Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの安堵

ヴェロニカです。

現在最終決戦が行われている森へ向かっています。

ぶっちゃけ寝坊しましたよ、ええ。

ほんとすまん。

多分もう始まってるよ、だってすごい轟音がここまで聞こえてくるんだもん…

森に入って数分ほど進んだところで、漸く真6弔花が見えてきた。

桔梗もブルーベルも修羅開匣していて、人外の姿になったいた。

そして既にヴァリアーの幹部達も揃っているところである。

すっごい状況が進んでる…アニメでいうと多分5話くらいずっと爆睡してた。

これは反省せねば。

よく見ると山本武と獄寺隼人はルッスーリアに治療されていて、恐らくブルーベルに負けたのだろうと分かった。

すると、ブルーベルと桔梗にフランと六道骸が幻覚を掛け始める。

タイミングを見計らって茂みから出てくる。

茂みを掻き分けた音に全員が反応し、ヴェロニカの姿を見ると誰もが固まった。

直ぐにルッスーリアとレヴィが近寄ってくる。

 

「あぁん!ボスぅ!何で黙って日本に行っちゃったのよ~!」

「ボス!無事でなによりです!」

「シシッ、ボス重役出勤じゃん」

「う"ぉおい!ボス!」

 

スクアーロの声にそちらへ視線を向けると、スクアーロが何かを投げつけてきたのでそれを受け取る。

 

「例のもんだぁ"!」

 

その言葉だけで、それが入江がこの三週間かけて発明したものだと分かった。

黒い箱で、それを開けると3発の銃弾が入っていた。

恐らくこれを体内にぶち込むことで体内エネルギーを分解するのだろう。

 

「一発でも入れば効果はあるハズだぁ"」

「おい、一発はてめぇが持ってろ」

 

一発だけスクアーロに投げ渡し、ヴェロニカは二発の銃弾を銃の中に込める。

すると六道骸が含みのある笑みでこちらを見ていた。

 

「クフフ、10年ぶりにあなたを見ますが、やはりその状態は興味がありますね」

 

意味深なことを呟くや、桔梗やブルーベルの様子が急変し、幻覚が解ける。

すると無傷のヴァリアーと六道骸の姿を見て驚愕していた。

 

「あの男は…六道骸!」

「にゅにゅ、誰よそいつ」

「何故だ…貴様は復讐者の牢獄にいるハズだ!」

「ミーの師匠は復讐者の牢獄から出所しましたー」

「なっ!?」

 

桔梗と六道骸の会話が続き、やっと終わるとヴァリアー、骸と真6弔花の戦闘が始まる。

ザクロがいない分、6弔花が劣勢だった。

ヴェロニカはブルーベルを集中的に狙いながら戦闘に参加していた。

何故ブルーベルかって?

だってこいつこの後GHOSTに吸われるじゃん、今のうちに殺しておかなきゃ…

本当は桔梗も殺したいけど、無理そうだし。

白蘭が控えてるからここで全力だすのは避けたい。

葛藤の末、ブルーベルだけは殺そうかと集中的に狙いまくるヴェロニカに、ブルーベルは焦り出す。

 

「さっきからあんた何なのよ!しっつこい!」

「黙れドカスが」

 

ブルーベルの言葉を一蹴して撃ちまくる。

因みに銃は片方しか使っていない、もう片方には白蘭専用の弾丸が入っているので使えないのだ。

ブルーベルの左腕に銃弾が当たり、肘部分まで火傷を負う。

 

「あああああ!」

 

痛みに耐えながら、他の銃弾やベルのナイフから逃れる。

だが六道骸が幻術でブルーベルを捉え、触手で縛り上げた。

 

「にゅっ、しまった」

 

苦悶の表情をするが、自らの周辺に純度100%の雨の炎で出来たバリアを張ってなんとか逃れる。

 

「はぁ…はぁ……」

 

