東方狩猟日記   作:犬兎

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このお話は少し未来の幻想郷が舞台です。ゆえにロリっこが大人になっていても泣かないって人だけが読んでください。
キャラ設定に関してはいつかまとめて解説します。


アイスソード・チルノ編
氷の少女


 

 

 モンスターと呼ばれる存在が幻想入りし、人間の里がモンスターによって滅ぼされてから既に十数年の月日が流れた。住む場所を失った人々はそれぞれに新たな土地へと移り住み、それぞれの手段で新たな文化を築き上げ、それぞれの形でモンスターとの共存を図っていた。

 モンスターと共に生きるもの、モンスターから逃げるように土地を点々とするもの。―――そして、モンスターと戦うもの。

 

 これはモンスターたちが生息する幻想郷を生きる妖怪と人間の生活を描いた物語である・・・。

 

 

 

東方狩猟日記

 

 

 

 幻想郷の中央部に位置する小さな森には、昔から妖精が住んでいるという噂がある。

 本来なら道に迷うことなどありえないくらいの狭い森であるのだが開拓されていない未開の森であるがゆえ、非常に入り組んだ構造をしている。当然それだけ道に迷いやすく、しかし人々はそんな小さな森で迷ったなんて口が裂けても言えないものだから「妖精の悪戯のせいだ」と責任転嫁していたという。そんなことを言われ続けた森はいつしか「妖精の森」と呼ばれるようになっていた。その名前を聞きつけた妖精どもは本当に妖精の住処なのだと勘違いし、次第にその場所には本当に妖精が集まるようになったという。

 その日、妖精の森は珍しく静かだった。普段ならばあちこちで妖精が飛び交っていて騒がしいものなのだが、今日はまるで普通の森であるかのよう。氷精のチルノはそんな森の小さな異変に驚きながら、森の中心にあるひときわ大きな大樹―――精霊の木へと向かっていた。

 精霊の木はこの森の守り神。ここに住む妖精たちは皆、精霊の木の加護を受けて生きている。チルノはちょっとした訳があって森を離れていたのだが、久しぶりの帰郷とあって第一に挨拶すべき場所であると思い、そこへ向かっている。

 しばらく代わり映えのない森の風景が続く。それから数分ほど歩いていると、ぽっかりと森が開けた場所がある。精霊の木を守護する妖怪の住処だ。住処はきれいに開拓されていて、周囲には精霊の木の加護をふんだんに受けた畑と妖精たちの遊び場がある。そして見上げるとそこには雄々しく聳え立つ、巨大な木。これが精霊の木である。

 精霊の木の周りも例に漏れずとても静かだった。こんなに静かだとかえって気味が悪いかも、なんて思いつつチルノは精霊の木の前に立ち深々とお辞儀する。

 

「ただいま戻りました」

 

 チルノの長く氷のように艶やかな髪がさらりと揺れた。精霊の木からは何の返事もない。チルノは木を見上げ「すっかり嫌われちゃったか」と苦笑いしていた。

 

 嫌われ者の氷精が、大妖精なんて出来るはずない。

 十年前の言葉が頭をよぎる。

 私は、あの頃と何も変わらない。

 

 「嫌われている自覚があるのなら少しは好かれる努力でもしたらどう」と背後からキツイ言葉が飛んでくる。チルノが振り返ると、そこには大きな斧と真っ黒で巨大な首を抱えた鋭い眼光の少女が立っていた。少女は首をその辺に置くと疲れきった様子でその場に座り込み、血で汚れた緑色の髪の毛を指でいじっている。少女はこの森の管理者。精霊の木を守護する妖怪だ。少女が持っていた巨大な斧にはこの首がまだ生きていた頃のものであろう血がべっとりとついていた。

 

「―――これって、もしかしてナルガクルガ?」

 

 「妖精たちじゃ歯が立たなくて、結局私が狩ったのよ」と少女が言う。本来であれば妖精と何の関係もない名ばかりな妖精の森を守るだけの存在である彼女にとって妖精など守る理由はない―――ないのではあるが。実際には職務を放棄し森を離れた現在の大妖精に代わり少女は妖精たちを守っていた。世話好きでおせっかい焼きな所は、昔と何も変わっていないとチルノは思う。

 

「体は妖精たちが運んでるわ。今日はこいつの解体作業。チルノ、もちろんあなたも手伝ってくれるのよね?」

 

 そして職務を放棄した大妖精とはもちろんチルノのこと。ゆえにチルノは彼女には頭が上がらないのだ。死んでからもこうして自分の代わりに大妖精の役目を務めているこの少女の頼みを断れるはずもない。愛想笑いのような引きつった笑顔で「もちろん」と答えた。それを見てまあ当然だけどねと言わんばかりに鼻で笑う。

 作業にかかる前に武器の手入れをしてくると、その場を離れる少女。それを見送ってチルノはため息ひとつ「すごいなぁ」と呟いた。

 

 ナルガクルガといえば熟練のハンターでも苦戦するという凶悪なモンスターだ。それを何の変哲も無い斧ひとつで倒してしまう程の腕。自分が住んでいる町にいけばハンターとして引く手数多だろう。

 それに比べ大妖精の力を得たはずなのに自分は何も出来ない。同胞を守ることもモンスターを退治することも。自分に与えられた役目すら守りきる自信が無くて逃げ出した臆病者。

 ナルガクルガの首を見つめ、チルノはぐっと拳を握る。

 

 せめて自分にも、戦える強さがあれば。

 

 




モンハンの設定は2G基準。たまに3rdのモンスターが入る程度です。
個人的には、やっぱ2Gが最高のモンハンだと思う。
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