「大丈夫」
刹那、聞き覚えのある声がした。そしてまだ自分が生きていることを不思議に思う。
チルノが目を開けると、そこには巨大な戦斧を抱えたルチアがいた。首を切り落とされたリオレイアは木の枝で出来た矢が全身に刺さっていて、見るも無残な姿となっていた。
「あなたは死なないし、私が死なせない」
ルチアはそう言って小さな袋から粉を取り出してそれを風に乗せる。すると、チルノの傷だけでなく、文やお燐の傷も全て回復した。
「チルノさんの腕が元に戻った・・・?」
文が呟くと「特別な薬なのよ」とルチアが答える。
「精霊の木がもたらした『精霊の粉塵』よ。妖精は元から不死身だけど、これがあれば一回休みにならなくてもあらゆる傷を元に戻せてしまう。 まあ、そんな神がかった効果を発揮するのは妖精限定だけど、妖怪にもそこそこ効果はあるでしょう?」
「え、ええ・・・。私はすっかり元気ですが。―――でも、あなた、どうしてここに?」
チルノがこっそりと抜け出して妖怪の山に行くことくらい分かっていた。だがルチアはあえてチルノを止めずに妖怪の山へ行かせたのだという。にも関わらず今こうしてここにいるという事は、結局のところルチアの悪い癖が出たということだろう。まあ、そのおかげでチルノが助かったのだから何も言うことはない。文は鋭い顔つきでチルノを睨んでいるルチアを見、やれやれといった表情をして二人のやり取りを傍観することにする。
「ハンターの世界がどれだけ怖いものなのか、よく分かったでしょう?」
「だからおとなしく森に帰りなさい」とルチアは言う。しかし、チルノは首を横に振ったのだ。そして、ルチアを見つめ、にっこりと微笑んだ。さっきまで死にかけていたとは思えないほどの豹変ぶり。どうやら精霊の粉塵はそんなところまで治してしまうらしい。
「言って聞かない子だって、ルチアは分かってるんでしょう?」
どうやらルチアの思惑はチルノにとっても予想通りのものだったようだ。ルチアは諦めたのか、ため息をひとつついて「もう知らない」とチルノに背を向けた。
「今度同じ目に遭ったら、次は死んじゃうんだからね」
「死なないように努力する」
「次は誰も助けてくれないんだよ」
「誰の手も借りなくても、ひとりで戦えるくらい強くなる」
「―――ひとりぼっちで寂しくなっても、知らないんだから」
「それはお互い様」
そんな二人のやり取りを見ていた文は、ニヤニヤ笑いながら二人に背を向ける。「どこに行くの」と訊ねるお空に、文は笑顔で答えた。
「チルノさんのハンター登録をしてきます。ランポス狩りを依頼しないといけませんから」
飛び立つ文を見上げ、お空は二人のやり取りとずっと眺めていた。
「これから楽しくなりそうだねー、お燐」
こうしてチルノは正式にモンスターハンターとなった。
後に幻想郷最強のハンターの一人となる『アイスソード・チルノ』の誕生の瞬間である。
そして、この事件をきっかけに少女たちも動き出す。
「では、始めましょう。―――新たな幻想郷を」
もう、安息の日々が訪れることはない。
だが、そのことはまだ誰も知らない。
最後はさらりと締める。なぜなら狩猟日記はまだ続くから。
「ハーメルン」さんでは最後になるかも知れないけどね。
でも、正直言うとチラ裏は便利なのでしばらく離れないかもしれない。少し考えてから次の執筆先を決めたいと思います。
最後の登場人物紹介は今回の主役の二人。
●チルノ
二つ名:『アイスソード・チルノ』
武器:アイスソード(大剣)・氷の弓
所属:地霊殿ギルド・天狗の里ギルド
詳細情報:妄想企画『アイスソード(とハゲ)が幻想入り』の主人公。アイスソードを持ったチルノで、アイスソードの力によって幻想郷最強クラスの力を手に入れている。また、大妖精になった恩恵により体が成長している。
十年で青色のロングヘアー+中の上くらいの身長になっていて、昔のチルノの面影はほぼないレベルに成長した。
●ルチア(元大妖精)
二つ名:『精霊の木の守人』
武器:斧(大剣扱い)・ブランチアロウ(弓扱い)
所属:所属ギルドなし
詳細情報:姿無き龍によって殺された大妖精が精霊の木の力により妖怪として蘇った姿。精霊の木の守人として妖精の森を守っている。ハンターとしての実力はそこそこあるものの基本的に妖精の森から離れることは無いため、特定のギルドには属していない。
見た目はチルノほどではないものの少し背が伸び、性格は少々きつくなった。ちなみに「胸が大ちゃん」にはなっていない。