グラップラー・ベル~オラリオで地上最強を目指すのは間違っているだろうかッッ!?~   作:じゃすてぃすり~ぐ

9 / 24
気がついたらUAが18000越えッッ、それに評価が198ッッ。
応援してくれてアリガトォ!これからもグラップラー・ベルの応援をよろしくお願いしますッッ。

それでは後編始まりますッッ!


Round8~豊穣の女主人 後編~

「すんません、フィンさん遅くなりました」

 

 ロキ・ファミリアが予約していたであろう席へとやって来て克己はそう言った。

 大手のファミリアである為かかなりの人数である。

 その中から一人の金髪の少年らしき人物が克己の下へ駆け寄る。

 だが、一見少年のような外見であるが身にまとう空気が彼が少年ではない事を告げていた。

 

 フィン・ディムナ。

 ロキ・ファミリアの現団長を務めている 小人族(パルゥム)である。

 小人族は成人しても子供程度の容姿を持っているため本来の年齢は分かり辛いが、実際の年齢は40代と結構な歳である。

 

「何、大丈夫さ。所で彼が君の言ってた・・・」

 

 フィンは克己にそう言いかけベルの方を見やり、途端に驚いたような表情になった。

 

「君は、ひょっとしてベル・クラネル君かい?」

「お久しぶりです、フィンさん。入団試験の時以来ですね」

 

 フィンの言葉にベルは懐かしそうにそう言った。

 

「ベル君、ロキの所に入団試験に行ったのかい?」

「ええ、見事に落ちちゃいましたけど・・・」

 

 問いかけるヘスティアにベルは気恥ずかしそうにそう答えた。

 その言葉にヘスティアは更に首を傾げながら言う。

 

「あれ?でも、ロキの所って体力テストだけじゃなかったっけ?ベル君の身体能力なら落ちることはまず無いと思うけど」

 

 最もな疑問である。ベルの身体能力を考えれば体力テストで不合格はまずありえないと断言できる。

 それなのに何故体力テストに落ちたのか・・・?

 そんな疑問に、フィンは答えた。

 

「おっしゃるとおり、彼の身体能力は凄まじくどの競技でも新記録を立ててました。ですが、ある競技で予想外の事態が起こったんですよ」

「予想外の事態?」

「棒高跳びで、棒が身体能力に耐え切れずに折れたんですよ。それで記録無し・・・失格になっちゃったんです」

 

 フィンの後を継ぐようにベルが答えた。

 棒高跳びの棒はちょっとやそっとじゃ折れないように設計されてある。

 その棒を折ってしまったのだから、ベルの身体能力がどれほど凄まじいかが理解できる。

 

(逆に棒が折れてなければベル君はロキの所に居たって事だよなァ。・・・折れた棒に感謝せねば)

 

 胸中で折れた棒に感謝をするヘスティア。

 それもそうだ。試験のときに棒が折れていなかったらヘスティアとベルは出会うことは無かったのだから。

 

「そろそろ座ろうか。積もる話もいっぱいあるからね」

「それもそうですね」

 

 フィンの言葉にベルも頷く。

 全員が席に座るとロキが音頭を取り始めた。

 

「それじゃあ皆、遠征に無事帰ってきたことを祝って乾杯やー!」

「「「「かんぱーい!!!」」」」

 

 カチンとグラスのかち合う音がした。

 そして、弾かれるようにして飲み、喰らう。

 ベルとヘスティアもまたそれは同じであった。

 山盛りのパスタ。鶏肉の唐揚げ。魚の煮付け。カクテルにワイン。エトセトラエトセトラ・・・。

 それらを喰らい、飲む。

 

「くゥ~~~~ッッ!!!うんめェ~~~~~ッッ!!!初めてここに来るけどいい所じゃないの」

「そう言っていただけて嬉しいです、ベルさん」

 

 唐揚げを食べつつ、カクテルをあおり感想を述べるベルにシルは笑顔でそう言う。

 そこにロキが上機嫌で割って入って来た。

 

「そりゃそうや、なんたってここはウチらのいきつけやからな。飯も旨いし可愛い女の子がいっぱいおるしなァ、ウヘヘヘヘ」

 

 そう言ってだらしない顔で笑うロキ。

 そんなロキにベルとシルは苦笑いをし、ヘスティアは呆れた様子でキミらしいやと小声で呟いた。

 

「おゥベル、おめぇさんここで食べてたのか」

 

 太い声が聞こえた。

 声に振り向くとスキンヘッドの太い男と、金髪金眼の少女が居た。

 オロチ・独歩とアイズ・O・ヴァレンシュタインであった。

 

