俺は、農業がしたかっただけなのに……!   作:葉川柚介

6 / 37
この世界だと、マナが枯渇して魔獣が大量発生する心配がないから気楽

 クシェペルカ王国のほぼ東端にある町、ミシリエ。

 一度はジャロウデク王国の支配が及んだが、銀鳳騎士団が半ば力技でその魔の手を引っ剥がしたこの街はいま、旧クシェペルカ王国の影を残す飛び飛びとなった土地の中でも特にアツい。

 なぜならば。

 

「失礼します、エレオノーラ姫。ご要望の物をお持ちいたしました」

「まあ! どうぞ、お入りになって」

 

 扉の向こうから響いてくる、ひょっとしたら世界一かわいい声。

 カラコロとカートを押して入った部屋には、一輪の可憐な花が咲いている。

 

 西域にその名を轟かせていた、今は亡き大国クシェペルカ王国。その国すら越えて美貌を讃えられた、エレオノーラ・ミランダ・クシェペルカ姫だった。

 

 

 ジャロウデク王国によって国王を討ち取られ、形式上は滅んだクシェペルカ王国であるが、王族の血は残っている。その、唯一残った正統王位継承者こそがこのお方、エレオノーラ姫だった。

 一時はジャロウデク軍によって幽閉されていて、エルくんたちが助け出してミシリエの町へと連れ帰ってからしばらく、当初は塞ぎ込んでいたお姫様も最近はキッドくんたちの励ましもあって大分元気を取り戻してきた。

 

 ……あと、他にも。

 

「お待たせいたしました。ご要望のプリン・ア・ラ・モード、作って参りました」

「まあまあまあ! 本当に、何度見てもかわいらしいですわ……」

 

 なんか、俺が作って献上したプリンがお気に召したみたいでね?

 

 

 助け出された直後の姫様の気落ちした様子と言ったらなかった。

 父を、国を失い、逃避行の末に捕まって幽閉され、あまつさえ憎きジャロウデクの王子と結婚させられそうになったというのだから、心身共に疲弊を免れない。

 それを気遣い、そしてついでにジャロウデクへ反旗を翻すことを願ってやまないクシェペルカ貴族たちの願いもあって、とにかく励まそうということになった。

 俺も農作業とか気分転換にいいんじゃないかなと提案したかったんだけど、ヘルヴィに却下されました。

 結局お姫様を直接助け出したキッドくんが町へ連れ出してミシリエの休日やって、だいぶ心が晴れたようだった。

 そして、それ以外にもアレコレと姫様を励ます策を講じていたわけだけど、その中で俺もなんかやれと言われ、農業を封じられて悩みに悩み、選んだのが美味しいお菓子を献上すること。

 

 すごいよね、クシェペルカ貴族。

 お姫様に元気出してもらおうと、どこも物資に困ってるだろうに、肉やら野菜やら果物やら、卵に牛乳、砂糖まで。いろいろ持ち込んで誰か元気づけられるもの作って! と俺たちにまで頼み込んで来たし。

 料理が出来る人はクシェペルカ側にももちろんいるが、こちらでは珍しいフレメヴィーラの料理やお菓子も気分転換になるかもしれないからって。心が広い。

 

 で、なぜか俺も作ることになって、プリンとか作ってみました。

 しかも、王族の方にお出しするからにはそのままじゃよくないよね、ということで見た目にも気を使って、クリームやら果物やらで飾り付けたア・ラ・モード。

 ユシッダ村でも随一の料理の腕を誇るパインさんちの兄ちゃんに子供のころからアレコレ教わっていたので、前世で見たり作ったりしたレシピを思い出せばこのくらいならできるんだよ。クシェペルカに来てからも、出先であれこれみんなのごはん作ったりしてるし。

 

 で、まあ見た目の華やかさでちょっと楽しんでもらえたらイイかな、と思っていたら。

 

「これは……すごく、いい……♡」

「……ねえ、エルくん。あのお姫様あんなにクールだったっけ?」

「さあ?」

 

 という感じでめっちゃ気に入られました。

 やたらクールな微笑みを浮かべながらプリンを食べるお姫様の耳がなんか伸びて見えたような気がしたけど、錯覚だよね!

 

 

 というわけで、今日も今日とて俺はお姫様の注文でプリンを作るのでありました。

 ちなみに今日は、お姫様とエムリス殿下の叔母上であるマルティナ大公妃様とそのご息女のイサドラ様たちクシェペルカの人たちと、エムリス殿下とエルくんのフレメヴィーラ組とのお茶会だ。

 ……よし、プリンを献上したらすぐ帰ろう。空間の高貴密度が高すぎて、農民の俺は死ぬかもしれないし。

 

「いつも、美味しいお菓子をありがとうございます。……あの、なにかわたくしでも皆様のお役に立てることはないでしょうか?」

「へ? ……あ、いや失礼。わ、私にお聞きで?」

「はい」

 

 と思ったら引き留められたああああああ!?

