レトが正規軍に、ドレックノール要塞に連れて行かれた後……ラウラ達は依頼を報告し、講義をしにドレックノール要塞に向かおうとしたが……ガイウスが距離を考えてそれを制し、今後を相談するため住宅街の宿酒場で今後について相談していた。
「どうしてレトが……」
「昨日も今日もずっとに一緒にいた、何かしていたなら気がつくはずなのに……」
「なにか、正規軍と領邦軍との関連に巻き込まれてしまったのだろうか?」
「……………………」
エリオット達がなぜレトが連れていかれてしまったのか話し合う中、ラウラは1人目を閉じ黙って考え込んでいた。
「ラウラ、何か心当たりがあるの?」
「む?」
「レトと付き合い長いんだよね? 何か知っているんじゃないの?」
「……それは私の口からは言えない。 が、恐らく昨夜1人で外出した事に関係あるのだろう」
「外出!?」
レトが昨夜勝手に外出していた事に、アリサとエリオットは驚愕した。
「ガイウスも気づいていたのだろう?」
「ああ。 だがレト纏う風は以前変わっていい風が吹いていた。 だから俺は深く追求しながった」
「それは私も思った。 恐らく、ハーメルに向かったのだろう。 ……全く、行くときは私も連れて行けと言っただろうに……」
「ラ、ラウラ?」
最後の方はブツブツ言っていたためよく聞こえなかったが、ハーメルという単語は聞こえたのでエリオットはそれを聞いてみた。
「その、ハーメルって言うのは?」
「……それも私の口から言えん。 だが1つ言える事はレトはハーメルに向かい、それを罪として突き付けレトを連れて行ったのだろう」
「そ、その場所に行くだけで罪に? ハーメルって一体……」
「ハーメル、聞き覚えがないな」
ハーメルを知らない3人はその名はもちろん、これ以上聞けない事にも不審に思った。そしてラウラはほんの僅かに険しい顔をし、すぐに首を横に振って元のキリッとした表情に戻した。
「学院にはもう連絡したのだな?」
「ええ。 でも、どうやらA班でもトラブルがあったみたいで……正規軍という事もあってナイトハルト教官が来てくれる見たいだけど……」
「俺達がセントアークまで到着した時間を考えると、すぐには来てくれなさそうだ」
「となると……仮に強行突破して助け出そうにも手の出しようがないね……」
「エ、エリオット……そんな事考えていたの……?」
エリオットは強行作戦を考えたが……相手は正規軍と難攻不落を誇るドレックノール要塞。 始める前から諦めていた。
「ーーなあ、姉さん。 一体どこから来たのか、チョイと話してくれねぇか?」
「む?」
「ん〜〜? なに、ナンパかしら? 私はそこまで軽くはないわよ〜」
(な、何あの人……)
(なんか、誰かに似てるような……)
カウンターからあのチャラい店主の声が聞こえ、4人はそちらの方を向くと……カウンター席には踊り子のような服装、セミロングの銀髪をした褐色肌の美女がカクテルを飲んでいた。 それを見たアリサは思わず心の中で本音を言い、エリオットはとある戦術教官を頭に思い浮かべていた。
「まあいいわ。 ちょっと南から来てね、ここには仕事で来ているのよ」
「へぇ……南ってことは、もしかしてリベールから?」
「そこはご想像にお任せするわ」
手の中のカクテルを揺らしながら、女性は曖昧に答える。
「そうそう、ついさっき軍隊が男の子を連れて行くのを見たのよ。 どこかの制服を着ていたけど……あなた、何か知らないかしら?」
「いんや、何も知らないよ。 けど、制服ならそこの4人のようなものか?」
店主がラウラ達の方を指し、女性は振り向き……納得したように頷いた。
「そうそう、あんな感じの! 全く、子どもを連れて行くなんて何考えているのかしら……しかもあのドレックノール要塞にでしょう? 大丈夫かしら?」
「もしかしてその少年、あなたのお知り合いでも?」
「いやねえ、人を心配するのに理由なんているのかしら? 」
(……さっきから嫌な感じね……)
(仕方あるまい、他人にこちらの事情は知る由もないからな)
「ーーそうそう。 そのドレックノール要塞なんだけど……なんか抜け道があるみたいなのよねぇ」
(!)
