英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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24話 火の神殿

翌日、6月28日ーー

 

日も登り始めた早朝……レトは大きな欠伸をしながら小屋を出て逆光となっている日の光を全身に浴びた。

 

「ふわああ〜〜……」

 

昨夜壊れた剣の応急処置をしたため寝不足気味になりながらも、埠頭に向かって歩きながら背を伸ばし、眠気を覚まそうとした時……埠頭に導力ボートが付けられているのを見つけた。

 

「ん……? あれって導力ボート? いつの間にこんなのがこの島に……」

 

不審に思いながらもボートに近付き、ボートを確認した。 レトは導力機関に手をかざすと……眉を潜めた。

 

「……すっかり熱が冷めてる。 数時間前……深夜に誰がこの島に上陸した? だけど何が目的で……こんな無人島には何にも…………あ」

 

レトは何かを思い出し声を上げた。 そしてこうしてはいられないと急いで小屋に向かい、ラウラ達にこの島に来たボートについて話た。

 

「ふむ……確かにおかしな話だ」

 

「参拝にしては日が登らないうちに来るのも可笑しいし、それに加えてまだ帰って来ないのも不審だ」

 

「……ここに目星しいような高めな物があるわけでもないし」

 

「何の目的でその人達はこの島に来たんだろう?」

 

相手の目的が明白にならず、ラウラ達は頭を悩ませる。 その時……

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

「うわぁ!?」

 

「……地揺れ!?」

 

「! この揺れ方は……!」

 

突然飛び上がるような大きな地揺れが発生し、あまりの大きさに立てなくなったレト達は屈んで身を低くして揺れに耐え……数分で揺れは治った。

 

「ふう……ようやく治ったか……」

 

「び、びっくりしたぁ……」

 

「……レト、今の揺れ」

 

「うん。 間違いないだろうね」

 

フィーとレトは顔を見合わせて頷く。

 

「どうかしたの、2人とも?」

 

「皆、今の地震……おかしくなかった?」

 

「おかしくも何も……ただの地震だろう?」

 

「ああ、地震だろう。 しかし、どう揺れたと思う?」

 

「どう揺れたって縦に……ーー!」

 

この西ゼムリア大陸は基本地震は少ない。 が、全く無いわけでもなく、エリオットは先程の揺れを思い出そうとし……その今起きた地震と過去に起きた地震の違いに気付いた。

 

「そう、縦に揺れたの。 つまり震源はここ、このブリオニア島ってこと」

 

「……何かあるの? この島に?」

 

「それを説明する前に……外に出よう」

 

身支度を整えてレト達は小屋を出ると……正面に広がっていたオルディス間の海が荒れていた。 波の高さも尋常ではない高さだ。

 

「やっぱり……今の地震で海が荒れてる」

 

「あ、あの波の大きさ……軽く波止場を超えるぞ!?」

 

「…………ギリギリあの店まで届かないくらいだけど……」

 

「また地震が起きたらオルディスの街は……!」

 

「…………! レト、まさかこの地震はあそこからか?」

 

「恐らくね。 皆、移動しながら説明するからすぐに準備を済ませて」

 

すぐさま昨日採っていた食料を食べて活力にし、レト達は準備を整えたらこの島にある山に向かいながら事情を説明した。

 

「昨日、山を通り抜けるようにしてあった洞窟があるでしょう? あれには隠された別の道があってね……地下に神殿に続く道があるんだ」

 

「神殿!? この島にはそんなのがあるのか!?」

 

「言っただろう。 この島には遺跡しかないと。 神殿くらいあってもおかしくはない」

 

「そ、それはそうだけど………」

 

「……本当にあるとは聞いてない」

 

急いで走るも、その道中を地震によってパニック状態になっている魔獣がレトが襲いかかる。 それを先導していたレトとフィーが銃剣で蹴散らしながら説明を続ける。

 

「元々この島は陸地にあった山だったんだ。 けど、長い長い年月を経て海が広がり……最高峰並みの高さを誇っていた山は今では氷山の一角の小さな孤島になったってわけ」

 

「え、そうなの!?」

 

「……驚き」

 

「た、確かにそういう説は聞いた事あるが……」

 