 しまった、プリンの魔力が姫様に変な元気を与えたか!?

 

「周りの皆さまから言われています。女王として立つべきだ、と。ですが、他にも何かできることはないでしょうか。その……騎士様たちのお役に立てる方法が、なにか」

 

 騎士様、ね。お姫様が何を言いたいか大体わかりました。

 マルティナ様は「若いわねー」みたいな目で見ているし、イサドラ様は目を輝かせているし、エムリス殿下とエルくんはきょとんとしている。くそっ、なんだこの察しの良さの違いは! クシェペルカ組とフレメヴィーラ組との間で断絶がひどい。

 

「えーとえーと、そういうのはうちの騎士団長に聞くのが手っ取り早いと思うのですが」

「それはいかんぞ。エルネスティに頼んだが最後、明日にはヘレナの専用幻晶騎士が作られてしまう」

「ご要望とあらば、今すぐにでも設計に取り掛かりますが」

「騎士くん、やめてくれ」

 

 ともあれ一応提案してみるが、早速エムリス殿下に却下された。まあ仕方あるまい。エルくん、割とマジで腰浮かしてるし。マルティナ様が頭痛をこらえるように額を押さえてるよ。

 

 ちなみに余談だが、エルくんは特に意味もなくマルティナ様専用の幻晶騎士を作りたがっている。

 

「高機動高火力の砲撃主体の機体作りましょうよ! 機体名は<レイテルパラッシュ>で!」

「やめなさい」

 

 ただでさえクシェペルカの機体生産ラインはフル稼働中なので、みんな全力で止めたけど。

 閑話休題。

 

「あーえーと、とはいえあまりこちら側に関わることはおすすめしません。我らはあくまで『銀鳳商会』として関わらせていただいているわけですから、当然表向きの身分もそのように偽っています。エムリス殿下が『若旦那』と呼ばれているように、実は我らも偽名、通称を使っております」

 

 これは半分くらいマジだ。

 作戦中はコールサイン的なものでお互いを呼び合うこともたまにある。……エルくんがノリノリでやりたがったからなんだけどね!

 

「しかも、エルネスティ団長のセンスは微妙です。エレオノーラ姫の場合も、おかしな名前を付けられてしまうかと」

「お、おかしな名前……たとえば、どのような?」

 

 ようし、若干引いてくれた! エルくんもなんかニコニコ静観してるし、ここらで変な名前を付けて諦めてもらうチャンス! お姫様で、変な名前……よし!

 

「『なべやき姫』とかでしょうか」

「な、なべやき……姫……!」

 

 ふふふ、お姫様ってば驚いておられる。

 マルティナ様とイサドラ様も驚いてるし、あとでめっちゃ怒られるかもしれないけど下手に銀鳳騎士団に染まるよりマシなんです! 許してください!

 

 

 ……と、思ったのだが。

 

 

「素敵です! その名前、わたくしとても気に入りましたわ!」

「えええええええええええええええ!?」

 

 この後、説得とごまかしにめっちゃ時間かかりました。

 

 

◇◆◇

 

 

 その、数日後。

 

「さあて、行くぜツェンドリンブル!」

『メインシステム、パイロットデータ、認証開始』

「うおおおおお!? ひ、姫様!? 姫様の声が!?」

「ああ、驚かせてごめんねキッドくん。それ姫様の声を録音したヤツだから、本人はいないよ」

 

 姫様の協力したい欲は、キッドくん用ツェンドリンブルのアナウンスボイスという形で満たしてもらうことにしました。音声の録音・再生機能はエルくんが一晩で実装してくれました。

 録音時の姫様は緊張していたのか、AI音声みたいにちょっと硬い声になっちゃったのもご愛敬だよね。

 

 

◇◆◇

 

 

 その後。

 ミシリエにエレオノーラ姫がいることは、旧クシェペルカ貴族たちに大々的に喧伝した。

 侵略者ジャロウデクの面子を潰し、クシェペルカに反撃の気概ありと知らしめる戦略上欠かせないことであり、それは同時にジャロウデク軍に俺たちの本拠地を知らせることに他ならない。

 各地に散って情報を集めてくれているノーラさんたち藍鷹騎士団の話によると、実際にミシリエへ向かって飛空船の大船団が押し寄せているらしい。

 接敵前の現段階からノーラさんたちによる遅延工作や破壊活動が行われてもりもり士気と数を削ってくれているし、ミシリエはミシリエでエルくん発案によるクシェペルカ王国製幻晶騎士<レスヴァント>の強化策、<レスヴァント・ヴィード>への改修が進んでいる。蓄魔力式装甲で全身を覆うことで防御力と魔力容量の向上を図って砲撃主体で戦う、「塔の騎士」の異名を取る機体だ。

 ……なぜか、たまに騎士甲冑にでっかいタワーシールドを構えた「塔」要素が別のところから来てるっぽい機体が混じってるんだけど、あれはなんなんだろうね?