ブルーベルは明らかに疲弊していて、このままいけば殺せるのでは?と思った時だった。

空間に静電気のような音がなり、GHOSTが現れた。

レヴィが攻撃をしている最中、ヴェロニカは直ぐにリングを外し距離を取る。

視界の端にいるスクアーロもリングを外していた。

すると、GHOSTの覚醒が始まり、周りの者の炎を吸収し出す。

そしてGHOSTの光線がブルーベルに当たり瞬く間に干からびていく。

それを見ていた全員が驚愕し、回避し出す。

 

「!?リングの炎がっ」

「何もしてねぇのにダダ漏れだぜ!これじゃ全部もってかれちまう!」

「リングはつけてちゃやばいわ!匣兵器もダメ!炎が効かないの!」

 

皆が焦る中ルッスーリアの忠告でリングを外しだす。

そして誰もが手を出せない状態で、GHOSTに手をこまねいていた時――

 

「それはさせない」

 

凛とした声と共に、目の前に迫っていた炎が消える。

誰もが声の元へ視線を向けると、沢田綱吉が零地点突破・改の姿勢を取っていた。

そしてGHOSTとの吸収対決が始まる。

なんとかGHOSTの吸収が収まり、沢田綱吉が勝利する。

他の者は嬉しさのあまり沢田に近寄るが、沢田の静止で足を止める。

そこに白蘭が現れ、言い放つ。

 

「いやぁ、すごいすごい、GHOSTを倒しちゃうなんてさ」

 

笑顔のままその場に居る者達に挨拶をし出す。

そして沢田綱吉の方に視線を固定し話し続ける。

 

「それにして綱吉君、君は物好きだなぁ…骸君にザンザス君、かつて君の命を狙って来た者を従えてるなんて正気の沙汰じゃない」

 

ここか。

 

「おいカス、俺は沢田のガキに従った覚えはねぇぞ」

 

ヴェロニカは一歩前に出て銃口を白蘭に向ける。

視界の隅で骸が槍を振るうのを捉えながら銃弾を放つ。

全く炎を吸われていなく疲労をしていないヴェロニカは、中々強めの一発をお見舞いする。

ここで白蘭が自身の炎で防ぐのは知っているので入江から貰った弾が入っている銃で撃っていない。

入江と一瞬目が合うが、白蘭の声で視線を戻す。

 

「あれれ?さっきGHOSTに炎を吸収されてガス欠のハズなんだけどなぁ…ザンザス君」

 

油断していたのか、白蘭の髪の端っこが若干焦げていた。

沢田綱吉の静止が入る前に、なんとしてでもあの銃弾を撃ち込まねばと思い、白蘭に銃弾を撃ち出す。

他の者は沢田以外ガス欠で戦闘に参加する気はなさそうだったので遠慮なく白蘭に攻撃を仕掛ける。

 

「その様子じゃ炎を吸われてないみたいだけど、何をしたんだい?」

「さぁな」

「君みたいなザンザスはどのパラレルワールドにもいなかった……だからこそ興味が沸くよ!」

 

いくら疲労していないヴェロニカであっても、周りの者達から炎を吸収して白蘭相手だと劣勢になりつつあった。

白蘭の攻撃は一撃一撃が重く、防ぐのは返って疲労を蓄積するので回避に重きを置く。

一瞬視界から白蘭を失った瞬間、後ろから声が聞こえると同時にヴェロニカはコート越しに背後に向けて銃を発砲する。

それが意外だったのか白蘭がギリギリで躱したところに、体勢を整えて特殊弾を込めた銃の引き金を引く。

完全に隙をついたと思ったが、それも寸でのところで防がれ舌打ちを漏らす。

そして白蘭の攻撃がヴェロニカの腕に掠り、片方の銃だけ宙を舞い、掠った部分から血が滲み出す。

だが空いた方の手で腰に差していた剣を抜き、白蘭へ構える。

 

