俺は乙倉さんにライバル視されたい。   作:LinoKa

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第3話 良い事は連続して起きないけど、悪い事は連続して起きるものだ。

家に帰宅し、早速姉ちゃんに相談した。話すと、姉ちゃんはおデコに手を当てて全力で呆れ果てたようなため息をついた。

 

「あなたは………はぁ」

「うっ………」

 

その態度は傷付くぞ姉ちゃん。いや、まぁこの歳になって同い年くらいの人とまともに会話もできないんじゃそうなるのも分かるけど。

 

「で、その……どうしよう。なんて謝れば良いかな」

「そんなの、自分で考えなさい」

「ええっ……な、なんでよ」

 

鬼なの?困ってるから助けを求めたんだけど………。

姉ちゃんは俺をジト目で睨むと、またため息をついた。

 

「あなたねぇ、中学生になったんだから、少しくらい人と会話できるようになりなさい」

「いや無理。それは厳しい」

「断言しないの………」

 

はい、すみません。確かに情けない限りです。でも、俺には少しハードルが高いから。

 

「とにかく、甘えないの。あなたはもう小学生じゃないんだから、謝罪の言葉くらい自分で考えなさい」

「……………」

 

むぅ……まさか、相談に乗ってくれないとは………。これが歳という奴か………。きっと、ストレスで心が狭くなってるんだな。労ってあげよう。

 

「今、何か失礼な事考えてたでしょ?」

「っ⁉︎何故それを⁉︎」

「呆れた、本当に考えてたんだ」

「はっ、しまっ……!」

 

こ、この姉は……!アニメのキャラみたいなカマの掛け方しやがって………!

ぐぬぬっと唸る俺の前で、姉ちゃんは結論を出すように言った。

 

「とにかく、失礼な事を考えてる人にするアドバイスはありません。私、お風呂に入って来るから」

「ま、待ってください!謝るので助けて下さいお願いします!」

「嫌。知りません」

「明日、好きな食べ物晩飯に出してやるから!」

「そんなので大学生は釣られません」

 

ぐっ……!ダメか………!こうなったら土下座するしかないか?でも流石に姉に土下座は………。

あーどうしよう。乙倉さんに嫌われる……。いや、もう手遅れだったのかもしれないな。仕方ない、友達作りは諦めるか………。

ショボンと肩を落として寝室に行こうとすると、姉ちゃんが「ちなみに」と呟いた。

 

「謝るなら、自分が悪いと思った事をそのまま伝えなさい。中の言葉は自分で考える事」

「…………」

 

………教えてくれるんかい。本当に良い人だなー、うちの姉。流石、俺が話せる数少ない人の一人だ。確かに俺って問題かもしんないわ。

とりあえず、お礼を言っておこう。礼儀に関してはうるさいからな。

 

「ありがと」

「別に良いよ」

 

よし、今日は徹夜で謝罪の言葉を考えるとしようか。

 

 

++++

 

 

翌日、学校に向かって歩いていた。徹夜でクソ眠いが、謝罪の言葉は見つかった。言い方も気をつけるように配慮したし、おそらく大丈夫なはず。

………これで許してもらえなかったら姉ちゃんに慰めてもらおう。そんな情けない事を考えながら学校に向かった。

あー、しかし眠い。徹夜なんて初めてだからな………。今日の授業は全部寝よう。

大きな欠伸を1発浮かべると、前を乙倉さんが歩いてるのが見えた、

 

「あっ………」

 

思わず声を漏らすと、乙倉さんは振り返った。だが、俺だと分かるとぷいっとそっぽを向きかけたが、すぐに二度見した。

 

「に、新田くんっ?顔色酷いよっ⁉︎」

「………えっ?そ、そうですか……?」

「悪いよっ!ど、どうしたのっ?」

「………乙倉さんに、謝ろうと思って……」

「そ、そんなに思い詰めなくても怒ってないよっ!」

 