 ともあれ、それらと並んでレスヴァントの設計をベースにカルディトーレの設計思想をミックスした新型<レーヴァンティア>が続々とロールアウトしつつある。

 

 決戦は避けられない。

 世界で唯一の実用航空戦力と、イカルガを含むあれやこれやを用意して手ぐすね引いているエルくんとの戦いの日は、近い。

 

 ……あれ、これってジャロウデクがボッコボコにされるやつじゃね?

 

 

「来たわね、エルくんと私を引き裂くにっくきジャロウデク……! エルくん、ジャベリンありがとうねぇ!」

「姫様のためにも……やるぜ! ジャベリンはぁ、こう使う!!」

 

 ボッコボコにされるヤツでした。

 

 飛空船対策として用意された、垂直投射式連装投槍器(バーティカルロンチドジャベリンスローワ)が火を噴く。木の枝やらなにやらで偽装したシートをかぶせて森の中に潜んでいたツェンドリンブル部隊が姿を現し、銀線神経によって有線誘導された槍を空高く舞わせたのだ。

 飛空船は既に直上。自然、あるいは魔法の風頼りでしか動けない飛空船には無数に飛び上がるそれらを避ける術などなく、次々ぶっ刺さって何隻かは火を噴いて落ちていく。

 

 エルくんが対飛空船戦術として選んだのは、待ち伏せと対空兵器。

 居場所が知られている以上逃げることは下策。藍鷹騎士団の人たちやジャロウデク軍がミシリエへ至るまでの間に立ちはだかってくれたクシェペルカの人たちが稼いでくれた時間で迎撃の用意を整えて、むしろことごとくを叩き潰す。それこそが銀鳳騎士団の戦い方だった。

 

 俺も、今日まで結構大変でした。

 人手が足りない鍛冶師隊の手伝いをしたり、エルくんに付き合わされて新型機の設計の計算やらなにやらをしたり、ツェンドリンブル配置場所を確保するためにカルディタンクで森を切り開いたりなどなど。

 

 そして、今日。決戦のこの日は。

 

 

「はーい、ティラントーを下ろそうとしてる飛空船は燃やしちゃおうねー。……あいつら、やたら重くて畑の土を潰すから嫌いなんだよね」

 

 俺が操縦しているのはカルディタンク。ただし、「フル装備」の。

 

 森の中を適当に切り開いて用意した道を、履帯の安定性に任せて縦横に走り抜けながら、ジャベリンの再装填を幻晶甲冑に頼る都合上あまり移動できないツェンドリンブルの射程外にいる飛空船を地上から狙い撃つカルディタンク。

 そう、いまのカルディタンクは地対空攻撃ができる。

 法撃用の装備、それもツェンドリンブルの3式装備に搭載されている大型魔獣用の魔導兵装轟炎の槍(ファルコネット)を両肩に備えているのだ。

 

 ……これこそがカルディタンクの完全武装形態、カルディタンク・フルパッケージ。

 本来武装が少ないカルディタンクの背部に追加された、マルチプルウェポンアーム。

 カルディタンク本来の両腕に匹敵する膂力とゴツさ、各部に搭載された火、風、雷各系統の魔導兵装と、両肩から突き出る轟炎の槍。そして、それらを運用するために装備した「独立したエーテルリアクタ」。それこそが、カルディタンクを一気に火力特盛にする、エルくんからのプレゼントだ。

 

 

「先輩! タンク脚の幻晶騎士開発も順調のようですね! ……そこで、僕からのプレゼントです。受け取って……くれますか?」

「一応聞いておくけど、プレゼントってエルくんの後ろに鎮座してるでっかいの?」

「さすが先輩! お目が高いです!」

 

 これに気付かなかったら俺の目は節穴どころじゃねーぞ、という巨大装備。

 イカルガを作る傍ら、ありもしないヒマをひねり出してまでエルくんが作りやがったカルディタンク互換装備こそが、このパッケージなのでした。

 

 元々、カルディタンクに限らず銀鳳騎士団で開発する機体の計画や設計図は当然エルくんにも報告してある。だから、構造その他を理解して思いついた追加装備を別口で開発することは不可能ではないんだけど、この子ってば自分用の新型作ってる合間にこんなのまで用意してたよ何考えてるんだ。

 一応、もらったからには使ってみなきゃとテストしてみたんだけど、構造その他に一切の無駄も無理もなく、仕様通りにきっちりカルディタンクの動作を邪魔せず動いて見せた。エルくん、本当にすごい。

 

 まさかのエーテルリアクタ自前搭載のオプションパーツであるがゆえに、使える魔力は潤沢。各部に搭載された魔導兵装もじゃんじゃん使えるので火力も弾幕も思いのまま。おかげでこんなふうに本格的な戦闘でもない限り使い道がなくて今日まで日の目を見ることがなかったんだけど……いや、本当にすごいなこの火力。

 

 高度とサイズ、そして速度的に外しようもない的へ向かって放つ大火力法撃。

 水に浮かぶ船を参考にしただろう飛空船は軽量化の意味もあってか木材も結構使われているようで、着弾地点が燃え、なんかすげえ慌ててる感が伝わってくる。

 こんな感じで火だるまにしたのがもう何隻か。うーん、一方的過ぎていっそ悪いことしてるような気になってくるね?

