妖怪の山ろく周辺の森林地帯。
「しっかし、どこもかしこも寒い場所ばかりなのさ」
久しぶりに地上へとやってきたお燐は開口一番そう呟く。まあ、原因は地底に突如として降ってきたあいつのせいではあるのだが。しかし地底に住む者たちにはあいつを何とかすることは出来ないため、地底が凍りつく前にあいつをなんとかできる妖怪を探しに来たのだ。寒い寒いと言っている前に、この寒さに耐えられるような妖怪を見つけなければ。
「確か、冬の妖怪とかがいたはずなのさ。―――あー、でも確かあいつってずっと北の集落に住んでいるんだっけ・・・」
そんな場所に行っていたら、その間に妖怪の山ごと凍りつくだろう。真夏だというのに既に雪でも降っているかのような寒さなのだ。この辺に住んでいるモンスターたちも、今頃大騒ぎで冬眠の準備を始めているはずだ。
そう。実際のところお燐にとっての問題は寒さに耐性のある妖怪が見つからないことよりも、そちらにあった。
「冬眠するために、急いで食いだめして・・・。きっとそこら中で餌を求めているはずなのさ」
モンスターの唸り声。お燐は腰に携えた刀を握り、周囲を警戒する。
「はー・・・」
深く息を吐き、刹那に飛び出してきたモンスターの攻撃を受け止めた。お燐の刀はモンスターの爪に食い込み、腕を振り上げたと同時に刀を持っていかれてしまう。続けざまの攻撃をバックステップして回避すると、お燐は即座に敵の背後に回りこむ。
青色の毛皮に覆われた巨大な牙獣種。地底ではめったに見かけないモンスターだ。お燐は図鑑で見た程度の知識からようやく名前だけを思い出す。
「こいつは確か、アオアシラ、だっけ・・・?」
まさしく森のくまさんなのさ、とお燐は笑う。
「歌の中じゃお嬢さんは逃がしてくれるものなのさっ!」
お燐の鋭い爪がアオアシラの肩に突き刺さる。ひるんだ隙に手に刺さったままの刀を回収して構え直す。そして、刃を振るう。その刹那、その刀身から炎が噴き出した。
「炎の剣客と呼ばれし所以、その目に焼き付けるのさ」
アオアシラはお燐の放つ圧倒的な力に恐怖したのか、その場を逃げ出そうとする。しかし、もう遅い。炎はたちまち体を包み込み、そして焼き尽くした。
「よし、『上手に焼けましたー』なのさっ」
早速こんがり肉を回収しようとしたその矢先、お燐は再び何者かの気配を感じ取る。今度は今のように簡単には行かなさそうだ。じっと森の向こうを睨みつけ、モンスターの気配をうかがっている。すると、突如、背後から何者かの強襲を受け、お燐は飛び退いた。
攻撃を寸前で回避したお燐はすぐさま体勢を立て直し、攻撃を仕掛けてきたものがなんであるかを確認する。
「―――あれは」
巨大な翼。硬そうな鱗。そして見た者を恐怖させる圧倒的な存在感。まさしく空の王者と呼ぶに相応しい力を持った化け物。お燐の睨みつけ、標的と認識したのか山中に響き渡るくらいの咆哮をあげる。
さらにお燐は森の向こうにいるモンスターがゆっくりとやってくるのを感じ取り、今更にアオアシラを焼いてしまったことを後悔する。
「おいしいお肉の匂いが、つがいを呼び寄せちゃったのさ」
お燐はソードマスターに登場した「炎の剣客」バージョンです。
もちろん私の東方設定基準のお話なので「ちなお燐」でもあります。
ちなを知らない人は「AG学園あに☆ぶん」で検索。