英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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お待たせしました!


18話 2代目剣帝

数分前ーー

 

レトとカンパネルラが呑気にポーカーをしている時……ドレックノール要塞、地下道。 地元の人も寄り付かない薄暗い場所、そこでは……

 

「ーー待て! お前達!!」

 

「ハアハア……ま、まだ追ってくる、何でこうなったの〜!?」

 

「まさか、正規軍がこんな場所にまで警備網を敷いていたなんて……」

 

「要塞の真下にあるんだ。 今思えば、当然と言えば当然だろう」

 

地下道から要塞に向かい、レトを救出しようとしていたラウラ達。 だが……その矢先に地下道を巡回していた兵士に見つかり追われていた。

 

「だがこのままでは通報されるのも時間の問題だ」

 

「ええい、仕方あるまい!」

 

「ラウラ!?」

 

ラウラは走るのをいきなりやめ、地面を滑って制動をかけながら振り返り……大剣を構え兵士に向かって飛び出した。

 

「せいやっ!!」

 

「ガッ!?」

 

突然の事で兵士も驚き……その隙にラウラが大剣の面を振って側頭部を打ち付け気絶させた。

 

「安心しろ、峰打ちだ」

 

「よ、容赦ないわね……」

 

「今は非常時だ、割り切るとしよう」

 

ガイウスが気絶した兵士を壁に寄りかからせながらそう言う。

 

「それにしても、まさかあの女の人が渡した鍵がここに入るためのものだったなんて……」

 

「一体何者かしらね?」

 

「わからぬ。 だが、只者ではないのは確かだろう。 それにしても……」

 

そこで1度言葉を切り、ラウラは辺りを見回す。 そして1人頷き納得する。

 

「この地下道、恐らく帝都まで伸びているだろう。 そして要塞に続く分岐点も隠されているはず……距離と方向を見失わないように注意しつつ進むとしよう」

 

「了解した」

 

「……ラウラ、妙に落ち着いているわね? もしかしてまた似たような場所にでも行っていたのかしら?」

 

「なに、よくレトと帝都の地下道を駆け巡っていたのでな。 ここと、帝都の地下道と構造が似ているだけだ」

 

「へぇ、そうなーー」

 

ウゥーーーー!!

 

その時、地下道の先からサイレンの音が轟いてきた。 このような狭く反響しやすい場所なのでより大きく、身体全体が揺れるように届いた。

 

「うわっ!?」

 

「う、うるさいわね……!」

 

「気付かれてしまったようだな……」

 

「急ぐぞ、このままでは領邦軍も出てきて面倒な事になる!」

 

ラウラは急いで走り出し、エリオット達もその後に続いて走り出す。 正規軍が監視網に入れているだけあって魔獣の類はおらず、要塞に続く分岐点を見つけた。

 

そして迷わず階段を駆け上がって地上に登り、左右に分かれていた通路を右に曲がると……

 

「ーーあ。 ヤッホー、皆」

 

件のレトが左側の通路におり、ラウラ達を視界に捉えると片手を軽く上げて呼んだ。 その声に4人全員が反応してしまい……走っていた勢いでいきなり止まってしまったため前につんのめり、かなりの勢いで転倒してしまった。

 

「イタタタタ……」

 

「な、何なのよもぉ……」

 

「お、重い……」

 

「大丈夫?」

 

ラウラが1番下で押し潰されているのを見ながら、レトは1人1人に手を貸して立たせた。

 

「助けに来てくれたんだね?」

 

「ああ。 無用だとは承知の上だが、一貴族としても今回と件は見過ごす訳にはいかない」

 

「それでこの騒ぎになっちゃあ世話ないけどね」

 

「あはは……さて、ここで喋っている余裕はないし、早くここからーー」

 

ーーガラララララガンッ!!

