英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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22話 絶島ブリオニア島

同日ーー

 

「……………………」

 

「……………………」

 

日は等に沈み、夕食時もとうに過ぎた頃……レトとフィーは揃って埠頭の先で座り込み、レトは手元の導力カメラをオルディス方面に向かってフラッシュさせて救難信号を送っているが……カメラのフラッシュ程度の光量では希望はないだろう。

 

そしてその側でフィーは海に釣竿の糸を垂らしており、今晩の夕食確保も一緒に行っていた。

 

「……まさかいきなりこうなるなんてね」

 

「幸先悪いね。 呪われてるかも」

 

フラッシュを辞め、レトは大の字になって寝転ぶ。 夜空のは満点の星々と幻想的な満月が輝いていた。

 

(やっぱり綺麗だねー……残酷なほどに)

 

地上で起きていることに天はいつも変わらず預かり知らず……思わずレトは自虐的になってしまう。

 

「ーーお、引いてる」

 

「え、本当!?」

 

慌てて起き上がると、フィーは踏ん張りながら持っている釣竿の竿がしなっていた。 小柄のフィーがこの引きに耐えられる訳なく、レトはフィーの背後に回って一緒に釣竿を掴んだ。

 

「フィー、一斉のでで行くよ」

 

「ヤー」

 

ギュッと柄を握りしめ、リールを巻きながら腰を下げて踏ん張り……

 

『一斉、のッ!!』

 

飛び上がるように腕を上げ、海から上がっめ釣り糸の先にいたのは……コバルトブルーの輝きを放つカニ、コバルトシザースだった。

 

「釣れたー!」

 

「ん、大物ゲット。 ぶいだね」

 

コバルトシザースをゲットし、2人は夕食を確保した。

 

「皆ー! 大物が釣れたよー!」

 

レトは小屋の前で作業をしていたラウラ達に手を振る。 2人は夕食を持ちながら小屋に向かうと……そこではマキアスとエリオットが火を用意していた。

 

「……そっちはどう?」

 

「ふう……ちょうど今、何とか火を確保したところだ」

 

少しスス汚れた眼鏡を拭きながらマキアスは答える。 彼の横には大きめの石で組まれたかまどがあり、その中には薪が集められて火が焚かれていた。

 

小屋の導力源が無くなった以上、明かりはおろか火も使えない……ゆえにこのような方法で火を確保していた。

 

「それにしてもレトとフィーがサバイバルに詳しくて助かったよ。 2人がいなかったらこうもスムーズにいかなったよ」

 

「……それほどでも」

 

「サバイバル技術は探検する為の最低限の知識だからね。 それで、ラウラは?」

 

「えっと……ラウラは……」

 

言い淀むエリオットに、レトは納得した。 レトは小屋を回り込んで裏手に向かうと……

 

「………………(ガリガリ)」

 

そこでラウラが1人、両手に挟んでいる細い棒を板に押し当てて回し、摩擦で黙々と火を起こそうとしていた。 ここでやっているのは風通りが良くないからだろう。

 

「ラウラ」

 

「(ビクッ!)な、なんだレト……今話しかけるでない……」

 

「……もう火は用意出来たよ」

 

「……な、に……?」

 

かなり集中していたのか、レトが声をかけるまで気付かず。 さらに既に火は付いたと知ると驚きのあまりカランと、ラウラは手に持っていた棒を落とす。

 

「っていうか、ラウラには火じゃなくて倉庫の修繕を頼んだよね? なんで火を起こしているの?」

 

「そ、それはだな……」

 

「……まあ、大方上手く行かなかったからせめて火でも……と言った所かな」

 

「……………………」

 

図星だったのか、ラウラは顔をうつむかせて黙ってしまう。

 

「僕も手伝うから、頑張って終わらそう」

 

「う、うん……」

 

落ち込み気味のラウラと共にレトは倉庫に向かった。 そこで先ずは空いた穴を、穴の大きさより一回り小さく削った石を入れ、その上に土をかけて埋め。 応急処置で集めの板を敷いて修繕を完了させた。

 

「ふう、こんなものかな」

 

「……済まぬレト、私が不甲斐ないばかりに……」

 

「誰にも得意不得意はあるよ。 そう気落ちしないで」

 

