、奢ってもらう日であったのだ。

 

「すいません、一回ホームに戻っていいですか?今汗塗れですし、神様にも一言挨拶したいので」

「ああ、構わないぜ」

 

 一度、ホームへ戻り着替えた後その店へ行くこととなったのであった。

 

―そして・・・、

 

「へぇ~、このお店がそうなのかい?」

「はい、そうです。料理も絶品ですし、それに面白い催し物もあるんですよ」

 

 その行きつけの店の手前、ヘスティアの問いに克己は答える。

 何故、ヘスティアも同行しているのか?理由は簡単である。

 一旦ホームに帰り、ヘスティアも誘った当初はロキが居ると言う理由からか乗り気ではなかったが、奢りだと聞くや否や・・・。

 

「何だっていい!ただ飯にありつけるチャンスだッッ!!!」

 

 何とも現金な神様である。

 

(―あれ?ここって確か・・・)

 

 話を現在に戻し、ベルはと言うとその店を見て内心驚いていた。

 看板にはこう書かれてある。

 

『豊穣の女主人』

 

 シルがベルに朝食を渡すために入った店であった。

 

「偶然ってあるもんだなァ・・・」

 

 ぼそりとそう呟いた。

 ひょっとしたら、シルさんとも会うかもしれないな・・・。そう思いながら。

 

「とりあえず、中に入ろうか。皆もう来てるんだよ」

「そうですね」

「行こう行こう」

 

 そういう事になった。

 

 中に入る。

 洒落た店であった。

 様々な人が居ることから、ここは人気が高いと見える。

 

「おっ、来た来た。おーい、かつみんにベルたん待っとった・・・で?」

 

 声がした。振り向くと人だかりの中から、手を振りながらロキが此方にやって来た。

 そして、ふとヘスティアを見て固まる。

 

「何でドチビがここにおんのやァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

 吼えた。

 普段は閉じてるのかどうかも分からない糸目が大きく見開いていた。

 

「何でって?決まってるじゃないか、ベル君居る所にボクありだよ」

「かっこつけて言うたつもりかボケェ!ウチはベルたんだけを呼んだンや!ワレなんざお呼びじゃないわい!つまみ出したるッッ!!!」

「やるかロキッッ!!!」

 

 臨戦態勢。

 両者は今にも飛び掛らんと身構えている。

 それはまさに獲物に襲い掛からんとする肉食動物のそれであった。

 

「まぁまぁ、二人とも。あまり騒ぎ起こすとミアさんから怒られるぜ」

 

 そんな状況に割って入って来たのは克己であった。

 見やると、店主であろう太いドワーフの女性がヘスティアとロキを睨んでいた。

 修羅の眼光であった。

 そんな眼光で睨まれ、ヘスティアとロキは借りてきた猫のように大人しくなる。

 

「克己さんお待ちしておりました。そちらの方が・・・ってベルさん!?」

「あはは、どうもシルさん」

 

 そこへ、克己へと駆け寄る薄鈍色の髪と瞳をしたヒューマンの少女がベルの方を見やり驚いた。

 シル・フローヴァであった。

 

「む?ベル君、この子とはどういった関係なんだい?」

「いやぁ~、ちょっと今朝朝食を食べ忘れてしまいまして・・・その時、この人、シル・フローヴァさんにに朝食を貰ったんですよ」

 

 問いかけるヘスティアにベルはちょっと恥ずかしげにその時の事を話しながらシルのことを説明した。

 

「ふ~ん、まぁ大体分かった。だーけーど、ベル君」

「?」

 

 ベルの説明を聞き、ヘスティアはベルにずいっと顔を近づけこう言った。

 

「あまり、シル嬢が可愛いからって口説こうとするなよ?浮気、ダメ、絶対!」

「ちょッ!?何言ってんですか神様ッッ!!僕とシルさんは今日、出会ったばかりですよ!確かにシルさんは可愛いですけど僕、口説く勇気無いですよ・・・」

 

 ずびし!と指を突きつけながら爆弾発言を言うヘスティアにベルはツッコミを入れた。

 

「か、可愛いってそんな・・・」

 

 一方のシルは、ベルの可愛い発言に顔を真っ赤にして照れていた。

 

「と、とりあえず早く行こうぜ。ロキ・ファミリアの皆を待たせてるし」

 

 このままだとカオスな流れになってしまいそうなので、咳払いをしながら克己はそういった。

 

「あ、そうだった。克己君の言うとおり早く行こうぜベル君」

「それはそうですけど、何で僕の腕に抱きついてるんですか?」

 

 克己の言葉に賛同しながらヘスティアはベルの腕に抱きつく。

 そんなヘスティアにベルは困惑しながら問いかける。

 

「何となくだよ、何となく。キミだけだぜ、こういう事をするのは・・・」

 

 そんなベルにヘスティアは何処となく恥ずかしそうに最後のところだけは小さく言った。

 

 

 後 編 に 続 く ッ ッ ! ! !




ベート君等のロキ・ファミリアの面子の登場は後編からとなっております。
次回はバトルありな展開を用意しておりますのでお楽しみにッッ!
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