自然は調和を保とうとするだろう…
人は逃げていた。
たとえ海であっても鉄の船に乗ることでどんな獲物も倒すことができる。
これまでは…
人間こそがこの海の支配者だ。
逆らえない。
鮫も鯨も鯱も。
そのはずだった。
そこへ、巨大な黒い物体が海から上がってきて、津波を起こし人間と鯨のあいだに立った。
勇敢な船員たちは、その光景に唖然としている。
船員たちはそれほど能天気にはなれなかった。
すぐに悟った。
我々はこの船と共に沈むのだろうと…
いっそ意識が飛んでしまえばこれほど恐れおののかなくてすんだだろう。
ここ数十年のやや暴走気味な工作艦の開発によって、成長した大淀鎮守府。
しかしそのなかにも静かな場所はある。
毎日が忙しい各地の鎮守府においてもフル稼働している工厰は少ない。
たいていは夜のシフトが終わると明かりを消す。
昼間は辺りをはしゃぐ少女達の姿も今は消え、それなりに、静かである。
疲れた労働者は閉ざしたドアや窓のむこうにある寮で眠っている。
眠っていない者は鎮守府の前か海を見つめて警備に没頭している。
ところがそこに体はずんぐりとして、両腕は砲の形をした大きな指が三つ、いかにもボロく、傷だらけ。
が、ヘッドライトはずいぶん強く、建物や海の先を明々と、照らし出し、外見に似つかわしくないパワーを秘めたることをうかがわせる生きた機械。
不釣り合いな要素がもう1つ。
肩と思わしき所にはステッカーが貼られているのだ。
そこにはこう書かれている。
お前も綺麗に流してやる、深海棲艦
海のむこう、遥かに先から黒い生物が三匹、呻き声を轟かせながらあらわれた。
その姿は機械と生物が混じった地球外生物のようだ。
人類の新たな天敵、深海棲艦、そう呼ばれているイ級である。
それを遠くから見ていた少女は鎮守府のサイレンを鳴らした。
この少女…年はまだ12、3といったところだろうか。
なぜ深夜にいるのか、さらにはハイテク探索機器、武器弾薬をも装備している。
更に工厰から出てきた少女二人も重火器を搭載している。
後ろには白い服を着た男が指揮をしている。
少女達はこれから遭遇するはずのものについて一定の知識はある。
しかし最後は豊富な実戦経験を持つ二人が頼りだと認識していた。
男はヘッドセットの位置を直して話した。
「全員よく聞け。今回は防衛戦だ。今回の重要性、危険な可能性はあえて言わない。この一ヶ月で確かに目撃例は少ない。
だが、気合いをいれて、この作戦をできるだけ綺麗にすませよう。」
少女達は男に、率いられてすみやかに防波堤から降り、艤装を展開した。
止まるんじゃねえぞ!!