「それでね、この山ってこんな見た目だけど一応は休火山なんだよ。 海に沈んで分かりにくいけど……遺跡は形を残したまま。 以前に僕とラウラもここを訪れたんだ」

 

「それで、どうしてここに? いきなり色々あって頭がついていかないんだけど……」

 

このブリオニア島誕生の経緯には驚いたが……それがこの島に訪れたボートの持ち主や地震とどう繋がるのかは説明してなかった。

 

レトはそれを知っているようだが……まだ疑問が多い中携帯用の導力ランタンで照らしながら洞窟の中に入り、昨日とは違う道を通り洞窟の奥に進んだ。

 

しばらく暗がりの中を下に降りながら進むと……壁が崩落している場所に出た。 壁の先には先に人工の通路が見える。

 

「これは……!?」

 

「やっぱり……恐らくこの島に来た人物はこの先にいる」

 

「(スン……)……火薬の匂い……どうやら発破でここを開けたみたい」

 

フィーは鼻をヒクつかせてこの場所に漂う火薬の匂いを嗅いだ。 と、ここで色々と疑問を抱えていたマキアスがレトの肩を掴む。

 

「ちょ、ちょっと待ちたまえ。 君はこの先にいる人物が何者なのか分かるのか? それに加えてこの先が地震と何の関係があるんだ?」

 

「……そうだね。 まずこの先に向かった人物については……推測だけど財宝を狙った人物だと思う。 この先はさっき言った通り神殿……一攫千金を狙ったんだと思う」

 

「……分からなくもないかも」

 

「で、地震については……この先に行けばわかるよ。 とにかく急ごう、手遅れになる前に」

 

レトは瓦礫を超えて神殿に入り、ラウラ達も後に続いた。 整地された通路を走り抜けていると次第に明るく、しかし赤い光が見え始め……

 

「暑っ!?」

 

「……熱風……!?」

 

通路を抜けるとレト達の全身に身を焼くほどの熱風が通り抜けた。 次第に慣れ、エリオット達は顔を覆っていた腕を退け、足場の真下を覗き込むとそこには……赤光と燃え盛り、隆起し流動する溶融体があった。

 

「よ、溶岩……?」

 

「きゅ、休火山と言っていたが……まさか……?」

 

「ーーこの遺跡の名前は火の神殿、火山の中で作られた、来たる勇気ある者に試練を与える場所……だから中は敵だらけの罠だらけ。 力、知恵、そして勇気……この3つを持っていなければ超えられない神殿。 この神殿の他に帝国には合計で4つあるんだ」

 

「2年前、私とレトが行った旅はその4つの神殿を巡る旅……そして目的は達成せしめ、1年前に別れた以降、学院に入学するまで音沙汰なしだった」

 

そうだったのか、とエリオットとマキアスが納得する中……フィーはかがみ込んで地面を見つめる。

 

「……どうやらここに誰かが通ったみたいだね」

 

「えっと……どうやら2人のようだね。 この光景を目の前にしても先に進んだなんて……大した度胸だね」

 

「……無謀の間違いだと思う」

 

「ともかく、彼らの行いが地震を引き起こし、オルディスを危険に晒している……一刻も早く止めなければ」

 

「ああ。 このままだと津波が発生して大変な事になるぞ」

 

「急がないと……」

 

エリオットとマキアスは溶岩の異常な熱気に当てられ、落ちた時の恐怖も含めてこんな熱くても冷や汗をかき。 レトとラウラは以前来た事もあるのか迷わず神殿を進み、その後をフィーが付いていく。

 

神殿を進む中、エリオットとマキアスはキョロキョロと辺りを見回し、神殿に興味津々の様子だった。

 

「ねえレト。 ここも暗黒時代に造られたものなの?」

 

「そうとも言えるしそうとも言えないかな。 ここは暗黒時代に元々あった遺跡で、それを250年前の獅子戦役の終わりくらいに手を加えて神殿にしたんだ。 他の3つも同じようにね」

 

「神殿の場所はここブリオニア島の他に、イストミア大森林、アイゼンガルド連邦、そしてエベル湖にある」

 

「エベル湖……レグラムの目と鼻の先じゃないか」

 

「——あ。 そこ気を付……」

 

