☆キラリ☆スター
「はぁ〜〜」
狭いアパートの一室で、一人の女性がため息をついた。目の下にクマを作り、髪の毛は何一つ手入れしていなくて、側から見たらニートのように見える。
いや。実際彼女はニートだ。名前は大山恵と言って、親の脛をかじりながら生きている。このアパートだって、親が買ってくれたアパートだ。
このままではだめだというのは容易にわかるが、わかるだけで何かしようとはしてない。一生このままなのだろうか。いや、違う。
彼女は変われる。文字どおり、変わることができる。ブツブツとつぶやきながら、恵は目を閉じる。
そしてゆっくりと目を開けると、そこにはとても可愛らしい少女がそこにいた。彼女の名前は【キラリ☆スター】と言った。この街にいる一人の魔法少女だ。
姿形は可愛らしくても、彼女は前のように大きなため息をついた。そして、手に持っているタブレットにちらりと視線を移す。
「魔法少女の数を減らす……か」
先日。彼女は他の魔法少女の前でメールの内容を告げた。彼女の能力である【皆の注目を得れるよ】により、視線はキラリ☆スターに集まっていた。
もちろんそれを伝えた瞬間、キラリ☆スターには文句の言葉も集まり始める。予想はしていたが、とてもうんざりしてしまう。なぜこんなにも理解されないのだろうと。
だけど、仕方ないのかもしれない。魔法少女だって、人間だ。嫌なことがあれば、何かに責任をつけようとするのは仕方ないのだ。キラリ☆スターだって、逆の立場ならそうする。
「……魔法少女の資格を剥奪。ね……剥奪、かぁ……」
はっきり言って今の自分の美しさ、可愛らしさを失うのは辛い。もう2度とこの力を得ることはできないだろう。
けれど、ある意味これはチャンスだ。変わることのできる、最大最高のチャンス。目の前に転がっているそれをつかむことができる最初で最後のチャンスだ。
もともと手に余る力だ。それを捨てることができ、そして新しい自分として動ける。もう、ニートは卒業したい。そんなことを考えていた。
だが、そのためにはマジカルキャンディの数を減らさないといけない。キラリ☆スターはそこそこ活動していて、マジカルキャンディの数は結構多い。これで最下位を狙うのは、おそらくもっと後になるだろう。
「何か、ないのかな」
そんな言葉を漏らした。魔法のタブレットを握る力を、彼女はさらに強くした。
◇◇◇◇◇
☆リンリンベル
電車が走り回る線路の前に、3人の魔法少女がいた。リンリンベルとキャンディドロップ。そして、GO5の3人だ。
昨日の夜、あの話があってから魔法のタブレットを確認すると、本当にお知らせが来ていた。内容は魔法少女が増えすぎたため、この土地の魔力が枯渇してきたらしい。たまから、週に一回マジカルキャンディが少ない人から魔法少女の権利を剥奪するという簡単な内容だった。簡単すぎて嫌になるが。
キャンディを集めると言っても、リンリンベルは結婚式。キャンディドロップはお腹が空いてる人に飴を配らないといけないというのがあり、二人ともあまりキャンディ集めには向いてない。キャンディドロップは手当たり次第配ればいいかもしれないが、そしたら、誰も感謝しなくなるだろう。
二人でどうしようかと言っている時、ライダーみたいな格好をした魔法少女に誘われた。一緒にマジカルキャンディを集めようという誘いであり、リンリンベル達にとっては渡りに船であった。
そんなこんなで今に至るが、白い雲のような服を着たリンリンベルは顔を赤い雲のように染めていた。ちらりと横を見ると、キャンディドロップも同じような色にして、目の前にいる人物を見ていた。
「どうした二人とも!!元気ないぞー!!」
「そんなことを言われても……これ恥ずかしい……」
目の前にいたのはGO5と名乗る魔法少女。彼女は元気そうに笑っていたが、リンリンベル達はそうでもない。むしろさらに顔を赤くした。
「あの……作戦ってなんでしたっけ……?」
