英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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この前普通に歩いていたら松ぼっくりを蹴ってしまった。 そしたら……

松ぼっくり「イタイ」

……思わず謝ってしまった……




20話 実技テストIII

6月23日ーー

 

月日はすぐに過ぎて翌週の水曜日、この後実技テストを行うこの日の昼休み……学院の生徒達は貴族、平民問わずに1ヶ所に集まっていた。

 

「えーっと……どこかなー?」

 

生徒達の前にあったのは掲示板。 そこに先週行われた中間試験の結果が張り出されていた。 しかも合計点数、そして順位が堂々と張り出されるており、自身の順位が他の人達に知られる恥ずかしさもありながら自身の名前を探していた。

 

「ーーお。 あったあった。 915点の11位……まあ、こんなものかな」

 

「意外と頭良かったんだね、レトって」

 

「一応は帝國学術院入学希望だったからね」

 

「試験とは関係ない勉強をしてこの点数って……まさかカンニングでもしてるんじゃないでしょうね?」

 

「…………ふ」

 

アリサは半信半疑で疑いの眼差しをレトに向け、その視線に気付いたレトはソッポを向きながら不敵に笑う。

 

「あなた……」

 

「アリサさん」

 

「なによ」

 

「ーーバレなきゃ問題ないよ」

 

ピッ、ピッ

 

「今の台詞を録画しておいたぞ」

 

「ごめんなさい。 女神に誓ってカンニングはしてませんけど勘弁してください」

 

いつの間にラウラがレトの導力カメラで先程の一連を録画しており。 ラウラはその動画を再生しながらレトに突きつけ、レトは慌てながら謝り倒した。

 

「……相変わらずだね」

 

「あはは……それにしても皆かなり良い成績だね」

 

「クラス平均もVII組が1位だし、ちょっと誇らしいね」

 

「ふん、当然の結果だろう」

 

「だから君はなんでそんなにも偉そうなんだ……」

 

「クスクス……」

 

VII組の努力の結果であり、誇るべき結果である。 しかし、その様子を離れた所から苛立たしげに見ている人影があった。

 

「クッ、何という屈辱だ……!」

 

「帝国貴族の誇りをあんな寄せ集めどもに……!」

 

「そ、それに……アリサさんのあの家名は……」

 

白い制服に身を包んだ貴族生徒達。 彼らの内に怒りが湧き上がっている様子は見れば一目瞭然であった。 だがそれをリィン達は気付く事は無く、レトはチラリとその貴族を横目で見たが……すぐに興味を失った。

 

程なくして予鈴がなり、午後の実技テストの為にレト達はグラウンドに向かった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

レト達がグラウンドに集まり、その後すぐにサラ教官がやってきた。 しかもスッキリした満面の笑みを浮かべながら。

 

「いや〜、中間試験、皆頑張ったじゃないの♪ あのイヤミ教頭も苦虫を噛み潰したような顔してたし、ザマー見なさいってね」

 

「別に教官の鬱憤を晴らす為に頑張ったわけでは……」

 

「というか、教頭がうるさいのは半分以上が自業自得ですよね?」

 

「いや、むしろ九分九厘かもしれない」

 

「……ひ、否定できないのが何とも……」

 

だが、その愚痴は少なくとも教官としての責務を一通り真面目にこなした上で言ってもらいたい。

 

「全く、あのチョビ髭オヤジ、ネチネチうるさいっての……やれ服装だの居酒屋で騒ぐなだのプライベートにまで口出しして……」

 

「反省の色無いね……」

 

「おまけに婚期がどうだの、余計なお世話だっつーのよ!」

 

良い気分から過去の嫌な事を思い出して吐き出すサラ教官に、全員呆れるしかなかった。 そして自身の負を全て吐き出してすっきりしたのか、サラ教官は改めて咳払いを入れる。

 

「ーーコホン、それはともかく。早速、今月の実技テストを始めるとしましょうか」

 

「はい」

 

「フン、望むところだ」

 

(腕試しには丁度いいかな)

 

サラ教官は以前と同様に指を鳴らし……どこからともなく教官の隣に例の機会人形が現れ。 もう見慣れた事なので誰も驚かない。

 

「……現れたか」

 

「また微妙に形状が変わっているな……」

 

「…………………」

 

驚きはいないが、全員が先月と形状が異なるっているのを観察する。 そんな中、リィンは別の意図を持って観察し……同様にレトも思い出すように考え込んでいた。

 