ラウラの説明にマキアスが驚きながら先に進み、レトが警告を言いかけると……マキアスの横から刃物がついまコマのような物体が回転しながら飛んで来た。

 

「うわぁあああっ!?」

 

マキアスは間一髪のところで回避し、コマは反対側の壁にぶつかると跳ね返り……その場を何度も往復して道を塞いだ。

 

「そこに近付き過ぎると刃物が飛んでくるって言おうとしたんだけど……遅かったね」

 

「もっと早く言ってくれ!!」

 

「……罠があるって分かっていながら警戒してないのが悪い。

地雷よりマシなんだから我儘言わない」

 

「なんで僕が悪い事になっているんだ!?」

 

そんな事がありながらも途中現れ、襲いかかる魔獣に対処しながら神殿を進む。 レトとラウラは慣れている分もあるが、他の3人も旧校舎での戦闘が生かされているのか順調に神殿内を進んだ。

 

と、その時……T字路の正面の壁が崩れており、その先に通路があるもその行く手を蜘蛛の巣で塞がれていた。

 

「これは……蜘蛛の巣?」

 

「こんな場所で……よく燃えないな」

 

「…………皆、構えて」

 

「!」

 

フィーが双銃剣を構えると……それと同時に通路から何匹もの蜘蛛の魔獣が現れた。 レト達は武器を構える、距離を取ろうと後退するが……突如頭上から落ちて来た蜘蛛の魔獣が行く手を塞いだ。

 

「待ち伏せ……!」

 

「蜘蛛の巣が罠じゃなくて、この場所自体が罠だったわけだね」

 

「くっ、浅知恵を……」

 

「あ、マキアス。 その台詞なんだかユーシスっぽいね」

 

「じょ、冗談じゃない! 誰があんな奴と……」

 

「——静かに……来るぞ」

 

ラウラの一喝で静まり、それと同時に数体の子蜘蛛型の魔獣……ザフィスが地面を這いながら襲いかかって来た。

 

「時間がない。 一気に決めるよ!」

 

「承知!」

 

「えいっ!」

 

エリオットが魔導杖を振るい、泡のようなアーツを飛ばして正面を塞いでザフィスの左右に分け。

 

「ほっ……!」

 

「よっ!」

 

「喰らえ!」

 

その開いた間を通りながらレトとフィーとマキアス、4丁の銃による銃撃で後方のザフィスを牽制しつつ包囲を突破し……

 

「地裂斬!!」

 

地を裂く斬撃が走り抜け、ザフィスの群を2つに割いた。

 

そしてすぐさまラウラが右に向かい、レトは銃を手の中でクルクルと回してながら左に向かう。

 

「行くぞ!!」

 

「了解!」

 

2人は飛び出し、レトは同時に銃撃を放って弾幕を張り、ザフィス達を集める。

 

「ほいっ!」

 

続けて銃剣を変形させて剣にし……投げた。 回転しながら丸鋸のように放たれた剣はザフィスを斬り裂きながら進行し、反対側の壁に激突して弾かれた。

 

そしてレトは走りながら弾かれて戻ってきた剣を掴み、流れるようたホルスターに納め、次は槍を取り出し一気に距離を詰め……

 

「アサルトストライクッ!!」

 

群の中心に潜り込むと槍を一回転させ、ザフィスを薙ぎ払い。 一気に殲滅した。

 

「——奥義・洸刃乱舞!!」

 

ラウラの方も奥義によって、もう半分のザフィスの群を殲滅した。

 

「ふう、やったか」

 

「ねえ、今の蜘蛛の魔獣って……」

 

「恐らく昨日の手配魔獣を追い立てた犯人だと思うよ。 どうやらあの蜘蛛は夜中に地上に出て、手当たり次第島を跋扈する……どうやら小屋の倉庫を襲ったのもあの蜘蛛で見て間違いなさそうだね」

 

「……追って見た方が良さそうだね」

 

レト達は蜘蛛が現れた通路を通り抜けると……周囲の温度が少しずつ下がって行き。 通路を抜けて開けた場所に出ると……

 

「!!」

 

「な、なにこれ!?」

 

そこには溶岩がなく、この神殿で1番温度の低い空間に出た。 そして目の前にあった崖際を見下ろすと……この空間全体に巨大な蜘蛛の巣が張ってあった。

 