「ほんとピンピンしてるね君……でも、今は君に割いてる時間はないんだ」

 

白蘭が目を薄く開けると、一気にスピードを上げて炎を纏う手を突き出してきた。

ヴェロニカは急に上がったスピードに驚きながら回避するため後方へ飛ぶ。

白蘭が続けて攻撃してくることと銃弾の残りに焦り、念のために体に纏っていた炎を厚くする。

白蘭の猛攻を剣で凌ぐことがきつくなり、ついに腹部に白蘭の手が突き刺さった。

周りにいる者は皆焦り出す。

 

「「「ボス!」」」

「ん、君には興味はあったけど今はただ邪魔なだけだよ……じゃあね」

 

白蘭は腹部に突き刺した手で炎を放ち、ザンザスを消し飛ばさそうとする。

だがヴェロニカは白蘭の出す炎を調和して無効化した上に、体内に炎を回し白蘭の手を燃やそうと試みた。

腹の中にある異物感と痛みで意識が持って行かれそうになるのを必死に繋ぎ止め、体の内側に炎を纏い始める。

 

「!」

 

どれだけ炎を発しても消し飛ぶどころか何の反応もないヴェロニカを不審に思い始める。

 

「どうした、消し飛ばしてみろ」

「っ!」

 

口に溜まった血を吐き出したヴェロニカは挑発的な笑みを浮かべながら、剣を手放し白蘭の腹部に突き刺さっている方の腕を掴む。

段々手が熱くなっていくことに白蘭が驚いている瞬間、もう片方の手に持っていた特殊弾が込められていた銃を白蘭に向けて放った。

 

「白蘭様!」

 

大きな発砲の音がその場に響き、桔梗の叫びが木霊す。

 

「いやぁ、今のは焦っちゃった」

 

零距離からの銃弾を躱せるはずがないと、高を括っていたヴェロニカは目を見開く。

そこには、白蘭が空いている方の手で銃弾を握っていた。

白蘭は力づくでヴェロニカの腹部から腕を引き抜き、ヴェロニカを蹴り飛ばす。

 

「っぐ」

「君の腹部に突っ込んだ手が火傷しちゃったなぁ………やっぱり君は危険だ」

 

ヴェロニカが宙に飛ばされ、体勢を立て直そうとした時、白蘭の言葉がすぐ後ろから聞こえた。

後ろを振り向くと同時に、白蘭の放った炎が目の前に迫っていた。

 

あ、死ぬ――――

 

そう悟った刹那

 

ダンッ

 

一発の発砲音が響き、直後白蘭の腕から血しぶきがあがる。

軌道が逸れた炎はヴェロニカの直ぐ側を過ぎ去っていった。

白蘭もヴェロニカも目を見開き、視線を移す。

するとそこには先ほどザンザスが落とした銃を片手に構えたスクアーロがいた。

我に返ったヴェロニカは白蘭から距離を取った。

 

「あーあ……腕、やられちゃったなぁ……予想外だよ」

 

白蘭は平然と笑顔で言い放ち、ヴェロニカへ視線を戻す。

 

「ま、片手でも君らを殺せるから問題ないけどね」

 

そして宙を蹴った直後、白蘭の体勢が崩れる。

ヴェロニカは目を見開き、白蘭も自身の体の様子に驚いていた。

 

「なっ…なに…がぁぁぁあああああ!?」

 

急に悲鳴を上げ始める白蘭にその場に居た者は皆目を見開く。

白蘭の様子に驚きながらも気に背中を預けながら立っていたヴェロニカにスクアーロが寄って来た。

 

「う"ぉおいボス、大丈夫かあ"…」

 

スクアーロの声にそちらを振り向くと、スクアーロが笑みを作りながら銃を差し出してきた。

それでヴェロニカは何故白蘭の様子が変わったのかが分かった。

 

「俺に一発渡してて正解だったなあ"」

 