 

 などと考えつつも、クシェペルカの畑を荒らしたジャロウデクにかける情けはない。容赦なく堕としてやろう。

 そんな気分で、ツェンドリンブルが放つ槍と、ついでにさっきから大暴れしているエルくんのイカルガが夜空に光る軌跡を残す中で森を駆け抜けて。

 

「……あ、森抜けちゃった」

『ん? ……な、なんだあの幻晶騎士(?)は? と、とにかく敵だ! 囲め、包囲して倒せ!』

「やっべ、変なところ出たな」

 

 勢い余って森から飛び出して、しかもそこが既に飛空船から降下したのか徒歩でついて来ていた組か、ティラントーの一部隊のすぐ横だった。

 カルディタンクの異様に怯むのも一瞬、すぐに体勢を立て直してこちらを囲むように動いてくるのはさすが本職の軍人。俺みたいな農民とはエラい違いだ。

 

 カルディタンクはパワーもあるしいまや火力も我ながら恐ろしいが、だからこそこうして近くを多数で囲まれた場合は不利になる。下手に魔導兵装ぶっぱすると、それこそこっちまで巻き添えくらうし。

 

 だから、ジャロウデクの動きは正しい。

 カルディタンクを狩るのなら、その行動は一番良い選択肢で、迷いなく初見でこんな判断を下せる辺り敵部隊の指揮官はきっととても優秀で。

 

「……みんな、丸太は持ったな!」

『隊長ー! 謎の幻晶騎士が、そこらに転がってた木の幹を武器みたいに構えてるんですがぁー!?』

『私に言うなー!?』

 

 「さっきまでカルディタンクが爆走し、ところどころぶつかって邪魔だからと切り倒したりなぎ倒してた木が転がっている場所」でなかったなら、その評価を下せたんだけどね。

 

 倒れた自身を起こすこともできるカルディタンクのパワーをもってすれば、そこらに転がっている木など棒きれも同然。だが、当然のことながら質量も長さもそれなりにあるわけで。

 

「丸太クラッシュ!」

『うおわー!? 枝が、枝がめっちゃ絡む!?』

『きょ、距離を取れ! あれで殴られたらいかにティラントーと言えど……』

「はーい、法撃のちょうどいい位置まで移動ご苦労さん」

『しまっ……!?』

 

 と、いう感じでした。

 相変わらず俺の作った機体って初見殺しだなーと思いつつ、夜の戦いに興じる。

 ミシリエの長い夜は、まだ明けない。

 

 

「ええい、鬼神はもう見ました! 鳥はどうしたんです鳥は! 飛空船とも鬼神とも違うと思しき飛び方をしていたあの鳥! もう一度くらい見ておかないと原理がわからないではないですかぁぁぁぁ!!」

 

 ……飛空船の相手をしなかったのは、以前いやな予感がしたからとかそんな理由じゃないよ。本当だよ。

 

 

◇◆◇

 

 

 あの夜の戦いは、文句なしにクシェペルカ側の勝利だった。

 銀鳳騎士団の対空装備もクシェペルカのレスヴァント・ヴィードやレーヴァンティアも活躍して、なんとエルくんに至っては敵の総大将を一騎打ちにて討ち取った。

 ……知らないとはいえ、エルくん相手にタイマン挑むとかジャロウデクの王子とやらもすげえ人だな、とは銀鳳騎士団全員に共通する戦慄だった。

 

 当然のことながら、戦利品も多い。

 叩きのめしたティラントーから回収された素材やエーテルリアクタに加え、ほぼ無傷で鹵獲出来た飛空船。エルくんの喜びようといったらなく、早晩ジャロウデク側の技術は丸裸にされてしまうことだろう。南無。

 

 

 ……と、喜んでいられる時期はそう長くなかった。

 さすがに総大将の討ち死には、ジャロウデクにとっても小さくない影響を与えたようで、戦略が大幅に変化した。

 

 これまでは我が物顔でクシェペルカ領内をのし歩いていたティラントーの姿が消え、その代わりジャロウデク支配域の拠点に固く閉じ込もるようになる。

 ジャロウデクの主力である幻晶騎士、ティラントーは高出力重装甲の機体。正面きっての野戦はもとより、足を止めての拠点防衛に徹するようになるとそれこそ銀鳳騎士団の第一中隊や第二中隊が殴りかかっても容易には突破できない防御力を誇る。

