フランケン・さてん   作:人外牧場

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cyborg

 ぐにゃぐにゃにねじれ曲がった手すりを見て佐天は驚く突然、能力に目覚めた訳でもない、事故で隠された才能が目覚めた訳でもない。しかし、目の前には自分の手で曲げられた手すりがある。訳の分からない恐れに佐天は晒される。自分の体が、自分の物で無くなる。そんな感覚に佐天は囚われた、悲鳴を上げる。誰にも届かない。全裸であるにもかかわらず、手術室を飛び出し病院を抜け出し路地裏に隠れる。ゴミが集められた路地裏の一画で佐天は、ゴミに埋もれ震えていた。右手に捨てられたビール瓶を握り、少し力を加えるとビンは割れずに一回り小さくなる。今度は落ちていたガラス片で手首を切ってみる。少しだけ血が出るがすぐに再生し、傷は跡かたもなく消える。膝を抱える手に力が籠り、気がつくと目の前に数人のスキルアウトが立っていた。

 

「お嬢ちゃん、もしかして痴女?なら俺らと遊ばない?すぐに足腰立たなくしてやるよ」

 

「あの、私そんなんじゃ

 

「はあ?」

 

 我慢弱いスキルアウトは佐天の手を掴み無理に立たせようとするが、佐天が抵抗すると動かなくなった。倒れたスキルアウトは小さく痙攣を繰り返す。

 佐天の手首から飛び出たナイフが刺さって。

 残りのスキルアウトが怒りの声を上げ、佐天は理不尽な運命に悲鳴を上げる。

 数分後、そこは地獄だった。佐天の体に仕込まれた暗器によって、四肢を貫かれた者や、腕を縦に切り裂かれた者、酸をかけられ苦しみもだえる者が地面を転げ回り佐天は、目の前の惨劇に精神は既に限界を迎えていた。そして、手に握られていたくしゃくしゃのメモ用紙の存在に気づく。あるホテルの住所が書かれたメモ、そして佐天はふらんの存在を思い出す。

 

「行かなくちゃ」

 

 そうつぶやくと倒れているスキルアウトの衣服を奪いホテルを目指す。学園都市の5本の指に入る高級ホテルのドアマンに入館を断られるも、ふらんの名前を出すとすんなりと通してもらえた。受付で部屋番号を教えてもらい、急いで部屋に急ぐ。ドアを力強くノックしようとした時、誰かに肩を掴まれる。

 

「邪魔だ!」

 

 そう叫ぶと肩から虎バサミの様な武器が作動する。虎バサミが手を挟み込むも、パラパラと落ちたのは虎バサミの刃だった。

 

「おもしれえ、てめえあのクソマ○コの作品か!」

 

 振り返るよりも先に佐天の右腕が食いちぎられる。ホテルの廊下に佐天の悲鳴が響く、しかし、欠損した右腕は既に再生を終えていた。

 

「大した再生能力だ。ただの暗器が武器じゃあオレの相手じゃねえよ」

 

 佐天の腕を食いちぎった本人、青い髪をした女性が頭に付けているヘッドホンのつまみを調節すると女性の体はみるみる狼の化け物へと変化していった。

 

 (殺される)

 

 佐天は本能でそう察知する。しかし、化け物は佐天の反応スピードを超えて襲いかかる。死ぬ、そう感じた佐天はキッと目を閉じる。

 

「止めておけ、ガブリール」

 

「ッチ!クソジジイ、来やがったのかよ」

 

「当然だ。君のメンテナンスは私の仕事だろう」

 

 佐天とガブリールと呼ばれた化け物の間にスーツの老人が割り込む。ガブリールを止めた老人は座り込んだ佐天に手を差し出す。

 

「いつまで座っているつもりだね。キミもふらん君に用があるのだろう」

 

「・・・ありがとうございます」

 

 老人の手を取って立ちあがった佐天は、一度深呼吸をして部屋をノックする。部屋の奥からどこか間の抜けた声が聞こえる。ドアまで走る音が聞こえ、ドアが開かれるとそこには頭にボルトが生えている少女ふらんだった。

 

「佐天さん!それに天使博士も!よく来てくれました、ささどうぞ中へ」

 

「おじゃまするぜ」

 

 佐天と天使の間を通ってガブリールがふらんの部屋に入る。ふらんの表情は見るからに青ざめる。

 

「がガブリール。久しぶりよね」

 

「あぁん?オレがお前の存在に気がつかねえと思ってんのか」

 

「ふらんさん!」

 

「どうしたの?佐天さん。どこか体の調子が悪かった?」

 

