東方狩猟日記   作:犬兎

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今回から「残酷な描写」の警告を追加しました。
「アイスソード・チルノ」とは違って今回は主役が主役なので、しょうがないか。
そんなわけでその辺が苦手な人は今回でさよならです。

では、今回もやってみよう。



レミリアとの再会

 

「よぉ、霊夢。来ていたのかい」

 

 吹き抜けになっているギルドの二階から、集会場を見下ろすように顔を出す少女が一人。霊夢を発見してこちらにやってきた。霊夢は少女のほうを見ることもせずに、それが誰であるか理解していた。あの頃と何も変わらないあどけない声。そして、その場所にいるということだけで、もう判断できるからである。

 紅魔館ハンターギルドの集会場は紅魔館のロビーを改装して作られている。それ以外の場所は基本的にハンターには解放されていない。つまり、少女が顔を覗かせたあの場所に出入りできるものは基本的に紅魔館の関係者ということだ。さらにその中から、あの幼さの残るかわいらしい声の持ち主はただ一人。

 紅魔館の主にしてギルドマスターのレミリア・スカーレットである。

 

 レミリアは適当にハンターたちと挨拶を交わしながら、霊夢のほうへと向かってくる。霊夢の方は、特に何も気にしていないのか集会場の椅子に腰掛け、酒場のメニューを眺めていた。

 

「さすがは紅魔館。集会場の料理も凝ってるわね」

 

「無視をするな無視を」

 

 霊夢の顔を無理矢理自分のほうに向け、レミリアは「久しぶりじゃない」と笑みをこぼす。別段久しいというわけでもないのだが、と霊夢は愛想笑いで答える。

 

「娘はどうだ? 元気でやっているのかい?」

 

「元気すぎて困っちゃうわよ。よく分からない爆弾作って、あたしもハンターになるって息巻いているわ」

 

 「だったら紅魔館でハンターをやらせてみないか」とレミリアが言う。霊夢は冗談じゃないと、返答すらせずに席を立った。

 

「私はあの子には普通の女の子として生きてほしいの」

 

「だが、当人がそれを望んでいない。―――もとより純粋な人間ってわけじゃないんだ。本能には逆らえない」

 

 それが許せないのだと霊夢は言いたかった。でも、それを口にすることなんて出来なかった。あの子は普通じゃないということは霊夢も分かっている。あの子の意思を尊重させてあげたい気持ちだってある。でも、それを許せば、きっとあの子は戻れないところまで行ってしまう。母親として、あの子に成すべき事は何か。悩む霊夢に対して「人間らしい悩みよね」とレミリアは笑っていた。

 

「子を持つものの悩み―――か。私には千年ほど早い話だよ」

 

「そもそも、あんたが成長するのかも怪しいけどね」

 

 妹があんなに大きくなったのに、と言いかけて口をつぐむ。今日はケンカを売りに来たんじゃないのだ。憎まれ口は程々にしておこう。霊夢のそんな雰囲気を悟ったのか、カウンターで二人のやり取りを眺めていたパチュリーがぷっと吹き出す。

 レミリアは酒場のカウンターで働いている妖精メイドに手を振った。メイドは頷き、霊夢の座っている席に料理を運んでくる。

 

「折角来たんだ。楽しんでいってくれ。―――ここは私のおごりだ」

 

 得意げなレミリアに、霊夢は苦笑い。

 しかし、そんな穏やかな空気は突如ギルドに現れた血まみれの少女によって一変する。乱暴に扉を開けて入ってきたかと思うと、そのまま前のめりに倒れたのだ。ぐしゃり、という生々しい液体の混じった音がして、飛び散った血が入り口を真っ赤に染め上げる。

 パチュリーはすぐさま少女に駆け寄って抱き起こす。片腕を失い、顔は半分潰れている。全身は至るところに傷がつき、ボロボロの状態だった。妖怪でなければとっくに死んでいるだろう。それどころか妖怪であってもこの傷ではもう助かる見込みはない。

 もはや原形をとどめていない少女の姿を見て、レミリアは「ククリね」と呟く。ククリはゆっくりと頷き、掠れた声で言う。

 

「―――むの―――り、―――らん―――たすけ―――」

 

 何かに縋るようにまだ動く右手を伸ばす。ルーミアの剣が貫通し、穴の開いた掌が助けを求めるようにして空を掴み、そして力なく落ちた。

 その刹那、ククリの胸を塞いでいたルーミアの闇が彼女の心臓を侵食する。まるで噴水のように勢いよく噴き出す血。その匂いに引き寄せられるように、レミリアは彼女のほうへと歩み寄る。

 

「紅霧の森、フランさまを助けて―――か」

 

 レミリアはパチュリーからククリの体を受け取って、それを抱き寄せた。レミリアの表情は一見穏やかであったが、心の奥底で怒りに震えていることをパチュリーは理解する。お疲れ様とククリの耳元で囁いて、そっとその場に寝かせると「後のことはお願い」と言う。爪が掌に刺さるほど強く拳を握り、歯を食いしばり、冷静さを保とうとするレミリアのその姿は、付き合いの長いパチュリーですら今まで見たこともないくらいに強い力に満ち溢れている。

 

「フランを迎えに行かなくちゃ」

 

 今のレミリアを止めることなんて誰にも出来ない。パチュリーは何も言わず、彼女を見送った。

 




ククリ死す。まあ、モブ役の扱いなんてこんなもんか。
今後も某シュラ○隊の如く、いろんな人が死んで行く予定。
そして、今作もそろそろ終盤。
次回は誰にスポットを当てようかな・・・。

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