 そうして、殻に閉じこもるようになった結果、戦線は膠着。

 クシェペルカ側は新型機の量産体制に入って戦力を整える。ジャロウデクは特に動きがないようで……それがとんでもなく、不気味だった。

 

 

◇◆◇

 

 

「さて、噂の(ドレイク)とやら、本当に出てくるのかね?」

 

 クシェペルカとジャロウデクの領地が微妙に接していたり塗り替わったりしている、安全とは言い切れない空域をガルダウィングが飛ぶ。後方にはエルくんたちと銀鳳騎士団第二中隊の面々が列をなす、進軍の最中。

 俺は空中からの先行偵察を任されていた。

 

 偵察自体は、クシェペルカに来てから何度となくやったこと。今更珍しいものでもないが、目的は極めて珍しい。

 それもそのはず、索敵対象は「竜」。最近戦場に投入され、クシェペルカ側に甚大な被害をもたらしているという竜のような姿をした巨大飛空船、すなわち飛竜戦艦なのだからして。

 

 この飛空船に関する報告は少なく、正確性も欠いている。

 なぜなら、飛竜戦艦に襲われた拠点はことごとくが陥落し、生き残りも少ないせいだ。

 そのため、なんかヤバいやつが戦場で暴れているということだけしかわからず、結果として戦力不明な相手への対処のために銀鳳騎士団の総力が投入されることになった。

 エドガーたち第一中隊とヘルヴィ率いる第三中隊は別行動。俺は第二中隊を中心としたこちらの部隊に組み込まれ、ガルダウィングの航続距離と速度を見込まれていつものごとく偵察をしているわけなんだけれども。

 

 

「ぎゃあああああ!? 追ってくるうううううう!? しかもあきらかに飛空船より速いいいいいいい!?」

 

 ビンゴ。

 クシェペルカ軍が詰めている砦を空から襲う、冗談のように巨大なシルエット。

 なんか一息で砦を丸ごと包むような火を吹く存在なんて、ジャロウデクの秘密兵器以外ではありえないし、あって欲しくない。

 

 俺の任務は偵察と陽動。もしも竜を見つけたら軽くちょっかいを出してエルくんたちのいる方向へと誘導することだったんだけど……こいつ、予想以上に速い。

 あきらかにこれまでの飛空船とは違う、魔導噴流推進器によると思われる加速が、巨体に尋常ならざる加速を与えた。

 おそらくガルダウィングの方が最高速では勝っているだろうが、飛竜戦艦はなんか全身至るところに幻晶騎士の上半身を埋め込んで砲台としているうえ、たまに砦を襲った口から吐く炎まで使ってきた。なんかこう、目の前を飛んでてウザいから、ではなく明らかに俺を狙う強い意志を感じるね?

 

「エルくん早くきてー! このままじゃ丸焼きにされちゃうからー!」

「お待たせしました! これはまた、とんでもないものを作ってきましたね……僕とイカルガの相手として、不足はありません!」

 

 そんなこんなで一目散にトンズラこいて、さっそく飛んできてくれていたエルくんとすれ違って飛竜戦艦の相手を任せることに成功。ふう、死ぬかと思った。

 少し落ち着いて地上に目をやると、そっちもなかなかに大変な状況になっていた。

 砦から焼け出された生き残りの幻晶騎士はこちらへ向かって撤退していて、ディートリヒ率いる第二中隊との合流はもうすぐ。だけどそのすぐ後ろからジャロウデク軍の地上部隊が迫っている。

 ジャロウデク側の先頭ではなんか機体のあちこちに刃物をくっつけた変態臭い機体が突っ走っていて、アレは絶対にヤバいヤツだという感じがひしひしとするけど、こっちはディートリヒに任せよう。

 多分、現状で飛竜戦艦に対抗しうる戦力はエルくんとジャベリン装備のツェンドリンブルで来ているアディちゃん、そして俺くらいだろうから。

 

「うーん、さっそく恐ろしいくらい激しい戦闘。あそこにガルダウィングで突っ込むのは無理があるな。イカルガの攻撃も防ぐか弾いてるみたいだし、火力が必要だ。……火力、かあ」

 

 というわけで、激しい戦闘を繰り広げながらどんどこ遠ざかっていくエルくんたちを見送りつつ、俺はガルダウィングの高度を下げる。向かう先は、アディちゃんに引っ張ってきてもらっていたカルディタンクが置いてきぼりにされている場所、だ。

 

 

◇◆◇

 

 

「おのれ、鬼神! ヴィーヴィルの力をもってしても落としきれんだと!?」

 

 飛竜戦艦。

 クシェペルカ側からは(ドレイク)と恐れられるその名は「ヴィーヴィル」。ジャロウデク王国に飛空船をもたらした天才、オラシオ・コジャーソが鬼神という空飛ぶ脅威に対抗するため作り上げた、戦う飛空船である。