レトは落ち込むラウラを励まし、順調に穴を塞いだ。 応急処置を終わらせると2人は外に出た。

 

「あ、そっちはもう終わったの?」

 

「一応穴を埋めて板を敷いて応急処置をしたよ。 そっちは?」

 

「ん、丁度焼けた所」

 

かまどの上に網が敷いてあり、その上に先ほどのコバルトシザースが丸々焼かれていた。

 

「ふむ、とても良い匂いだな」

 

「これしかないが、問題ないだろう」

 

「うん、あの時パエリアを多目に食べておいて良かったよ」

 

「不幸中の幸いだね」

 

コバルトシザースの姿焼き焼きと言えばいいのだろうか? とにかくレト達は焼けたコバルトシザースを食べた。 しかし1匹を5人で分けた為そこまで満腹にはならなかったが、パエリアのお陰で今日は持つことは出来た。

 

「どうするの、この状況? ここは無人島だから当然導力通信設備がないからアークスによる通信も不可。 オルディスまで届く光量のライトもないから救難信号も呼べない……残された選択肢は2日間待つ事だけ……」

 

深刻な事態とは言い難いが、それでも実習を諦めるわけには行かなかった。

 

「まあ、2日くらい飲まず食わずでも行けるよね?」

 

「……ん、行ける行ける」

 

「行けるわけないだろう! 特別実習もあるんだぞ!?」

 

「実習をやるとなると体力も必要だし……食事はやっぱりないと……もしかしたらこの状況も特別実習なんだと思う。 サラ教官が言っていた通りね」

 

「あ、ケルディックの時の……」

 

ラウラとエリオットはケルディックの帰りにサラ教官に言われた言葉を思い出した。

 

「僕はこのまま実習を続けたいと思う。 もちろん食料の確保もするしこの事態をどうにかしたい……皆はどう思う?」

 

レトは実習を続けたいと言い、他の4人にどうしたいか聞いてみた。

 

「僕は続けたいと思うな。 2日くらい我慢できない訳でもないし……これも貴重な経験だと思うし」

 

「そう言う事なら僕も賛成だ。 サバイバル技術も持つレトとフィーもいる事だ、最悪の事はまずないだろう」

 

「……私も賛成」

 

「これで3人っと……ラウラは?」

 

「……私も賛成しよう。 どの道待つほかない上、この状況下で己を鍛える事も出来よう」

 

「まあ、確かに……」

 

古くから剣などの武を極める為に修行地には人の手の届かない、自然に囲まれいる事や澄んだ空気であるといった場所が好まれる。

 

この島はその条件を満たしており、己を鍛えるにはもってこいの場所だ。

 

「さて、じゃあこれで決まりだね。 明日からは特別実習に加えて食料の確保も兼任してやろう。 でも、詳しいことは明日にして……今日は休むとしよう」

 

レトの意見にラウラ達は頷き、それからすぐに手元の災害時のロウソクの灯りを持って寝室に向かい、早めに就寝した。

 

こうして、B班は特別実習兼軽いサバイバルをやる事になった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

翌日、6月27日ーー

 

朝早くに起床したレト達には当然朝食は無く。 水で僅かに空腹を埋めてから、2つあるうちの1つ、今日の依頼の入っている封筒を開けた。

 

依頼内容は島特有の鉱石の採掘、

島中にいる魔獣、悪魔の花の一定数の討伐、

島の集落跡付近にいる手配魔獣の討伐の3つだった。

 

「討伐系が多いね」

 

「こんな小さな島じゃできる事は限られているのだろう」

 

「うん。 では早速実習を始めよう。 それと兼任して食べられるものを探すとしよう」

 

「あんまり魚ばかりだと壊血病になるかもしれないし……島で自生している果物があるといいんだけど」

 

「……すぐにそうなる訳じゃないけど、備えておいて損はないからね」

 

早速、レト達は小屋を出て、ブリオニア島での特別実習を開始した。

 

「島をグルリと回ると2時間くらいはかかるよ。 後この辺りの気候は変わりやすいから天候には注意してね」

 

「……ん」

 

「それと小さいとは言え迷わないに目印になるのはこの先にある祭壇、島の西側にある集落跡……そして島の裏手にある巨像だね」

 

「巨像? そんなのがここにあるのか?」

 

