あいあむあいあんまん ~ISにIMをぶつけてみたら?~   作:あるすとろめりあ改

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タイトルが思い付かないのならネタに走ればいいじゃない……!


003 Phantom Blaz──

 四限目の授業を終え、IS学園にも昼休憩が訪れる。

 あれからチラリと左に顔を向ける度にこちらを見ていた箒が慌てて視線を窓際へと振り返らせる様子を楽しみながら過ごしていたが、案の定休み時間になるとトイレへと逃げ込まれてしまっていた。

 だがしかし、何時までもそれを黙って見過ごすほど俺も甘くはないのだ。

 箒が席から立ち上がる前に縮地で跳ぶように箒の席の前まで移動してから、自然な様子を装って話しかける。

 

 

「やあ篠ノ之さん、一緒にお昼を食べに行きませんか?」

「…………はい」

 

 

 観念した様子で俯きながら立ち上がると、黙って俺の背後に連なる様に歩いていく。

 それに対してクラスメイトの女子達は何を思ったか、ヒソヒソと口元を隠しながら何やら語りだした。

 聞き耳を立てれば聞き取れない事はなかったが、意識的にその音をシャットアウトして食堂へ急ぐ。

 なに、どうせなら変な噂が流れた方が好都合だ。

 

 

「さて、何にしようか」

「…………」

「B定食は中華か、これにしようかな。箒は?」

「Aの、焼き魚で……」

「箒は脂身が嫌いだからな。よし、じゃあ並ぼうか」

 

 

 何を隠そう、このIS学園に入っている学生食堂で料理を提供している会社も幸兄さんの経営する倉持技研の傘下グループ企業だったりする。

 故に、食券販売機のIC認証に例のカードを押し付ければ……通常は金額を表示する液晶部分が【free】と表示された。

 だからオプションも付けてしまう。ドリンクバーは文字通り飲み放題だ。

 

 

「さてと……お、ラッキー。この辺は空いてるな」

 

 

 カウンターで料理を受け取り、食堂を見渡すと席は直ぐに見つかった。

 壁際に向き合うように弧を描く半円形のテーブル席、ソファだけでも5,6人は余裕で座れる席であったが、不自然にポッカリとそこだけ空いている。

 恐らく、誘導されているのだろう。

 席はちょうど食堂の中央よりの場所であり、周りからも見やすいその位置は意図的に誰も座らなかったのだ。

 

 

(まあいいか、乗ってやろう)

 

 

 そんなご好意はこちらの良い様に受け取ることにした。

 突撃待機していたと思われる生徒達は箒の姿を見て動揺したのか、二の足を踏んでいる。

 まあいいや、邪魔をしてこないのならそれで。

 

 

「さて、箒?」

「う、うん……」

「さっきのクラス対抗戦の件、随分と俺を推してたよな」

「そ、そうかな」

 

 

 飽くまでもしらばっくれる気なのか、目線を散らしながらコチラを見ようとしない。

 あからさまに悪気がある証拠だ。

 ならば少し懲らしめてやるとしよう。いや、困らせてやると言うべきか。

 

 

「なあ、なんであんな事をしたんだ?」

 

 

 箒が背もたれに寄り掛かっていたのを幸いに俺は壁に手をつきながらグッと顔を近付ける。

 言わば、壁ドンの様な状態だ。

 それに対して周囲から黄色い悲鳴が聞こえたが、そんな物は無視した。

 

 

「うっ、あ……あの、一夏?!」

「聞いてるんだけど、どうなんだ?」

「私は言われた通りに……あっ」

「ふーん?」

 

 

 どうやら箒は誰かの差し金であんな行動に出た様だ。

 さて、しかしそんな事をするのは誰だろうか?