 古の伝説に語られる魔獣の姿を模したことは伊達ではなく、その戦闘能力は破格。今日までに狙った敵は防衛拠点ごと燃やし尽くし、叩き潰してきた。

 そう、「今日まで」は。

 

 ヴィーヴィルが最強を誇っていられたのは、もう何度目になるか、目の前を飛び過ぎるたった一機の幻晶騎士、鬼神と会うまでの間だった。

 

 鬼神には、以前から何度となく苦汁を嘗めさせられてきた。

 王女を奪われ、追撃に向かうも飛空船以外に空を飛ぶ相手と戦う術を知らなかったために撤退を強いられ、あまつさえミシリエに侵攻をかけた際はクリストバルさえ討ち取られた。

 謹慎を解かれ、復讐に燃えるドロテオはオラシオ・コジャーソから持ち掛けられた飛竜戦艦の運用という策に、乗った。

 その力はまさしく超常。いまだ機能や構造、運用に難がある若い兵器であることは否めない上に、エーテルリアクタへの負荷も高い。おそらく、寿命はそう長くないだろう。

 だが間違いなく最強クラスの兵器であり、これがあるだけでクシェペルカ併呑はたやすいことだと思われた。

 

 鬼神さえ、鬼神さえいなければ。

 ドロテオはその怨念にも近い怒りを飲み込んで、艦橋の部下たちへと矢継ぎ早に指示を下す。

 

「鬼神がまた回り込んだ! 取り舵、並びに推力上昇! 引き離しつつ正面に捉えろ! 各砲台は鬼神を射程に捉え次第撃ちまくれ!」

 

 世界で初めて、はっきりとした攻撃能力を有する飛空船。

 その艦長としてドロテオの指揮は先例がないにも関わらず最良と言っていい境地にある。

 的確にして冷静、大胆不敵。新たな兵器を新たな発想のもとに使いこなすその様は、老練でありながら自在でもあり。

 

「鬼神、なおも回避! こちらに向かってきます!」

「慌てるな、機関最大戦速! 一瞬で交差して仕切りなおす!」

 

 それでも、鬼神には届かない。

 普通の幻晶騎士なら、束になっても平らげるだけの力を有するヴィーヴィル。しかし鬼神にはそのどれもが通用しなかった。

 有利ではある、はずだ。ドロテオの戦術眼はそのように判断を下している。このまま戦いを続けて行けば、いずれ勝てるかもしれない。鬼神の戦いは、なんかもう冗談だろお前と文句を言いたくなるほど激しく、速く、変幻自在ではあるが、ときにドロテオの目からすると驚くほどの単純さを見せる。

 おそらく騎操士は年若い者ではないか。それが長年の経験からドロテオが導き出した結論だった。

 

 が、そんなことはどうでもいい。今はあの憎き怨敵を叩き潰すことだけが重要だ。

 

 最初の接敵地点からは離れ、しかしなんやかんやの末に再び元の場所へ戻ってきつつある。

 地上の戦況を一瞬だけ垣間見たところによれば、義息であるグスターボ・マルドネス率いる部隊がおそらく鬼神の配下だろう赤を中心とした幻晶騎士といまだ交戦していた。

 まさか、ドロテオの目から見ても変態臭いこだわりと強さを持つグスターボが敗れることはないだろうが、あるいは。

 不利はないというのに、収まらない不安。

 ドロテオは勝負を急ぐ必要があると、確信を新たにした。

 

 

 そしてこの時、ドロテオは気付いていなかった。

 この遭遇戦の最初に自分達の目に入って来た、「鳥」。

 ヴィーヴィルの開発者であるオラシオ・コジャーソが特に執着し、「見つけたら絶対ぶっ殺してくださいね!」としつっこく言ってきた鳥。

 鬼神と違って大した戦闘能力を持たない斥候らしく、ヴィーヴィルと接敵するなり逃げの一手を打った、逃げ足だけなら鬼神すら上回るかもしれない、幻晶騎士っぽいもの。

 

 そんな鳥が、その操縦者が、戦場から姿を消してから、一体何をしていたのかを。

 ドロテオは、その時が来るまで全く予想もしていなかった。

 

 

◇◆◇

 

 

「さーて、準備は上々。……まさか、これを使う相手が出てくるなんてなあ」

 

 竜との戦闘をエルくんに任せてから、俺は地上に降りてディートリヒたちが戦っている場からも少し離れたところに放置されているカルディタンクの下へと降り立った。

 アディちゃん、エルくんを追いかけて突っ走っていったけど、カルディタンクを戦闘に巻き込まれないところに置いていってくれたのは助かった。

 

 ガルダウィングからカルディタンクへと乗り換えて、エーテルリアクタを起動。

 対空戦闘が予想されていたので、今回装備してきたのは以前ミシリエ攻防戦の時にも使ったフルパッケージ。

 

 つまり、エーテルリアクタを2機搭載した状態。

 このときだけ、カルディタンクが使える奥の手がある。

 

