拡散弾を乱射し、ようやく地底の門をこじ開けた。お空は「一仕事終わったねぇ」と満足げにしているが、チルノはもう早く外へ飛び出したい気持ちでいっぱいだった。なにせ鉄鋼榴弾で鱗を剥がしたリオレウスの頭を鉄鋼榴弾で吹き飛ばし、拡散弾で削りながら洞窟の入り口に引っかかっている頭を文字通り除去したのだ。飛び散った肉の破片があちこちに散らばり、焼け焦げた肉と血の匂いが洞窟中に漂っている。もう一秒だってこんな所にはいたくない。チルノは口と鼻を手で押さえながら、地上へと脱出した。
「ようやく出てこれた」
安堵するチルノだったが、その刹那、炎に包まれた何かが叫び声を上げてこちらに突進してくるのが見えた。あまりにも急展開。チルノは咄嗟に空中へ逃げるが、炎の固まりはチルノのことなどお構いなしにまっすぐ突進する。一体何が起きているのだろうか、そう思い周囲を確認していると、炎が目指す進路の先に何かを発見する。
「文さん!?」
火焔猫燐と射命丸文。二人とも意識を失っているらしく、炎の塊が迫っているのにも気付いていない。チルノは炎の動きを阻もうと炎に接近する。
「これ・・・リオレイア?」
もはや死んでいてもおかしくない状況。それなのに、まだ戦おうというのか。チルノは、リオレイアの前を飛び、その進路を阻もうとする。
「止まって、止まってください!」
しかし、チルノの言葉などリオレイアには聞こえていない。このままではお燐も文も死んでしまう。殺されてしまう。
ふと、あの頃の言葉が頭をよぎる。
『お前は、最強なんかじゃない』
―――また誰も守れないのか。まだ誰も救えないのか。与えられた役目すらも守れず、また私は逃げるのか。
「私は、最強なんかじゃない」
だけど、もう二度とあんな思いしたくない。誰かを悲しい目に遭わせたくない。誰かを守れないなんて、もう嫌だ。
十年間も逃げたんだ。もうこれ以上、逃げるだなんて許されない。
―――私が、許さない。
「だけど、もう泣きたくない! 泣かせたくない!」
この魔法の刃が持つ、究極の熱すらも凍りつかせた力なら、きっとできる。チルノは背負っていた剣を抜き、そしてリオレイアの頭部につきたてた。
「お願い! 止まって!」
リオレイアの体は次第に凍り付いていく。しかし、凍っていくスピードがあまりにも遅い。これでは全身が凍りつくよりも早く、リオレイアが文達のところまでたどり着いてしまう。
「間に合わないっ!?」
「氷精のお姉さん! 援護するから剣から離れて!」
お空の声がする。咄嗟にチルノは剣から手を離し、空へと逃げる。その刹那、お空の鉄鋼榴弾がリオレイアの足を吹き飛ばした。足を失ったリオレイアは突進の勢いのまま倒れ、そのまま凍りついた。
「間に合ったみたいだね」
「な、なんとかなった、のかな?」
チルノはアイスソードを回収すると、すぐさま文の元へ向かう。
「文さん、大丈夫ですか?」
文はようやく目を覚ましたのか、一気に体を起こして「リオレイアは!?」とチルノに訊ねる。そして目の前にある氷付けのリオレイアを目の当たりにし、安心したのか深く息を吐いた。
「どうやら、無事に帰ってきてくれたようですね」
「大変でしたよ」とチルノは文に告げる。「それは申し訳ありませんでした」と特に悪びれる様子もなく文は答えた。そして立ち上がり、手をぱん、と叩く。
「今夜は火龍のつがい鍋ですね」
なんて切り替えの早さだろうか、とチルノは思う。だがまあ、それでこそ彼女らしいというものだろう。チルノはリオレイアに近付いて記念写真を撮ろうとしている文を見て微笑んでいた。
お空はお燐の体を抱き起こして「随分ボロボロになっちゃったね」と笑っている。まるで体が動かないお燐は「うるさいのさ」とだけ返事して、そのまま目を閉じる。
「お疲れ様、お燐」
アイスソード・チルノ編も残り二話になったので登場人物紹介でも。
今回は、地霊殿ギルドの二人。
●火焔猫燐
二つ名:『炎の剣客』
武器:太刀
所属:地霊殿ギルド
詳細情報:『ソードマスターさとり』に登場した西国最強の剣士・・・の設定を受け継いだいつものお燐。本編同様に強いわけではない。生物の魂を炎に変換し、相手が死ぬまで燃え尽きない『魂の炎』を操る。犬兎の過去作品同様、語尾に「~さ」をつける癖があり、お菓子に目がない『ちなお燐』でもある。
また、十年たっても見た目に変化なし。ただし服装は侍っぽくなってる。
●霊烏路空
二つ名:『漆黒の黒烏(自称)』
武器:ヘヴィボウガン
所属:地霊殿ギルド
詳細情報:『ソードマスターさとり』に登場した豪腕少女・・・のおバカ設定だけを引き継いだいつものお空。超重量の専用へヴィボウガンを所有し、その破壊力はバリスタ並と噂されている。その桁違いの破壊力のせいか周囲を巻き込んでしまうことを恐れ、普段は地霊殿ギルドの食堂で働いている。
十年たっても見た目に変化はないが、少しだけ穏やかなキャラになった模様。その理由はまだ秘密。