 不思議そうに首をかしげるふらんに佐天の怒りが爆発する。ふらんの首を絞め、倒し、頭を床に何度も打ち付ける。ゴリュッという音と共にふらんの首が胴体と分離する。ふらんの体は一般人と変わらず、改造された佐天が思い切り首を締めれば首が切れるのは当然だった。部屋にふらんの鮮血がばら撒かれそれを見て佐天は急に我に帰る。血で汚れた手で頭を掻き毟り錯乱する。

 

「はあ、佐天さん。いきなり首を千切るなんて、少し暴力的ですよ」

 

 千切れたふらんの首が喋っている。いつもとなんら変わらず、まるでいつものことであるかのように。佐天は唖然とした顔で、なお喋り続けるふらんの生首を見つめていた。

 

「しかたないですね。まずは首をくっつけるとしましょうか」

 

 そういってふらんの体が動き出し、懐からメスを取り出し生首から髪の毛を数本抜いてそれを糸の代わりにする。数分後にはいつもと変わらないふらんが立っていた。

 

「何が起こったの?」

 

「あぁ、それは私が不死身のフランケンシュタインだからです。焼かれようが切られようが、私は死にません」

 

 あまりに多くの出来ごとに佐天は無気力状態に陥ってしまう。何を言っても反応すらしない佐天をみてふらんはため息をつく。

 

「天使教授、すいませんがご用は明日に延ばせませんか」

 

「私は構わんよ。帰るぞ、ガブリール」

 

「命令するな、クソジジイ」

 

 荒くれ者のガブリールが天使の一声で素直に従う。悪態をついていたが。普段のガブリールとのギャップに驚きを禁じ得ないふらんだったが、今はそれよりも佐天さんをどうにかする方が先だった。

 

「さあ、佐天さん。いつまでも玄関前にいないでベッドに座りましょう」

 

 佐天の腕を掴み強引にベッドに移動させる。自分の佐天の隣に座り、そして佐天の身に起こったことを説明する。全ては良かれと思ってした行為、それゆえに佐天は純真無邪気な隣の悪魔に怒れずにいた。しかし、そのままでは事態が好転する訳が無い。佐天は駄目もとでふらんになんとかならないか相談する。その答えにふらんは一枚の紙を見せる。柵川中学への編入届け。

 

「まあ、私は中学校に行くようね年齢ではないんですが、年齢の融通は色々効きますんで社会学習のつもりで行きます。編入した時には佐天さんのケアやメンテナンスをさせてもらうつもりです。私も妹も一緒に編入しますから、一緒のクラスになった時は仲良くして下さい」

 

 にこにこと笑顔でとんでもないことをいうふらん。しかし、改造した本人が来るなら少なくともそのまま放置よりも何倍も良い。しかたないと佐天はこの体と付き合っていくしかないと決意。いつも楽しそうにしているのが佐天涙子だと、自分に喝を入れ迷惑をかけたふらんに謝罪してホテルを出た。しかし、不運の運命は佐天を随分気に入ったようだ。ホテルを出て佐天の前に現れたのは、完全武装のアンチスキルと親友の初春飾利と白井黒子だった。アンチスキルの一人が佐天の前に立ち、言い放つ。

 

「佐天涙子、お前を傷害と殺人の容疑で連行する」

 

「えっ!?」

 

 訳が分からずあたふたする佐天をよそに初春は泣きながら佐天に訴える。

 

「佐天さん!佐天さんは、そんなことしてないですよね?誰かが佐天さんを陥れようと・・・」

 

「ゴメン、初春。私・・・・もう・・・・人間、止めちゃったから。心当たりもあるから」

 

「ざでんざん!!」

 

 佐天涙子の手に能力者用の手錠がかけられる。




 補足説明を
斑木 ふらん  天才生物学者斑木博士の最高傑作。人造人間であるため限りなく不死身に近く、また好奇心も強いためトラブルメーカーでありトラブルシューターでもある。

ヴェロニカ  ふらんの妹、同じく人造人間。体中に武器を仕込み高い戦闘能力を持つ。一時期ではあるが斑木博士の護衛をしていた。

アドレア  斑木博士が執刀した女性。体にチャックが付いておりそこからストックしておいたパーツを取り出せる。美人。

ガブリール  斑木博士の作った人造人間。ふらんやヴェロニカの姉に当たる。トランスフェノメナと呼ばれる機能を持ち体を自由に変化させることが出来る。戦闘能力も作中トップクラスであり、一度ヴェロニカを殺害している。

天使博士  斑木博士の友人。高い功績を残し子爵の爵位を持っている。内密に精密機械の様なデリケートな体のガブリールのメンテナンスをしている。ガブリールが唯一逆らわない人物。


佐天涙子  この話の主人公。柵川中学の一年生。レベル0。またレベル5の御坂美琴、レベル4白井黒子などレベル問わず交遊関係は広い。しかし、レベル0と言う事をコンプレックスと感じ、自分と周りとの差にストレスを感じている。
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