深海ニ咲ク華   作:碧海

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6話

4、夢見ル乙女ハ悪ヲ切ル

 

『ーーー今朝のニュースをお伝えします。昨晩繁華街の暴力グループのメンバーと思われる五人組が警察署前に縛られた状態で…』

 

「ふふ、正義の味方がいるのね。こんな街にも格好いい人がいるなんてね。」

 

お母さんは私の朝食を用意しながらニュースを見て言った。

「えへへ〜。」

「なんであんたが照れてるのよ。ほら、早く食べて学校行って来なさい?」

 

はーいと間の抜けた返事をして私は朝食の目玉焼きとトーストを一気に頬張る。

 

「行ってきまーす!」

元気に飛び出すとお母さんは優しい笑みをたたえながら行ってらっしゃいと手を振った。

 

清く明るく楽しくをモットーに学校生活を送っている私はモットーに反することなくいつも通りの学校生活に身を委ねる。

 

しっかりとノートを取り、また新しいことを学べると喜んでいるともうすでに4時間目が終了するチャイムが鳴り始めていた。

 

大好きなお母さんが作った大好きなお弁当を一瞬で平らげて私は人目につかないように屋上へ登った。

 

ドアに鍵はかかっていないものの、とても高い策が展開される屋上は風が吹き清々しい気持ちにしてくれる。

 

策によりかかり、昨夜のことを考える。

 

 

 

ーーーー昨晩まで遡る

 

『まじかるーーーチェンジ!』

 

人気のない路地裏で私は『変身』をした

 

「す、凄い!本当に私が…魔法少女になったの!?」

 

フリフリのドレスに身を包み、黒髪ツインテールは金髪のポニーテールに、顔つきもかなり違うように見えるが私の意思で動くこの体は紛れもなく私自身であった。

 

体が軽い今ならなんでもできそうな気分に浸っていると表の街とは反対方向、裏の歓楽街の方角に柄の悪そうな男たち5人組が歩いて行くのを見た。

(あれは中くらいの強さだって噂のフーツ組…今日も悪さをするつもりなのかしら?懲らしめてあげないと!)

 

そう思った刹那、私の体は既にそこにはなかった。

 

自分のことながら突然の出来事に驚き半ば意識を失ったような状態で五人組をどこからか生み出した縄で捕縛し、警察署の前まで引きずり回し放り投げていた。

 

 

 

 

(昨日の夜はたまたまうまくいったけどちゃんと使いこなさないとなぁ…)

手に持ったうさぎ型の手鏡に何か言いたげな表情を向ける。

鏡に映るのは当然制服を着た私の顔。

 

悩んでいても仕方ないと今晩も練習がてら裏の街へ出かけることを決意した。

 

 

 

5、光溢レル夜ノ街ハ光ヲ与エ無イ

 

昨日のこと、弟分の率いるチームが何者かに襲われ、警察に突き出された。

運の悪いことに襲われた5人は顔が割れている程度にはその名が知れ渡ってしまっているメンツ故に一発逮捕となってしまった。

 

(敵対勢力が隠し球でも持ってやがったのか…?)

しばし考えるもその必要はないとすぐに思い出す。

その顔に不敵な…いや凶悪な笑みを浮かべながら

 

「お前達、昨日のことは知っているな?フーツのメンバーを暫くうちで預かる。昨日今日で来るかもしれないから警戒しておけ。ホウレンソウを怠るなよ」

 

「「はいっ!ユキさん!」」

 

いい返事だ。一般人からしたら『悪いヤツ』なのだろうが俺からしたら可愛い弟分達だ。

前回は警察に突き出されただけだったが今回どうくるかわからない。守る力があるのは俺だけだ…。

 

 

 

ズルく狡猾であれ

 

俺を救った恩師はそう告げ、少しの知恵だけを授けて去っていった。

彼は完全に裏の人間であった。

自分の信じるものだけを信じ突き進め。仲間も大事にな、とも言っていた。

彼の教えを守りこの裏の頂点に立つことができた。

 

仲間を守らなければ彼に顔向けできない…

 

 

時計の針が夜10時をまわったころ、弟分その2のタケオが息を切らし俺の元へ駆けてきた。

 

「ゆ、ユキさん!リーダーが…リーダーがっ!」

ついに来たようだ。

「他の奴らはどうした。全員やられたのか?」

「す、すみませんユキさん。オレじゃ到底かないそうにねぇです…」

 

その言葉で全てを理解し告げる。待っていろ、カタをつけてくると。

 

 

 

 

6、月ヲ臨ム夜ノ街、嘆キノ乙女ト狼1

 

遡ること少し前

 

不良のたむろする路地裏

この道を奥にぬければ裏の街

 

月を背景に突然現れる眩い少女

 

口を開き呆ける不良達

 

「貴方達!もう悪いことはさせない!私が成敗するわ!」

 

不良たちは開いた口が塞がらないと言わんばかりにこちらを見つめている。気後れしているようだ。

(今しかないわね!)

