ブレードライガー
搭乗者:アレックス・ギフト
愛称:???
アレックスが搭乗する機体。元はアレックスの父の機体でアレックスの親を知るための手がかり。記録データを閲覧しようにも厳重なプロテクトが掛けられており元々共和国軍に所属していたこと以外は未だに一切のデータを見ることが出来ていない。基本的に大人しく長年生きているからかおじいちゃんのような性格でレヴィからはおじいちゃんライガーなどと呼ばれることもある。実際性格が硬いのか「前のマスターから貰った名前以外は受けつない。しかしお前はまだ未熟でマスターには相応しくない」とアレックスをコックピットには乗せるものの新しい愛称を受け付けず名前も教えないとモニターに文字を表示して拒否している。それでも戦闘になればスイッチが切り替わりアレックスの操縦を素直に受け付け操縦に対して素早い反応を示す。
4話
ここは今朝までアレックスがいた街「パーラ」の外にある荒野。
あの後アレックスはパーラに戻り、金も無いため今日は街の外にライガーを隠して野宿することにした。今はライガーの足元でタバコをただ吸って夜空を眺めていた。
宙を紫煙がぷかぷかと浮かび、まるで夜空に天の川が浮かんでいるように見える。それを見ていても未だにアレックスの心は荒んでいた。寧ろ時間が経つにつれて余計にイライラしている。
原因は分かっている。
『我らが国を作りその名を世界に轟かす事だ!!』
分かっている。あれはただの八つ当たりだった。しかし俺にとってもあの夢はただのの他人の夢では無かったのだ。
ずっと昔、旅の途中で気の合う奴と出会った。そいつは明るくてまっすぐでバカだった。だからこそ気が合ったんだと今でも思う。
そいつは「俺の夢は俺の国を作って俺が王様になる事だ。そんで平和な国にするんだ。おめぇ暇なら俺を手伝え。ついでにお前の自分探しを手伝ってやるからよ!」と言って俺の返事も聞かずにいろんな所に連れ回した。
いろいろあった。2人でバカやっていろんな奴に追い回されたり、困ってる人をあのバカが俺を巻き込んで助けに行ったり、一緒に笑ったりした。
あのときは本当に楽しかった。
そう。楽しかったのだ。
もうアイツはいない。
俺のせいでアイツはいなくなった。
あれ以来夜寝ているとたまに夢を見る。アイツが俺に「お前がいなければ」「お前のせいで俺の夢は叶えられなくなった」と言ってくる夢だ。いつしか俺にとってアイツの夢は鎖のように自分を縛る呪いになっていた。
だからディアーチェの夢を聞いた瞬間俺はアイツを、あの悪夢を思い出し感情的になってしまった。
自分でも分かっているのだ。これはただの自分の逆ギレ。トラウマに過剰反応してしまっているだけだと。頭では分かっている。だが心はそれとは別だったのだ。
今さら反省しても遅い。こうやって飛び出してきた以上もう戻れないだろう。すべては自業自得。それが更に自分を苛立たせる。
「…ちっ。胸糞悪ぃ」
タバコを踏みつけ火を消し立ち上がる。
「とりあえず仕事でも探しに行くか…」
そう言ってパーラに向けて足を進める
ーーーーー
場所は変わってパーラの東にある渓谷「デルマ渓谷」にてディアーチェ達は
「ええい!こやつらしつこいぞ!ユーリどうにか振り切れぬのか!?」
「これでも精一杯やってます!」
「野郎共ォ!一切手加減するな!撃ちまくれぇ!!」
「ヒャッハー!ぶっ殺してやるぜぇ!!」
盗賊から襲撃を受けていた
各々が寝るために自室に戻ろうとした瞬間爆撃と衝撃がシュテル達を襲いそれからは絶え間ない攻撃が続き、現在ホバーカーゴで逃走している
「ちぃ…、せめて出撃さえできればこんな塵芥共など…」
本来ディアーチェ達の実力であれば盗賊如きには遅れを取らずに倒せるが、出撃できないでいた。