「抜け道? そんなのがあんのかい?」
「私の同業者から聞いてね。 南西から東にかけて要塞の真下に地下道が通っているのよ。 今は使われてない場所だから魔獣がウジャウジャいるみたいなのよねえー」
「そりゃおっかねえ」
店主はやれやれと首を振るが、ラウラ達は真剣な表情で2人の話に耳を立てる。 すると、女性が代金をカウンターに置いて立ち上がった。
「ご馳走。 機会があればまた寄らせてもらうわ」
「まいどー」
女性はラウラ達の方を向き……そのままテーブル前まで近寄ってきた。 すると女性は1つの袋をテーブルの上に置いた。
「ーーはいこれ」
「え?」
「さっきの話、聞いていたでしょう? ごめんなさいね、無責任な事言って。 これはせめてものお詫びの印よ」
「いや、気にしないでくれ」
「いいのいいの。 じゃ、私はこれで……上手く行くといいわね♪」
女性は踵を返し、歩きながらこちらに向かって手を振り宿屋を後にした。 後に残された小包を見ながら、先ほどの話を思い返した。
「……どう思う?」
「真偽はともかく。 先ほどの話……恐らく事実だろう」
ラウラは少し古びたサザーランド州の地図を取り出してテーブルに広げた。
「この地図はレトから譲り受けた一世代前の地図だ。 現在の地図には載っていないが……あの女性が言っていたのは恐らくここの事だろう」
ラウラが指差したのはドレックノール要塞の南西から東にかけて走っている線。 南東の先に終点があり、要塞から東に出ている線は帝都まで続くように北に伸びていた。
「あ、さっきの話と一致している!」
「タイミングよく手がかりが見つかったわね」
「ふむ……これなら街道の途中から逸れて行けそうだな」
「賭けてみる価値はあるようだな」
ふと、アリサが先ほどの半ば強引に受け取った袋が気になった。
「そういえば……その袋には何が入っているのかしら?」
「開けてみる?」
「そうだな……」
全員から同意をもらい、アリサは袋を開けて中身を取り出すと……中から1本の古びた鍵がアリサの手に転がった。
「これは……鍵か?」
「どうしてこんなものが……さっきの人、渡す物を間違えたのかしら?」
「でも、今から追いかけてもどこに行ったか……」
「……仕方あるまい。 探す時間は残されていない……この件は後日改めて探しに行くとしよう。 今はレトを救出する事が最優先だ」
「ああ、準備が整い次第行くとしよう」
そうと決まり。 ラウラ達は各々の準備を始めた。 ふと、ガイウスは地図の中に載っていたある場所を目に止める。
(ーーむ? パルムの南西に……村か? ハーメル……先ほどラウラが言っていた場所か。 だがなぜ、今の帝国地図には載っていないのだ?)
「………………!」
地図のある一点を見つめ、考え込んでいると……その視線に気付いたラウラが自然な動作で地図を折りたたんだ。
◆ ◆ ◆
場所は変わりドレックノール要塞。 その地下にある牢屋の1つ、そこでは……
「おいにいちゃん。 何をしてこんな豚箱に入れられたんだ?」
「ん? んー、国家機密に抵触したから?」
「……本当に何やったんだよ……」
レトは理不尽に牢屋に入れられながらも、先にここにいた先客の中年男性とポーカーをしていた。 レトは2枚のカードを捨てると、山札から2枚引いて手札をジーっと見つめる。
「そう言うあなたこそ、何をしてここに?」
「なに、ちょっとしたイザコザだよ」
「イザコザでここに入れらるなんて、穏やかじゃないですねー」
その間にも男性はカードを1枚交換し……ニヤリと笑った。
「そうだな……よし、フルハウスだ!」
「ストレートフラッシュ」
「だあっ!! また負けた!」
男性が自信満々に出したが、レトは淡々とそれを超える役を揃えて勝ってしまった。
「さっきっから勝ちまくっているが……オメェ、まさかイカサマしてんじゃねえだろうな?」
「普通にやっているだけだよ。 っていうか、存在自体がイカサマの君に言われたくないよ……
「ーーあは♪ 気付いてたの?」
下を向いてカードを集めながら目の前の人物の正体を言い、男性が少年の声で喋りながら顔を上げると……そこには先ほどの男性の格好だが、中身は別人だった。
「それ、サイズあってる?」
「結構ブカブカだよ」
そう言いながら指を鳴らすと……手品のように服装が赤いスーツ姿に変わった。 そこにいたのは、右目の下に赤い刺青がある少年。 身食らう蛇の執行者、No.0……道化師カンパネルラだった。
「執行者が正規軍に捕まるって何の冗談?」
「アハハ! 僕は君に会いに来たんだよ」
「脱獄させるから結社に来いって? それこそ冗談、こんな場所自力で脱出できるよ。 他の皆に迷惑がかかるからやらないだけ」
溜息をつきながらレトはカードをシャッフルし、再びカンパネルラとポーカーを始めた。
「大方、鋼が僕と接触したからとかでここに来たんでしょう?」
「まあ大体そうだね。 鋼の聖女の指導を受けた君なら結社の中でも上位に食い込む実力を持っているだろうし。 さらに研鑽を積めばNo.Iにだって届き得るかもしれないね」
