両班は実習の進行具合や情報などを交換しながら楽しくランチを取り、そしてリィン達は苦笑い気味だったが、フィーはレトについて来たルーシェに興味津々だったりする。
それからランチを食べ終わり、レト達は満腹になって店から出た。 これで午後の実習も問題なく行けそうだが……レト達は未だに気まずそうなラウラとフィーを心配する。
「それじゃあ、ここで一旦解散だね」
「お互い、実のある実習になるといいですね」
「にゃー」
「ふふ、ルーシェもまた次の機会にな」
リィン達に向かって一鳴きするルーシェに、ラウラは顔を綻ばせながら撫で。 レト達は次の依頼がある競馬場まで導力トラムで向かい、近場で降りた後は徒歩で広場前まで到着した。
「ここも中々開放的な広場ね。 それで奥にあるのが競馬場ね?」
「
「ふむ、馬券を買って賭け事をするのか」
「一応言っておくが、未成年の馬券購入は禁止されているぞ」
「はい、当然ですね」
「それじゃあ競馬場に入ろう。 見る分には全然問題ないけど、依頼を優先しないとね」
「にゃおん」
馬券の購入は禁止されているが競馬場の入場やレースの観戦までは禁止されていない。
レト達は競馬場に入り、受付から依頼人である支配人は貴賓室にいるそうで、観客席から貴賓室に向かった。 コースではレースが終盤に入っており、観客達は手を……馬券を握りしめて固唾を飲んでいた。
「盛り上がってるわねー。 それに賭け事なのに割と雰囲気が健全というか」
「帝国では皇族も観戦する紳士淑女の嗜みでもあるからな。 マナーもそれなりに問われるし、つまみ出されないようしておけ」
「了解した」
階段を登り支配人がいる貴賓席に向かった。 レトは外にルーシェを置いて中に入り、貴賓席はまさにVIP御用達の場所で、言葉に出来ない場所であるが……とにかくミラがかかっている事は理解できる。 そして支配人らしき人物は奥の方にいた。
「な、なんだが場違いね……」
「呼び出しのはあちらだ、やましい事などないのだからもっと堂々としておけ」
「そうそう。 気楽にいこうよ」
「レトさんは気楽過ぎますよ……」
貴賓席にいる人が正装している中を学生服の彼らが通るのはとても浮いてしまうが……レトはどこ吹く風のように流して支配人の元に向かう。
「失礼。 トールズ士官学院、特化クラス・VII組の者です」
「おお、あなた達が。 ようこそ起こしくださいました。 さっそくで悪いのですが、依頼についてお話しさせてもよろしいですかな?」
「はい、よろしくお願いします」
支配人にソファに案内され、レト達は依頼内容についての説明を受けた。
どうやら競馬場の地下にいる魔獣を討伐してもらいたいようだ。
「そもそも、なんで帝都に地下なんてものがあるのかしら?」
「元々、今の帝都は昔の帝都の上に作られているんだ。 暗黒時代の遺構、帝都では結構有名だよ。 あまりにも広大過ぎてどの組織もその全容を把握し切れていないけど……」
そこで言葉を切り、レトは胸を張った。
「僕は昔からあそこが遊び場のようなものだから。 地上と地下、どっちも僕の庭だね」
「そ、そうなんですか……」
「ふふ、頼もしい限りですな。 それではこちらをお持ちください」
レトは支配人から地下道への鍵を手渡された。
「確かに」
「それでは失礼する」
「どうかお気をつけて」
早速地下道へ向かう事になり。 レト達は貴賓席を出ようとすると……そこでレトは貴賓席から見える競馬場のコースを見下ろし、今し方走っているレースを見た。
「ふ〜ん……3-1-4ってところかな」
「む?」
「あ、すみません。 どうかお気になさらず」
近くにいた男性客がレトの呟きにが聞こえ、レトは軽く謝ると貴賓席を後にした。 そこで先ほどのレースが決したのか、扉の先から歓声が聞こえてきた。
「ーーなっ!? さ、3-1……4!? あ、あの少年はどこだ……あの慧眼を是非伝授ーー」
「ねえ、何か聞こえなかった?」
「さあ?」
「にゃあ?」
待っていたルーシェがレトの肩まで駆け上って乗り。 男性の叫びを空耳と勘違いしながらレト達は階下に降り余りに使われていない風の扉の前に来た。
「へえ、こんな場所から地下にねぇ……」
「別にこういう場所はここだけじゃないよ。 地下に続く道は建物の中にあれば外にもあり、巧妙に隠されていたりもする」
装備を整えてながらレトは軽く説明し。 さて、と言いながら鍵を使って扉を開けた。 そして道が競馬場とは違う材質の、中世のような様式に変わり、そのまま階段を降りて地下道に入った。
「う〜ん……ここに来るのも久しぶりだね。 相も変わらずいい空気」
「ホント、レトは変わっているわね。 それになんだか薄気味悪いわね……」
「水の音……どこかで水路も通っているみたいですね」
「聞いていた通りかなりの広さのようだな。 バリアハートの地下道よりも複雑そうだ」
「どうやら魔獣も多数徘徊しているようだ。 慎重に進むとしよう」
早速進もうとする中、アリサ達は多少ながらも尻込みしてしまうが……先程の言葉通り慣れているのか、レトは鼻歌交じりにどんどん進んで行く。
レトが先導し、時折襲いかかる魔獣などの対処を教えながら古い水路なども経由し先に進む。 しばらくして、外の時間が分からなくなって来た頃、手配魔獣らしき地面を貫いて顔と細長い体躯を地上に出す鰻のような魚型魔獣……グレートギーヌーを発見した。
(あれが手配された魔獣ね……)