スクアーロの言葉にヴェロニカは脱力して、白蘭の方を見る。

するとそこには肩で息をし、苦し気な表情をしている白蘭がいた。

 

「はぁ…はぁ………何を……何をしたぁぁぁあああああ!」

 

白蘭が凄まじい形相でこちらに向かって飛んできて、スクアーロがヴェロニカの前に出て剣を構える。

だが彼の手が二人に届く前に沢田綱吉が間に入ってきた。

 

「お前の相手は俺だ」

 

そして沢田は白蘭を思い切り殴り飛ばし、白蘭は遠くまで吹き飛ばされる。

ヴェロニカは腹部を押さえて威勢を張っていると、ルッスーリアが駆け付けてきた。

 

「ボス!今治すわ!」

 

ルッスーリアのなけなしの炎でなんとか止血し、ヴェロニカは一先ず息を吐く。

あとは、沢田綱吉に任せよう…

飛ばされた場所から戻って来た白蘭と沢田が戦闘を繰り広げだした。

 

「どいてくれないかい!綱吉君!今僕は彼らに用があるんだ!」

「どくものか!お前はここで倒す!」

 

冷静さを若干取り戻した白蘭の猛攻に苦戦を強いられるも沢田綱吉は互角で渡り合う。

白龍やナッツの匣兵器が加わった戦いは苛烈になっていく。

さきほどのスクアーロの一発で大幅に体内の炎が分解された白蘭は原作よりも大きく弱体化したものの、元々の実力で沢田綱吉を押し始める。

ヴェロニカはただ脱力したまま目の前の戦闘を見続けていた。

少しするとトリニセッテの大空のリングが共鳴し、強力な結界を作り出す。

そしてユニが空からゆっくりと結界の中に吸い込まれていき、獄寺や山本が結界を壊そうと攻撃をする。

だが結界はビクともせず、手が出せずにいた。

中では、追い詰められた沢田綱吉が初代ボンゴレから枷を外してもらい、白蘭と再び対等に渡り合う。

そして二人の傍でユニが死んだアルコバレーノを生き返らせようとおしゃぶりに炎を注ぎ込んでいた。

 

そういえばアルコバレーノを生き返らせないとトゥリニテッセの秩序うんたらをラルが喋ってたな。

まずトゥリニテッセを理解してないから何がしたいのか分かんないけど、取り合えずアルコバレーノを復活させないとヤバイのは分かった。

そしてアルコバレーノを復活させるにはユニの炎が必要であることも。

アルコバレーノが死んだ時点でユニの死は確定されたものだったのか。

これから死ぬでろうユニの運命を知りながら、何もしない自分に何を思うわけでもなく、ただ、目の前の少女を目に焼き付けようと思った。

仲間の、世界の為に命を張り、運命を受け入れた少女を

 

