よって、今後は更新ペースが落ちますのでご了承ください。
少女を保護し、その場を去ったククリは少女を抱きかかえたまま道を引き返していた。安全な紅魔館まで少女を連れ帰り、フランを助けるための援軍を呼ぶためだ。
しかし、どうにも引っかかることがある。どうしてこの少女は紅霧の森の中にいたのだろうか。初心者ハンターはもちろんのこと、熟練のハンターでさえも好んで立ち入ることはない危険な森、そんな場所にこんな小さな少女がひとりでやってくるものだろうか。何か事情があったのか。あるいはこの少女もハンターなのか。黙ったまま身動きひとつとらない少女。絶対に触れてはならないものだったのではないかと次第に不安になってくる。
ククリは意を決し、少女に問う。「あなたは何者なのか」と。しかし少女は何も答えない。だが「これが答えだ」と言うかの如く、少女はククリの胸に巨大な剣を突き刺したのだ。
少女を抱きかかえ、無防備なククリの心臓目掛けて深く突き刺さる刃。それは、やけに見覚えのある美しき金と銀の大剣。驚きのあまり、少女を抱えていた手から力が抜け、着地した少女はさらにその刃を深く突き刺し、背中まで刃を貫通させた。
「間抜けだな。こんな場所に人間がいるとでも思ったのか?」
血を吐きながら、ククリは少女の頭を掴む。そして、髪に隠れたその顔を露にし、その正体を確認した。
「―――暗黒騎士、ルーミア」
かつて封印された幻想郷の闇を司る妖怪。モンスターとの全面戦争に敗れ、八雲紫を失った後の幻想郷に復活し、現在の幻想郷の形を作り上げたという『四賢者』の一人。
「ほう・・・その名を覚えている者がまだいるとはな」
剣を振るい、乱暴にククリの体を地面に叩きつけて剣を抜く。ルーミアは剣を地面に引っ掛けて「む」と唸った。
「やはり幼子の姿ではこの剣は長すぎるようだ」
そう言うと、ルーミアの姿は一瞬闇に消え、刹那に長身の女性へと姿を変えた。「やはりこの方がいい」と笑いながら、倒れているククリの右手に剣を突き立てた。
「助けて・・・」
力なく呟くククリに、「殺しはしない」とルーミアは言う。
「お前にはまだ役割があるからな」
そう言いながらルーミアは穴の開いたククリの胸に手を当て、なにやら力を込める。すると、傷が一瞬で塞がり、たちまち体力が回復したではないか。ククリは「私に何をさせる気」とルーミアに問う。
「紅魔館へ戻り、ギルドマスターへ事の次第を告げるだけだ」
ルーミアはにやりと不敵に微笑み、「それが終われば、その傷を塞いだ闇がお前の心臓を食らい尽くす」とククリに告げる。もう助からないことを教えられたククリは、特に反応することなくその場を離れようとする。泣き叫んでも、助けを求めても、こいつを喜ばせるだけだと分かっているからだ。しかし、ルーミアは「どこへ行く」とククリの髪を掴み、自分の手元まで引っ張り寄せた。
「右手の傷だけでは危機だという事が伝わりにくいじゃないか。―――紅魔館に帰るのは、もっと全身を痛めつけてからにしよう」
―――フランさまの嘘つき。
「守ってくれるって、言ったのに」
やっぱり、もっとくっついておくべきだったみたいだ。
幻想郷一安全なフランさまの隣。私だけの安全地帯。
もう二度とあそこに帰れないって思うと、寂しくて仕方ない。
せめて、さよならくらい、言いたかったな。
鈍い痛みと共に、ククリの目の前に紅霧よりも紅い世界が広がる。もう何も考える必要なんてない。ここから先は、ただひたすらに悪夢が終わるのを見ているだけ。―――紅に染まる世界。それが自らの血であることさえ、今の彼女には理解できなかった。
ルーミア登場。そしてさらばククリ。
ルーミアはその辺の画像検索でヒットするような大人ルーミアのイメージそのままです。ただし、大剣は細身の十字架型。某鷹の目さんの背中の剣を両刃にしたようなのを想像すると分かりやすいかと。