俺は、農業がしたかっただけなのに……!   作:葉川柚介

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エルくんの大好物、やっちゃった

「ところで、エルくん」

「はい、なんですか先輩?」

「『グランレオンにエーテライト塊くくりつけて竜炎撃咆でぶっ飛ばせば魔法生物の土手っ腹ブチ抜けるかな』とか考えてないよね?」

「………………………………………………そんなこと考えるわけないじゃないですか。ブレードで強化できるタイプのシールドでもないですし」

「沈黙の長さと不安のデカさが比例するんだよなぁ!」

 

 

◇◆◇

 

 

 エーテライト塊回収に出ていたディートリヒたちは無事に成功していたようで、作戦開始地点へ向かう道すがらそれを受け取っていよいよ始まる。

 この世界を救うための、たった5人の戦いが。

 

「もう二人いたら鋼鉄の7人作戦と名付けたのですが」

「そういうのいいから」

「はい、これはこれでワクワクしますしね。では、小王さん! 魔王さん! 魔法の力、お借りします!」

「ぐ、ぐくくぅ……! 致し方ない、業腹だが、やりたまえ!」

 

 飛竜戦艦の改造は、構造的な部分のみならず内部の魔法制御的な部分にも及んでいる。

 たとえばそれは、この作戦のため飛竜戦艦に組み込まれた魔王の能力行使をエルくんの側でできるようにすること、とか。

 

 魔王には、他の幻晶騎士や魔獣にはない特別な能力がある。

 詳しい原理は知らないが、竜の王として俺たちの脳に直接声を届けたときのような、遠隔での制御を可能にする魔法だ。

 魔王はこの力を利用して、凶暴でまともな意思を持っているか怪しい混成獣をハルピュイアの乗騎とすることを可能としていた。

 エルくんは魔王との間にある種のコンバータを介して、その能力を操れるようにしている。

 

「さあ、起きなさい……竜闘騎! トゥエディアーネ!」

 

 銀線神経すら繋がない、完全無線の無人幻晶騎士操作。それも、エルくんの演算能力を駆使した同時多数制御。

 ほとんどぶっつけ本番でそれを駆使して、地表近くで幻魔獣との戦いを担当してくれている以外の全機体がこの作戦のために駆り出されている。

 隊列を組んで飛竜戦艦に追従してきた竜闘騎とトゥエディアーネがそれぞれ竜脚や腕で飛竜戦艦に取りつき、強化魔法で一体と化した。

 

 作戦は、浮遊大陸の外から始まる。

 大陸中央の魔法生物から十分な距離を取り、巻き起こされる嵐の範囲からも脱した穏やかな空。

 

 ここから人跡未踏の領域へと、飛ぶ。

 

 黄金の鬣号を接続した、応急修理の飛竜戦艦。

 巨大なエーテライト塊を船体下部に抱え、イカルガ、魔王、ついでに俺の機体を乗せ、さらには多数の竜闘騎とトゥエディアーネまでしがみついた、控えめに言って乗せられる戦力全部乗せな割と頭の悪い最強兵器。

 

「名付けて決戦騎『魔竜鬼神(ウルトラキシングレート)』! 全速前進です!!」

 

「エルくんは最初『大空魔竜鬼神(ウルトラガイキングレート)』って名付けようとしてたのをなんとか止めました」

「あなたも相当苦労してますねぇ」

「まあ、エルネスティ君だからな」

 

 オラシオさんと小王の同情が身に沁みるぜ……。

 

 

◇◆◇

 

 

 作戦は、6段階で構成されている。

 

「行きます! 全源素浮揚器、出力最大!」

「りょーかーい。ありったけのエーテル流し込むよー!」

 

 第一歩として、魔竜鬼神に接続する全機体のエーテリックレビテータを最大限に活用する。

 エーテル濃度を最高に設定されたエーテライトがふわりと浮遊感に包まれ、高度を上げ始める。

 水中の木片が浮かび上がるような勢いのつき方だったが、次第にその勢いも下がって行く。徐々に上昇速度が落ち着き始めるのはエーテル濃度によって最高高度が決まるエーテリックレビテータの原理上の必然だ。

 

