英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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第6章
48話 メンタルクロスリンク


9月上旬——

 

うだるような暑さも終わりを告げ、とある自由行動日……レトは部屋に篭って導力カメラで撮った写真を整理していると、部屋の扉がノックされた。

 

「はーい。 どうぞー」

 

入ってきたのはリィンとアリサだった。 2人はレトに手伝って欲しいことがあるそうで……なんでもアークスの開発責任者で、アリサの母親でもあるイリーナ会長から新型アークスの試験を依頼されたそうだ。

 

「へぇ、新型アークスのテストを……」

 

「それでお願いできないかしら?」

 

「……うん、いいよ。 写真の整理がひと段落していた所だし」

 

手渡されたアークスは従来と少しデザインが異なるだけでその他は同じ機能のようだ。 新型アークスは全部で6機、つまり後3人必要になる。

 

レト達は部活で学院にいる残りのVII組のメンバー1人1人に声をかけ……ラウラ、エマ、フィーが協力してくれることになった。

 

戦術リンクを組む相手はリィンとアリサ、ラウラとフィー、レトとエマとなった。 グランドは他の部が使っていることからギムナジウムで試験を行う事となった。

 

「皆さま。 この度は新型アークスの試験にご協力いただきありがとうございます。 それでは私の方から、此度のご依頼を改めてご確認させていただきます」

 

依頼人であるイリーナ会長から説明を受けていたシャロンが審判を兼任し、新型アークスの説明を始めた。

 

「今回、皆さまに試験していただくのは、新たに開発されたアークスです。 改良点といたしましては、より戦術リンクの精度を向上させ、戦闘での連携を1ランク上のものへと昇華させることを目的としております」

 

「つまり今まで以上に強力な連携技が出来ると?」

 

「その通りです。 現段階のアークスでも、皆さまはかなり高いレベルで戦術リンクを使いこなしています。 ですので、この試験が成功すれば、恐らくは“二身一体”という、高次元のシンクロが可能になることでしょう」

 

「二身一体……」

 

この試みが成功すれば、より一層戦術の幅が広がり。 高難度のミッションにも挑む事が可能になる……それに気付いたリィン達はごくりと固唾を飲む。

 

「とはいえ、まだまだ試験段階ですので、皆さまはどうぞお気を楽にして、試験に臨んでくださいませ」

 

緊張をほぐすようにシャロンがやんわりとそう言い。 おかげで気が楽になったリィン達は互いに頷き、早速試験を始めることにした。

 

先ほど決めたペアで戦術リンクを結び、それぞれの得物を抜き……三者三様に対峙する。

 

「それでは——始め!」

 

『——っ!』

 

瞬間、真っ先に駆け出したのはリィンとフィーだった。 すかさずアリサは弓でリィンの援護をするが……

 

「甘い!」

 

「くっ!?」

 

ラウラの大剣に阻まれ、そのまま肉薄される。

 

「ヒートウェイブ!」

 

「アースランス!」

 

開始してから後退し、アークスを駆動させて気を伺っていたレトとエマがアーツを発動させ、両者をまとめて攻撃した。

 

「ッ……!」

 

「きゃっ!?」

 

「排除する」

 

多少フラついたが、すかさずフィーが双銃剣を構え、クリアランスを放った。 銃弾が飛来する間の間に……レトは銃剣を変形させて銃形態にして構える。

 

「扶翼・鶴!」

 

飛来する銃弾を、連射して放ったレトの銃弾が弾き返して防いだ。 そのレトの後ろで再びエマはアークスを駆動していた。

 

「させるか! ——でやっ!」

 

「せいや!」

 

ラウラの地裂斬、リィンの弧影斬がエマに放たれる。

 

「ッ! ——エアリアル!」

 

「おっと!」

 

攻撃の接近でエマは素早くアーツの発動地点と威力を変え……突風がエマを横に押し、レトを前に押すことで2つの攻撃を回避した。

 

「燃え尽きなさい——ファイヤ!」

 

「行くよ」

 

アリサの炎の矢——フランベルジュがレトを襲う。 しかしレトは銃剣を剣形態にして切り、すかさず飛び出してきたフィーのスカードリッパーを受ける。

 

「……っ」

 

「ふう……やるね」

 

2人の鍔迫り合いで火花が散り、3組のペアが次の追撃を仕掛けようと相方の名を叫ぶ。

 

「行くぞ、アリサ!」

 

「ラウラ、決めるよ!」

 

「レトさん、援護をお願いします!」

 

「分かったわ!」

 

「任せるがよい!」

 

「了解!」

 

その瞬間——戦術リンクが発動した。

 

『——なっ!?』

 