思ったが刹那、体はもう動き出していた。

 

まずは一人、リーダー格と思われる男を落とした。

もちろん峰打ちだが。

 

二人目、未だ状況を理解していない男に蹴りを入れる。

壁にめり込む。

 

三人目、対応しようとするも慌てふためき男の拳は空を切る。

両手両足を脱臼させた。

 

四人目、臨戦態勢に入るも戦力差は圧倒的と言えよう。壁に止まる蚊を潰すかのようにみぞおちに重く膝蹴りを入れる。

 

五人目、五人居たはずだがいつのまにか居ない。逃げられたようだが関係ない。追いかけ潰すのみ。

 

「ふふ、逃げても無駄だよ?今出てきたらちょっと緩く縛るからおいで?」

 

 

空気が

 

変わった

 

 

「逃げないさ。仲間をやったのはお前で間違いなさそうだな。」

 

路地の曲がり角、敵の姿は見えないがキラキラと光が差し込んでいる。

 

『オーバーチェンジ』

二人しかいない路地に静かな声が響く

 

禍々しい瘴気を放ちながら角から姿を現した化け物に相手はすこし気圧されているようだ。

 

「なん…なの…これ…?」

 

人間からかけ離れた筋骨隆々とした体躯、月の光が反射して露わになる緑がかった黒い肌、血に濡れたような紅い爪、捻れた二本の巨大な角。

 

そして体の大きさからは考えられない速さ。

 

(ちょっ、速いって!)

紅の軌跡が鼻先を掠める。反応が少し遅ければ私の顔はクレーターにされて居ただろう。

 

負けじとこちらも地に両手をつきそのまま回し蹴りを放つ

手応えは…無い

 

 

7拳戟ト凶爪ノ乱舞、ソシテ。

 

 

『ホラ、魔法少女ト言エバアレガアルデショ?』

 

頭に響く声、激しい死闘の中考え事に力を注がなければいけなくなるとは。

(なるほど!アレのことね!)

合点がいったかのように距離を取り構える。

 

「まじかるーーーすっとらあぁぁぁぁいく!!」

 

悪魔に向けた掌から薄いピンク色の星を纏った光が降り注ぐ。

 

悪魔は少し驚いたようだが地面に片手を当て土とコンクリート、そして瘴気の混ざった防壁を展開した。

 

ビームに触れた瞬間2つのエネルギーの塊は消失したものの、お互い次の攻撃に移る。

 

攻撃、避ける、弾く、撃つ、攻撃、攻撃、いなす。

お互いにクリーンヒットをしないまま戦いは拮抗する。

 

心なしかさっきかすった鼻先がヒリヒリと痛む気がするが気にしては居られない。

 

 

…?

辺りが暗い。先程登場した時より、圧倒的に。

悪魔の体から出ている…?いや違う。

曇りの夜ではなく黒い霧のような…

 

「ねぇっ、貴方回りみえてないのっ!?」

 

悪魔は答えない。ただ襲い来るのみ。

 

仕方なく応戦するも辺りには霧が立ち込める。

 

「ソイツに何を言っても無駄よ?敵を殲滅するまで意識が戻ることはないの。諦めなさい」

 

この場ではあり得るはずのない高い声。私たち二人以外の何物か。

 

戦いに夢中になって居て気づくことが出来なかった。

 

私たちは何者かに囲まれている。

 

 

8、月ヲ臨ム夜ノ街、嘆キノ乙女ト狼2

 

「流石に貴方達には効かなかったみたいね。」

 

敵を把握するためにあたりを見回すと人の形をした『何か』に囲まれている。

所々風穴があいていたり、腕のないものも存在する。

まるで映画に出るゾンビのような。

 

私はまた過ちを犯した。

 

ほかに気を取られすぎて居た。

 

下腹部を貫く悪魔の大腕。

 

左手でつかまれる私の頭。

 

なにをするつもりなのかは容易に想像できた。

 

私は『脱落』してしまった

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