 

「出ない、と……」

 

「……シャッターが閉まっちゃったね」

 

エリオットが踵を返して来た道を引き返そうとした時……真上からシャッターが閉まった。 眼前、エリオットの鼻を掠めるように退路が塞がれてしまった。 エリオットがビビってガクガク震える中、今度は大勢がここに向かってくる音が聞こえてきた。

 

「兵士達かな……上に逃げるよ。 このままじゃ捕まって皆仲良くそこの豚箱行きだね」

 

「捕まってたまるもんですか!」

 

「ま、待ってよ〜!」

 

アリサが慌てて走り出し、それに続いてレト達も走り出した。 5人は当てもなく走り続けると……突然壁越しに叫び声、銃声、爆発音が聞こえてきた。

 

「……なんか、騒ぎが大き過ぎやしない?」

 

「風が熱を持っている……どこかで火災、爆発が起きているようだな」

 

「私達以外に誰かこの要塞に襲撃をかけたのか……?」

 

こんなタイミングで……レトは先ほどあった少年の顔を思い浮かべながら要塞の内側に続く扉を開けると……

 

「何っ!?」

 

「こ、これって……!?」

 

そこは、既に戦場と化していた。 正規軍の兵士達が混乱しながらも銃を向けているのは……機械仕掛けの魔獣のような敵だった。

 

「な、何が起こっているの?」

 

「あれは、魔獣なの?」

 

「ーーいや。 あれからは命の息吹が感じられない」

 

「人形兵器……」

 

近くにいた小型の人形兵器が兵士達によって破壊され、それによる爆風が高熱の風を放ち。 身体中に浴びながらボソリと、レトは4人に聞こえないように独り呟く。

 

(これ……カンパネルラの仕業かな? 全く、ラウラ達が起こした騒ぎを引き継ぐ形になったのはいいけど……これじゃあね、有難迷惑ってやつだよ……)

 

最初はラウラ達がここに来てしまった為の騒ぎだったが……カンパネルラが面白半分で人形兵器を投入したお陰でラウラ達の罪を持ってくれた。 だがその人形兵器が破壊活動をしていては元も子もなかった……

 

「どうしてこんな事に……」

 

「……分からない。 けど、放っておく訳にはいかない。 先ずは奴らの注目を集める」

 

「了解した」

 

レト達は武器を取り出して構え。 そしてレトが一歩前に出て息を大きく吸い込み……

 

「ーー喝ッ!!」

 

この場のどこにいても届くような一喝を放った。 それにより兵士達はもちろん、人形兵器もレトを発見する。

 

「僕とラウラで敵を引きつける。 その間に皆で彼らの体勢を整えて!」

 

「ええ。 2人とも気をつけて!」

 

「承知した!」

 

レトとラウラは戦術リンクを繋ぎながら大量の人形兵器がいる地点に走り……ある程度近付いた所で逃走。 人形兵器を2人の元に引き寄せて他の人達と距離を取らせる。

 

「レト! この機械仕掛けの魔獣を知っているのか!?」

 

「これはある組織の兵器! さっきの爆発で確信したけど、どうやら証拠隠滅のために全機に自爆装置が搭載されている! 倒したからって気を抜かないでね!」

 

「ああ!」

 

2人は隙間ないコンビネーションで確実に人形兵器を破壊し、派手に動いて注目を集める。

 

「ふっ……せいっ!」

 

「はあっ!」

 

レトが槍で高速の三段突きから一転しての薙ぎ払いで周囲の人形兵器を破壊し。 ラウラが跳躍により距離を詰め、振り降ろされた大剣により離れた人形兵器を破壊していく。

 

「ラウラ、レト!」

 

「無事か?」

 

そこに、正規軍の立て直しを終えたアリサ達が合流した。

 

「見ての通りだ」

 

「正規軍は体勢を立て直してこの状況に対処しているよ。 もう大丈夫みたい」

 

「じゃあ……一気に片付けるよ!」

 

5人揃い、レト達は一気に攻め込んで次々と人形兵器を破壊する。 その後正規軍も加勢に入り、レト達は怪しまれつつも応戦し……次第に人形兵器の数は減っていった。

 