「うん。 この島で実習するのであれば必ず目にするだろう」

 

「ブリオニア島の1番の観光スポット、全長100アージュ程の巨像が島の裏手にあるんだよ」

 

「それは凄いね」

 

「それとリィン達A班が向かったノルド高原にも同じサイズの巨像があってね、そこの巨像はまだ見た事なんだよねー」

 

「……ふうん?」

 

「ーーそれじゃあ、VII組B班、体力に気を付けながら実習を始めるよ」

 

始まる前から問題が発生していたが……気を落とさずレト達は実習を開始した。

 

ブリオニア島を歩き、人の手が加えられた道を通り、少しして七耀教会とは違う様式の祭壇があった。

 

「これって……」

 

「これは精霊信仰の祭壇。 昔からここはそういった信仰を集めてきた場所なんだ。 以前、ここにも集落があって人が住んでいた証拠だね」

 

「へぇ……って、あれ?」

 

エリオットは祭壇の上に花が供えられあるのに気付いた。

 

「祭壇の上に花が供えられてあるね」

 

「……少し枯れてる……昨日あたりに誰かが供えたみたいだね」

 

「参拝にしては早いけど……あってもおかしくはないね」

 

ここには祭壇だけで、他には何もないと分かると探索を再開した。 レト達は島の中央に向かい、そこで山から滝が出ている地点に出た。

 

「うわぁ! 凄い滝だねえ」

 

「ああ、これは中々絶景だな」

 

「……今の時期だと、飛び込みたくなるかも」

 

「ふむ、水着を持って来れば良かったかもしれんな」

 

(……魚が泳いでいる……昼くらいに取っておくかな?)

 

レトは滝から流れる水で泳いでいる魚を見て……昼食に狙いを定めた。 そして手配魔獣である悪魔の花を倒しながら浜辺に出ると……

 

「……おお〜っ!」

 

「わあ〜っ!」

 

目の前には広大な海と遮る物がない綺麗な水平線が広がっていた、フィーとエリオットは思わず浜辺に向かって駆け出す。

 

「これは、凄い景色だな」

 

「以前にも見たが、いつ見ても思わず足を止めてしまうな」

 

「大自然が作り上げた誰のものでもないプライベートビーチ……やっぱり、島と分かっていたなら水着でも持って来ればよかったね」

 

「うん。 本当に残念だ」

 

実習中とはいえ、この浜辺を前にして泳げないのは本当に残念に思える。

 

「洞窟まであるのか……」

 

「暗くて奥が見えないよ……」

 

「どうやらこの洞窟に依頼にあった鉱石があるようだね。 鉱石の名前は夜光石……夜や暗闇で青白く光りだすみたいだす、この真っ暗な洞窟の中でならすぐに見つかると思うよ」

 

「……でも、最低限の灯りはないとキツイよ」

 

「だから松明を作るんだよ」

 

レトはキョロキョロと辺りを見回し、木下に落ちていた木の枝を拾った。

 

「湿気の多い大きめな木の棒に小屋にあった古い布を巻きつけて……そしてこれも小屋にあった灯油を布に染み込ませる。 後は……フィー、お願いね」

 

「ヤー」

 

松明を地面に起き、導力機構を入れずに銃剣を横に向けて排莢口を松明に合わせ……

 

点火(イグニッション)

 

引き金を引き、排莢口から火花が飛び、松明に当たると火がついた。

 

「これでよし。 採掘は男子がやった方がいいだろうし、松明はフィーが持っておいて」

 

「……ん」

 

「………………」

 

フィーに灯りを持たせ、フィーの先導の元レト達は洞窟の中に入った。 中は細道で、反対側に出る出口が見える道と奥に続く道があり。 その奥に続く道の中に青白い光りが点々と光っていた。

 

「うわぁ……幻想的な光りだねえ……」

 

「これが夜光石か……」

 

夜光石は特徴上すぐに見つかる、灯りをフィーに任せ早速4人は持って来ていたピッケルで採掘を始めた。

 

「ふうふう……! 息が辛いね……」

 

「洞窟だから風通りも良くないだろうからな」

 

「……いや、もっともな原因はあれだろう」

 