「大きな蜘蛛の巣……?」

 

(! これは……)

 

「こんなのが遺跡の中のに……」

 

「あ!? あれは……!」

 

蜘蛛の巣に驚く中、右側にあった岩場の上に1人の男がおり。 その男は蜘蛛の巣に向かって叫んでおり……その叫んだ先に彼の仲間と思われる男が蜘蛛の巣の中でもがいていた。

 

そんな中……レトは何かに気付き、腰に懸下していた古文書を取り出して蜘蛛と見比べながら読み始めた。

 

「お、お前らは……?」

 

「ふむ、彼らがこの島に上陸した2人組か」

 

「た、助けないと……!」

 

「…………! 待て、上だ!」

 

エリオットは助けに向かおうとすると、それを防ぐように頭上から巨大な蜘蛛……ギノシャ・メルトが蜘蛛の巣の中心に降り立った。

 

「で、デカイ……!」

 

「あんな魔獣、以前はいなかったはずだぞ!?」

 

「……どうやらあの2人のせいで目が覚めたみたいだね」

 

ギノシャ・メルトは辺りを見回しレト達を視界に捉えると、急速に接近してきた。

 

「うわあぁぁぁ!? き、来たぁ!!」

 

「こらレト! 呑気に本など読んでないで武器を構えたまえ!」

 

迫り来るギノシャ・メルトに警戒し、マキアスが注意する中……レトはニヤリと不敵に笑みを浮かべながらパタンと本を閉じた。

 

「間違いない。 あれは天川の衣(あまのかわのころも)だ」

 

「え……」

 

「あ、天川の……?」

 

「天川の衣——その糸はその名の通り空に流れる星々の川のような光沢を放ち、かつシルクのような滑らかさも持つ……その糸で作られる服の値は計り知れない……つまり! あれはスッゴイお宝だってこと!」

 

「ああ……またレトの悪い癖が……」

 

蜘蛛の巣に指をさしながら叫ぶレトに、ラウラは頭を抱える。 どうやらレトはこの手のお宝に興味津々のようだった。

 

「これは逃す手はないね!」

 

「あ!?」

 

「レト!?」

 

言うや否や、レトは意気揚々に自ら蜘蛛の巣に向かって飛び出し蜘蛛の巣に落ちていく。

 

「危なあぁぁぁいっ!!」

 

思わずエリオットが叫び、レトは蜘蛛の巣に足をつけ……シャーっと滑って行った。

 

「って……え、えええっ!?」

 

「……滑ってる」

 

「ど、どうしてだ?」

 

「——全部くっついていたらあの蜘蛛も動けないでしょ? 縦糸だけくっつかないようになっているの」

 

「な、なるほど……ってレト、前前!!」

 

縦糸で滑って進むレトの進行方向にギノシャ・メルトが立ち塞がる。

 

「捕まらないよ!」

 

だがレトは膝を曲げてから大きく跳躍し、ギノシャ・メルトを飛び越えて後ろにあった糸の塊に手を伸ばす。

 

「お宝ゲット——」

 

糸を掴もうとした瞬間……ギノシャ・メルトの臀部から糸が発射され、レトの靴底に張り付き動きを止められた。

 

「あ……うわぁ!」

 

さらにレトは振り回され、ラウラ達のいる壁に叩きつけられる。 さらに続けて糸が飛来し四肢を拘束されてしまった。

 

「レト!」

 

「あっちゃ〜……やられた」

 

「待っていろ! 今助ける!」

 

ラウラはレトを助けようと少ない足場を跳躍しながら渡り、レトの元に向かう。 が、その行く手を再び飛来した蜘蛛の糸によって塞がれてしまう。

 

「っ……来るか!」

 

制動をかけながら方向転換、ラウラは大剣を構えてギノシャ・メルトに斬りかかる。 だがギノシャ・メルトはその巨体に似合わない速度で回避し、回り込んで爪を振り下ろしてラウラの肩を斬り裂いた。

 

「くっ……ちょこまかと!」

 

「あ、あんなに大きいのになんであんなに早いの?」

 

「蜘蛛は昆虫の中で速い部類に入るんだ。 まさかあの巨体でもそれが生きているなんて……」

 