「ふう。 どうやら一通り片付いたみたいね」

 

「残りは正規軍に任せてもよかろう。 我らは速やかにこの場から去るとしよう」

 

「………………」

 

「レト?」

 

不意にレトが棒立ちになって立ち竦んでいる。 ラウラ達は不審に思った時、何が高速で接近するのを感じ……

 

「…………! 離れろ!」

 

「え……」

 

「くっ……!」

 

レトは近くにいたアリサとガイウスを押し、自身もバク転すると……鋭い一閃が走り、先ほどいた地面に大きくな一閃が走っていた。 そしてその一刀を放った元凶はまた高速で離脱する。

 

「な、何んなの!?」

 

「敵襲か!」

 

「! 皆、あそこ!」

 

エリオットが指差した先には……右手、左手に一体化している片手剣と盾を構えた戦術殻のような人形兵器が立ち塞がった。

 

「あれは……!!」

 

「ーー高機動型人形兵器、スパークフェンサー。 博士の現一級品の作品だよ」

 

頭上から説明の声が降りかかり、レト達は視線を上げると……積み上げられたコンテナの上にカンパネルラが立っていた。

 

「こ、子ども?」

 

「どうしてこんな所に……」

 

「はあ……まだ帰ってなかったの?」

 

「言ったでしょう、高みの見物をするって。 それでどうだい? 中々の出来でしょう?」

 

すると、スパークフェンサーはゆらりと動き出し……姿がかき消える程の速度でレトの正面を取り、剣を振り下ろす。 レトは槍の棒で防ぐ。 速度重視のためかその一撃は軽いが……スパークフェンサーはまた同じ速度で距離を取った。

 

「速いっ!」

 

「っ!」

 

「この機動力……まさかマルチアクセラレーター!?」

 

「正解! あれに使われているのは君の銀獅子にも使われている複合加速装置……博士が珍しく興味を示したから使ってみたそうだよ」

 

「通りでこの速度であの安定性なわけだ!」

 

マルチアクセラレーター……ルーレでウルグラを改造する時、レトがRF出版の導力パーツが載っているパンフレットを見て気まぐれで作った装置。 これにより、ウルグラは高い機動力を持ちながら安定した姿勢制御を持つことができていた。

 

そしてスパークフェンサーの動きを見て、あの人形兵器にもマルチアクセラレーターが使われている事をレトは見抜いた。

 

(でも……あの装置には弱点がある!)

 

地を蹴り、動き出す前に距離を詰め。 スパークフェンサーはレトに反応して加速しようとするが……

 

「マルチアクセラレーターは動き出しの時、スタートがコンマ1秒遅れる!」

 

その前に、レトの一突がスパークフェンサーの頭を突いた。 刃は通らず、甲高い音を立てながらスパークフェンサーは吹き飛ばされた。

 

「これで……!」

 

「ふふ……」

 

とどめを刺そうと槍を振り抜いた時、カンパネルラが不敵な笑みを浮かべ……スパークフェンサーは背に取り付けてあったスラスターを噴射させ、地面を滑るように加速してレトの槍を避け……

 

「なっ!?」

 

さらに加速し……なんとスパークフェンサーは3体の分身を生み出し、レトに3連撃を喰らわせた。

 

「レト!!」

 

「っ……大丈夫」

 

「スタート時間に起きる10分の1のラグ……君の銀獅子のように克服してないと思ってた? 人が操作するならいざ知らず、機械に置いて10分の1の遅れなんてすぐに修正できるくらい分かっていたでしょう」

 

カンパネルラがレトを見下ろしながら嘲笑う。 レトは自身の過失を悔やむが……スパークフェンサーが追撃をかける。 奴は剣に電流を流して帯電させ、剣を天に向け……全員に落雷を落とした。

 

「うわあっ!?」

 

「追いかけてくる……!」

 