「忘れちゃった?しょうがないなー……まず、ここら辺一帯は遅刻とかしそうな人が多い!だからそんな人たちに向かってリンちゃんが鐘の音を響かせて教えるの!こっちにおいでーって。そしてこのあたしが!自慢の愛車を使いーーー」
「あの!愛車って、本当にこれなんですかっ!?」
キャンディドロップが台詞を遮り口を開けた。その言葉を聞くとGO5はニコニコと笑い、そうだと言って頷く。そして近くにあったものをバシンバシンと叩き始める。
「これがあたしの今の愛車!冷蔵GOだ!!」
「って、ただの冷蔵庫じゃないですかー!!」
そう。GO5が愛車と言い張るこれは、ただの冷蔵庫。だが、一応これに乗り込むことができる、これこそGO5の魔法【生き物以外を乗り物にできるよ】の力だ。しかし、冷蔵庫が走る絵はシュールだし、その中に入りながらお客さんを待つのもなかなかにシュールだ。
しかし。意外にこれが上手くいく。
リンリンベルがまず鐘の音を対象の頭に響かせる。すると、その対象が辺りをキョロキョロと見渡し、リンリンベル達を見つける。
そして、GO5の車だ。この3人は側から見たらコスプレ集団なので、最初は拒否されるが、どうにか乗せて仕舞えばこちらのもの。電車より速い速度で、安心安全にGO5の車は走り出す。
そして途中、キャンディドロップが好みの味にした飴を渡す。この3コンボで大量とは言わないが、かなり多めの量のマジカルキャンディを集めることができるのだ。
けれど街を走る冷蔵庫は、やっぱりシュールであるが、二人の顔からは恥ずかしさは消えて、だんだんと誇らしさを帯びてきていたのであった。
◇◇◇◇◇
☆落々雷々
高い塔の上に登って空を見上げている中華服を着た少女。彼女も魔法少女だ。名前は
単純明快に【雷を操れるよ】という能力は、戦闘においてはかなり強いが、ここは平和な町であり、戦闘など起きるわけもない。
チラリとみた魔法のタブレットに届いてるメール。それが届いたのは6日前で、明日誰かが魔法少女じゃなくなることを表していた。
「やぁ、こんなところで何してんだい?」
突然声をかけられた。落々雷々が鬱陶しそうにその声の方向を見ると、学者のような格好をした少女がそこに立っていた。
「何ネ。私、そんなに暇じゃないヨ。用が無いなら帰るヨロシ」
「いやいや。用は少しだけあるよ」
そう言ってその学者の少女は落々雷々の隣に立って、にこりと笑う。彼女の名前は
「あんたの名前、∞ストーリーじゃなくて∞ストーカーあたりに変えた方がいいネ」
「はっはっは。冗談だけは上手いな。それに私は別に君をストーカーしてるわけじゃない……観察してるのさ」
∞ストーカー……ではなく、∞ストーリーがそういい終わると同時に、落々雷々は彼女に雷を落とした。ドゴンっと大きな音が聞こえて∞ストーリーに直撃する。彼女は口から黒い煙を出したが、無事なようだ。というか余裕そうでむしろむかつく。
「で、なんの用ネ?しょうもなかったらもう一度雷落とすよヨ」
「いや何……少しだけ、気になってさ。いや!無事ならいいんだ。いや本当……」
いつもと違うような雰囲気に、落々雷々は少しだけ首をかしげる。いつもならもっと変なことを言ってまた雷を浴びるのにな、と。
まぁでも、めんどくさいよりかマシか。そう考えた落々雷々は大きく伸びをして、塔の上から飛び降りようとする。その時∞ストーリーが、彼女の手を握った。
「……なんネ?本気で雷を落としてやるヨ?」
「いや違う……ただ、一つだけ聞いてくれ……明日の発表だが、おそらく大変なことが起きる」
「なにそれ。ただ一人だけ魔法少女の権利が剥奪されるだけネ。そんな大変なこと起きないヨ」
そう言った落々雷々は、勢いよく∞ストーリーの腕をほどき、塔から飛び降り屋根から屋根へ走っていった。
その姿を後ろから見ていた∞ストーリーは、少しだけ悲しそうな顔をしながら、彼女とは反対の方に降りて行った。