(今思えばどこからこの人形兵器を仕入れているんだろう? 執行者がほぼ自由なんだから、十三工房も恐らくは自由が認めれらているとは思うけど……)

 

ああでもないこうでもないと考え込んだせいで、レトはラウラとフィーの間に不穏な空気が流れるのに気付かなかったが……変わりにここに近づく複数の人の気配には気付いた。

 

「フン……面白そうな事をしてるじゃないか」

 

声色でも分かる傲慢な声……その主を確かめようと校舎の方に視線を移すと、士官学院のグラウンドに続く階段に白い制服に身を包んだ生徒達が立っていた。 その集団の先頭にいたのは金色の髪を持つ男子、パトリック・ハイアームズだった。

 

「I組の……」

 

「な、なんだ君達は?」

 

質問に答えるように彼らは足並みをそろえてレト達の前まで移動し、階段前にも女子生徒2人がいた。

 

何故彼等がここにいるのかはサラ教官にも分からないようで、彼らに質問をする。

 

「あら、どうしたの君達? I組の武術教練は明日の筈だったけど」

 

「いえ、トマス教官の授業が丁度自習となりましてね。 折角だからクラス間の交流をしに参上しました。 最近目覚ましい活躍をしているVII組の諸君相手にね」

 

「そ、それって……」

 

レイピアを取り出しながらパトリックが宣戦布告をする。 口調は穏やかだが、その声音からは何となく怒り妬みが感じ取れる。 その行動にレトは何となく察した。

 

「得物を持っているということは、練習試合ということか……?」

 

「フッ、察しがいいじゃないか。 そのカラクリもいいが、たまには人間相手もいいだろう? 僕達I組代表が、君達の相手をしてあげよう。 フフ、真の帝国貴族の気風を君達に示してあげるためにもな」

 

パトリックにつられて他の貴族生徒も挑発的に笑う。

 

「ふむ、真の帝国貴族の気風か」

 

「少なくとも目の前には無さそうだね」

 

と、そこで一部始終を見ていたサラは面白そうに笑みを口元に浮かべた。

 

「フフン。 良いわ、なかなか面白そうじゃない」

 

そう言うと再び指を鳴らして機械人形を消すと、レト達に本日の実技テストの内容を告げる。

 

「ーー実技テストの内容を変更! I組とVII組の模擬戦とする! 勝負形式は4対4の試合形式、アーツと道具の使用も自由よ! リィン……3名を選びなさい!」

 

「りょ、了解です」

 

リィンは度々あちらから茶々を入れられながらもエリオット、ガイウス、レトの3名を指名した。

 

「ーー決まりね。 それじゃあ、双方とも位置に付いて」

 

I組代表は前に出て、VII組代表は出る前にユーシスの助言を聞いた。

 

(ユーシスー、ほんの少しイラってきてー。 極々ちょっぴり本気出したいから剣貸してくれないー?)

 

(貸すか阿呆。 お前の腕なら槍でも余りあるだろうが)

 

(じゃあこの剣を使うかな)

 

そう言いながら取り出したのはバタフライナイフのような可変機構が取り付けられた銃剣だった。

 

(それがあるなら最初からそれを使え)

 

(これの初使用がこんなしょうもない所だと思うとね……)

 

(おい。 それは俺の剣がこんなしょうもない場面に似合うと?)

 

(レア度の違いだよ)

 

呆れるようにユーシスはやれやれと嘆息しながら首を振る。 そしてレト達は位置に付いた。

 

「それではこれより、I組対VII組の代表による模擬戦を開始する。 双方、構え」

 

両者位置に付き、I組は剣を抜き構え、VII組もそれぞれの武器を取り出して構える。 レトも腰のホルダーに左手をかざすと……銃剣が独りでに飛び出して畳まれていた柄を開き、レトは柄を掴んで抜き、ガシャガシャと音を立てて刀身が出て剣となった。

 

「面白い剣だな」

 

「今日届いた剣でね。 常日頃からあの剣を使う訳にもいかないからねー」

 

「ああ、確かに。 あの剣は見ているだけでこう……異質な感じがするから」

 

「………………?」

 

レトの銃剣をみながら会話する3人に……事情を知らず、ケルンバイターを見てないリィンは3人の会話についていけなかった。 と、そこでパトリックがわざとらしく咳払いをし。 レト達は少し慌てるも気を取り直して武器を構えた。

 