「第一目標高度……到達しましたよぉ。レビテートフィールド減衰を確認。ここが限界ですねえ」

「エーテリックレビテータでは、ですね。それでは作戦第二段階に移行しましょう。みなさん、体の固定はしっかりとお願いします!」

 

 ここからは、マギウスジェットスラスタの出番だ。

 飛竜戦艦本体は温存し、無理矢理合体した竜闘騎とトゥエディアーネが火を吹いた。

 上向いた機首がぐんぐんと突き進んでいく。慣性と重力でシートに体が押し付けられるが、まだ終わらない。

 竜闘騎には源素過給機(エーテルチャージャー)という装置が搭載されている。

 かつてティラントーに搭載されていたものを改良した、エーテルリアクタに流入するエーテル量を増加させる装置。当然炉の劣化は進むが、今は後先を考える必要のない状況。

 リミッターを解除して、全力を越えた出力を生み出して飛竜戦艦を押し上げる。

 

「たかが飛竜戦艦一つ! 竜闘騎とトゥエディアーネで押し上げてやります!」

「人の作品をたかがとか言わないで欲しいですねぇ!?」

「すんません、あれただの慣用句なんで見逃してあげてください」

 

 当然、長くは続かない。

 ほどなく竜闘騎そのものが赤く輝きだし、その寿命が尽きようとしていることが一目でわかる。

 

「……竜闘騎、分離!」

 

 エルくんは、決して嬉しそうではなかった。

 しかしはっきりと言葉にして、竜闘騎たちを飛竜戦艦から引き離す。

 役目を終えた竜闘騎は、重力と空気抵抗に絡めとられて瞬く間に離れていく。

 遠隔での操縦もすでに効かない。

 無数の竜闘騎がそれぞれにバランスを崩し、そのまま爆炎に飲まれていった。

 

 

 

 第三段階。次はトゥエディアーネの番だ。

 既に何層の雲を抜けたか、竜闘騎と同じく限界を超えたトゥエディアーネの出力がさらに高度を上げる。

 だんだんと、空の色が濃くなっていく。青から紫の間くらいの色合いで、夜とはまた違った色に見える。

 

「うぅ、飛翔騎士のみんな……」

「悔いてはいけません、アディ。役目を果たしてくれた機体には涙ではなく敬意を捧げるべきです」

 

 トゥエディアーネたちは、この空の色を見ることができただろうか。

 背後で轟く爆発音を耳にしながら、そんなことを思った。

 

「さあ、これで最後です。殺人的な加速、気を付けてくださいね!」

 

 そして、第四段階。

 飛竜戦艦と黄金の鬣号、現状人類が有する最大規模のマギウスジェットスラスタがついにその全力を解放する。

 先ほどまでに倍する速度でさらに空を駆けあがる。

 機体のあちこちからギシギシベキリと不安な音が響いてくるが、今更気にしたところでしょうがない。エーテルは潤沢にあるのだから、強化魔法が支えてくれると信じるだけだ。

 

「最終、目標高度……到達を確認ン! 来ましたよ、ここはもうエーテルの空です!!」

 

 そして、辿り着く。

 人跡未踏のエーテルの只中。

 青く霞む眼下の大地と海と、全てを包むダークブルーの空。

 

「マギウスジェットスラスタを通常モードに移行、位置を調整します!」

「あぁ……これが、空……真の空、エーテルの海ィ……!」

 

 なんか、オラシオさんが感極まってイっちゃってる気がしなくもないけど、気にしないことにしよう。あの人、いつもそんな感じと言えばそんな感じだし。

 

「ダメですよ、オラシオさん。僕たちには他にやるべきことがあります。ここまで届けてくれた竜闘騎とトゥエディアーネの犠牲を無駄にすることはできません」

 

 ただ、現実に戻ってもらう必要はあって、その役目はエルくんが果たしてくれた。

 めちゃマジの声で超怖いです。

 

「ぐぬぬ……! いいでしょう、いずれ私自身の作品でたどり着けばいいだけの話ですからねぇ! 飛竜戦艦の制御はこっちでやります! 他は任せますよぉ!」

「ええ、お願いします。……では、『嵐の衣(ストームコート)』を一部停止します」

 

 