それは彼らが想像していたものではなく。 凄まじい輝きがそれぞれのアークスから放たれ、その場にいた全員が目を瞑り手や腕で顔を覆った。 その唐突な現象も一瞬の事……次第に輝きが治るとレト達は辺りを見回す。

 

「シャロンさん、今のは……?」

 

アリサがそう問うと、シャロンは不思議そうに首を傾げた。

 

「……お嬢様?」

 

「全くなんなのよ……」

 

リィンがうんざりしたように振る舞うと、シャロンはさらに首を傾げた。

 

「あら……? リィン様?」

 

「今のは一体なんだったのだ? 大丈夫か、フィー?」

 

さらに凛々しい口調で言うフィー。

 

「……ん。 大丈夫」

 

眠そうな顔で返答するラウラ。

 

「…………あれ? 心なしか身体が軽いような……?」

 

スクッと立ち上がれた事に疑問に思うレト。

 

「!? な、なんか……重たい!? なんか胸の辺りが凄く重たい!? こ、腰にくるぅ……」

 

へなへなと倒れて四つん這いになるエマ。

 

「あら、これはもしかしますと……」

 

笑顔を保ちつつも困惑したような声のシャロンに一同は反応が遅れてしまったが、改めて周囲を見回したことで何かがおかしいことに気がついた。

 

「あれ……? どうして自分の姿が見えるんだ……?」

 

「えっ……? なんで私が喋っているの……?」

 

リィンに向けて言うアリサと、アリサに向けて言うリィン。

 

「む? フィーの姿がないぞ?」

 

「……ラウラ、わたしはここ」

 

フィーを探すフィーに、自分がフィーだと言うラウラ。

 

「なんでこんなに身体が……まるで重りから解放されたみたいな……?」

 

「ううっ……どうしちゃったんだろう……?」

 

自身の身体の異常に不思議に思うレトとエマ。

 

『…………』

 

今の一連で理解し……目を見開いて喉を震わせ……

 

「ええええええええええええっっ!? こ、これは一体どういうことよ!? って、なんで私がリィンの声で喋っているのよ!?」

 

「お、落ち着け、アリサ——いや、俺! って、どうして俺が俺をなだめているんだ!?」

 

「お? おお〜! 足元が見えないと思ったらこれは——」

 

「ダ、ダメです! それは触っちゃダメです! って、なんで私が私を止めているの〜?」

 

「もしかして……フィーか?」

 

「……ん。 そう言うわたしはラウラ?」

 

「うむ。 どうやらそのようだ」

 

「って、なんであなた達はそんなに冷静なのよ!? 私達入れ替わっちゃったのよ!?」

 

どうやら新型アークスによる戦術リンクのせいで、お互いのペア同士が“入れ替わってしまった”ようだ。

 

リィンはアリサと、アリサはリィンと。

ラウラはフィーと、フィーはラウラと。

レトはエマと、エマはレトと。

 

何故かそれぞれの精神が入れ替わり、鏡もないのに自分が自分の身体を見つめる事態となってしまった。

 

「あらあら、これは困りましたわ」

 

「困りましたわじゃないわよ!? どうなっているのよ、これは!?」

 

こんな状況でもいつものペースなシャロンにリィンが女性口調で猛抗議する。

 

「恐らく戦術リンクの精度を向上させたアークスの誤作動により、精神がシンクロを通り越して交換されてしまったのではないかと」

 

「みたいだね」

 

「うむ。 珍しい経験だな」

 

「だからどうしてあなた達はそんなに冷静なのよ!?」

 

とくに動じた様子を見せないラウラとフィーに、リィン(アリサ)は声を荒げる。

 

「まあ相手がフィーだからな」

 

「……ん。 わたしもラウラなら別に構わない」

 

「あ、あなた達ねえ……」

 

「あはは、仲良いね」

 

「わ、笑い事ではないですし他人事でもないんですよ……」

 

互いに笑い合う2人にアリサは言葉もなく。 エマ(レト)はケラケラと笑い、レト(エマ)はガックシと項垂れる。

 

「とにかく落ち着こう、アリサ。 必ず解決策があるはずだ」

 

「……そうね」

 

何故自分に論されなければならないのか、言いしれぬ脱力感に苛まれながらも、アリサは少し落ち着きを取り戻した。

 

「——お嬢様。 いえ、今は“お坊ちゃま”とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

 

「それが無駄な気遣いだと分かっていてやっているでしょ、あなた」

 

「実は私、1つ考えたことがございまして」

 

ジト目のアリサをスルーし、続けて言ったシャロンの言葉にアリサは期待に胸を膨らませた。 が……

 

「——“弟”というのもよいものですね」

 

「……はっ?」

 

6人が欲していた言葉より斜め上に傾いていた。 呆然とするアリサに、シャロンは頰に手を当てながら言った。

 