「ーー始め!」

 

開始の合図と同時にレトはゆらりと横に倒れるように揺れ……

 

「なっ!?」

 

驚く間も無く4人の剣に一太刀、利き手を軽く切傷を……合計8回、通り抜き際に剣を振った。

 

「これでも結構頭に来てるんだよねー。 ま、これ以上手出しはしないから安心していいよ。 後はよろしくー」

 

あれで幾分怒りがスッキリしたのか、レトは剣を肩に担いで手を振りながらグラウンドの端に寄った。

 

「え、ええぇ〜?」

 

「ほぼ勝負はついたとはいえ、相変わらず勝手気儘な奴だ」

 

「ふ、ふざけた真似を……!」

 

気を取り直して練習試合を再開するが……レトが剣に強打を入れて腕を痺れさせ、さらに切傷によるダメージもあって4人は剣を満足に振れず。 少しずつ押されていき……数分でリィン達に制圧された。

 

「ーーそこまで!」

 

I組が全員戦闘不能になったことを確認すると、サラ教官が勝利宣言をする。

 

「勝者、VII組代表!」

 

(終わったようだね……)

 

無論、I組の男達が弱いわけでは無く、寧ろそんじょそこらの魔獣や一般兵程度なら余裕で蹴散らせるぐらいの実力はある。 レトの先手もあるが、やはり勝負の決め手となったのはアークスによる戦術リンクだろう。

 

「……勝ったか」

 

「ああ……」

 

呼吸を整えながらリィン達も得物をしまう。 そしてリィンは地に膝を付けているパトリックの下へと歩いていき、互いに賞賛し合う意味を持って右手を差し出す。

 

「いい勝負だった。 先手がなかったらこちらが押し切られていたかもしれない。 機会があればまた……」

 

だがパトリックは差し出した手を見て、歯ぎしりの音を鳴らしながら勢いよく手を横へ振り抜き、リィンの手を弾いた。

 

「触るな、下郎が!」

 

八つ当たりをするかのように怒りを燃え上がらせて立ち上がり、パトリックはそのまま侮蔑の言葉を吐き捨てていく。

 

「良い気になるなよ……リィン・シュバルツァー……! ユミルの領主が拾った出自も知れぬ浮浪児如きが!」

 

「……ッ……」

 

「おい……!」

 

「貴方……!」

 

「ひ、酷いよ……!」

 

パトリックはまるで溜まりに溜まっていた思いが爆発するみたいに続けて暴言を吐く。

 

「ハッ、他の者も同じだ! 何が同点首位だ! 貴様ら平民如きが良い気になるんじゃない! ラインフォルト!? 所詮は成り上がりの武器商人風情だろうが! おまけに蛮族や猟兵上がりの小娘、盗賊紛いまで混じっているとは……!」

 

「………………(カチン)」

 

少しだけ、レトの目が細められ、心の中の何かがカチンときた。

 

「……………………」

 

「な、な……」

 

「否定はしないけど……」

 

「小娘……わたしのこと?」

 

「酷いです……」

 

中傷された者も含め、ユーシスとラウラの怒りを買い始めるパトリック。 サラ教官も目を閉じて傍観を決めており、止めることはなかった。

 

「パ、パトリックさん……」

 

「さすがに言い過ぎでは……」

 

他の貴族男子はさすがにまずいと思い、止めようとするも……今のパトリックにとっては火に油だった。

 

「うるさい! 僕に意見するつもりか!?」

 

「……聞くに堪えんな」

 

「おい、いい加減にーー」

 

「ーーよく分からないが」

 

ユーシスが痺れを切らして止めに入ろうとした時……ガイウスがパトリックの前に出てきた。

 

「貴族というものはそんなにも立派なものなのか?」

 

「っ……!?」

 

「ガ、ガイウス……?」

 

「そちらの指摘通り、俺は外から来た蛮族だ。 故郷に身分は無かったため未だ実感が湧かないんだが……貴族は何をもって立派なのか説明してもらえないだろうか?」

 

「な、な……」

 

ガイウスの質問に、パトリックは先ほどの怒りも含めて驚愕したが……パトリックは教えられた貴族の形をそのまま口にする。

 

「き、決まっているだろう! 貴族とは伝統であり家柄だ! 平民如きでは真似できない気品と誇りの高さに裏打ちされている! それが僕達貴族の価値だ!」

 