白蘭がそれを止めようとするが、沢田がそれを妨害し出す。

結界の外では、周囲にいた者達が炎を全てバジルの匣兵器である雨イルカに注いでいた。

ヴェロニカは傷の痛みに耐えながら、両手に銃を構え結界に銃口を向ける。

目を閉じ、銃に溜める炎に集中し出す。

イルカの鳴き声と共に何かにぶつかる音が聞こえた瞬間、ヴェロニカは目を見開き引き金を引いた。

銃口から吹き出す炎は直線上に衝撃波を描き、雨イルカが結界に激突して出来た罅へぶつかり、結界をぶち破る。

結界に大きな穴が開き、γがそこに入り込むと結界は再び直っていく。

そしてγがユニを抱きしめ、ユニは泣きながら炎を注ぎ終え二人とも消えていった。

それを見た白蘭が放った言葉に沢田が怒り、一騎打ちになった二人の攻撃が衝突し結界が盛大に壊れる。

暴風が周囲を襲い、ヴェロニカは目を細める。

視界が晴れると、そこには白蘭はいなく、大空のマーレリングのみが地面に落ちていた。

沢田綱吉が勝利したことを悟った守護者達が盛大に喜ぶが、その後に生き残った桔梗の処遇の話になった。

桔梗も自身の境遇に怒りながら白蘭への忠誠心やらプライドやらを怒鳴っている。

耳障りな負け犬の遠吠えを止めようと、ヴェロニカは銃を至近距離でぶっ放す。

直撃した桔梗はそのまま気絶し、ルッスーリアが治療を施しながら引き摺っていく。

複雑な顔をしている沢田綱吉をスルーし、桔梗をルッスーリアに任せるとそのままヘリのある場所へ入江に案内させる。

ジェット機に乗り込み、寝る体勢に入った私は瞼を閉じた。

腹部の傷や炎の消費での疲労もあって、ぐっすりとイタリアまで眠りについた。

 

 

 

イタリアに戻り、翌日には残党を狩る任務が残っていた幹部達は各地に散らばる。

スクアーロのみ研究室に籠っていて、ヴェロニカと彼が10年前に戻る為の装置を開発していた。

眠る暇もなくパソコンと機械に囲まれながら作業している入江にコーヒーを渡すと、入江は眉間を指で解しながらお礼を言い、ヴェロニカへと視線を移す。

 

「あとどれくらいで完成しそうだ?」

「一週間程度かな……ここ一か月詰め込み過ぎて肩が凝るよ」

 

重いため息を吐く入江を眺めていると、ふいに入江がコーヒーへと視線を移す。

 

「ヴェロニカちゃん…」

「何だ」

「僕がしたことは……意味があったのかな………」

「?」

 

首を傾げるヴェロニカを他所に入江は自嘲気味に笑みを作る。

 

「僕が白蘭さんの対策に作り出したあの弾丸は、白蘭さんに届いた……そして白蘭さんの戦力を大幅に落とせた」

 

そこまで聞いて、漸くヴェロニカは入江が言いたいことを悟った。

 

「でも、結局は…ユニは死んだし、被害も前回と大差なかった……あってもなくても結果は変わらなかった」

「…」

「僕の努力は無駄だったのかな…って……」

 

ヴェロニカは落ち込んでいる様子の入江に対して言葉を探す。

誰かを慰めるのはどうも性に合わないと、頬杖をつきながら口を開く。

 

「別に結果に響こうとそうでなかろうと、お前の作ったものが有効であることは証明されたんなら、きっと意味はあったんじゃないか?」

「意味…ねぇ…」

「ま、過去に帰る時にお前がこの一か月で得た情報を全部入江に渡しておけばいいだろ…少なくともボンゴレの技術開発力に貢献するハズだ」

「それも、そうだね………」

「自信を持て、そんな気弱な奴が私の部下なんぞ務められないし、務めさせない」

「うん、すまない………ありがとう、少し気が楽になったよ」

「お前私より年上だろ、それでも男か」

「あはは、手厳しいや」

 

 

それから一週間ほど未来に滞在していたら、漸くスクアーロ…否、入江が10年前に戻る装置を完成させた。

しかも10年前の飛ばされた時期に合わせて戻れるとのこと。

急ピッチだったためかゲッソリとしてしまったスクアーロに誰もが首を傾げていたがヴェロニカ以外その理由を知る者はいなかった。

因みに桔梗には制御装置のついた首輪をつけて、ヴァリアーの元で働かせていた。

彼含む幹部達は現在長期任務だったので誰もいなかった。

本部にいるのはヴェロニカとスクアーロのみ。

二人は匣兵器を自室に置くと、研究室に入り、10年前に戻ろうと試みた。

装置を起動する前に入江が、過去の自分に連絡を取りたいと言うので一旦日本支部に繋げることにする。

日本支部に回線を繋げると、そこにはスパナと入江がいた。

二人とも包帯やらガーゼやらを貼っていたが既に動き回れるようで、モニターの前でキーの上に指を置いていた。

そしてヴァリアーからの連絡に大層驚いたようで、入江は縮こまっていた。

そんな中スクアーロが口を開く。

 