「オロチ館長、それとアイズ・O・ヴァレンシュタインさん」

「アイズでいいよ、ベル」

「じゃあ、アイズさんって呼ばせてもらいます。それでどうしたんです?」

「アイズにおめェの事を話したら、エラく興味持ってなァ。おめェと話してェらしいのよ」

 

 アイズの代わりに、独歩がベルの質問に答えた。

 

「話・・・ねェ。それでアイズさん、僕に話っていうのは?」

「どうしてキミはそんなに強くなれるの?」

「強く・・・とは?」

「お父さんから聞いた。キミは地下闘技場の無敗のチャンピオンで、恩恵を持ってる挑戦者とも戦って勝ってるって」

 

 地下闘技場の事まで喋ったらしい。

 独歩の方を見やると、別にいいじゃねぇかと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 

「―ったく、ひっどいなァオロチ館長は・・・」

 

 小さく呟く。

 だが、別に隠しているつもりは無いので別に良いが・・・。

 アイズの方に視線を向け、答える。

 

「僕がここまで強くなれたのは『夢』の為・・・ですかね?」

「夢・・・?」

「はい、『地上最強の英雄』になる。それが小さい頃からの夢です。その為に世界中の色んな所を周って様々な武術を学びました」

「それで、強くなれたんだ」

「だけど、僕なんてまだまだですよ。まだ届かない、『夢』にも『アイツ』にも・・・」

 

 ベルはそう言って、あの時の事を思い出した。

 義父であるジェフが、『あの男』との立会いで敗れた時の記憶であった。

 『あの男』を倒す。それもまた、地上最強の英雄を目指すベルの目標となっていた。

 

―ヤツを倒さなければ、『地上最強の男』なんて目指せない。

 

 無意識に、ベルは拳を握り締めていた。

 

「むむむ・・・」

 

 一方のヘスティアはと言うと、ベルとアイズが話しているのを見て苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 ぶっちゃけ嫉妬である。

 ヘスティアの周りの空間が彼女の発する神威によって、酷く歪んで見えた。

 

「おうドチビ、詰まらん事で高濃度の神威を出すのやめーや」

「つまらん事とは何だッッ!んんんんんー!許るさーん!!ヴァレン某め、ボクのベル君とイチャコラしやがって!」

「まぁまぁ、落ち着いて」

 

 どこぞの大人気格闘ゲームの悪のカリスマのような事を言いながら歯軋りするヘスティア。

 そんなヘスティアを独歩と克己は宥める。

 

「ん?あいつは・・・」

 

 ふと、独歩はベル達に近づいてくる男が居る事に気づいた。

 

「よォ」

 

 唐突に声がした。

 見やると、男が立っていた。

 ボサボサの髪に、無精ひげの男である。

 

「あんた誰です?」

「俺かい?俺はトウゴウってんだ」

「そのトウゴウさんが何の用ですか?」

「アンタ俺達が追いかけていたミノタウロスの一体をぶっ倒したンだってなァ、レベル1・・・それも 単独(ソロ)で」

 

 トウゴウと呼ばれる男は人を小馬鹿した笑みを浮かべながら続ける。

 

「いい気なもんだなァ、マグレでミノタウロスを倒して周りからチヤホヤされてよォ」

「トウゴウッッ!」

 

 侮辱的なトウゴウの発言にフィンが一喝する。そんなフィンに、ベルは右手で制しながら答えた。

 

「大丈夫ですよ、フィンさん。たかが小物の戯言を気にしてたらキリがありませんよ」

「あ?」

 

―ビキッ。

 さっきまで小馬鹿な笑みを浮かべていたトウゴウの顔に笑みが消え、額に青筋が浮かび上がる。

 

「テメェ今、何て言った?」

「聞こえなかった?人を見かけで判断するような小物って言ったんだよ、僕は」

「舐めてんのかよテメェ?」

 

 ベルの言葉にトウゴウは怒りの篭った視線を向ける。

 一触即発の空気であった。

 ベルはちらりと、シルを見た。

 シルは今にも泣き出しそうな表情で震えていた。

 遠くでは店主であろう女性が『ここで暴れるな』と目で訴えている。

 

「ここじゃあ店に迷惑がかかる、表に出ましょうか」

 

 ベルはそう言うと、店から出て行った。トウゴウもまたベルの後に続くように店から出ようとする。

 

「トウゴウ」

 

 そんなトウゴウに声がかけられる。

 振り向くと、オロチ・独歩が目の前にいた。

 

「館長、止めるんですかい?」

「いんや、ケンカするのはかまわねぇ。だがな、神心会やロキ・ファミリアを背負っとる等と、大それた事は考えんでいい」

「・・・おっしゃってる意味が分かりませんがね」

「立ち会ってみればワカる、ベル・クラネルは邪心を持って勝てる相手じゃねぇって事がな。妙な功名心に囚われると頭ッから食われるぞ」

 

 それだけ言うと踵を返し、店の店主の方へ向かう。どうやら表を騒がせてしまう事に対する謝罪をしに行ったのであろう。

 

「お、面白れェ・・・上等だぜ!」

 

 トウゴウはそう言って店を出た。そして、悠然と立っているベルに向き直る。

 

「謝る気はなさそうだなァ・・・」

 

 そうトウゴウに言うベル。先ほどまでの歳相応の雰囲気は消え、凄まじいまでの闘気がベルの周りの空気をゆがめていた。

 

(~~~~~~~ッッ!!!?)