 そして、作戦はエーテル収集の段階に移行する。

 機体とエーテルリアクタ、そして俺たち乗員を守るために終始展開されていた風魔法による防壁を解除する。

 そうすれば、当然周囲の高濃度エーテルがエーテルリアクタへ流入する。

 本来ならば無限に等しい寿命を持つエーテルリアクタだが、高濃度エーテルを流し込まれると莫大なエネルギーを得られる代わりに激しい劣化が襲い掛かる。

 この作戦が終われば、どう転んでも飛竜戦艦に未来はない。それだけのものを、賭けている。

 

「開放型源素浮揚器を展開します! ……第一円環形成! 引き続き多重展開を続行!」

 

 そのエーテル量のすさまじさを示すように、魔竜鬼神を中心に虹色の円環が1つ、2つ、3つ4つと次々に形成されていく。

 

 

◇◆◇

 

 

 後の世の伝説に語られる。

 空から降ってきた世界の終わりをもたらす黒雲の塊と、その上空に輝く虹色の輪。

 凶兆とも吉兆とも、世界を滅ぼす力と救おうとする力の戦いとも評されるそれは、浮遊大陸が接近しつつあったセッテルンド大陸各地でも目撃され、人々の記憶に、そして歴史に深く刻まれた。

 

 

◇◆◇

 

 

 飛竜戦艦側の機体は既にズタボロだった。

 内蔵されたエーテルリアクタは高濃度エーテルに晒されてほぼ全機が機能停止。

 イカルガの出力とエルくんの制御で形を保ってはいるが、これから必要になる魔導兵装を除いて強化魔法を打ち切られ、装甲がバラバラと剥がれ落ちていく。

 とはいえ、周囲には何重にもわたる開放型源素浮揚器が形成されているのでどこまでも落ちていくことはなく周囲でくるくる回りながら揺蕩っている。

 どこか呑気ですらあるわずかな間。

 それは、最終段階へと至るための最後の段階。

 下方に広がる巨大な渦巻く雲にぽかりと空いた中心部、魔法生物の住処の上を、取った。

 

「それでは、本作戦の最終段階を実行します。みなさん、ご協力のほどを。……そして、先輩」

「あ、うん。ちょっと待ってね」

 

 そう、ここが人類存亡の瀬戸際。

 そしてたぶん、俺にとっても今までの人生で一番ヤバイ瞬間じゃないかなという気が、ちょっとする。

 

 

 今俺がいるのは、飛竜戦艦の甲板上、グランレオンの中。

 竜闘騎にトゥエディアーネ、飛竜戦艦の操縦に関して俺の出る幕はなく、エーテライト生成に伴うエーテル流制御というここからが俺の出番であり、そのために必要なものはエルくんが全て用意してくれている。

 すなわち、俺が設計した3機の幻晶獣機。グランレオンと、ガルダウィングと、カルディヘッド。それらがここまでの道中で吹き飛ばないよう甲板にしがみつき、強化魔法で一体となって用意されている。

 こいつらの力が、必要だ。

 

 

 まず、3機は前から一列にカルディヘッド、グランレオン、ガルダウィングの順で並んでいる。

 そこで一旦強化魔法を解除してもらって、飛竜戦艦と独立した状態にする。

 悠長にしていると風にあおられてすっ飛んで行ってしまうから速やかに、まずはグランレオン背部のサブアームでガルダウィングを掴み上げ、背に乗せる。浮遊大陸ではよく使う飛行形態だ。

 だが今はその機能に用がない。そのまま前に進み、カルディヘッドの背にグランレオンでのしかかる。

 この時ついでに、カルディヘッドのフルパッケージ用エクストラアームを外し、持ち上げる。

 

 あとはもう、ワンアクション。

 カルディヘッドがスタンディングモードへ移行し、グランレオンの頭部の向きを変える。

 エクストラアームはその上に、ガルダウィングの頭部も前に倒して無駄に突き出ないようにして。

 

「――完成」

 

 これからやることは、複雑にして大規模だ。

 エルくんとイカルガなら単騎で済む話かもしれないが、俺ではとても真似できない。

 成層圏近くの高濃度エーテル環境でかき集めた莫大なエーテルを、エーテライト生成のために流し込むというその作業。俺が主に操縦する3機全てのエーテルリアクタとマギウスエンジンを総動員しなければ成しえるものではなかった。