『そ、そういえば君たちいつ過去へ帰るんだい?既に綱吉君達は過去に帰ったよ…』

「う"ぉおおい、おめぇにやるもんがある…今からデータ送るから待ってろぉ"」

『データ?』

 

入江の言葉を無視してスクアーロは素早いタイピングでキーを打っていき、入江たちはスクアーロがタイピングが出来ることに驚いていた。

そして数分すると、入江の元に一つのファイルが届く。

スパナと入江はそれを開き、内容を流し読みすると段々と表情が驚愕に染まっていく。

 

『こ、これは!』

「死ぬ気の炎の解析結果だぁ"…それ以外にも研究課程の副産物だとよぉ"」

『ま、待ってくれ!これを発見、解明したのは誰だい!?ヴァリアーの専属研究者なのか!?』

「企業秘密だあ"」

『こんなの最新技術を持っていたミルフィオーレでさえ知らない!これは少なくとも今の技術ではとても解明なんて…』

 

愕然としているモニターの向こうの二人にヴェロニカはそりゃそうだ、と内心独り言ちる。

正確に言えばこの時間軸から28年後に発見され解明されるものなのだから。

 

「用はこれだけだ、切るぞぉ"」

『あ!ま、待ってくれ!』

「あ"?」

『あ、あの…ずっとスクアーロに聞きたかったんだけど……』

「?」

『君は覚えているか分からないんだが、10年前…君と並盛で会ったんだ』

「ああ、あのアイスの奴か」

『そ、それなんだけど……』

「それがどうしたあ"…」

『どうして僕の好物がふがしだなんて知ってたんだい?』

「あ"-…んなこと言ってたかあ"?」

『不思議だったんだ…スクアーロの情報をミルフィオーレで調べると、あの時会ったスクアーロと全くかけ離れていて…』

「……」

 

何だか不穏な気配を察知したらしいスクアーロの頬に一筋の汗が伝う。

 

「あ、あれだあ"…日本人はふ、ふがしが大好物って聞いたからそうだと思ったんだあ"…」

『ああ、そうだったのか……にしても君は裏表のある人なのかい?』

「いやあの時は丁度機嫌が良かっただけだあ"……多分…」

『そ、そっか……いやすまない変な質問をしてしまって、そ、それで君たちいつ帰るんだ?』

「今からだ」

『そうか今から……え、今?』

「じゃあな」

『え、ちょ――――』

 

通信を切ると、スクアーロは装置のボタンを押す。

 

「ねぇヴェロニカちゃん、これ10年前戻ったら僕に休暇くれないかい?」

「まぁ数日くらいならな…」

「流石に今回は精神的疲労が大きすぎたよ…」

 

段々と重力がなくなり、浮遊感に包まれる。

そして再び重力が掛かるのを感じ、目を開けると同じ研究室だった。

入江は無言でパソコンを起動させ、日付を確認する。

 

「ちゃんと戻っているよ…まぁヴェロニカちゃんの飛ばされた時期に合わせたから、僕は数日行方不明だろうけどね」

「ああ、そういえばお前が任務があるにも関わらずいなかったからここに探しにきたんだったな…」

「げっ、じゃあ僕今から任務!?」

「まあ明日から有休取って休め」

「うへぇ…」

 

 

二人とも研究室を出て、ザンザスの執務室に出る。

 

「じゃあ任務いってくるよ…」

「ああ」

「あ、ヴェロニカちゃん」

 

入江は執務室の扉に手を置き、顔だけ振り返る。

 

「お疲れ様」

「お前もな」

 

漸く二人にこの世界の日常が戻って来た日だった。

 

 

 

 

 

 




未来編終了。


ユニ生存ルートを模索したけど、既にアルコバレーノが全員死亡してる時点で無理と分かり断念しました。
ちくせう。

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