というのもホバーカーゴから出撃する方法はカタパルトから出撃するか前部ドックから出撃するか、もしくは側面のハッチを開き投下するかの三つの方法がある。しかし弾幕が厚すぎてカタパルトから出撃しようものなら出撃する瞬間にカタパルトを狙われて蜂の巣にされるの目に見えている。前方ドックに至ってはゾイドが搭載されていない為論外。側面のハッチもここは渓谷であるため幅が狭く開けない。
これらが原因で未だに誰も出撃できず反撃もできないでいた。
「王様どうしよう!このままじゃホバーカーゴがやられちゃうよ!」
「ええい!うるさい黙っておれ!そんなことは我にも分かっておるわ!」
「だってだって〜!」
「今解決策を考えておる!大人しくしておれ!」
う〜…わかった〜…とレヴィはしょんぼりとうなだれた。それを見てディアーチェは悪いことをしたと思いつつも思考していく。
だが中々いい策は生まれずに焦り始めていた。
「あーもう本当にどうにかならぬのかぁぁぁ!?シュテル!貴様いい策は思いつかぬのか!?……………………シュテル?」
「あれ?そういえばシュテるんさっきからどこにもいなくない?」
あやつこんな時にどこに…
そう疑問が思い浮かんだ瞬間目の前のモニターに通信が開かれ
「私なら今ルシフェリオンのコックピットにいますよ」
今しがた話題に出た人物の顔が映し出された
ーーーーー
アレックスはパーラの中央にある大通りを歩いていた。この大通りの先に今朝までいた酒場があり、仕事を探すためにそこを目指して歩いている。
依頼内容はどんなものが良いか考えながら歩いており、今の所割の良い仕事であれば良いが1番は明日できて報酬がすぐ手に入るものだろうとまとまってきていた。
…と言っても明日仕事があるとは限らないためそこは運次第だろうとため息をつく。最悪明日は野生動物を狩りに行ってどうにかするしかない。幸い拳銃とナイフはあるので何とかなる。
明日のことをつらつらと考えながら歩いているアレックスの耳にそれが聞こえたのは偶然だった
「おい聞いたか?東のデルマ渓谷でアーネル盗賊団がホバーカーゴを襲ってるらしいって話」
思わず足を止め振り返る
ーーーーー
「シュテル!?何故貴様がそこにおるのだ!!」
「何故?とはおかしな事を聞きますねディアーチェ。出撃するからに決まっているからでしょう。」
何を当たり前のことを聞いているんだとばかりの表情でシュテルは答え、その答えにディアーチェは唖然となる
「何をふざけたことを言っておるのだ!出撃できぬから困っているのではないか!こんな集中砲火の中出れば出た瞬間に蜂の巣ではないか!」
「大丈夫ですよ。ルシフェリオンの装甲でしたらあの程度雨と大差ありません。それにどの道このまま出なくても蜂の巣になることには変わりありませんよ」
「ぐっ…」
シュテルの言ってる事ももっともだ。このまま出なくても攻撃が止む訳では無い。このままではジリ貧だ。
だがだからといってこんな状況で出す訳には…
「…はぁ。分かりました。どうしても出せないというのであれば仕方ありませんがハッチ事撃ち抜いて出撃します。」
「なっ!?」
唐突に無表情で何とも恐ろしいことを言い切った。これにはディアーチェも更に焦り始め口をパクパクとさせていた。
何かを言おうとするが何も言葉が出ずそのまま静寂が過ぎるだけだったが唐突に肩を叩かれ、そちらを向くとレヴィがいた。そして
「王様。シュテるんの好きにさせてあげたら?」
更に爆弾を投下したのだった。
「はぁ!?貴様自分が何を言ってるのか分かってるのか!?」
「分かってるさ。けどシュテるんの言ってることも間違ってないよ。このままじゃジリ貧だし、それだったら無理やりにでも出た方が絶対いいよ!それに王様だってだって知ってるでしょ?シュテるんはこうなったら絶対に譲らないって」