 まず幸兄さんは確定白。やるにしても事前に俺へ声を掛けてくる筈だ。

 一番ありそうなのは千冬姉。しかし動機がイマイチわからない。

 束さんは……どうだろ、何を考えてるのか分からない人だからな。

 

 

「で、誰に頼まれたんだ?」

「それは──」

「ねえねえ、織斑くん!」

 

 

 主犯を問い詰めようとしていた最中に背後から声を掛けられる。

 仕方ないので箒を解放して振り返ると、同じ一組のクラスメイトの姿があった。

 確か、日本人の相川さんとインド人のジェインさん、それにスウェーデン人のハーロウさんの三人。

 何とも、国際色豊かな顔ぶれだ。流石はIS学園と言うべきか。

 

 

「私達も一緒にお昼を食べても良いかな?」

「ああ、勿論だよ」

「よしっ!」

「やったー」

 

 

 はしゃぎ声をあげながら速やかに座る三人に対して、周囲の目はまちまちだった。

 苦虫を噛み潰したような表情を見せる者もいれば素知らぬ顔でそっぽを向く者、はたまた眉を鋭く細めて怨嗟の念を送っている者まで……

 何とも言えない、女の園の恐ろしさの片鱗を味わってしまった気もする。

 

 

「それでね織斑くん、単刀直入に聞くんだけどさ!」

「うん、何?」

「織斑くんって篠ノ之さんと付き合ってるの?!」

「ああ……」

 

 

 その話は、まあそう遠くない内に聞かれる事は分かっていた。

 教室でのやり取りや、今さっきまでの行為だって見ていたのだからそりゃあ気になるだろう。

 何せ、彼女たちは花も恥じらう年頃の女子なのだから。

 別に素直に答えても良かったのだが……どうせならこれに便乗して箒に更なる意地悪を仕掛けてやろうか。

 

 

「さて……それに関しては皆さんのご想像にお任せします」

「あ────っ」

 

 

 左手を伸ばして、箒の肩に手を回しながら軽く抱き寄せる。

 ちょうど寄せられた箒の顔は俺の胸に触れる様な形になっており……第三者から見れば少女漫画かラブコメのワンシーンみたいな光景になっているだろう。

 

 

「わっ、わ、わあああっ!」

 

 

 声にならない声が、食堂のところどころから漏れだした。

 これで俺達がかなり親しい友人である事は周囲に伝わっただろう……なんて、微塵も思ってはいないが。

 もしも本気でそんなに風に考えるやつがいたら是非とも会ってみたいものだ。そんな天然ジゴロが現実にいるとは思えないけどな。

 これはどう考えても「そういう風に解釈してくれ」と言っているようにしか見えない。

 

 

「あ、あー……そ、そっかあ!」

「あんまり、私達も邪魔しない方がいいね!」

「織斑くん、ま、また後でね!」

 

 

 結局、彼女たちは一口も食事に手を付ける事も無く席を離れていってしまった。

 まあ……気まずいだろう。突然、目の前でこんな物を見せつけられてしまえば。

 

 

「おっと、悪かったな箒」

「あ……ああっ、あ……あ」

「……ごめん、やり過ぎたかな」

 

 

 離しても悶えるよう震える箒を見ながら、俺は気まずそうに後頭部をかく事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 授業が終わり俺はIS学園の学生寮……ではなく、ゲートブリッジの住居ブロックまで来ていた。

 

 

「住所はここ…………ここ、かぁ──」

 

 

 携帯端末を片手に辿り着いた場所は、家というよりも寧ろ(やしき)だった。

 海に面した広大な敷地の中に悠然と構えられた巨大な建築物。

 デザイナー渾身の設計による近代アートの美術館……と言われた方が信憑性の高い建物が、今日から俺が住む場所である。

 そう、つまり……幸兄さんがかつて住んでいた大豪邸に住まわせて貰う事になったのだ。

 

 

「う、わぁ……」

『おかえりなさいませ、一夏様』

「お、おっとお!?」

 

 

 恐る恐ると邸を囲む門に近付くと、どこかにスピーカーでも設置されているのか声が響いた。

 初老の男性を思わせる声は、どうやら電子的に合成された音声の様だ。

 身構えていると、再び同じ声が語りかけてくる。

 

 

『私はこの家の管理を仰せつかっておりますハウスキーパーAIのA.L.F.R.E.D.と申します』

「アルフレッド、ね……」

『はい。家に関することであれば何なりとお申し付けください。それでは門を開きます』

 

 

