7、少女ハ願ウ、安寧ト平穏ヲ
暖かな日差しで目覚める。
体は上手く動かず、今日も駄目かと私は落ち込む。
15歳の誕生日を迎えた日、運が悪くも病気にかかってしまった。
その病気は病気にかかりやすくなるという症状と一部の体の動きを阻害するという病気だった。
医者たちはお手上げ、私を一番に思う両親は悲嘆に明け暮れた。
全てが動けないわけではなかったのが幸いだった。
目は動くし瞬きもできる。食事も少し不便だが自分ひとりでも出来る。
腕が少しずつしか動かないため車椅子も意味をなさず、異動がほぼ出来ない。
あれから3年が経ったが流石の私も慣れてきた。それと、徐々に動けるようになる箇所も増えてきている。
病気にかかってから引っ越してしまい、学校の友人達とお別れ。
新しい地では学校に行くことすらままならず1人、寂しい日々を送っていた。
両親はよく気にかけてくれるが共働きのため日中はひとりで過ごす。
食事を取ろうと頑張って体を起こし、机に向きを変えて食べる。
この動作だけでも1分はかかっている。
ふと横を見るとベッドに立てかけられるように置いてある兎のぬいぐるみ。
母親がくれたのだろうか?暖かな笑顔をして佇む兎のぬいぐるみを抱き寄せようと手を伸ばす、触れた瞬間。
『可哀想ニ、僕ガ守ッテ上ゲタイナァ、クスクス』
と聞こえた。静かな部屋に異変はなく、兎もそのまま何も変わらない。
何だったのだろうと食事に戻る。
ご飯、美味しいなぁ。
暖かな日差しを背に受けながら大好きな両親と大好きになったこの街を思い浮かべ、今日も1人生きていく。
8、肥大化シタ街ノ礎ハ既ニ失ワレタ
この大きく発展した街は昔から花の街と呼ばれている。
それとは別として正式名称があるのだがとにかく花の街なのだ。
しかしこの街の今を生きる人達は揃いも揃ってその由来を知らない。
知っているのはこの街が花の街であることだけ。
別段、自然に富んでいる理由でもなく花が咲き乱れていることも無い。何故?と思うことはあっても調べない、知ろうとしないのがこの街の住民達。
例外とするなら僕だろうか。僕は知っている。
まあそんなことはどうでもいいのだ。
最近になって見かけるようになった少女が気になってしかたない。
ほぼ毎日昼になると出てきて同じ場所に座り込む。
少女の家からあまり遠くない場所にある小さな空間。人気はないのによく整理された芝生にビルの隙間から入り込む日差しを浴びている少女は眩しそうで、それでいてどこか嬉しそうに日向ぼっこをして帰っていく。
僕はほかの人とは違う特別さを彼女に感じていた。この感情が何なのかは僕にも……わからない。