「くっ……」

 

落雷は全員を追いかけるように次々と落ち、5人は散開して避けるも陣形は崩れてしまった。

 

「上手上手♪ 皆、見事なステップだ。 ダンスもさぞ上手なんだろうね」

 

「くっ……ふざけた事を……!」

 

笑いながら拍手を送るカンパネルラに、アリサは怒りを覚える。 その時、ガイウスが建設用の鉄柱を見つけ……隙間に十字槍を突き入れた。

 

「風よ……俺に力を!!」

 

そして力任せに持ち上げ……豪快にスパークフェンサーに向かって投げた。 途中で鉄柱に落雷が落下するもそのまま飛来し……スパークフェンサーに直撃した。

 

「凄い凄い! 怪力だねえ」

 

「ぐっ……」

 

「ガイウス!」

 

「問題ない……」

 

やはり無理があったのか、ガイウスは十字槍を手放してしまい、両腕を下げてしまう。 エリオットが慌ててアーツで治療し、残りの3人はスパークフェンサー、カンパネルラと対面する。

 

「やるねえ。 けど、まだまだ足りないかなぁ?」

 

「……貴様、いつまでそこで傍観するつもりだ……」

 

「僕って他の執行者と違って肉体労働は苦手なんだよねえ。 っていうか、君がここに来れないだけじゃないの?」

 

「っ……私を侮るな!!」

 

カンパネルラの挑発とも受け取れる言動にラウラは怒りを覚え。 跳躍してカンパネルラの頭上を取って大剣を振り下ろし……コンテナを両断した。

 

そして、カンパネルラは当たる直前にコンテナから飛び降り、空中に浮かんでいた。

 

「おっと、危ない危ない。 侮っているわけじゃないんだけどなぁ……それじゃあ、シャッフルシャッフル♪」

 

カンパネルラは指を鳴らすと……一瞬で追撃をかけようとしたラウラとレトの立ち位置が入れ替わってしまった。

 

「なっ!?」

 

「………………」

 

「まだ、本気を出さないつもり?」

 

突然、目の前の景色が変わった現象にラウラは驚き。 レトは全く驚ろかず目の前にいるカンパネルラと対面する。

 

そしてカンパネルラが言った一言に、レトは軽く嘆息する。

 

「誰が出していないって? 僕はいつだって本気、ただ手に持つ得物と……背負うものが違うだけ」

 

槍を収め……虚空に手をかざして、黄金の剣をその左手に掴んだ。

 

「え、ええっ!?」

 

「そ、その剣は……!」

 

「ーーさあ、行こうか……彼らの組織に属するつもりはないけど、これだけは名乗らせてもらう!」

 

レトは黄金の剣……ケルンバイターをバトンのようにクルクルと手の中で回し、剣先をスパークフェンサーに向ける。

 

「2代目剣帝、レト・イルビス! 譲り受けし魔剣ケルンバイターに誓い……不条理に満ちたこの世界で、己が信じた道を突き進む! 阻むものは近付いて斬るのみ!!」

 

「おおー……」

 

すると、レトは巨大で、鋭い剣気を放つ。 カンパネルラはその剣気に関心しながらも押される。

 

「このケルンバイターで斬れないものなどーー」

 

そしてレトは右手を剣の柄頭に添えて構えを取り……

 

「そんなに、無い!!」

 

「なっ……!?」

 

そう豪語した。 だが意気揚々に言っておきながらその自信のなさに、思わずラウラ達はコケてしまう。

 

「そこまで言っておいてなんでそんなに自信がないのかしら!?」

 

「えー? 実際斬れないもの多いよー?」

 

「アハハハハ! やっぱり面白いねぇ、君。 ますます気に入っちゃったよ」

 

ツボに入ったのか、カンパネルラは目尻に涙を浮かべ腹を抑えながら笑う。

 

「全く……レトらしいな」

 

「ああ。 とてもいい追い風がレトの背を押している」

 

