「無茶です、さとりさま!」
旧地獄の灼熱地獄跡は完全に凍り付いている。少しでも油断していたら一瞬で凍りつきそうなほどに冷え切った世界。そんな中をさとりは進んでいく。お空はさとりの無謀な行為を止めようとついて来ていた。
「あなたは帰ってなさい。これは私の役目よ」
「ダメです! あれは人が触れちゃいけないものなんです! 触れてしまったら一瞬で氷付けなんですよ!?」
その圧倒的な力を目の当たりにしたお空は、あれの恐ろしさを知っている。自分ですら抑えきれなかったものをさとりに止められるはずがない。しかし、そんなことはさとり本人が一番よく分かっていた。幾度となくさとりの前に立ち、行く手を阻もうとするお空にさとりは「黙りなさい」と睨みつけた。
「一瞬でも触れるなら十分よ。それで何とかしてみせるわ」
そう言いながら、さらに奥へと進むさとり。しかし進めば進むほど寒さは増して行く。ついに限界を悟ったのか、さとりは膝を折った。お空はすぐさまさとりに駆け寄る。
「さとりさま!」
もはや、近付くこともできないなんて。さとりは力なく笑っていた。
「なんて無様なのかしら」
そんな中に、ようやくチルノがやってきた。さすがの寒さに身震いするが、まだまだ元気である。チルノはようやく動いている生き物を発見したと嬉しそうにさとりたちの元へと飛んで行く。
「大丈夫ですか?」
「・・・あなたは?」
さとりの問いかけに、チルノは笑顔で名前を名乗る。その名には覚えがある。さとりは肩を撫で下ろして、お燐がうまくやってくれたのだと喜んだ。
「この異変の原因はなんですか?」
チルノの問いかけに、さとりは真剣な眼差しで答えた。
「この先にある、剣よ」
その剣の正体とは氷の魔剣『アイスソード』であるとさとりは言う。アイスソードの氷の如く美しい刀身には、触れたものをみな凍らせるという力があるという。その圧倒的な魔力から伝説の魔剣と呼ばれているものの、この剣を持ったものは不幸な運命を辿るといういわくつきの剣でもある。どうして地底にこの剣がやってきたのか経緯は不明だが、これが地底の灼熱地獄跡に突き刺さったことが今回の異変の原因らしい。
チルノは「それなら簡単ね」と笑い、そして氷の魔剣があるという灼熱地獄跡の中心部へと向かった。その場に残ったさとりは「これもアイスソードの呪いなのかしら」と呟いた。
「お空、あの子を助けに行ってあげなさい」
「助けにって、なんでですか?」
首を傾げるお空に、さとりが耳打ちする。するとお空は血相変えてチルノの後を追っていった。