リオレイアとの戦いは一向に進展のないままに時間だけが過ぎていった。文は膠着した状況を打破すべく、一気に低空飛行に切り替えてリオレイアの足元に弓を放つ。
「いいかげん、お引取り願いましょうか!」
しかし、リオレイアも未だに動きを止めることはない。突撃する文に対し、真っ向から突撃してきたのだ。文はすぐさま空へと退避するが、同時にリオレイアも空を舞う。
「おやおや、これは。―――空の女王と空中戦ですか」
「こらーっ! 二人で勝手に盛り上がってるんじゃないのさ!」
足元からお燐の罵声が飛ぶ。しかし、そんな事に構っている余裕など微塵もない。スピードこそ文のほうが上だが、リオレイアを仕留めるほどの決定打を持っていない。そしてスピード以外の全てで文を圧倒するリオレイア。序盤こそ文のほうが優勢だったものの、次第に押され始めていく。そしてそれから数分もしないうちに、ついにリオレイアが文を捉えた。回避し損ねた文の体がリオレイアに接触し、彼女を吹き飛ばしたのだ。
「しまっ―――」
リオレイアの翼が文の体を弾き飛ばす。衝撃で気を失った文はそのまま地上へを落下していく。あのまま落ちれば命はないと、お燐が文の体を受け止めた。「危ないところだったのさ」と息をつくお燐であったが、リオレイアの攻撃はまだ終わらない。一気に急降下し、足の爪で地面ごとお燐をなぎ払ってきたのだ。ギリギリで回避したが、削られた地面から吹き飛んできた石がお燐の額に直撃する。
「これは、当たったらまずい奴だったのさ」
お燐は朦朧とする意識の中で懐に隠しておいた、とっておきの道具を探す。それは今日の為にさとりが持たせてくれた生命の粉塵。しかし、あちこち探してみても粉塵の入った袋がない。どこかで落としてしまったのだ。
「くそ・・・こんな、時に」
リオレイアが巨大な翼を翻し、お燐のほうを向く。どうやらここでもうおしまいのようだ、とお燐は覚悟を決める。
「短い生涯だったなあ・・・秘蔵のまたたびも使っておけばよかったのさ・・・」
しかし、本人が思っていた以上に未練たらたらだった。まだこんなところで死にたくない。お燐はゆっくりと立ち上がり、そして太刀を構え直す。
「そうだ。まだ、死ねないのさ」
リオレイアが吼える。お燐はゆっくりと走り出す。
「さとりさまに褒めてもらうまで・・・あたいは死ねないのさっ!!」
放たれた炎は同じくお燐が放った炎で相殺する。お燐の持つ刃からは今までとは明らかに違う、桁違いの力を携えた炎が宿っている。そして、お燐がひとたび太刀を振るうと、燃え盛る炎は一気に爆発してリオレイアを焼き尽くした。
「炎の剣客の真髄。それは、命を燃やす魂の炎」
―――そして、それが燃え尽きたとき。その魂は死を迎えるだろう。
刀を鞘に納め、お燐はそのまま倒れてしまう。
チルノが地底を脱出し、文とお燐の元へたどり着くのは、それから二分後のことだった。