そうレヴィはニッコリと笑いながら自分の意見を言う。
…こうもまっすぐ言われてはもう後は腹を括るしかない。
「…はぁ。仕方あるまい。ユーリ、出撃の準備だ。」
「了解です!」
「感謝します。ディアーチェ」
モニター越しに丁寧に頭を下げ礼を言う。それを見てディアーチェはフンと鼻を鳴らし
「礼など要らぬ。それよりも出撃するからには何とかして足止めしてみせよ。後から我らも出撃して援護に向かう。それまで持ち堪えて見せよ」
それに対しシュテルは不敵に笑い
「その必要ほありませんよ。全て私が焼き払って見せます」
そう宣言した
ーーーーー
「さぁ。あそこまで見栄を切ったんです。足止めの1つや2つ、完璧にこなしてみせましょう」
シュテルは自分の愛機の中でそう独りごちる。
今回の襲撃。自分とアレックスが原因であることにシュテルは薄々気づいていた。昼間の戦闘の際数機が逃げていくのをシュテルは確認していた。その時はわざわざ追いかける必要もないだろうと敢えて見逃したがまさかこんな所でそれが帰ってくるとは思わなかった。
今思えば報復の可能性は容易に考えついた筈だ。故に今回は自分のミスだろう。
だが今さらそんなことを考えたところで状況は変わらない。なら切り替えて今は敵を殲滅することを考えるべきだ。
ユーリから出撃準備ができたことを聞き意識を切り替える。
「では行きますよ。ルシフェリオン」
ルシフェリオンはそれに嬉しそうに答える。まるでもう暴れるのを抑えられないとばかりに
ハッチが開き外の光景が見える。視界の全てが弾幕で埋まり、金属音があちこちから響く。
それに対する恐怖なく、シュテルは力強く操縦桿を握り込み
「シュテル・スタークス。ルシフェリオン出ます」
弾幕の嵐に飛び込んだ。
瞬間けたたましい騒音と衝撃が機体を襲う。数秒の浮遊の後に着地する。弾幕がホバーカーゴからこちらに集中し始めさらに騒音と衝撃は大きくなる。それらを全て無視し、目の前の集団に突っ込む。
1番前にいたへルディガンナーを踏み抜き、そのままエクスブレイカーで近くにいたコマンドウルフとレブラプターの頭を切り落とす。すぐに近くにいたレブラプターをハイパーキラークローで引き寄せ、再びエクスブレイカーで首を挟み切る。
「さぁ、私が相手をして差し上げます。精々もがき苦しんで消えなさい」
赤い魔装竜は天に吠え破壊の嵐へとその身を変えた
ーーーーー
「あぁ?アーネル盗賊団だって?別に珍しいことでもないだろ。あいつらはデルマ渓谷を中心に活動してるんだしよく聞く話じゃないか」
「それがよ、なんか今回は盗みじゃなくて報復らしいんだよ。どうやら昼間にたった2機のゾイド乗りに返り討ちにあってなそれの報復だとよ」
「報復だぁ〜?あのアーネル盗賊団がか?あそこのボスは相当なゾイド乗りらしくてここいらじゃ恐れられてるのにか?それに規模もかなり大きい盗賊だぞ。たった2機に負けるとか冗談だろ」
「それがマジらしくてよ。幹部の1人が負けて増援を呼んだら返り討ちにあったんだとよ。それで部下に追跡させたらホバーカーゴに乗り込んだのを見たらしくてよ。今夜盗賊団総出で奇襲をかけるんだってさ」
…間違いなくその盗賊団は昼間の盗賊達のことだろう。そして襲われてるのもシュテル達だろう。
俺は助けにに行くべきなのか?
アレックスは足を止め考えていた。聞いてしまった以上放っておく訳にもいかない。それに半分程は自分が原因だ。行くべきなのだろう。
…だがそれとは別に自分にはその資格は無いとも考えていた。あんな事を言ったんだ。今さらどの面を下げて会えば良いという話だ。
しかし、助けに行くべきだと思う自分もいる。
葛藤が募り思考を鈍らせ、時間が長く感じる。
どうする?どうすべきだ?どうしたい?