 カチッという音と共に、アルフレッドの言った通りに3m近くある巨大な門が横へスライドした。

 その門を潜り抜けると、今度は自動的に門は閉ざされていく。

 どうやら手動では絶対に開かない構造になっている様だ。

 そしてそのまま、門と同様に自動的に解錠されたドアを開けて家の中へと歩みを進める。

 

 

「お邪魔しま──じゃない、ただいまか」

 

 

 慣れない感覚に戸惑いながら入れば、そこには広大過ぎる玄関が────

 

 

「おかえりなさい」

「…………は?」

 

 

 そこに、箒が待ち構えていた。

 

 

「さ、さぷらーいず……」

 

 

 などと、ふざけた供述をしており。

 

 

「え、なんで? どうして箒がここにいるんだ?」

「その……どうせなら一緒に住めって、言われて……その……」

 

 

 まさか、幸兄さんが?

 脳裏に幸兄さんの人相が過ぎって、そんな変な気の利かせ方をするかもしれない……なんて考えてしまう。

 しかし、幸兄さんの構築したセキュリティは生半可な物では無いはずだから、誰かの手引きがなければこうして家の中に入ることも不可能な筈だ。

 つまり、割と幸兄さんが手引きした可能性が高い。残念なことに。

 

 

「はぁ……」

「うぅ……」

 

 

 箒と対面しながら、お互いに気まずくなって俯きながら額を左手で覆ってしまう。

 我ながら、アレはやり過ぎた。

 お陰であれ以降は誰からも妙なちょっかいを出される事は無かったが……スマートなやり方とは到底言えない。

 

 

「とりあえず、何か飲むか」

「う、うん」

 

 

 このまま玄関で見合っていてもどうしようも無いので、リビングへの移動を促す。

 そうだ、取り敢えずは緑茶でも淹れよう。

 考えるのも話すのもそれからで良い筈だ。

 

 

「…………よし」

 

 

 幸兄さんに頼んで送って貰った荷物の中から急須とケトル、それから茶葉の缶を取り出して緑茶を淹れる準備をする。

 箒も比較的濃いめが好きだから茶葉は気持ち多めに……お湯も60℃付近の(ぬる)めにしておく。

 中途半端なくらいがいい具合に渋味も旨味も出て丁度いい。

 

 

「さあ、はいったぞ……あれ?」

 

 

 緑茶の入った急須をリビングへ持っていくが、しかし箒の姿は見えなかった。

 辺りに気配もない。

 もしや、自分の荷物を片付けに離れてしまったのだろうか。

 

 

「直ぐに冷めるから早く来た方がいいぞー」

 

 

 湯呑みに緑茶を注ぎながら独りごちる。

 温めに淹れたお茶は既に飲み頃で、この瞬間を逃すと途端に渋味が不快な程にまで増してしまう。

 故に早く飲んで貰いたかったが……無理強いはしない。

 

 

「まあ、とりあえず一服……」

 

 

 なんなら箒が戻ってきてから新しく淹れなおせば良いか、と考えて湯呑みを啜った。

 濃いめの緑茶が舌を刺激し、心地よい温かさが五臓六腑にしみわたる。

 これで身体にも良いのだから言うことなしである。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 しかし……そうやって浸って気を緩めていたのが良くなかった。

 完全に油断していた俺は背後から忍び寄る気配に気づく事が出来ずに────

 

 

「……えいっ!」

「な────?」

 

 

 背中から胸部にかけて、首に二本の腕が絡み付いていた。

 いわゆる“あすなろ抱き”と呼ばれるその行為。いつの間にか忍び寄っていた箒が、力いっぱいに俺を抱きしめてきている。

 つまり、その……殺人的な柔らかさと巨大さを誇る二つのおもちが……背中に押し付けられているのだ。

 

 

「お、おい箒! 何をっ!?」

「……一夏、実はこういうの好きだよね」

「──────!?」

 

 

 否定の言葉が口から出てこない程に動揺してしまうが、寧ろ肯定の言葉を漏れ出してしまわないようにするのだけで精一杯である。

 何度かこんな蛮行を悪戯で仕掛けられた事があるが、確かに口で否定しても自ら振りほどいた記憶がない。

 いや、しかし……これは果てしなく、拙いだろう。

 

