地底への入り口はリオレウスによって完全に塞がれてしまっていた。もう後戻りは出来ない、とチルノはため息をつく。
「それにしても、随分と涼しいのね」
地底はすごく暑い所だと聞いていたのだが。この様子では天狗の里の異変の原因は地底にあることに間違いないだろう。チルノはひとまず洞窟の奥を目指して進み始めた。
旧地獄。それは妖怪の中でも忌み嫌われる者達が住む幻想郷の無法地帯だ。そのおかげかモンスターが住み着いた現在の幻想郷でも旧地獄の様子はなんら変わっていない。そう、それはモンスターの有無なんて関係ないほどに最初から危ない場所であるということ。大妖精になったとはいえ、チルノの力ではここに住む妖怪には手も足も出ないのだ。必然的に周囲を警戒しながら進んでいくことになる。
しかし、数分ほどしてそんなこと意味がないことに気付く。あまりの寒さに妖怪はおろか、怨霊すらもいないのだ。
「みんな冷凍食品にでもなっちゃったのかしら」
まだ入り口だというのに既に気温は人間が住めないレベルに到達していた。チルノですら若干肌寒さを感じるくらいである。一体この奥には何があるのだろう。
しばらく道を進んでいると「そういえば」とチルノはふと思い出した。旧地獄には管理者がいるという話を聞いたことがある。その人ならば何か事情を知っているかもしれない。
だがしかし、それも時間の問題かと思う。いくら妖怪でもこの寒さでは氷付けになってしまう。口が動かなくなる前に事情を聞かなければ、この広い旧地獄を手当たりしだい放浪して原因を探す羽目になる。それだけはなんとしても避けたい。
「急がないと」
なにせチルノですら既に若干寒いのだ。他の妖怪ならとっくに凍り付いている頃だろう。旧地獄の管理人が寒さに耐性のある人であればいいのだが・・・。
地霊殿。旧地獄を管理する古明地さとりの屋敷だ。旧来の建築様式を採用した石造りの屋敷は防寒としての意味など成さず、屋敷の主である古明地さとりは寒さに凍えながらお燐が帰るのを待っていた。
突如として地底に落ちてきたあれは瞬く間に地底を凍りつかせた。それは、お空の持つ力をもってしても防ぐことは出来ないほどに圧倒的な力であった。さすがはあらゆる者たちから恐れていたといわれる存在だ。妖怪程度の力ではどうすることも出来ない。
ただ、このまま指をくわえて見ているだけなんてあまりにも情けない。さとりはしばらく考えた後、お空に話しかける。
「お空」
「なんですか・・・?」
既にお空は疲れきっているようで、その場に座り込んでいた。あれの力を押さえつけようと何度もあれと戦ったのだ。とっくに力を使い果たしてしまっている。眠たそうに目を擦りながら、少しだけ顔を上げる。それを見て、さとりは優しく微笑んだ。
それは、決意とも諦めとも思えるような笑顔だった。
「後の事は頼むわね。―――私が、あれを止めてくる」
十年そこらではお空やさとりさまは成長しない様子。
実際、大人になるのは一部の幼女キャラだけです。
まあイメチェンする人はちらほらいるようですが・・・。