(……ほとんどの貴族なんて……血と炎に塗れた産物だろ。 笑わせてくれる、そんなの……ただの呪いに過ぎない)

 

その答えにレトは無意識に手を握る力が強まり、ガイウスはクラスメイトであるユーシスとラウラに当てはめて納得する。

 

「なるほど……ラウラやユーシスの振る舞いを見れば、納得できる答えではある。 だが、それでもやはり疑問には答えてもらっていない。 伝統と家柄、気品と誇り高さ…………それさえあれば、先ほどのような言い方も許されるという事なのだろうか?」

 

「ぐ、ぐうっ……」

 

正論を言われ、ここでようやく頭が冷えたパトリックは己が非を認めたのか怯みながらたじろぐ。

 

「ガイウス……」

 

「ふむ……」

 

「…………………」

 

「正論だね」

 

「パ、パトリックさん……」

 

「こ、このあたりで……」

 

他の貴族男子達も、パトリックに気圧されていて言葉を発せられなかったのだろう。しかし、雰囲気が少しだけ静かになった事で漸くパトリックに制止の声をかけることができた。

 

「ーーふふ、中々面白い事になっているじゃない」

 

ここで、今まで無言を貫いていたサラ教官がようやく口を開いた。

 

「模擬戦は以上。I組の協力に感謝するわ。

後、自習中だからといって勝手に教室から出ないように。 そちらの子達も、教室で課題をしてらっしゃい」

 

サラ教官に言われ、階段前にいたI組の女子達が慌てて教室に戻っていく。 そしてサラ教官はパトリック達の方に向き直る。

 

「後、明日の武術教練は今日の模擬戦の反省にするわ。 どこがマズかったのかみっちり教えてあげるから自分達なりに考えてきなさい」

 

「……了解した……失礼する」

 

背中を向け、教官の言葉に無理矢理己を納得させて逃げるようにその場を去っていく。

 

(……ハイアームズ卿とは似ても似つかないね。 やれやれ、セントアークの未来に霧が出ているよ)

 

レトは先月に会った彼の父親と比べ、ただ嘆息するしかなかった。

 

「今回の実技テストは以上。 次は今月の実習地を発表するわよ」

 

全員が実技テストを受けてはいないが時間的に余裕はなく、サラ教官は仕方なく飛ばしたようだ。

 

そしてサラ教官から配られた実習地の場所と班分けが書かれた紙を受け取り、10人がその内容を読んでいく。

 

 

【6月特別実習】

 

A班:リィン、アリサ、エマ、ガイウス、ユーシス

(実習地:ノルド高原)

 

B班:レト、マキアス、エリオット、ラウラ、フィー

(実習地:ブリオニア島)

 

 

「これって……」

 

「プリオニア島は確か……帝国南西部の外れにある島だったな」

 

「ラマール州の沖合いにある遺跡で有名な島だよ。 海都オルディスに寄る必要があるね」

 

「しかしーー」

 

「………………」

 

ラウラはプリントに視線を落としながら言葉を止め、その反応に気付いたフィーは視線だけソッポを向いた。

 

「《ノルド高原》は帝国北東の先の方でしたよね?」

 

「ええ、ルーレ市の先……国境地帯の向こうになるわね」

 

「古くより遊牧民が住む高地として知られる場所だな」

 

「あ、それって確か……」

 

「ガイウスの故郷だったよな?」

 

「……? そう言えばガイウスとレトって、定期テストの後に呼ばれてたよな?」

 

「ああ、その時に特別実習に付いての話をしてな。 A班には高原の集落にある俺の実家に泊まってもらう事となっている。よろしくな、リィン、ユーシス、アリサ、委員長」

 

「B班も事前に知人に頼んで実習期間中問題なく使用出来るように頼んであるよ。 プリオニア島は人の住まない絶島だからね」

 




レトの戦闘モードの切り替え(ゲーム風)

レトは槍と可変式の銃剣、それとケルンバイター。 3つの武器を持っている。 可変式銃剣の見た目はFF13の閃光さんの銃剣。

以下はモードの種類とそれぞれの武器の簡単な武器属性表。

◯ランサーモード
斬A 突S 射A 剛ー

◯セイバーモード
斬S 突A 射ー 剛A

◯ガンナーモード(え、アーチャーじゃないって?)
斬ー 突ー 射S 剛A

……あ、あれ? これって閃3並みのステータスのような……ま、まあ、ありかな? 異論がありそうですが……とりあえずこれで行きます。

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