ぐるぐると頭が揺れる様な錯覚がアレックスに襲い掛かり始めた
『なんだよお前らしくねぇ。んなモンやりたいようにやればいいじゃねぇか。無い頭を使ってんじゃねぇ』
いきなり小馬鹿にするような懐かしい声が聞こえた
…ような気がした
顔を上げ辺りを見回しても誰もいない。
やはり錯覚だったのだろう。
だが、今はそれでよかった。
「…ハッ、無い頭は余計だ。けど確かにらしくねぇよな。」
暗かった顔は今は見えず、寧ろ笑っていた。
簡単な話だ。どうするべきだとか資格だとか関係無い。やりたいことをやればいいんだ。今思えば本当にしょうもない事だ。
それにやりたいことが増えた。それを伝えるためにも俺はやりたいことをやる。
来た道を全速力で駆け戻りブレードライガーが隠してある場所に向かった
ーーーーー
「よしここまで来れば出撃出来るだろう。ユーリ出撃の準備を頼む」
「了解です!」
ディアーチェ達は現在先ほどの所から少し離れた場所に居た。
数分前から弾幕が収まり、何とか安全圏に入れたことが確認でき、シュテルの援護に向かおうと出撃の準備をしていた。
「待っておれよシュテル。今行くぞ」
「僕にかかればあんなヤツら一瞬で片付けられるから期待しててよ王様!」
「…フッ。期待しておるぞレヴィ」
「任せといてよ!」
お互いに軽口を叩き合いながらブリッジを出ていこうとした瞬間
「待ってください!ハッチが開きません!これでは出撃できないです!」
「何だと!?いったいどういう事だ!」
「多分先ほどシュテルが出撃したときにハッチにダメージを受けてシステムに異常が発生したんだと思います!このままだとハッチを開けません!」
突然の緊急事態に思わず舌打ちしてしまう。
このままでは増援に行けない
「開閉システムの修理だ!今はそれ以外に手段が無い。急げ!」
シュテルよ、間に合ってくれよ…
ディアーチェはそう思わずにいれなかった
ーーーーー
「流石に不味いですね…」
現在シュテルは追い込まれていた。
あの後暫くは特に何も苦労せず徐々に敵の頭数を減らしていた。しかし暫くすると崖の上から増援が来て、挟み撃ちのように前後に挟み込まれ集中砲火を受けていた。前後から来る弾幕に身動きが取れなくなり今はフリーラウンドシールドを展開しながら何とか耐えている状況になっている。
しかしいつまでもこうしておく訳にはいかない。このままではいずれ機体に限界が来る。どうにかしてここを突破しなければならない
「ふん。ジェノブレイカーが出てきた時には少し焦ったが増援が間に合えば大したことは無かったな。いくら強力なゾイドでも挟み撃ちにしてこれ程の弾幕を展開すれば手も足も出まい」
一方でレッドホーンに乗るアーネル盗賊団のボス。アーネルは不敵に笑いながらジェノブレイカーが蹂躙されるのを見ている。
「くっくっく。これであのゾイドは俺のものだ。あんな強力なゾイドが手に入ればもう怖いもの知らずだ。それもこれもスポンサー様からの支援のお陰だな!アッハッハッハッハ!!」
アーネルは自分がジェノブレイカーに乗ることを想像して高笑いを上げている
「さて、そろそろ終わりにしてホバーカーゴの方も追いかけるとするか。…やれ」
アーネルは部下に通信を入れ指示する。すると集団よりもさらに後方いるモルガ達のミサイルポッドが開き上空に放たれる。
ミサイルはぐんぐんと上に昇っていきそして一斉にシュテル目掛けて降下していく。それにシュテルは気づいた。しかし気づけても今は動けずこのままでは直撃することを悟った。そして直撃すれば恐らくルシフェリオンは戦闘不能になることにも気づいた。
敗北を悟り衝撃に備え目を閉じ体勢を低くする。
そして数秒後に周囲で爆発の音が響くのを確認し、その衝撃に備える
…しかし衝撃は自分に響くことはなくいったいどういう事なのかと徐々に瞼を開ける。そして目の前にいるはずのない機体の背を確認し
「よぉ。謝罪ついでに助けに来たぜ」
言葉を失った
ついにゾイドforにライトニングサイクスが追加されましたね!最高ですよ!
走れ、走れコマンドウルフ…
俺と一緒に走れぇぇえ!!
追記修正しました。誤字の数がヤバい…注意せねば…