ゆえにあちこちに町があったりします。
その辺に関する話はいずれまた。
夜が開け、妖怪の山にある天狗の集落では事件が発生したと大騒ぎになっていた。天狗の里の名物でもある温泉の温度が急激に下がり、朝方には冷水になってしまったのだ。もちろん原因は地底で起きた例の事件に由来するが、そんなことをまるで知らない天狗の里の住人たちは夜が明ける前にこの里へとやってきたとある旅人を責め立てた。
その旅人とはもちろんチルノのことである。結局、ランポス狩りのことを忘れられず、ルチアや妖精たちが寝静まったのを見計らって妖精の森を抜け出したのだった。集会所でランポス関係のクエストを探していたチルノは、突如やってきた天狗たちに集会所を追い出され、訳も分からず途方に暮れていた。集会所の入り口には天狗が見張りをしてチルノが入ってこないようにしている。チルノはあまりにも理不尽な展開に腹を立て、見張りの天狗を問い詰めていた。
「な、なんで追い出されなくちゃいけないんですかっ!」
「なんでも何も、氷精のあなたがいるから温泉が大変なことになったんじゃないですか!」
「私がいけないんですか!? 第一、温泉なんて知りません!」
そう言うのであればご自身の身の潔白を証明してはいかがでしょう?
集会所の屋根の上から声がした。チルノと見張り番が空を見上げると、そこには黒髪少女が腕組みしている。風でぱたぱたとスカートがなびき、下着が丸見えだったがシリアスな場面なのであえて言わないでおく。
「文さま、最初に彼女が犯人だと言ったのはあなたではないですか」
「最も可能性が高いのは、と言ったのですよ」
射命丸文はそう言って屋根から飛び降りる。チルノの目の前に着地し、じっとチルノを見つめて微笑んだ。
「しかしまあ、しばらく見ないうちに随分きれいになりましたねー」
「人のことを犯人扱いしたのはあなたですか」
「おやおやつれない。―――あなたと私の仲じゃないですか」
仲がよかった覚えなんてないんだけど。文はそうでしたっけととぼけながら手帳を眺めている。そしてひとつのメモを指差して手を止めた。
「天狗の里の源泉は旧地獄にあります。旧地獄で何かが起きたため、温泉が冷水化してしまった可能性が高い。―――もちろん、新聞記者として私も同行しますよ」
「なんで私が調査に行く前提になってるんですか」
「どうせ紅魔館から逃げてきたランポス狩りにでも行こうとしていたんでしょう? 妖怪の山周辺地域のクエストはこの集会所からじゃないと受注できませんよ?」
それに、この集会所は天狗が取り仕切っていますので私の許可なく使用は出来ません。文はそう言って得意げに笑う。なんて横暴。
「ランポス狩りに行くためには、まずご自身の無実を証明してくださいな。ハンター業は信用が第一ですよ」
「一番胡散臭い人に言われたくないです」
「こりゃ手厳しい。この清く正しい射命丸にそんなことを言うなんて」
チルノはため息をつき、踵を返す。
「その自称清く正しい天狗さまに濡れ衣かけられてるんですよ。私は」
こうしてチルノは半ば強引に天狗の里の異変解決に狩り出されるのであった。
文さま登場。しかしこの人、十年くらいじゃキャラはぶれない。
そしてチルノは地底行き。
はたして温泉の温度は元に戻るのか。