深海ニ咲ク華   作:碧海

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第3話

5、賢イ猫ハ高ミノ見物

 

歓楽街の中でも最奥にあり一際人の目を引く大きな五重塔を象った建物。

アタシはその城の1番上で街を眺めていた。

 

「はぁ、退屈ね。」

 

この建物はもちろん殿方がそういうコトをする場所。

なのだがこの城のルールのお陰で最近は売上こそ上々なものの最上階までくる殿方が居ないのである。

 

コンコン、とノックの音が響く

「入りなさい」とアタシは告げる。

「黒猫お姉様、先程来た方も…その1…階で朽ちてしまいました」

そう、下がって頂戴と部下を払うとアタシはため息をつく。

 

この城は全部で5階建て、お客である殿方は金を払い階層事に15分間女の相手をする。

そこで達しないかまだ立ち上がれるようであれば次の階へ、移動のスパンで復活できると考える人が多いがそこは彼女達もプロだ。

手際よくお金と精を搾り取るお陰でアタシが相手をする機会はほぼほぼない。

 

アタシはイスから立ち上がり、窓のないベランダに出る。

今頃この街を支配していると勘違いしている少年が駆けずり回っている事だろう。

仕事があまり来ないアタシの数少ない楽しみである観察と支配。

この街はあのガキのものなんかじゃない。アタシのもの。

 

気が済んだのでイスに戻ろうと振り向くとイスの上に何かが座っている。

近づいて見てみると真っ黒な兎のぬいぐるみが置いてあった。

 

(クッションがわりにして気づかなかった…?でもこんなのあったかしら…)

 

疑問に思ったがデザインが気に入らなく不愉快だったのでゴミ箱に捨てようと持ち上げると

 

『足リナイモノヲ与エマショウ。僕ニ任セテヨ』

 

途端にアタシはそのまま倒れ、眠りについてしまった。

 

 

6、然レド男ハ諦メル事ヲ覚エズ

 

昔から諦めたくないきらいがあった。子供の頃の記憶は木登りが色濃く残っている。

どう頑張っても登れなくて惜しいところで落ちて怪我をする。でも登りたい、そんな気持ちにかられ行動していた。

 

今は昔ほど諦めが悪い訳では無いがそれでも人1倍、と言ったところだろうか。

 

俺は幼い頃に両親を事故で亡くしている。それも親戚の悪意ある細工により親を失ってしまった。

 

金持ちの叔父家族は業績を出し始めた家の父親が気に食わなかったのだろう。殺すまでは行かなくとも大怪我をさせ、再起不能を狙っていたらしい。

両親に愛され、俺もまた両親を愛していた。

母親に庇われ運良く生き残った俺は数年後に細工の真実を知ってしまった。仕組みなんて知らないしどうでもいい。警察が気づけなかったこともどうでもよく、その頃から復讐のことばかり考えていた。

 

その復讐は思いのほか簡単に終わってしまった。

 

その叔父家族しか引き取り手がいなかった。

数年間大きな家で暮らしていた俺は真実を知り、思いきり階段から、突き落とした。

 

よく肥えた叔父の落ちた衝撃で2階の柵の横にある窓の前に置いてあった人の頭ほどの植木が落ちてきたのは愉快極まりなかった。

 

人が来る前に部屋に音を立てずに戻り、思い出して笑っていた懐かしい記憶。

 

……思い出話に花を咲かせるのは終わりにしよう。俺は今日の金稼ぎが終わったので塒に帰る所、今日のターゲットは数週間もかかって苦戦した相手だったがやっとケリがついたのだ。

疲れたから早くねむりたい……

 

歩くこと15分間、現場からはそれなりに距離があるため安心だろう。

塒につき、さっさと寝る支度をして布団を押し入れから出して布くと中から兎のぬいぐるみが出てきた。

 

「胸に穴が空いてる…」

 

誰がやったのだろう?なぜ胸に穴が空いているのだろう?罠だろうか?など色々な思考がめぐり混乱するが足でつついてみて軽く、特に仕掛けもなさそうなのでどかそうとすると

 

『悲シイネエ、君、ウチガ助ケテアゲルヨ』

 

と頭の中に甲高い声が響く。五月蝿い。

しかしそんなことで眠気が覚めるわけでもなく、そのまま倒れ込むように眠りについた。

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