(流石に手強そうですね)
(相手にとって不足はない)
(ああ、行くとしよう)
戦術リンクは前衛男子と後衛女子で綺麗に別れて組み、相変わらず余ってしまったレトは遊撃を担当し……グレートギーヌーを前にアリサ達が意気込む中、レトは怪訝な目をしてグレートギーヌーを見つめる。
(……あの魔獣は同種で群れを作るタイプ。 警戒して損は無さそうだね……)
「……………………」
チラリとルーシェに目配りさせ、ルーシェはコクリと頷く。
そしてレト達は武器を構え、グレートギーヌーの前に飛び出した。 グレートギーヌーはレト達を視界に捉えると……声を上げて威嚇をしながら微かに放電をした。
(今のは……)
「はっ!」
レトはグレートギーヌーの一連の流れを不審に思う中、ガイウスの巧みに十字槍を振るって両者に一定の距離を取らせる。
アリサ達はアークスの戦術リンクを駆使して危なげなく戦って行く。 そんな中、レトは銃で牽制しながら周囲に気を配っていた。
「なんだ、どうなものか期待していたが……大して強くないぞ」
拍子抜けといった顔をしながらユーシスは溜息を付き、グレートギーヌーは細長い身体をくねらせて噛み付いてきたが……
「やっ!」
すかさず間にアリサが矢を放ち、グレートギーヌーは矢の飛来に気付き速度を落とし……エマが杖を掲げた。
「アースランス!」
地中から鋭利な鎗が胴体を貫いた。 だがグレートギーヌーはそれでもなお、ユーシスに向かって牙を向けるも……
「ふっ……せいっ!」
軽やかなステップで噛み付きを避け、無防備な頭に剣を振り下ろした。 グレートギーヌーの頭は飛び、胴体は力なく倒れ伏し……すぐに跡形もなく消えてしまった。
「ふう、全く弱くなかったとはいえ楽に片がついたわね」
「戦術リンク様々ですね」
「フン、不完全燃焼だがな」
「フフ、これも日々の訓練の賜物だろう」
「…………! 総員、警戒態勢!!」
魔獣を倒して気を抜く中、レトが異変に気付いて叫ぶが、次の瞬間……地中から次々とグレートギーヌーの大群が現れ、一瞬で囲まれてしまった。
「なっ!?」
「こ、この数は……!?」
「ーーしまった、これは罠だ!」
「チッ……最初の一体は捨て駒か!」
「アークス駆動ーー」
グレートギーヌー達は一斉に身体を震わせ……全方位に電撃を放電した。 四方からの電撃、逃げ場などなくレト達のいる中心に向かって轟音が轟く。
電撃が止むと土煙が舞い、グレートギーヌー達は勝利を確信した。 が……
「ーー
「そこだ!」
土煙から鋭利な棘のような弾丸、そして旋風を纏った槍の突きが発射され、二体のグレートギーヌーの頭を貫き消滅させた。
「ルーシェ!!」
「シャアアアアッ!!」
レトの肩からルーシェが飛び降りると毛を逆立てながらグレートギーヌー達を威嚇した。 その気迫は圧倒的な強者の咆哮であり、どんた魔獣でもを怯ませその身を硬直させる。
「ふう……皆、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「今のはクレセントミラーか?」
「あの一瞬でアーツを発動させたのか……何て速度だ」
「わ、私よりもアーツの適切が高そう……」
「確かに僕も入学時に魔導杖か魔導銃を勧められたよ。 槍もあったから断っただけだし……アーツの適切が高いのは血筋の関係だから気にしなくてもいいよ」
そう言いながら銃剣を銃から剣に変形させ、グレートギーヌー達の前に立つ。 するとグレートギーヌー達は一斉にアーツを駆動し始めた。
レトは念の為クレセントミラーを一瞬で発動させて保険を作る。
「さてと……遅いっ!」
その場で一回転して回転斬りをし、全体に黒い風を起こしグレートギーヌー達のアーツ駆動をキャンセルさせた。
今の
「受けてみよ……剣帝の一撃を!」
銃剣を両手で持って目の前に掲げ、全身から闘気を放ち……
「鬼炎斬!!」
闘気と共に剣を振るい、周囲を凪ぎ払った。 グレートギーヌーの群は胴体から薙ぎ払われ……先程と同様に一瞬で消滅した。
「ふう…………ごめん皆、最初からあの魔獣は群れているって警戒してたんだけど、言いそびれちゃって」
「い、いえ、私達も警戒が疎かになってましたし」
「ああ、感謝こそすれば罵倒を言ったりはしない」
「そうね。 こちらの方が悪いかもしれないけど、お互い様としておきましょう」
「フン、さらに剣の腕を上げた事は癪だがな。 セントアークの実習以降、異常な速度で上がっているだろう」
「あ、あはは……」
腕を組みながら軽く睨んでくるユーシスにレトはルーシェを抱えながら愛想笑いをする。 とてもじゃないが聖女に指導してもらったとは口が裂けても言えないし、言えたとしても恐らくは信じてはもらえないだろう。
「それにしてもルーシェちゃん、凄かったですね。 ひと睨みで全部の魔獣を怯ませていましたよ」
「飼い主が飼い主だ。 普通に育つはずがない」
「酷いなぁ。 これでも帝都の猫会でルーシェはトップなんだからね」
「ね、猫会ってなによ猫会って……」
「簡単に言えば猫の間での導力ネットワーク。 意外と情報収集にはもってこいなんだよね」
「それは興味深いな」
「にゃー」
色々と気になることもあったが、レト以外はこれ以上好きでここに留まる理由もないので……依頼完了を支配人に報告するため競馬場に戻るのだった。
零ストーム……嫌らしい技でしたよね。 アーツを駆動させる度に何度も何度も……
アンチセプト零もですけど。