「——ぐあっ!」

 

ギノシャ・メルトの動きに驚愕していると……ラウラは岩から岩へ移動しながらギノシャ・メルトに不意を突かれて足場から落下してしまった。 幸いにも受け止められたように着地したためラウラは無事だが、

 

「っ!? こ、これは!」

 

落ちた先は蜘蛛の巣のど真ん中。 ラウラの身体中に蜘蛛の巣が張り付いて指1本ですら動かせない状況になってしまった。

 

さらに追い討ちをかねるようにギノシャ・メルトがラウラの周りを飛びかい……蜘蛛の糸を放ってさらに四肢を固定された。

 

「さらに固定された……後は喰われるのを待つしかないな」

 

「え、縁起でもない事を言わないでください!」

 

男の1人がラウラ見てそう言い、エリオット達は助け出そうと走り出す。

 

「待ってろ! 今助ける!」

 

「くっ……こんな所でやられてたまるものか……! 私は……私は必ず父上を……槍の聖女を超える剣士に……!!」

 

ラウラは一心の思いで身体を起こし、張り付いた糸を力強くで引き剥がそうとする。 それを見たレトは叫んだ。

 

「ラウラ! 力技じゃ脱出できない! 回転だよ! 回転するんだラウラ!!」

 

「……! 承知!! う……おおおおおおおっ!!」

 

レトの助言でラウラは大剣を握りしめ、腕の力で大剣を振り回して回転し始めた。 すると蜘蛛の巣が巻き寄せられ、レトと捕まっていた男達が蜘蛛の巣から脱出した。

 

「おお……!!」

 

「糸が千切れていく!」

 

「よし!」

 

「——おい……レトォォオオッ!!!!」

 

糸が千切れ、蜘蛛の糸に捕まっていた盗賊の男性とレトが脱出する中、ラウラの叫び声が聞こえてきた。

 

蜘蛛の巣のど真ん中にいたラウラは回転する事よって……巻き取るようにさらにラウラの全身に糸が絡まっていた。

 

「どういう事だ!? 回転をすればするほど私の身体中に糸が絡まって私は脱出出来なくなっているぞ!!」

 

「なに言ってるの? せっかく本命を引き寄せているんだ。 責任持って叩っ斬ってね」

 

レトがそう言っていると、蜘蛛の巣の上にいたギノシャ・メルトがラウラにまとめられていく糸に引っ張られてラウラに引き寄せられていた。

 

ラウラはそれに気付いたと同時に大剣の腹がギノシャ・メルトに当たると……

 

「(捉えた……!)おおおおぉぉぉっ!!」

 

一気に速度を上げて回転し、大剣でギノシャ・メルトを掴んで振り回した。 それはまさに竜巻のようだった。

 

「せいやあぁ!!」

 

渾身の一振りでギノシャ・メルトを投げ、フィー達がいる方の反対側の壁に叩きつけた。 それにより落盤が発生し、ギノシャ・メルトは生き埋めになってしまった。

 

「やったぁ!!」

 

「やるじゃないか!」

 

「……………………」

 

「よしよし♪ これで安心してお宝をーー」

 

邪魔者がいなくなった事によりレトは嬉しそうに糸に駆け寄ると……瓦礫を飛び出して傷だらけのギノシャ・メルトがレトの行く手を再び塞いだ。

 

「なっ!?」

 

ボロボロになりながらもギノシャ・メルトがレトの前に立ち塞がる。 まるでこの先に行かせないように……

 

「な、ななな!?」

 

「ま、まだ倒れてなかったの!?」

 

「……下がってて」

 

エリオット達が身構える中、ギノシャ・メルトの背後にあった蜘蛛の糸が……ボコボコと膨れ上がるように盛り上がってきていた。

 

(! あれは……!)