 それも、いつぞやボキューズ大森海で小王と戦った時のような、とりあえず動かせばいいというだけの結合とはわけが違う。

 

 各制御術式と魔法現象を連動させる必要があり、しかもそれを何が起こるかわからない吹きっさらしの高空で。

 3機がバラけてしまわないよう強固に結びつく必要があり、この形は必然だった。

 

 

 人はそれを、「合体」という言葉で評するかもしれない。

 

 

 立ち上がる。

 エーテルリアクタ搭載数、実に5機。

 通常の幻晶騎士と比べて全高は倍近く、重量は実に数倍に及ぶ。

 カルディヘッドの強靭な足回りがあればこそ支えられるその姿。

 グランレオンの頭部がちょうど胸のあたりで前を向き、カルディヘッドフルパッケージの巨大な腕部がむしろちょうどいいサイズに見えるだろう巨体。

 

 幻晶騎士の合体が、為された。

 

 

「――実を言いますと、僕は人型の幻晶騎士が大好きなんです」

「アッハイ」

 

 そして即座に声をかけてくるエルくんよ。

 でも予想に反して落ち着いた口調だった。

 ……いやまあ、内心どんなスゴいことになってるかはお察しなんだけども。

 

「先輩が作る幻晶騎士は大半が人型ではありません。でも、僕はずっと信じてたんです」

「アッハイ」

「――いつか、人型になると。新規に開発するのではなく、合体してくれると。その時、胸にはグランレオンの顔がガオーってしてると! こっち向いてくださいもっとよく見せて!!」

「アッハイ。これでいい?」

 

「先輩、大好きです!」

「シャー!!」

 

 ちなみに、シャーという叫びはアディちゃんの威嚇です。

 さすがに状況が状況なのでカササギを飛ばしてきたりはしなかったが、かつてないほどに怨念が感じられる。イカルガの周囲に満ちる高濃度のエーテルが一瞬闇の色に染まった、ような?

 

 いやまあ、気持ちはわからんでもない。

 旦那が男相手に大好きとかのたまえばそうもなろう。

 俺がしたことと言えば、作戦用に機体をちょっとくっつけたのと、エルくんの方を向いただけなんだけどねえ!

 

「あー、うん。君たちが相当頭おかしいというのはよくわかったから、とりあえず作戦を進めたまえ。他のことはあとだ、あと」

「最終目標地点、到達です。あとはもう止まれませんよぉ! さっさと準備してくださいねぇ!」

 

 小王さん! オラシオさん! こんなときだからこそ、あなたたちのエルくんに対する塩対応がめちゃくちゃ頼もしいです!

 

「ほら、エルくんそろそろ始めよう。……エーテル流をこっちに、よろしく」

「ふぅ……。そ、そうですね。すみません、ちょっと錯乱しました。では改めまして、先輩。お願いします!」

 

 気を取り直して、作戦続行。

 位置と高度と速度ベクトル、それら全てが台風の目へと飛び込んでいく魔法生物への攻撃コースへ乗ったことを示している。時が、来た。

 

 飛竜戦艦を落下させつつエーテライトを生成し、魔法生物へ直撃させる。

 作戦が持つ性格上、集めに集めた莫大なエーテルを飛竜戦艦艦首の竜炎撃咆へと注ぎ込む必要があった。

 本来ならば魔導兵装としてその辺りの処理も実装するべきところではあったが、何分時間と資材と設備が足りず、ないものは乗っている人間が気合で間に合わせるしかない。

 そしてエルくんたちですらこれから先の手順に一杯一杯なら、そこに至るまでのことは、俺がやる。

 

 3機合体した幻晶騎士の全能力を使う。

 イカルガの出力には到底及ばないとはいえ、通常の幻晶騎士とは比較にならない5機のエーテルリアクタをフル稼働させつつ、3機分のマギウスエンジンでそれぞれ別の術式を走らせる。

 「誘導」「収束」「放出」。

 エーテルリアクタに通してしまえば、あるいは人が浴びてしまえばそれだけで終わりを迎えるような高濃度エーテルが暴れ出さないよう細心の注意を払い、しかし同時に大急ぎで。

 