 この機能はエルくんにも伝えていない。

 特別な回路や魔導兵装を搭載しているわけではなく、いまあるカルディタンクの機能をちょっと応用することで実現可能なものだし、うっかり伝えたらエルくんがまた騒ぎそうだったからだ。本来なら、使うつもりもなかったしね。

 だがそうも言ってはいられない。

 あの竜という兵器は間違いなく戦略レベルの影響を及ぼす超兵器。この場で墜とすか、少なくとも被害、あるいは脅威を植え付けておかなければ。

 

 てなわけで、俺は切り札を、切った。

 

 

「エーテルリアクタ連接、並びに両機で別個に魔法を起動。パッケージ側の魔法は……<大気圧縮>」

 

 まず第一段階。エーテルリアクタの機能を連結して魔力生成能力を向上させる。

 エルくん、最初からこうやって使えるようにパッケージ側を設計してくるんだから本当に末恐ろしい。

 ともあれ今はそれを有効に活用させていただいて、ガルダウィングの離着陸と飛行制御にも使用している風系統の魔法を応用して周辺の大気を圧縮し、エーテルリアクタに流し込む。

 

 ここで復習になるのだが、<エーテルリアクタ>とは何か。

 簡単に言ってしまえば、というか簡単な原理しか知らないが、大気中に存在するエーテルを魔法の源であるエネルギー、マナに変換する装置だ。

 だからエーテルリアクタには吸排気機構が備えられているし、2機詰めば単純計算で生成するマナの量も2倍になる。

 

 では、マナをより多く生成するにはどうすればいいか。

 一つの答えは、エーテルリアクタそのものを高性能にするというエルくんが採用している方法。

 もう一つの答えは、エーテルリアクタを増やすというツェンドリンブルやおそらく飛竜戦艦も取っているだろう方法。

 そして、もう一つ。エルくんが言うにはジャロウデク軍のティラントーがやっているのかもと仮説を検証中の、第三の方法。

 

 エーテルリアクタにより多くのエーテルを注ぎ込むという、エーテルリアクタの寿命を縮める禁断の方法だ。

 

「さあ、風が来るぞ……」

 

 ヒュウヒュウ、からゴウゴウへと周囲を包む音が変化する。

 片方のエーテルリアクタから生成された魔力で意図的に低気圧を作り出して風を集めて、もう片方のエーテルリアクタに突っ込んでいくこの魔法、見た目は地味だが効果範囲はなかなか広い。

 結果、集められた大気とその中に含まれるエーテルが圧縮された状態でエーテルリアクタへと入り、飛躍的に上昇するマナプールの魔力量がうなりを上げていく。

 

 これこそが奥の手、<エーテルターボリアクター>だ。

 

 

 ……いやちょっと待ってくれ。なんかコックピット暑くなってない? エーテルリアクタ、めっちゃ出力上げてない!?

 

「うおおおお!? なんかヤバい! 胸部装甲強化魔法解除! 引っ剥がす……!」

 

 全身の装甲を強化している魔法のうち、胸部装甲の分をカット。あとはカルディタンクの剛腕に任せて胸部装甲を力づくで引き剥がす。そうすると、胸部に収められたエーテルリアクタが露出され、魔力が機体内に留まってしまうことを防ぎつつ冷却する、と。

 ……なんか、ガンガンマナを生み出して光を放ってるエーテルリアクタが!

 

「マナを溜め過ぎた……? いや、いまはそれどころじゃない! とにかくマナを魔法に変換! 飛竜戦艦、早くこっちへ……ってしまったあ! マナ制御にマギウスエンジンの全力突っ込んでるから、火器管制に使う余力がない!?」

 

 両腕を掲げ、露出したエーテルリアクタから直接吸い出した魔力をカルディタンクの正面で結い上げて魔法に変える。術式はシンプルに火炎系。他に複雑なやり方なんぞしている余裕もないし、これだけのマナ容量ならこれで十分だ。てーか眩しいな! 太陽かこの火の玉は!

 

「エルくーん! エルくんちょっと来てー!」

『はい、先輩! なんだかとっても楽しそうなことをしてますね!?』

 

 これをどうにかする方法は、もはや一つしかない。

 いつの間にか飛竜戦艦との戦いがこの辺りへ戻ってきていたエルくんに頼る。これに限る。

 

「ちょっと強い魔法を使おうと思ったんだけど、魔法の制御にかまけ過ぎて火器管制が出来なくなっちゃってね。悪いけど、照準と引き金をお願いできるかい?」

『見るからにすさまじい威力……! 光栄です! ……僕と先輩の、初めての共同作業ですね♡』

「少しは言葉を選ぼう、エルくん。こっちに戻ってきてるアディちゃんのツェンドリンブルが多分俺を狙って全力で槍ぶん投げたから。さすがに遠すぎて届かなかったけど」

 

 飛竜戦艦の頭に銃装剣の魔法を一発ぶち込んで目くらましをしてから、魔導噴流推進器を吹かして文字通りすっ飛んできてくれたエルくんが、地面に足を突いてすごい勢いでスライドしながらカルディタンクの後ろに着く。

 俺が説明するより先に頼みたいことを大体わかってくれていたらしくて頼もしいね。

 ……まあ、相変わらず言葉の選び方がアレ過ぎて、最近ようやく仲良くなれたアディちゃんが何かを察して殺意を飛ばしてきたけど。

 

 後ろからカルディタンクの腕を支え、膝をついて肩越しに飛竜戦艦を睨むイカルガ。

 マナの生成量は十分。威力も間違いなく破格だろう。……というか、すでにカルディタンクの装甲が溶けそうなんだけど!

