今回は主人公君の喫煙シーンと誰かの愚痴が入ります。
それと永琳の技術の片鱗が見られます。
では、第四話どうぞ
現在、修練場のような場所には軍の全員と俺と俺が戦った三人がいる。もっとも三人は白目を剥いて伸びているだけだが。さてと、試験は終わったわけだが………何だかすごい見られてる。対人戦なんか結構な頻度でやってたから慣れてんだよね。喧嘩術ってやつ?投げ技とかは独学だけど。
どうしようこの状況。何か言えばいいのだろうか?とりあえず試験の結果を聞こうか。
「あの、終わったんだが、結果は?」
「…………っ!あ、ああ、結果は逐って連絡する。今日のところは帰ってくれて構わない」
「ん、そうか、じゃあ俺はこれで」
帰っていいと言われたから素直に帰ることにする。実際、ここに居てもまだ入っていない俺はやることがないからな。しかし、何だろうか、こう口寂しくなってきたな。何かないかと服のポケットを漁っているとタバコとライターが出てきた。
「……………」
軍の庁舎を出て少しした辺りでタバコを一本咥え火をつける。大きく吸い込んで紫煙を吐き出す。慣れ親しんだ一連の動作で口寂しさは消えた。うん、やはりこれだ。
生前もこうして一服していたのだろう。その辺は少し曖昧だが。どうやら消えているのは名前と言う基本情報だけでなく細かい部分まで忘れているようだ。こうして何かきっかけがあれば思い出すのだろう。幸い、この都市にもタバコが存在しているので違和感はないだろう。問題は俺が何で持っているかだがその辺はいいだろう。
未開封のものが落ちていたから拾った、とでも言っておけばいいだろう。
家に着いた。吸い殻はやはりポケットに入っていた携帯灰皿に入れた。自宅はいつの世も落ち着くものだな。何も警戒せずに済むからな。と思っていたらチャイムが鳴った。誰だ?
少し気だるげに扉を開けると八意が立っていた。
「あら、疲れてそうね」
「ついさっき帰って来たばかりだ。それで、何の用だ?」
「あなたにこれを渡しておこうと思ってね」
渡されたのは前世よりも格段に進化しているだろう携帯端末だった。ホログラムで画面が出てくるようになっている。操作も使用者と設定した者が念じれば動くように鳴っているだとか。メールも音声として再生されるらしい。何それハイテクすぎ。
て言うか明らか過去の時代なのに技術は現代以上ってどう言うことなのこれ。
「一応私の補佐だから、連絡手段が無いと不便なのよ」
「了解、持ち歩いてればいいんだな?」
「ええ、急な連絡とかもあるから、お願いよ」
それだけ言うとまた出ていった。にしても大違いだな。さてと、そろそろ昼飯時なんだが、金ってどうすればいいんだろうか。これだと助かっても飢え死にだぞ。
危機感を抱いていると再びチャイムが鳴った。忘れ物でもしたのか?と扉を開けるが、そこにいたのは意外なやつだった。
「月夜見?何でここに?」
「いやなに、いつでも来ていいと言われたからな、早速来てみただけだ。それにそろそろ昼だからな」
そう言って手に持った袋を掲げる。中には食材が入っている。それと酒。
「おい、昼間っから飲む気かよ……」
「うむ、慣れない場所でお前の気苦労が絶えないと思ってな。せめてもと」
「ま、その気遣いは感謝するよ。上がってけよ、どうせまだ食ってないんだろ?」
「察しが良くて助かるぞ。お邪魔する」
さてと、これなら色々と作れそうだ。ついでに金についてどうすればいいか聞いたら月夜見がどっちゃりとくれた。おいおい、トップは特定の誰かに肩入れするのはNGなんじゃないのか?お前がいいって言うならいいけどさ。ま、それはいいとして。
何を作ろうか。まあ、酒があるから肴に近いものになっちまうんだが。て言うか半分それ目的で来てるとこあるだろこいつ。
「ほう、料理できたのか」
「まあな、簡単なものしかできないけど」
「いや、唐揚げは簡単なものとは言わないぞ」
そうか?卵まぶして粉つけて揚げるだけだろ?まあ、それ言ったら信じられないものを見たような目で見られた。解せぬ。だって俺はホントのことを言っただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「酒もあるから肴中心だぞ」
「無論だ、それが目的で来たんだから」
「おい」
飯じゃなくて飲みが目的って言っちまったぞコイツ。実は俺も久しぶりに飲むから結構楽しみだったりする。
それでも昼間っからはないと思うが。まあ仕方ないだろうさて、一通りできたな。
「ほれ、食え。そんで飲んでゲロっちまえ」
「言い方が気になるが……まあいいか。ありがたくいただこう」
月夜見が唐揚げに箸を伸ばす。カリッといい音を鳴らして食べる。少し目を見開いている。
「美味しい」
「そう言ってくれると作った甲斐があるな。もっと食って飲め」
唐揚げの他に焼き鳥、天婦羅、枝豆。枝豆はパックのやつをそのまま出している。塩漬けがしっかりとしているから酒と合う。四人掛けの机で向かい合って座り、食べ飲み進めていると不意に月夜見が口を開いた。