えっ、いや怒ってたでしょ。激おこナントカだったじゃん。

 

「謝ってくれれば許してあげようと思ってたからっ!そんな気にしなくても………!」

「……そ、そうですか………」

 

マジでか………。なんというトリック。とりあえず、謝ろう。昨日、せっかく考えたんだし。授業中は確実に寝るし、忘れる前にちゃんと謝らないと。

 

「………すみませんでした。俺、人と話すの苦手で、それでつい思った事とか、思ってもない事とか言っちゃって………」

「そんなの良いよっ!それより、眠いなら早めに学校に行って教室で寝てなよっ」

 

乙倉さんは本気で心配しているかのように俺に言った。

えーっと……とりあえず、これは許してもらえたって事で良いのかな………?

 

「ほら、学校行こうっ」

 

乙倉さんは俺の前を走り出し、俺は小さな欠伸を浮かべながらその背中を見た。

良い人だなぁ………。徹夜で考えた甲斐があったというものだ。考えて来た謝罪文の半分も言えなかったが。

良い人だ。いや本当に。何というか、もう少しネチネチと引き摺られるものだと思ってた。ていうか、助けてやったのにあんなこと言われたら、普通はドン引きするだろう。

それを、乙倉さんは許容し、明るく振舞ってくれている。本当に優しくて明るくて、そ、その……か、可愛い人だ。

 

「何してるのっ?早く行かないとっ!」

 

走る途中で振り返った乙倉さんは俺に向かって手を振った。

その姿を見て、思わず俺の口からポロっと言葉が漏れた。

 

「………あの、乙倉さん……」

「? 何?」

「………ありがとう、ございます……」

「………何がっ?」

 

キョトンとした顔で尋ねられてしまった。

今更になって、恥ずかしくなって来た。ヤバイ、顔から火どころかプラズマジェットが出そう。

 

「………なん、でもない、です……」

「???」

 

真っ赤になった顔を隠すように俯く俺を不思議なものを見る目で眺める乙倉さん。やがて、わざわざ俺の前まで戻って来ると、手を握った。

 

「ほら、早くっ」

「………あ、うん」

 

手を、握られてる………。あ、ヤバイ。恥ずかしい。恥ずかしさと眠気が同時に襲って来る。

カァッと顔が赤くなってる間に、乙倉さんは俺の手を引いて走り出した。俺は思考が追っつかないまま後に続いた。

 

「今度は負けないからねっ」

「……………」

「……………」

「……………」

「………っ………」

「……………」

「………に、新田くっ……!」

「……………」

「………は、はやっ、いっ………!」

「……………」

「……ちょっ、待っ……!」

「……………」

「っ……っ………」

「……………」

「このっ……!ま、待ってってば‼︎」

「っ⁉︎」

 

色々と混ざり合った感情を保ったまま、ただぼんやりと走っていると腕をいきなり後ろから引っ張られ、俺は後ろにひっくり返った。

 

「へっ?ひゃあっ!」

 

引っ張った本人もひっくり返り、二人揃ってすっ転んだ。な、なんだよいきなり……。俺、また何かしちゃったかな………。

………それにしても、顔の下が少し柔らかい。枕の上に顔を置いてる気分だ。………あ、やばい。眠気が………。

 

「痛た……。ご、ごめんねっ……って、に、新田くんっ⁉︎どこに顔置いてるのっ⁉︎」

「…………」

「き、聞いてるっ?」

「……………」

 

………ダメだ、柔らかさがちょうど良い……。何故か顔を真っ赤にしてる乙倉さんの顔を最後に、俺の意識はログアウトし………。

 

「何してるの?」

 

聞き覚えのある冷ややかな声で一気に目が覚めた。

声のする方にハッと顔を上げると、姉ちゃんが立っていた。

 

「っ⁉︎ね、姉ちゃん⁉︎」

「………ふえっ?」

 

