大地に巣食う蟲   作:蕎麦饂飩

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おさないもの と ははたるもの

◇アルトリア◇

 

 

彼女と最初に出会ったのは選定の剣を引き抜いた時でした。

選定の剣の守護霊である竜と名乗る彼女は最初は恐ろしい、正直に言うと生物として恐怖しかねない程に悍ましい姿。

それは捕食者であり、分解者であり、破壊者でした。

大蛇であり、白百合に似た植物であり、竜であり、烏賊であり、妖蛆であり、蚯蚓であり、磯巾着であり、

私達の信仰の外側にある邪悪な神のようにさえ見えました。

だが、彼女は私を恐怖させない為に、人の姿を取った。

純白の白い髪を棚引かせる神秘的な姿に。

何処か私に似ているが、人のものでは無いと解る人外の美しさがそこにはあったのです。

 

彼女は私を何時も子ども扱いする。

時折、貞操の危機を感じる時もあるが、距離感が近すぎるだけで実際危ない人では無い…はずです。

時に私を我が子と呼び、共に浴場に入って同じ洗体剤で匂いを共にすることを好む。

確かにこういうと中々に危ない気がしないではないが、襲われたことは一度も無い。

 

彼女の魔性染みた美しさは様々なものを虜にした。

その筆頭がマーリンだ。かつては少々憧れた部分も無くは無かったが、今では完全に『これは無い男』だ。

 

正直、厠に着いて行こうとするのはドン引きしたし、普段から懲りずにアプローチをかけているのもよくやるものだとは思う。

 

 

彼女とギネヴィア王妃を二人も囲うなんて王は贅沢だ。王にはモテない人の心が解らない…。

そう嘆く、トリスタンと頷くランスロットは一度頭の治療をすべきだと本気で思ったのは言うまでもありません。

 

彼女はベディヴィエールに対してはどうやら彼の隻腕が気になったらしく、

彼女にペタペタと男性には非常に珍しく身体を接触されていて、

真っ赤になって固まっていた事がありました。初々しくて良いと思う。トリスタンとランスロットは彼を見習った方が良い。

 

彼女に好かれるポイントとして勘違いしたのか、

片腕を衣服の中に隠してアピールし出した魔術師はもう見習う発想を棄てるべきだと思いました。

 

 

 

 

私が、カリバーンの制約を破った時に、その現身たる彼女の身体にも切断されたような痕が奔った。

私は彼女を裏切ったと言っても良い。それでも湖の乙女を経て蘇った彼女は私を肯定しました。

何処か蠱惑的で、何処か冷酷で、何処までも私を愛する彼女に私は改めて敬意を払う事にしました。

 

それと、何処がとは言わないが一部が大きくなった事だけは、成長を手放した私への当て付けと思えてしまうのは仕方ない。

私だって、成長していけば…きっとグラマラスな身体になったはずだ。恐らく、きっと、めいびー。…だったらいいな。

 

 

 

また、彼女は飛竜に対する圧倒的な優位を持っている様で、

ここ最近ブリテンの都市を襲う頻度を上げてきたワイバーンを一睨みで追い返す事が出来る。

その事で彼女に話しかけると、

 

「真の達人は戦わずして勝つと云います。

弓を持たずに矢を放ち、矢を放たずに敵を射る。

……いえ、今、嫌な男性を思い出しました」

 

奇遇でした。私もその例えだと一人具体的な人物が浮かんできました。

彼女が避けることにしている男性の1人、トリスタン。

彼曰く、彼女はオーラとして『ばぶみ』?と『ろり』を感じさせるのだとか。

ばぶみというのが良く解りませんが、母性の様なものだそうです。

彼女は普通に成熟する手前の様な姿の女性で、

一部分の大きさは母性の様なものを感じさせるが、確かに常識が一部ずれた所は幼く感じます。

…ですが、トリスタンは以前の一部分が小さなころからその母性はあったと言います。

因みに彼女には結婚経験も、産卵経験(剣の妖精は卵生?)も無いそうですが、私を子として扱う所は確かに『母性』なのでしょう。

それと、ガウェインはエクスカリバーに新生した姿になってから彼女に母性を感じる様になったと言っていたことがあります。

…全く、男と言う生き物は。

 

 

そんな彼女ですが、最近は鉱山の開発を指揮しています。

曰く、彼女の認識しない鉱山は無いのだとか。

宿る剣がエクスカリバーになる前はそのような事をせず、私以外には随分と消極的だったので、

私は剣の強度が上がった事で能力と積極性が変わったのだと思っています。

 

また、ある朝目覚めると彼女が存在せず、しばらくすると帰ってきました。

彼女は暫くの後にランスロットに、この先北の方向に運河があるから確認に行けと命じました。

 

よくよく考えれば巨大な運河が簡単にできるわけも無く、地形に詳しい彼女が今まで教えなかった事もおかしいのですが、

更によく考えると、取り敢えず『眼』が良い2名を除いた距離を取りたい男を、

物理的に距離が取れる様にしただけなのかもしれません。

 

それを裏付けるかのように、それに続き、

トリスタンには魔力を帯びた特殊な銀が眠る、途轍もなく深い深い地下への大洞窟が発見されたから行けと、

 

マーリンには海の底に何かあるかもしれないからなるべく遠くまで泳いで、

そのまま海底まで潜って浮かんでくるなと言っていました。

 

兎に角、マーリンには特に辛辣な彼女ですが、

その3日前に剣だとか鞘だとか彼女の根幹部分を持ち出してゲスな下ネタを言っていたので、残念でもないし当然でしょう。

それとも、彼が白薔薇の花束を持って真剣に告白した事への嫌悪でしょうか? それならいささか不憫だとは言えなくもありません。

 

最近の彼女は発明家としても優秀です。

除虫菊という植物の葉や茎を粉末にして練り固めて螺旋状にして、

火をつけた時に発生する煙で害虫を追い払う、彼女の発明品があり、それは今民たちにも愛用されています。

高級品は除虫菊を特殊な製法を使い、水蒸気で燻った液体なのだとか。

そして、彼女自身はいつもマーリンが来る度にその虫除け煙材に火を付けるのです。

勿論、マーリンが死ぬ事はありませんし、どちらかと言えば彼女の方が煙で苦しそうですが、

そこまでしてもマーリンに嫌悪感を持っているという主張がしたいのでしょう。

もはや、マーリンを応援したくなる気がしなくもありませんが、結局の所、私は応援しない気がします。

 

私を子と呼ぶ女性と、昔良いなと思った事が少しくらいはある男性のラブロマンスだなんて、見たいとは思いません。

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