「肩書きじゃなくて、実力ともに備え持つ正真正銘結社最強のNo.I……相手にもしたくないね」
レトは2枚のカードを切り、カンパネルラはその捨札を一瞥してからカードを切る。 それを数回繰り返して……
「よし……今度は僕がストレートフラッシュだ!」
「ーーストレートフラッシュ。 僕はスペード、そっちはハート。 役の強さはのスペードの方が上」
「ぐっ……数では勝っているのに」
「数で勝負するのは役が同じだった場合のみだからねえ」
カンパネルラは意気揚々に勝負に出たが、レトは軽くそれを上回った。 そんなレトをカンパネルラはジト目で見つめる。
「やっぱり君、イカサマしてない?」
「道化師の目を騙せるなんて出来やしないさ。 それとも、君はそこまで底辺に見られたいのかな?」
「アハハ、だよねー。 相変わらずヤバいくらいの運だねー」
軽くヤケになり、カンパネルラは手札をバラまいて備え付けてあった硬いベットに寄りかかった。
「それはそうと本当にどうする気? 恐らく彼らは君をここから出してくれる気はないよ?」
「こんな事をしているんだ、僕の素性を知っての事だろう。 僕が名を開かせないのをいいことにやりたい放題するだろうね」
「……やっぱり君、結社にこない?」
「お断りするよ」
カンパネルラの誘いに、レトはキッパリと断った。 そして次はレトがカンパネルラに質問をした。
「っていうかさあ。 結社の目的って七つの至宝でしょう? 一体それで何する気? 世界平和か人類の進化?」
「そんな感じ」
「超胡散臭いね……就活舐めてるの?」
「僕もそう思う」
ケラケラと笑いながら自分の所属する組織を軽く貶すカンパネルラ。 レトはトランプを片付けるとカンパネルラとは反対側にあったベットに寝ろ転がり、頭の後ろに手を組んでゆっくりした。
「ま、気長に待つさ。 牢屋に入れられるのは慣れてるし」
「フフフ。 なら僕も暇だし、見届けさせてもらおうかな?」
「見届けるなら名乗らないの?」
「ギャラリーは君しかいないじゃないか」
お互い軽口を言い合い、2人はベットに揃って欠伸をしながら寝転がっているのだった。
それから数十分、2人は世間話や雑談しながら過ごしていると……
ウゥーーーー!!
要塞中にサイレンの音が鳴り響いた。 それに次いで外の兵士達が慌ただしくなり始める。
「侵入者かな?」
「あー、多分君のお仲間かも。 この下の地下道を使ったんだろうね」
「どうしてそれが分かるの?」
「今のこの状況で、そんな事をするのは君達くらいだよ。愛されてるねー」
「例えラウラ達だったとしても、どうして軍にバレたのかな?」
「鉄壁を誇る要塞の真下にあるんだよ? そんな道……領邦軍ならまだしも正規軍が見逃すと思う?」
「……確かに、ラウラには一世代前のサザーランド州の地図を渡してあるからね」
「一世代前…………ああ! もしかしてそれ、ハーメルが地図から消される前の? 全部例外なく廃棄されたって聞いたけど……どうやって手に入れたの?」
「その例外があってね。 現在使っているのをワザと汚してすり替えてきた」
「君も相当なワルだね」
「冒険、探検、お宝には目がないんでね」
緊張感のない2人はゆっくりとベットから起き上がる。 その間にも騒ぎはどんどん大きくなって行く。
「で、どうするの? これじゃずーっと出してもらえない事になるけど?」
「……仕方ないなぁ。 じゃあ出よう」
「どうやって?」
「指鳴らしてどうにかしてくれない?」
「それとこれとは話しは別。 手助けするつもりはないよ」
「しょうがないなぁ〜……」
カンパネルラは手を貸さないと分かると、レトは困った顔をしながら懐を漁る。
「ふっふっふー、こういう時に使えるのが僕の冒険七つの道具……」
取り出したのは……レトが持っている冒険七つの道具の一つ。 それは筒状のものに導火線がついた物体……
「ダイナマイト」
「ちょっ!?」
「冗談だよ。 冗だ……んっ!!」
ドカアアアアッ!!!
レトは冗談と言いながら檻に近付き、回し蹴りを放ち……檻は勢いよく吹っ飛び反対側の壁に衝突、それによって煙が立ちこもる。
「ケホッケホッ! む、無茶するねえ……」
「これくらい普通だって」
制服を叩いて煙を払いなが牢屋内を見渡す。 レトはここが地下にあることから、地下道に近いと踏んだ。
「で、これからどうする気?」
「地下道に出てラウラ達と合流かな。 カンパネルラはもう行くの?」
「フフ、僕は君達が逃げ切れるのを……高みの見物と行くよ」
カンパネルラは片手を上げ指を鳴らすと……カンパネルラを中心に炎の渦が発生した。
「相変わらずいい趣味をしている」
「じゃあね、気が変わったまたいつでも呼んでね♪」
渦が大きくなって全身を覆い隠し……カンパネルラは陽炎のように消えていった。 レトはそれを一瞥し、まずは盗られた槍とアークスを探し出し。 地下道に向かって走り出した。