 

 しかも、正面からは飛竜戦艦が脅威を感じ取ったか、全速で突っ込んでくる。口を大きく開け、灯す光はおそらく砦すら焼き尽くすと言われる大規模砲撃。一気に俺とエルくんを焼き払うつもりなのだろう。

 

「準備完了だ。高濃度エーテル変換式大出力魔力砲撃。……名前は?」

『……名付けまで、僕が!? ふ、ふふふふふ。ありがとうございます先輩。とっても嬉しいです。――ええ、この名がふさわしいでしょう。おそらく極大の爆発力を、こう呼ばねばならない。そんな気がします』

 

 イカルガからの制御によって角度を微調整され、飛竜戦艦を睨むカルディタンク。

 渦を巻いて吹き込む風の中で熱と光を放つ、眩しすぎる光の球体はカルディタンクとイカルガが重なる影を草原に長く長く刻み、ジュウジュウと装甲を、結晶筋肉を焼き始めた。

 

 空から迫る飛竜戦艦の砲撃が一瞬早い。

 カルディタンクが形成した高密度火炎魔法球が飛び出したのは直後だが、接触はほぼ中間地点。外と中の両方から高温にさらされた魔法球はその形を崩し。

 

 

『エクスプローーーーーーーーーーーーーーーージョン!!!』

「ノリノリだねエルくん」

 

 

 轟音と閃光が、降臨した。

 

 

 カルディタンクの重量と安定性に加え、両腕で地面を掴むことでようやく耐えられる衝撃波が地上を薙ぎ払い、なんか遠くの方で戦ってたディートリヒたち第二中隊とジャロウデクの部隊がバタバタ倒れる。

 カルディタンクの影に隠れてしがみついていたイカルガは辛うじて吹き飛ばされずに済んだが、地面が揺れて爆心地直下の草原はめくれあがって焼けた土を晒す、砲撃直後。

 

「飛竜戦艦は……生きてる!?」

『ですが、無傷ではありません! 見るからに傷ついて、好機……! 先輩、トドメ刺してきます!』

「ああうん、一目散に逃げようとしてるみたいだし、あまり無理しないようにね?」

 

 光が収まったその先にあったはずの飛竜戦艦は、爆風に煽られたか距離を離し、明らかに動きがぎこちなくなっていた。

 それでもなんとかかんとか回頭し、高度を上げつつある。

 ぽろぽろと零れるように落ちていく謎の光はおそらく撤退を告げる信号弾で、その予想を裏付けるようにディートリヒたちと交戦していた部隊も後退を始めていた。

 なんかよく見たらディートリヒのグゥエラリンデが剣をいっぱいつけた変態臭い機体ともつれ合って大破してるけど、アレは俺のせいじゃないはずだ。多分。

 

 エルくんは元気いっぱい、さっそく飛竜戦艦を追いかけていったけどさてどうなるか。

 巨大で強力な兵器とはいえイカルガとまともに戦って見せた飛竜戦艦が、いざというときの逃げ道になんら策を講じていないとは考え難い。エルくんが深追いしすぎて面倒なことにならないように祈るばかりだ。

 

「……カルディタンク、こりゃもうダメかもわからんね?」

 

 とりあえず俺は、魔力がすっからかんになった上にエーテルリアクタも過剰使用でしばらく使えなくなってピクリとも動かないカルディタンクの中でしばらく待っておくことにした。

 ……アディちゃん、カルディタンクを引っ張って行ってくれるかなあ。

 

 

◇◆◇

 

 

「かーっ! カルディタンクが大破! こりゃあ俺はもう戦力になれなくてつれーわー! かーっ! というわけで、俺はちょっとクシェペルカの農業を勉強しに……」

「親方、直せますか?」

「大破したのは上半身だけだからな。予備のカルディトーレの上半身に挿げ替えればそれで終わりだ」

「ちっ! 農民はクールに去るぜ!」

「知らなかったの? 銀鳳騎士団第三中隊からは逃げられない……! というか、そもそもあんたにはグランレオンもガルダウィングも残ってるじゃない」

「……くっそおおおおおおおお!!」

 

 これを機に、乗機が大破したディートリヒと同じく後方支援に回ろうとしたのになあ!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。