 

「ーー退けえぇっ!!」

 

「うわあぁっ!?」

 

レトが何かに気付いた瞬間……男達がレト達の前に飛び出し、ボロボロで動けないギノシャ・メルトを剣や槌、足などで滅多打ちにし始めた。

 

「貴様ら、何をしているんだ!?」

 

「どうしたもこうしたも……散々手こずったこいつにとどめを刺すんだよ!」

 

「こうなっちまえば後はこっちのもんだ!」

 

盗賊達は憂さ晴らしのように手も足も出ないギノシャ・メルトを痛めつける。 その光景は相手が魔獣でありながらも余りにも見るに耐えない。

 

「お、おいやめないか」

 

「ひ、ひどい……」

 

「………………」

 

「あ、ちょっと待……」

 

「死ねええええっ!!!」

 

止める間も無く振り下ろされた槌の一撃でギノシャ・メルトの顔が地面に叩きつけられ……ギノシャ・メルトは力尽きて完全に沈黙した。

 

「ひははは!! ざまあ見やがれ!」

 

「これで俺達を邪魔するものは誰もいねえっ!!」

 

憂さ晴らしが嬉しいのか、男達はギノシャ・メルトを踏みつけながら狂ったように笑う。 それをレト達は冷えた目で盗賊達を見つめる。

 

「……ん? なんだぁ? なんか文句あんのか?」

 

「折角の命の恩人様なんだ、あんまりそんな目をしないでくれよお?」

 

「き、貴様ら……」

 

「ーーいや、別にいいよ」

 

「レト!?」

 

挑発的な口調で話す男達……だが怒りを秘めるラウラ達を他所に、レトは溜息をついて流す。

 

「なんだ、お前さんは随分と物分かりがいいじゃねえか」

 

「そんなんじゃないよ。 ただ……僕達が手を出す必要がないだけ」

 

「……何?」

 

「ーーイテッ!?」

 

その時、盗賊の1人が肩に痛みを感じ声を上げた。 するとその盗賊の肩には……

 

「な!? 子グモ!?」

 

ギノシャ・メルトの同種の子蜘蛛がいた。 だが子蜘蛛は1匹だけではなく、倒れたギノシャ・メルトの背後の糸の塊から夥しい数盛り上がって、何匹もの子蜘蛛が孵っていた。

 

「あのギノシャ・メルトは母蜘蛛。 その母蜘蛛が殺されたから怒り狂って貴方達を殺そうとしている」

 

「うわぁああ!?」

 

「ま、待ってくれ!! 助けてくれ!!」

 

レト達に救いを求める男達……だがレト達はこの状況を傍観するしかなく。 子蜘蛛達はレト達を無視して次々男達に群がり、次々と弱い牙を突き立てていく。

 

「自業自得だよ。 せいぜいあの世で2人仲良くね」

 

「い、嫌だ……死にたくない……」

 

「後悔は……女神の……悪魔の前でする事だね」

 

レトの言葉に男達は段々と顔を青くして行き……男達は受け身も取らずに地面に倒れ伏した。

 

「し、死んだ……?」

 

「……………?」

 

「ーーレト!! 何も見殺しにするなどどう言う事だ!!」

 

「ん? 何言ってるの? よく見てよ」

 

「何……?」

 

ラウラは見殺しにしたレトを糾弾するも、レトはどこ吹く風のように流しながら男達を指差すと……2人の男は大きないびきをかいて寝ていた。

 

「ね、寝てる?」

 

「あの毒じゃ死なないよ。 2、3日眠るだけ」

 

「な、なんだそれは……」

 

致死性ではなく麻酔性と分かるとラウラ達は大きく息を吐き、ドッと気が抜けた。

 

「ま、これじゃあほっとくしないね。 彼らはここに置いておいて、この神殿の最奥に行こう。 かなり時間を取られたし、地震の原因を止めないとね」

 

四散する子蜘蛛を他所にレトは先に進む。 エリオット達はレトを慌てて追いかける中……ラウラはレトの背をジッと見ていた。

 

(届かないな……知も、勇気も、武においても。 レト……やはり私はお前が……)

 

「ラウラーー! 何してるの? 早くきてー!」

 

「……ああ、今行く!」

 

ラウラは気持ちを改めてレトの元に向かう、が……

 

「ーーラウラがいないとお宝が回収出来ないじゃない」

 

「………………(グルグル)」

 

「あ、あははー……」

 

「……やれやれ」

 

ラウラはグルグル回り、輝きを放つ糸がレトの手の中で纏まって行く。 それを苦笑いしながらエリオット達が手伝っていた。

 

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