 

「や、やめろって!」

「えー……私には公衆の面前であんな恥ずかしい事したのに?」

「それは……」

 

 

 そう言われてしまうと、俺も強く言い返せない。

 箒はそんな俺の反応を良いことに、徐々に行為をエスカレートさせていった。

 

 

「あとさ……」

「な、なに?!」

「一夏って、この首筋の横から鎖骨にかけてのライン……擽られると弱いんだよね」

「ぅあ────っ!」

 

 

 言うやいなや、フッと首に息を吹き掛けられる。

 耐え難い感覚に思わず、飛び上がる様に身体を震わせてしまう。

 それでは飽き足らず、箒はチロっと舌を突き出すと……鎖骨を小さく小刻みに、舐め始めた。

 

 

「ひゃあ?!」

 

 

 えも言われぬ不可思議な感触に、思わず裏声で叫んでしまう。

 甲高いその声は、さぞ愉快だっただろう。

 この角度からは見えなかったが、箒が怪しくニヤリと笑った気がする。

 

 

「うぇへへへ……」

 

 

 そうして暫く、俺は悶え震えながら……箒の反撃をただただ耐え続ける事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「うぇへへへ……流石は箒ちゃん、私の妹だねぇ」

 

 

 この世のどこか、薄暗い部屋の中で唯一の光源であるディスプレイを眺めながら一人の女性が怪しげな笑い声を響かせていた。

 その画面には、床に倒れ付した男の首筋を執拗に舐めまわしている女の映像という随分と子供の教育に宜しくない光景がリアルタイムで映し出されている。

 

 

「ほらね、私の言った通りでしょ……よし、そのまま押さえ込んじゃえ!」

 

 

 さながらプロレスの応援でもしているかの様な熱の篭った掛け声を、一方的にディスプレイへ投げ掛けていた。

 勿論その声が画面の向こうへ届く事は無かったが、そんな事はお構い無しと言わんばかりに叫び続けている。

 

 

「いいね、いいね……私のプロジェクトも着実に進んでいるよ」

「へぇ、どういうこと?」

「フフフン、なぁーに可愛い妹の恋路の為にちょっと後押ししてるだけ────え?」

「なるほどねぇ」

 

 

 穏やかで聞き馴染みのある声が、背後から聞こえてきた。

 それまで狂乱するかの如く歓喜の声をあげていた女性は、錆び付いたブリキのおもちゃの様にゆっくりと背後へと視線をズラしていく。

 そこには、腕を組みながら慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべる……彼女の夫の姿があった。

 

 

「な、どうして、ここに?!」

「さっき向こうの家に帰ってたんだよ。ただいまーって言ったのに返事がないから探しに来たんだ」

 

 

 トン、と男は妻の肩に手を置いた。

 そこにはまさか握り潰そうなどという魂胆も無ければ力もなく、ただただ優しく暖かな手が添えられているだけ。

 しかし、だからこそ彼女は底知れぬ恐ろしさを感じるのだ。

 夫の事を誰よりもよく知るからこそ、笑顔を貼り付けている時は中等度の怒り……既に形勢を打開するのが困難であると悟ってしまう。

 

 

「手助けや後押しが悪いとは言わないけど、これは流石に悪趣味じゃないかな?」

「や、あの……これは……」

 

 

 どうせなら状況を観たいと、映像を隠し撮りするなんて欲張ったのが良くなかった。

 今も尚、ディスプレイからは痴態が映し出されている。

 それも他ならぬ身内の物だ。こういうのは、夫の神経を逆なでするだけなのだ。

 

 

「少し……頭、冷やそうか」

「あ────」

 

 

 終わった。

 理解した彼女は、静かに眼を瞑って総てを諦める。

 

 その日の夕飯、食卓には暫く料理が一人分だけ欠けていた。

 




もう全体を通して悪ふざけでしかないエピソード。
安心してください、スケコマシな事をした一夏くんはきちんと報復されました。
具体的な内容については全年齢対象的な配慮から自主規制させて頂きます。

え、めくったのかって?めくったかもねえ(遠い目)
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