深海ニ咲ク華   作:碧海

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第2話

3、夢見ル乙女ハ今日モ生キ急グ

 

「ひゃっ!?もうこんな時間!?」

ぼーっと歯磨きをしてぼんやり時計を見るとちょっとありえない時間をさしていた。

「いってきます!」

と母親に告げるとニコッとして行ってらっしゃいと返してくれた。

 

隣の家の2階は今日もカーテンが閉まっている。

私は遅刻しそうな事を思い出し思いっきりダッシュ、朝の街を駆け抜けていった。

 

幸いにも歩きで登校できる範囲に学校があるので飛ばせば数分とかからずに着くのだが……

 

(悪魔の信号……!)

 

運が悪いと大幅に時間をロストする信号機、通称悪魔の信号。

急いでいる人はもちろん別段用事のない人までイラつかせるという厄介者。

今日は運のいいことに青だったので難なくスルー。

 

ガラガラと勢いよくドアを開け「セーフっ!」と叫ぶとクラスメイトはおはよーと気の抜けた挨拶をしてくれる。

……?机の中に何かが入っている。ギュウギュウに詰め込まれているが案外するっと取れた。兎のぬいぐるみ?

目がボタンで出来ていて

(これ、パッチワークって言うんだっけ)

不気味でどこか愛嬌のある兎のぬいぐるみが詰め込まれていた。

「これ誰のー?私の机にはいってたんだけど…」

クラス一同不思議な顔をして知らないと首を傾げている。

「まぁいいか。さっ、1時間目は体育だし気合い入れて頑張るぞー!」

 

 

『貴女ノ願イを叶エチャウヨ。ウフフ。』

 

 

今……何かが聞こえたような……

 

(まぁどうでもいいや!)

今日もご飯が美味しいし学校は楽しい!

こんな些細なことも何故か嬉しい!

(ああ!毎日幸せ!)

一つを除いて……

 

 

4、不良少年ハ夜ノ街ヲ牛耳ル

 

煩わしい日中の光をやり過ごして時は既に夜。

本来なら俺の様な年齢の子供は出てはいけないという大人達の時間、こんな時間に家を出ていくなど普通の家庭ならば止められる事だが全てを諦めたウチの母親に止める気力なんて無い。

 

この海に面した灰色の街は表の顔と裏の顔に分かれる。

表の顔は昼間と大通り、裏の顔は裏大通りと呼ばれるやや寂れた道の周りである。昼間は中華街と至って普通の通りなのだが夜になると一変、俗に言うヤンキーの屯する薄汚い通りに早変わりする。

 

皆がここに集まるのは何も雰囲気だけではない。

夜になると目の痛くなるようなネオンの看板を掲げた店が立ち並ぶ歓楽街があるおかげで迷い込んだおっさんや客として来た男達から「狩り」をすることが出来る為だ。

 

こんな無法地帯故に警察なんてものも滅多なことがなければ近づかない。

 

夜のこの街には「派閥」がある。現在最強の「ユキムラ」と呼ばれるグループとあとは適当な雑魚。

 

この裏通りに来てから俺は適当に属しているがなかなかに居心地のよいものだ。俺自身は特に金に困っているわけでもないので略奪等はしないがグループ同士の闘争はゾクゾクした何かを感じる。

もっと大暴れしたいがそんな相手はなかなか居ない。

 

今日もいつも通りこの裏通りに訪れる。グループの集会所として使っている袋小路、自分のイスにつこうとすると何かが置いてあることに気づいた。

兎のぬいぐるみ……?やたらとワタが詰まって少し硬いがその他は特に気になるようなものがないただの兎のぬいぐるみ……

 

趣味に合わないのでどかそうと触れる

 

『荒レテルネェ、モット暴レタインデショ?好キニシナヨ』

 

頭の中に低い男の声が響く。気持ちの悪さによろけてしまうが幸い他のメンバーは居ないので失態を見られることは無かった。

(不愉快だ……誰だこんなもん置いたの)

端にポイと投げ捨て、イスに座る。

そろそろ他のメンバーも集う頃だろう…噂をすれば

 

「ユキムラさん、すみません遅れました。」

「別に待っちゃいないさ。」

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