 合体幻晶騎士の掲げた腕の中へと、浮遊大陸の直径以上に広がった開放型源素浮揚器のエーテル環が押し寄せる。

 それはまるで、手のひらの中に納まる天体図のよう。少しでも気を緩めればはじけ飛ぶ爆弾と同じそれを、複数魔法の同時制御と半分くらい力ずくで無理やりに押し込んでいく。

 3つのマギウスエンジンそれぞれの術式を使うのはいいが、それぞれの必要とされる出力は刻一刻と変化する。3つの術式を並行して随時調整し、エーテル流が過剰にならないよう、散逸しないようにミリ秒単位の制御切り替えを行い、竜炎撃咆に注ぎ込む術式を、リアルタイムで作り続けるような真似を、した。

 

 

「ふんぬぐぐぐぐぐぐ……! カウントスタート! 3、2、1……!」

 

「――ゼロ!」

「行きますよォ! 源素収束式竜撃咆(エーテリックバスターランス)! 刀身展張(エクステンド)!!」

 

 

 結晶の生成には、核となる部分が必要となる。

 核が過剰な成分濃度に晒されたり、温度の変化などによって結晶はさらに成長していく。

 元の状態とは比較にならない精密な構造と密度となり、モノによっては尋常ならざる硬度を持って。

 

 エーテライトも同じだった。

 元は飛竜戦艦より巨大であったエーテライト塊を核として、地上ではありえない超高濃度のエーテルに晒されて。

 

――メキメキメキ、バギギギギンッ!!!

「ぎゃああああ!? 私の飛竜戦艦がああああ!!?」

 

 結晶が、伸びた。

 あちこちでたらめに空間があろうとなかろうと関係なく、尖った先端は容赦なく飛竜戦艦の装甲を貫いて、内部に積載されたエーテライトをも取り込んでさらに勢いを増し、艦内をズタズタに、外部に突き出すいくつものエーテライトが虹色に塗り替えていく。

 

 そして、ほんの一呼吸。

 飛竜戦艦とはもはや言えないほどエーテライトに食い荒らされた、本作戦最大最終の兵器が、空の高みで完成した。

 

 

「では、逝きましょう。小王! 姿勢制御の協力をお願いします!」

「仕方ないな、請け負おう。ふらつかせるんじゃあないぞ!」

 

 エーテライトは浮かばない。

 自然の摂理に従って、レビテートフィールドを失った飛竜戦艦は機首を下げ、落下を始める。

 もう二度と浮かび上がることはできないその運命を無駄にしないため、エルくんと小王はエーテライト塊に張り付く残骸と化した飛竜戦艦の軌道を調整する。

 このときのために生き残らせておいたマギウスジェットスラスタに火を入れて、重力の助力をさらに高めて地上へと、魔法生物へと。

 

 

 流れ星の槍が、地上へ落ちる。

 

 

◇◆◇

 

 

「先輩、あなたはどこへ落ちたいですか?」

「魔法生物に落ちるためにここまで来たよね?」




 三幻合身 ガルディオン

 アグリ・ボトルが開発したグランレオン、ガルダウィング、カルディヘッドの3機が合体した形態。
 カルディヘッドを脚部として、その上にガルダウィングを背負ったグレンレオンが乗り、カルディヘッド用のエクステンドアームをグランレオンの肩辺りに据え付けて傍から見ると人型に見えなくもない姿になる。
 合計5基のエーテルリアクタと3機のマギウスエンジンを合わせた運用が可能となるため、1機ずつでは実現不可能な魔法の行使が可能となる。
 が、幻晶騎士の構造上分離合体などは到底不可能なため、とりあえずくっつけた感が強くまともに歩くことすら難しい。この形態にならなければできないこともあるので無駄というわけではないが、普通に別々で使った方がよほど使いやすいので、アグリ本人はよほどのことがない限り使うつもりがなかった。

 元々この形態になることを想定して各機を開発したわけではなく、運用に合わせた改修の際に少しずつ関節可動域の拡張やシステムの調整などを施していざというとき使えるようにしておいたもの。
 言うまでもないがエルネスティにとっては大好物であり、特にこの形態の名前を考えていなかったアグリにめっちゃおねだりしたエルネスティが三日くらい寝ても覚めても考え続けて「ガルディオン」と命名した。
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