「まあでも……今この剣が斬るのはそこの人形兵器。 今はそれだけでいい」

 

次の瞬間、レトの姿がかき消え……スパークフェンサーの背後を取り斬りつけた。 スパークフェンサーもすぐさま対応し、2撃目を防ぎ高速で斬り合う。

 

「速いっ!」

 

「ーーVII組B班、気合いを入れろ! 後のことはその時考えて……今は目の前の事に集中するんだ!」

 

盾により剣が弾かれ距離を取りながらレトはラウラ達を奮起する。

 

「承知!」

 

「ええ!」

 

「行くぞ!」

 

「皆、速度を上げるよ! クロノドライブ!」

 

敵が素早い事から、エリオットは事前にアーツを発動させる準備をしており。 全員が気合いを入れ直すと同時に時のアーツを発動、移動速度を上げた。

 

「はっ!」

 

「はあっ!」

 

ラウラとガイウスが飛び出し、残りの3人はアークスを駆動させる。 2人は尋常ではない速度に翻弄される。

 

「ーーハイドロカノン!」

 

「クラウ・ソラリオン」

 

「!!」

 

エリオットの水のアーツが発動したと同時に2人はスパークフェンサーから距離を取り、エリオットの直線上に激流が発射されたが……スパークフェンサーはそれを避ける。

 

しかし、上空から砲撃が飛来し直撃する。 回避した瞬間に同時に発動していたレトの幻のアーツが直撃し一瞬スパークフェンサーの動きを止め……

 

「クロノブレイク!」

 

間髪入れずアリサが時のアーツでスパークフェンサーの動きを抑える。 これでスパークフェンサーの速度が落ちたと思われたが……スパークフェンサーは剣だけではなく全身に電撃を帯電させ、ラウラとガイウスを抜いてレトの眼前に現れた。 そして、帯電している剣を既に振っていた。

 

「レーー」

 

「ホッ……」

 

レトは名を呼ばれる前に帯電した剣の横薙ぎをバク転で避け、着地すると同時に……一瞬で懐に潜り込み、スパークフェンサーが剣を振り抜くよりも早く剣を振るい、一瞬で7連撃を放った。

 

「刹那刃……今思いついた戦技(クラフト)だけど、結構いい感じかも」

 

「は、速すぎて何も見えなかった……」

 

「あの一瞬で何度も剣を振ったの!?」

 

「流石だ」

 

エリオット達がレトの剣技を賞賛する中……不意にレトは辺りに耳をすませた。 少しずつだが、戦闘が収束しつつあるのを感じるレト。

 

「……そろそろ正規軍も指揮系統が持ち直し始める……ここにいたら面倒に巻き込まれるから一気に畳み掛けるよ!」

 

「面倒を呼んだのはレトでしょ!!」

 

「全員、合図で一斉攻撃だよ!」

 

「ま、全く話を聞いてない……」

 

「やれやれ……」

 

いつもの悪い癖が現れ、ラウラは呆れてしまうも……そんな事御構い無しにレトは前に出る。

 

「レディー……」

 

パシャ!

 

導力カメラをスパークフェンサーに向け、シャッター音を合図に飛び出し、一気に畳み掛けた。

 

「行くよ……ダークマター!」

 

エリオットの空のアーツが発動し、アーツが発動した中心点にスパークフェンサーを引き寄せ動きを封じた。

 

「ひゅっ!」

 

次いでアリサが矢を放ち、スパークフェンサーに矢を盾で防がせ……

 

「そこだ!」

 

間髪入れずガイウスが一転して十字槍を薙ぎ払い、盾を大きく弾き……

 

「行くよ、ラウラ!」

 

「分かった!」

 

レトとラウラが同時に飛び出し。 先頭にレト、後方にラウラと一列に並んで走り……

 

「ほっ……だあっ!!」

 