ラウラはフィーの持つ松明を指差した。 この中で1番酸素を奪っているのは間違いなくあれだろう。 ラウラ達は早く終わらせようと手を動かていると……レトは1人、洞窟の奥を見つめた。

 

(……あそこから風を感じない……入り口は塞いだままのようだね)

 

ホッと、レトは4人から見えないよう、安心するように息を吐く。 それから順調に指定量の夜光石を採掘し……すぐに洞窟から脱出して5人はほぼ同時に息を大きく吸い込んで息苦しさからようやく解放される。

 

「ん〜! 光りが眩しい〜!」

 

「ずっと真っ暗だったからな」

 

日の光に目を慣らしながら辺りを見回す。 ここは山の裏手のようで、木々も少ない場所だった。

 

「……島の反対側に出たようだね」

 

「うわぁ……! ここも凄い大海原だよ!」

 

西ゼムリア大陸最南端と言ってもいい島、そこから見る海の景色はまさに絶景と言ってもいいだろう。 そこからしばらく回り込むように進み、島の裏手に出ると……

 

「皆、見えてきたよ」

 

『!?』

 

レトが指差した方向を見て、エリオット、マキアス、フィーの3人は驚愕する。 そこにあったのは巨像だった。 下半身と両腕は岸壁に埋まっていて上半身しか姿が見られないが、それでも見上げるほどの大きさを誇っている。

 

「………………(パクパク)」

 

「……凄く……おっきい……」

 

「言葉も出ないな……」

 

「これがブリオニア島の巨像……帝国の伝承に出る騎士伝説に関係していると言われているよ」

 

巨像を呆然と見上げる3人に、レトは説明を付け加えると……ふと、フィーはレトに質問した。

 

「……レトはこの像について何か知ってる? 考古学者なんでしょう?」

 

「ん〜……まあ一応知っていると言えば知っているけど……(所々ボカせばいいかな……)長くなるけど、それでもいい?」

 

「うん。 私もここに来た時聞きそびれていたからな、お願いする」

 

4人はこの巨像について聞きたいといい。 レト達は一体近くにあった岩に腰を下ろした。

 

「ーーじゃあまず、古代の人々が女神から授かったとされる7つの古代遺物(アーティファクト)……七の至宝(セプト・テリオン)は知っている?」

 

「……七の至宝?」

 

「聞いたこともないね……」

 

「大まかな事は省くけど、リベールに現れた空中都市……あれの導力源が七の至宝の1つ、空を司る至宝、輝く環(オーリ・オール)だった。 至宝1つで空中都市全ての導力をまかなっていたそうだよ」

 

「それはとんでもないな……現代の導力技術では到底不可能だ」

 

小国1つを空に浮かべられるだけでも現代導力技術では不可能、それを可能にした至宝の存在をマキアスは戦慄する。

 

「そして至宝は基本的に形は持たない。 形を持っていたとしてもそれは千差万別。 人であれば物でもあり、意志を持っているともされる……で、話はこの巨像に関係するものに戻して……始めにこの地には2つの至宝があった。 猛き力《焔》を司る至宝《アークルージュ》と靭き力《大地》を司る至宝《ロストゼウム》……2つは巨大な守護神の形を取り、人々に繁栄をもたらした」

 

「それって……」

 

「だが、2体の守護神は争った。 その経緯は大幅に省くけど……その2体の守護神は戦い……そして……相打ちになり、骸となった。 そして2つの至宝は守護神から抜け、その後どうなったかは定かではないけど……」

 

そこで話を止め……レトは顔を上げて巨像を見上げる。

 

「ここにある巨像は焔か大地の至宝のどちらかの骸……簡単に言えば導力エンジンを抜いた導力車って感じだね」

 

「……なるほど、分かりやすい」

 

「ーーま、こんな所かな。 ご静聴、ありがとうございました」

 

レトは座りながら頭を下げ、聞いてくれた事にお礼を言い。 そしてラウラ達は言葉も出なかった。

 

「ーーおっと、もうこんな時間に。 座学はこれくらいにしてお昼にしようか」

 

「あ……そうだね」

 

「討伐魔獣は午後に回すとしよう」

 

「……ん、動き回ったからお腹すいた」

 

そう言われて空腹を感じ始め……レト達は立ち上がり、巨像の前から立ち去って行った。

 

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