「いやいや、しかし。異変の元凶が伝説のアイスソードだったとは」
地底での異変の真相を聞き、文は「一体どこから落ちてきたんでしょうね」と首を傾げていた。
「なにせ持つものは皆ろくな死に方をしないという呪いの剣ですからねぇ。たまたま前の所有者の死体が旧地獄に紛れ込んでいたんでしょうか」
「案外『な、なにをするきさまらー!』的な展開になって旧地獄に放り込まれたのかもしれないね」
お空はそう言いながらケラケラ笑っているが、文は「真面目な話です」とお空を諭す。あの剣は曰く付きではあるものの、桁違いの性能を持っていることは確かなのだ。そんな剣をただの妖精に預けるなんて。「地霊殿のさとりさんはなんて言っていたんですか」と訊ねると、お空は「きっと大丈夫だと思ったんだよ」と答えて笑っていた。
チルノはその頃、リオレイアの頭をぺたぺたと触っていた。何せ始めて自分で倒した飛龍なのだ。ルチアに言ったらどんなに驚くだろうか、と期待に胸を膨らませている。
「そうだ、倒したって証拠写真がないと信じてくれないかも」
チルノは文に写真を撮ってほしいと頼む。文は少し何かを考え込み、そして「いいですよ」とリオレイアの前に立っているチルノのほうへと歩み寄る。その時だった。文はわずかにリオレイアの頭が動くのを確認したのだ。
「あいつ・・・まだ生きてる!?」
文はチルノに「危険です」と叫んだ。しかし、もう遅い。チルノが振り返り、リオレイアの顔がこちらに向いているのを確認したときには、もう既にリオレイアがチルノの右腕を噛み千切っていた。
「え・・・?」
右腕を失ったチルノには既にアイスソードを降るう力はない。それどころか彼女はパニック状態になってしまい、その場から身動きとれずにいる。あのままで次に噛み付かれたら、きっと腕だけでは済まされない。
「なん、で・・・?」
お空は咄嗟にボウガンを構えるが、チルノが邪魔で攻撃できずにいる。いっそ全身を食われてしまうくらいならチルノごと吹き飛ばしてしまったほうが生き残れる可能性があるのではないかなんて考えては見るものの、ついさっきまで仲良くしていた人を撃つなんて、お空には到底出来ないことだった。
「氷精のお姉さん! 逃げて! 逃げないと―――」
お空の声はチルノには届かない。そして、リオレイアが再び口を開く。
「チルノさん!」
また、こうして誰かが死んでいくのか。
どうして、こんな世界になってしまったのか。
あの頃には、もう戻れないのか。
チルノは静かに目を閉じた。
次回完結です。第二回の登場人物紹介はギルドマスターコンビの文とさとり。
決めたくせに使わなかった設定もちらほらあるけど気にしない。
●射命丸文
二つ名:『清く正しい射命丸(自称)』
武器:弓
所属:天狗の里ギルド・ギルドマスター代理
詳細情報:妖怪の山を統べる『天狗の里』に住むブン屋。高齢になった天狗の長から里とギルドの統括を任され、実質的に天狗の長を務めている・・・のだが、実力を認められたわけではなく、他の天狗に比べて暇を持て余していたために任命されただけであったりする。モンスターハンターとしての実力はかなり高く、ありとあらゆる弓を所有しているものの、重くてかさばる弓は飛行の邪魔になるため、普段は小型のハンターボウを携帯している。
ちなみに十年たっても何も変わらない。
●古明地さとり
二つ名:『剣帝さとり』
武器:太刀・片手剣
所属:地霊殿ギルド・ギルドマスター
詳細情報:『ソードマスターさとり』に登場する三つの秘剣のひとつを継承したソードマスター・・・の設定を引き継いだだけのいつものさとり。比較的難易度の高いクエストが舞い込んでくる地霊殿ギルドを経営する優秀なギルドマスター。少々性格に難があるものの根は優しく、新人ハンターの面倒見もいいため彼女を慕うものは多い。ただし、城塞都市ギルドのギルドマスターである八雲藍とは何かと仲が悪かったりもする。
ちなみに十年たったが特に見た目に変化はない。