目が覚め、起き上がって辺りを見回すと、俺は乙倉さんの上に寝転がっていたようだった。

 

「ーッ⁉︎」

 

慌てて飛び退き、後ろにサササッと退がった。

姉ちゃんはニコニコ微笑んだまま俺を冷ややかな視線で睨め付けながら言った。

 

「ふふふ、裕太ったら。朝から不純異性交遊なんて良い度胸してるね」

 

ふ、ふじゅん……何?なんかわけのわからない単語が飛んで来たが、何か誤解させてることは間違いなかった。

 

「ち、違うって!なんかいきなり引っ張られて倒れて、顔の下が柔らかかったから眠気で寝そうになっただけで………!」

「や、柔らかっ………⁉︎」

 

え、なんで乙倉さんが顔を赤くして胸を抱いてるの………?

なんかよく分からないけど、今は姉ちゃんの怒りを鎮めるのが先だ。

 

「とにかく落ち着いてって!マジで俺の所為じゃ………‼︎」

「お話は学校から帰ってから聞くわ。ごめんなさいね?うちの弟が………あれ?」

「っ」

 

姉ちゃんが乙倉さんを見て呟くと、乙倉さんはしーっと人差し指を立てた。何、知り合いなの?

すると、姉ちゃんは微笑んで言った。

 

「ごめんなさいね、うちの愚弟が」

「い、いえっ。私にも非があるのは確かですので……」

「何かあったら引っ叩いちゃって良いからね?」

「い、いえっ。そんな……!」

「じゃあ、裕太。家帰ったら覚えてなさいよ」

 

姉ちゃんはそのまま大学に向かった。

どうしよう、姉ちゃん怒るとメチャクチャ怖いんだよな………。肩を落としてため息をつくと、乙倉さんがクスッと微笑んだ。

 

「……新田くんって、お姉さんとは普通に話せるんだねっ」

「うぐっ……」

 

恥ずかしいところを見られた……。シスコンと思われたかもしれない………。

顔を赤くして俯くと、乙倉さんは慌てた感じで言った。

 

「あっ、いや気にしないでよっ。別にバカにしてるわけじゃないからっ」

「………えっ?」

「べ、別にシスコンさんなのかな?とか思ったわけじゃなくてっ」

「グホッ………!」

「あれれれっ?え、えっと、だから、その……!」

 

昨日の立場が逆だ………。いや、まぁ俺は怒ったりはしないが。

ただ、シスコンじゃなくて姉しか話す人がいないだけだ。心の中で反論してると、乙倉さんが言いたい事がまとまったのか、微笑みながら言った。

 

「そのっ……私とも、同じくらい話してくれると、嬉しいなって……」

「っ………!」

 

あ、やばい。今の笑顔とその台詞は反則だろ……。うっかりときめきそうになった。

さっきから心臓がうるさい、顔の火照りが収まらない、乙倉さんを直視できない。………あれ?これときめいてない?

いやいやいや、そんなまさかあり得ないって………。何があり得ないかなんて知らないけど、とにかくあり得ない。アリエナイ。

 

「…………善処します」

 

とりあえず、前向きに回答しておいた。乙倉さんには俺もそういう関係になりたいし。

乙倉さんは返事を聞くなり満足そうに微笑んで言った。

 

「さ、今度こそ行かないと遅刻しちゃうよっ」

 

乙倉さんが俺に手を差し伸べた。俺は頷く前に聞いてみた。

 

「………あの、ふじゅん……何とかって、その……俺、何したんです、か?」

 

聞くと、乙倉さんは突然顔を真っ赤にして、不機嫌そうな顔になって目を逸らしながら言った。

 

「………女の子に何を言わせる気なのっ」

「えっ………?」

「いいから行くよっ」

 

乙倉さんは不機嫌そうに走り出した。

………俺、本当に何したんだろう。

 

 




主人公に性知識は皆無です。清らなかな主人公です。
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