 

 トウゴウは、レベル3の冒険者であると同時に、神心会で初段を取るほどの実力者である。

 ベルの獣のようなたまらぬ表情を見た瞬間、一瞬にして自らの細胞が見抜いた。

 

(―これが・・・ッ、レベル2に上がったばかりの餓鬼の気迫かよッッ!!?)

 

 目の前の14歳ほどの少年が放つ尋常ならざるオーラ。

 今まで闘ったモンスターや他派閥の冒険者とは全く異質な存在感。

 それら全てが自分を上回っていた。

 

(まるで・・・団長や克己さんのような ロキ・ファミリア(うち)の幹部の連中と立ち会ってるみたいじゃねーかッッ!!)

 

 絶望的な実力差であった。

 

「どうした?来ねぇのかよ」

 

 挑発するようなベルの声がトウゴウの闘争心に火をつけた。

 そして叫ぶ。

 

「舐めんじゃねェッッ!こちとら、食う時も寝る時も 排泄(たれ)る時も空手の事を考えて生きてきたんだぜェ!テメェのような餓鬼とは年季が違うんだよォ!!!」

 

 激情のままにベルへと向かう。

 右足を跳ね上げ、体を回転させて蹴りを放つ。

 後ろ回し蹴りだ。

 一気に決めるつもりである。

 だが、

 

「へッ」

「ッッ」

 

 それは空を切った。

 ベルがスレスレでかわしたのである。

 右足を地面につけて追撃しようとしたそのときであった。

 

「サニーパーンチッッ!!!」

 

 ベルの叫びと共に、目の前に拳が迫っていた。

 それがトウゴウの顔面にめり込む。

 めちり。と鼻の軟骨がつぶれる音と、カリカリ。と歯が砕ける音と共に、トウゴウは意識を手放していた。

 決着である。

 

「相変わらずえげつねェなぁ」

 

 第三者の言葉に振り向くと、左の頬に刺青を入れた灰色の髪の 狼人(ウェアウルフ)の青年が立っていた。

 その青年をベルは知っている。

 

 ベート・ローガ

 レベル5のロキ・ファミリア所属の冒険者で 凶狼(ヴァナルガンド)と呼ばれ恐れられている男である。

 また、神心会が主催する「リアルファイトトーナメント空手道選手権大会」で三連覇を達成した猛者でもある。

 

「お久しぶりです、ベートさん。その分だと随分鍛えられたようですね」

「まァな。1年前にテメェに不覚を取ってからは血のションベンが出るほど自分を苛め抜いたからよ」

 

 ベルとベートの会話の通り、二人は面識がある。

 ベートは前述した「リアルファイトトーナメント空手道選手権大会」にて飛び入り参加したベルと決勝戦で闘ったのである。

 死闘の末、勝利したのはベルであった。

 そのリベンジをするため、ベートはこうしてベルに向かい合っているのである。

 

「どれだけ強くなったのか・・・は、話すと長くなりそうですね。だから、(こっち)で聞かせてもらいますよ」

「ああ、その方が手っ取り早いしな」

「それじゃあ、始めましょうか」

「応」

 

 獣のような笑みを浮かべてベートは構える。

 

「立ち合いを所望」

「願ってもないこと」

 

 対するベルも獣のような笑みを浮かべて構えた。

 

「「雄オォォォォオオォォォォォォォッッ!!!」」

 

 互いに吼えて、動き出す。

 両者が繰り出したのは、右のストレートであった。

 それがぶつかり合った。

 

 狼二人の戦いが始まる―。

 

 

 続 く ッ ッ ! ! ! !




今回登場したトウゴウなる人物について解説をば・・・。

トウゴウこと東郷(餓狼伝)
読者の皆様の多くは『トウゴウって誰?オリキャラ』と思う方は居るかもしれませんが、オリキャラではありません。れっきとした餓狼伝のキャラです。
姫川VS藤巻との戦いにて姫川の回想に出てきた人物で、姫川を挑発した挙句アッサリと倒されたキャラです。
本作でもベル君にサニーパンチでアッサリと倒されました。

次回は、ベルVSベート。
2次創作でよくあるベートフルボッコな展開にはならないのでご安心をッッ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。