「少し、聞いてくれないか?」
「ん?」
焼き鳥を食べながら応じる。月夜見は箸を置き、酒を飲んで話し始めた。
「皆は私のことを月夜見様と呼び、慕ってくれている」
「おう、そうだな」
「だが、ナナシ、お前が言った通り私は本当の月夜見様ではないのだ」
「知ってる」
神妙な面持ちで話す月夜見にできるだけ素っ気なく相槌を打っていく。不満そうな顔などはせずに月夜見はポツポツと話す。
「私は、元を正せば一人の人間だった」
「ほう?」
「ただ、少しだけ周囲と違っていただけの人間の女だった」
「…………」
少しだけ周囲と違う。そこだけで少し表情が固まり、月夜見の雰囲気が暗くなる。
「成長するに連れてそれはより顕著になっていった。容姿が、伝承にある月夜見様とそっくりだと、言われたよ」
見た目が同じだったから。それだけの理由で月夜見は月夜見として奉られるようになったと言う。
普通の人間に対する行いじゃあないな。昔は神様信仰が重んじられていたからそれが行われての不思議ではないのだが。それを一人の女に背負わせるのはどうかとは思うわ。
「それからと言うもの供え物が運ばれたりと大変だった。神の生まれ代わりじゃないと言っても聞く耳を持ってくれなかった。永琳もその内の一人だったよ」
驚いた。あいつなら最初っから気づいてそうだったんだが。八意って言ったら月夜見と同じ日本神話の神の別名じゃなかったか?ほら、あの八意思兼神、だったか?の
頭良さそうだったし、ここをここまで持ち上げたのもあいつだろう。
「そしてある日、夢を見た」
「夢?」
「ああ」
夢の単語に反応する。つい先日、と言うか昨日の夢の内容を思い出したから。
「薄暗い空間に光輝く一人の男が立っている、そんな夢だ」
「不思議な夢だな」
「ああ、そしてその人はこう言った。『そなたに過酷な運命を背負わせたことを許してほしい』と」
それを聞いて理解する。なるほど、夢に出て来て謝罪されたのか本物の月夜見に。神話では性別は出てなかったが一説では男神だって言われてたしな。
「それからは少し頑張れるような気がしたよ。ただ、私は本物ではない。故に失敗も良くしたよ。だがそれは皆には珍しいこともあるんですねと言われるだけで咎められなかった。皆は私のことを美化しすぎていると思うのだ。しかし………」
「……神を侮辱したようで言うのが嫌だった?」
「っ、ああ、その通りだ。既に何十年と一緒にいるものもいるのだからそろそろ、誰か違和感を覚えてもいいんじゃないかとも思っていたが、誰も気づかない。」
少し声が震えてきている。心なしか目元にうっすらと光る何かが出てきている気がする。気にするな、なんて無責任なことは言わない。言いたくない。これは一人の人間が背負うにはあまりにも酷な出来事だから。容姿が似ているからというだけで神と同一視されて挙げ句、誰にも気づかれない。
「私は、ただ、人として生きていたいのに」
目をぎゅっと閉じて俯いている月夜見。まったくこんなに溜め込むまで我慢してたのか。都市の男どもは男の風上に置けんな。こんな綺麗な女に気づかないなんてな。
俺はため息を吐いてガタッとわざと椅子を鳴らして立つ。 月夜見の隣の椅子に座り頭に手を伸ばす。触れた瞬間ビクッとしたが抵抗は特にしない様子。
「頑張ったな、なんて言葉は軽く聞こえて言いたくはないんだが敢えて言わせてもらう。今まで良く頑張ったな、俺だったら途中で投げ出していたかも知れないことだ。頑張った分、堪えたことも一杯あっただろう。
なら今ここで全部吐き出しとけ。この場にいるお前は都市のトップの月夜見じゃない。一人の人のお前だ」
髪を梳かすように撫でながら言う。これ以上溜め込んでしまえばこいつはいつか壊れてしまうだろう。だがそれはダメだ。人の勝手で神として祭り上げられ、全人類からそう認識される。常人であればその何十年と言う月日は堪えられない。正直常人が何十年の月日を何故生きられるんだって話だが、その辺は聞くのは野暮ってもんだ。大方、ここを覆っている八意が作った結界がそう言うのを弾いてるんだろう。
月夜見の肩が震えている。机の上にポタポタと透明の雫が落ちている。はぁ、全く
月夜見の頭を抱き寄せる。抵抗は全くない。
「今は何も考えるな。ここなら誰にも聞かれないし見られない。」
服の胸の辺りが湿っていく感覚がする。最初は嗚咽が聞こえる程度だったが次第にそれは大きくなり、泣き声へと変わっていった。そこにあったのは都市のトップである月夜見ではなく、ただ一人の人間にしがみつき泣きじゃくる一人の人間の姿だった。
いかがでしたか?早速月夜見様が愚痴りに来ました。
やはり一人くらいは気づいてほしかったようですね。
本物の月夜見様は男神である説を採用しました。ぶっちゃけどっちでも良かったんですけど。
次回はどうなるんでしょうね?
それではまた次回