レトが一瞬で無防備となった懐に潜り込み、眼前で飛び越え……前転しながら剣を振るい頭部を斬り裂き、スパークフェンサーから火花が飛び散る。

 

次にラウラがスパークフェンサーの目の前で身体を捻り上げるように跳躍し、その勢いで大剣を頭上に掲げ……

 

「喰らうがよい!」

 

スパークフェンサーの脳天に振り下ろし、大地を砕いた。 そしてスパークフェンサーは火花がさらに飛び散り……爆発し、大破した。

 

「ふう……なんとかなったわね」

 

「あ、危なかったあ〜……」

 

「ーー気を抜かないで。 まだ彼が残っている」

 

「奴からは妙な風が吹いているな……」

 

「………………」

 

2人が警戒を解く中、レトとラウラはカンパネルラを警戒しており。 声をかけられたアリサ達は慌てて武器を構え直す。

 

「それで、結局カンパネルラはどうするの? このまま僕達と戦う?」

 

「さっきも言ったけど、今回僕はただの傍観者……潔く帰るとするよ」

 

するとカンパネルラは指を鳴らし……一瞬で渦巻く炎に包まれる。 その現象にラウラ達が驚く中、カンパネルラはレトを見下ろす。

 

「またね。 気が変わったらいつでも連絡をもらえると嬉しいな。 ああそれと……そろそろ来るみたいだから」

 

最後にそう言い残し……カンパネルラは消えて行った。

 

「はあ……」

 

「……とんでもないのに誘われているのね」

 

「その気は無いから一応、安心して……」

 

「ーー動くな!」

 

その時、正面から正規軍の部隊が現れた。 だが部隊はレト達に銃を突きつけ、背後からも兵士が現れて眼前に包囲されてしまった。

 

「そこの学生共、武器を捨てて両手を頭の後ろで組め!!」

 

完全に囲まれ、無数の銃口を突きつけられたレト達。 レトは脱出を考えたが……戦闘経験の浅いアリサとエリオットもいる以上、素直に従うしかなく。 5人は自身の武器をパッと手放して地面に落とし、ラウラ達は正規軍に従って両手を頭の後ろで組んだ。

 

「お前達がこの要塞を襲撃したのか?」

 

「さあね」

 

この部隊の隊長の質問に、レトは挑発するようにラウラ達の最後に、ゆっくり両手を頭の後ろで組んだ。

 

「レ、レト……!?」

 

「何を……!?」

 

「ッ……貴様!」

 

隊長はレトに近寄り銃口を目の前に、恐怖を与えるように接触させて突きつけたが……

 

「素人がーー」

 

次の瞬間……レトは組んでいた手を解いて銃を殴るように弾き、蹴りで隊長の手から飛ばした。 そして肘打ちで体勢を崩し、背後に回り込んで後ろに転ばせるように持ち上げて上に投げ……蹴って吹き飛ばした。

 

「隊長!」

 

「貴様ぁ!」

 

「動くな!」

 

兵士達が怒り、レトに銃口を集中させる。 だがレトはケルンバイターの柄を踏んで上に飛ばして自身も跳躍し……柄を右手で掴むと、身体を捻って着地と同時に兵士が持っていた銃を斬った。

 

手の中でケルンバイターを回して左手に持ち替え、すぐさま兵士達はレトを囲うが……レトは崩れた隊列の隙間を縫って包囲を抜ける。

 

「ちょ、ちょっと何やってんのよ!?」

 

「何って、抵抗だけど?」

 

「なんで抵抗するの!? このままじゃあらぬ罪を着せられるちゃうかもしれないのに!」

 

「あー、それはね……」

 

「ーーそこまでだ!」

 

剛健な声が辺りに響き、その場にいた全員の動きを硬直させた。 そして現れたのは……

 

「ナ、ナイトハルト教官!」

 

「しょ、少佐……」

 

「ナイトハルト少佐だ……」

 

「来た来た」

 

