☆怪盗トランプ
憂鬱だ。
まず最初に怪盗トランプはそう考えながら自分を挟むように座っている少女たちに視線を向けた。一人は中華服を、もう一人は学者のような格好をしている。
なぜこうなったか。確か十分ほど前だったか。キャンディを集める為東へ西へと走り回っていた時、中華服の少女。落々雷々に呼び止められた。
どうやらパートナーとなるものを探しているらしい。確かに仲間はいた方がいい。怪盗トランプ自身の性格上、一人で行動する方が好きであり本当は嫌だったが、断るとめんどくさそうで、しかも死にたくない。だから怪盗トランプは少し間をおいてゆっくり頷いた。
それと同時に空から落ちて来た魔法少女がいた。彼女は∞ストーリーという名前であり、落々雷々を見つけた瞬間飼い主を見つけた犬のように走り寄ってきた。
けれど落々雷々は∞ストーリーに向かって雷を落として、威嚇していた。何か怒らせてしまったようだが、∞ストーリーの方には自覚はないため、最初は慌てていたが、すぐに冷静になって一度話あおうと提案があった。
代わりに落々雷々は間に怪盗トランプを挟めばいいよと言い……それによって今の状況になってしまっている。
「で、なんで怒ってるんだい?」
「そんなこと言わなくてもわかるでショ!」
なんだこの人たち。怪盗トランプはため息をついた。めんどくさい喧嘩に巻き込まれたものだと、他人事のように考えたかったが、場所が場所なためボーってしていたとしても話の中に巻き込まれてしまう。
「すまない。全くわからない……」
「いいヨ!もういうネ!こいつ、黒幕ネ!」
一瞬時が止まった。そして、事の重大さに気づいた∞ストーリーが大慌てで否定を始める。そんな事ない。私が黒幕な訳が!というが、落々雷々は聞く耳持たずで、口を開ける。
「この前言ってたヨ。大変なことが起きるーって。そんなことわかるのは黒幕しかありえないことネ!!」
「いやそれは……!!」
二人がまた言い争うを始める。間に挟まれている怪盗トランプは、耳を塞ごうとするがその時ふと気になることができた。そのことについて言うか言わないか迷ってしまい、ただただため息をついた。
コホン。∞ストーリーが空咳をして突然怪盗トランプの腕を掴んだ。ビクリと反応して、∞ストーリーの手と顔を交互に見てしまう。
「あ……なるほど。ふむふむ。そうかそうか……」
「な、なにか……?」
「意外と可愛い声してるだね……っていやいや。そうじゃない。えっとね、落々雷々。もうこっちの子はわかってるみたいだよ?」
「あんたが黒幕ってことカ?」
「違う違う。逆だよ、逆。私がなにが起きるか把握できてるおかげで、私は黒幕ではないんだ」
∞ストーリーがそう自信満々な顔をするが、落々雷々はまだ怪訝そうな顔をしていた。それに気づいた怪盗トランプは、遠慮がちにくちをあける。
「あの、∞ストーリーさんの魔法は……記憶を読み取る……だから、それを使って誰かの記憶を読み取ったんじゃないかな……って」
「そうそう。いつだったか忘れたけど……そういう記憶を読み取ったのさ。それを私は覚えていただけ。わかったかい?」
そこまで言われて落々雷々はようやく合点がいったらしく、途端に申し訳そうな顔になる。そして、小さな声で謝った。
どうするのかな?と怪盗トランプは考えながら横を見ると、∞ストーリーは特に気にしてる様子はなく、ニコニコと笑っていた。
「なにきにすることはない。でも気に病んでるから……」
「病んでるなら?」
「ちょいとその体を隅々まで観察させてーーー」
そこまで言った瞬間、∞ストーリーの頭上に雷が落ちてきた。これが彼女たちの騒々しい日常で、これからもこれを見るのかもしれないと、そんなことは認めたくなかったが、その後でもピンピンしてる∞ストーリーを見て、怪盗トランプはまた憂鬱な気分になっていた。
◇◇◇◇◇
☆カウント0
カタン
手の中に握っているふるびた時計を見ながら、時宮天智はため息をついた。まさかこんなことになるなんて。そんなことを思いつつ、時計を眺める。
彼女。いや、彼はただの少年だった。新しくできたこの島に、家族とともに引っ越してきた。そんな、どこにでもいる普通の少年。強いて言うならとてつもなくおとなしい性格というだけか。
けれど、ある時。本当に突然彼は魔法少女になっていた。まるでそう決まってたけど、神様がそれを忘れていて慌ててそうしたかのように。突然に。
最初は何かの冗談かと思った。そして、次は夢だと。けれども、胸を触って、ズボンの下を覗いた後はもうそうとしか思えなくなってしまっていた。
名前はカウント0と登録されていた。けれど名前なんか重要じゃなく、年頃の少年である彼は、日頃溜まっていたものを自分の体にぶつけていた。少しだけ、夢だろうと思いながら。
しかし、夢じゃなかった。目が覚めても彼は彼女のままで、ぐちゃぐちゃになったシーツを見ながら、どう言い訳をしようか考えていた。
「……次にまた誰か、死ぬのか……僕かもしれないんだよな……」
そうポツリと呟く。神様。もしこれが自分の体にあんなことやこんなことをした罰だと言うなら、もうしません。だから、許してください。だけど、やっぱりこれも現実だった。
今日はどうしようか。しかし、そんな時にも疲れた体が求めてるものがある。自分はなぜこうなったしまったのかと考えながら、彼はゆっくりと変身した。
親はいない。今は二人とも仕事に行っている。家には私しかいないのよ。そんなことを自分に向けて呟いた後、彼女は自分のズボンの中に手を優しく突っ込んだ。
束の間の快楽を味わうのも、悪くないんじゃないかな。彼女は、激しくなっていく指の動きに反応しながら、そう考えていたのであった。