ラウラ達と兵士達がナイトハルト教官の登場に驚く中……レトはまるで分かっていたような顔をし、ナイトハルト教官はレト達の前に歩いて来る。

 

「全く……正規軍に生徒が連れて行かれたと聞いて来てみたら……お前達はここで何をしていた?」

 

「正規軍にあらぬ疑いをかけられそうになったので抵抗しましたー」

 

「そうではなくこの事態だ」

 

「そう言われても、正体不明の組織がここを襲ったとしか」

 

ナイトハルト教官は少し嘆息した後、正規軍の方を向いた。

 

「彼らの身元の保障と無実は第四機甲師団・ナイトハルトが保証する。 異論はないな?」

 

「し、しかし……」

 

「スカイウォーカー大佐には既に許可を得ている。 お前達はこの場の後始末、そしてセントアークと領邦軍に送る事態の説明をしておけ」

 

「りょ、了解しました!」

 

まだ迷っている兵士達にナイトハルト教官はそう言い。 兵士達は慌てながらも了承して敬礼し、気絶した隊長を連れて去って行った。

 

「はあ〜……」

 

「助かりました、ナイトハルト教官」

 

「全く、VII組両班揃って問題発生とは……頭を悩ませてくれる」

 

「あ、あはは……すみません……」

 

比喩抜きで頭痛がして来たナイトハルト教官に、エリオットは乾いた笑いをした後謝罪した。

 

その後……この騒動にはセントアークの住民はもちろん、領邦軍も反応していた。 だがここを治めるハイアームズ卿の意向により深く批判、追求せず……この件は正規軍だけで収束させた。

 

そしてレトの檻の破壊による器物破損と脱獄、公務執行妨害、およびラウラ達4名の要塞内の無断侵入については……結社の襲撃によって有耶無耶、そしてナイトハルト教官によって無罪放免となった。

 

ただし罰として1週間、学院中のトイレ掃除が決定したが……ナイトハルト教官にしては優しい罰だった。

 

こうして……今回の特別実習は終わりを迎えた。 既に日は暮れていたため、セントアークのホテルで一晩、疲れ切ってしまった身体を休めてから……翌朝、レト達はナイトハルト教官と白亜の旧都を後にする事にした。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

5月31日ーー

 

早朝、レト達はナイトハルト教官と共に始発でセントアークを後にした。 それを、セミロングの銀髪の褐色肌の美女が駅に入るレト達を影から見ていた。

 

「士官学院VII組……ずいぶんと危なかったけど、何とかなったわね。 しかし、あの馬鹿が作ったとは聞いたけど……でもあの子もいるみたいだし、中々面白そうね」

 

「ーーふふ、僕もそう思うよ。 本当に、彼らは退屈させてくれない」

 

背後から聞き覚えのある声に、女性はバッと振り返ると……そこにはカンパネルラが立っていた。

 

「あんたは……!」

 

「やあ」

 

突然のカンパネルラの登場に女性は警戒し、腰に手を回そうとすると……カンパネルラは慌てるように装いながら両手を上げた。

 

「おっと、ここで事を構える気はないよ。 一応は、僕は彼らを助けたんだから」

 

「よく言うわよ。 実験のついでに、でしょう?」

 

カンパネルラは事を構える気がないとわかると、女性は一応は信用するが警戒は解かなかった。

 

「ふふ……おっと、そろそろ時間だ。 僕はそろそろ失礼させてもらうよ。 それじゃあね、《銀閃》さん。 あの初々しいカップルにもよろしく」

 

そう言うと、カンパネルラは南サザーランド街道に向かって歩いて行った。 女性はカンパネルラの背が見えなくなると……そこでようやく警戒を解き、大きく息をはいた。

 

「……全く、この面倒な状況でそれ以上に面倒なヤツが出て来たわね……はあ、アイツにヤケ酒でも付き合ってもらわないと割に合わない……」

 




かなり深刻な状況になった上に、レト達の処遇や後始末がかなり無理矢理な感じがする……
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