「いえ、実は私、前々から“弟が欲しいと”と思っておりまして」

 

「ごめんなさい。 あなたが今何を言っているのか、全然全くこれっぽっち分からないし、分かりたくもないわ」

 

「願いが叶ってよかったですわ」

 

「全然よくないわよ!? どうしてくれるのよ!? 私に一生リィンでいろって言うの!?」

 

「いや、そんなに嫌がらなくても……これでも毎日鍛錬を欠かしたことは」

 

「あなたは黙ってて!」

 

自分の顔で気圧されて頷くしかないリィン、一喝されたリィンはレト達の元へ退避した。

 

「まあそう機に病むな。 そのうちなんとかなるはずだ」

 

「ああ、そうだといいが……とりあえずありがとう、フィー……じゃなくて、ラウラか」

 

「……ん。 わたしはこっち」

 

「や、ややこしくなりましたね……」

 

「あはは、変なことになったねー」

 

足掻いた所で夢は覚めることなく、リィンはなるべく早く状況の改善を願いたいが……

 

「さあ、どうぞ“お姉ちゃん”と呼んでくださいませ」

 

「呼ばないわよ!? というか、あなたこの状況を楽しんでいるでしょ!?」

 

「……はあ」

 

それはあの2人が落ち着くまで叶いそうにもなかった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

新型アークスの誤作動によって、戦術リンクを組んでいた互いの精神が入れ替わってしまったレト達はなんとか元に戻ろうと再度戦術リンクを組み、戦闘を行おうとしていた。

 

入れ替わってしまったのならまた同じ事をすれば元に戻ると考えた策だが……

 

「……駄目だ。 思うように剣が振るえぬ……」

 

ガンッ、と地面に大剣の剣先を突き刺したのは無駄に凛々しい顔つきになったフィーだった。 もちろん中身はラウラである。

 

「そうだね。 たぶん身体と武器が合ってないんだと思う」

 

寝惚けた目で両手の双銃剣を見つめるラウラ、中の人はフィーである。

 

「確かに。 いつもより剣が重く感じるな。 重心も安定しない」

 

「私も。 弓を引く分には問題ないけど、この身体にはちょっと小さいかもしれないわね。 まあ私専用に調整してあるから、合わないのは当然なのだけれど……」

 

2人に同意するのは太刀を握り、男っぽい口調になったアリサと。 若干内股になり、何処となくなよっとした雰囲気で女性口調のリィン。

 

「僕はとくに問題ないけど」

 

「はい。 私とレトさんの魔法(アーツ)適正はそこまで差はありませんし、魔導杖(オーバルスタッフ)を使うのにそこまで筋力は必要ありませんので」

 

左手で銃剣をバトンのように回すエマと魔導杖を持つレトが問題ないように振る舞う。 もちろん、この2人も入れ替わっている。

 

「武器もそうですが、身体の方も修練を始めた時から最も効率よく己が武器を扱えるように昇華していきます。 である以上、合わないのは当然ですわ」

 

この状況を把握して説明するシャロン。 だがどことなく楽しんでいる節があり、アリサはジト目でシャロンを見つめる。

 

「じゃあどうしろって言うのよ? お互いの武器を交換しろとでも?」

 

「いえ、確かにその身体に合った武器にした方がよいと思いますが、それは内側と外側……つまり心身がきちんと揃っている状態での話です」

 

「つまり、私が剣や槍を扱う上で性能や幅、体捌きなどを把握してないといけない事ですね……」

 

同じ事を繰り返すのなら隙間のない連携が必要不可欠……つまり、先ほどのような戦闘は出来ない。

 

「あはは。 そうなると……今の僕達ってVII組どころか学院最弱じゃない?」

 

「そ、それは……」

 

「否定できぬな……」

 

「あり得るかも」

 

「皆が皆、レトみたいに器用じゃないのよ……」

 

どんな武器でもそつなく使いこなすレトに、アリサは嫉妬にも似た苛立ちを覚える。 しかし、最弱と言われるも否定出来ないのもまた事実だった。

 

「結局、当分このまま様子を見るしかないのかもね」

 

「ちょっと待って……その間ずっとこの身体でいろって言うの!? 24時間ずっと!?」

 

「俺はとくに気にしないが……」

 

「私が気にするのよ! というか、“とくに気にしない”ってどういうことよ!? 私の身体には何も感じないと言いたいわけ!?」

 

「い、いや、そういうことじゃなくてだな……」

 

「じゃあどうなの!? リィンは私のことをどう思って——って、何言わせるのよ!? 馬鹿っ!」

 

真っ赤な顔をして後ろを向いてしまったアリサに、リィンはどうしていいかわからず頭をかく。

 

「……アリサ、意外と大胆」

 

「……ちなみにレト。 仮にエマの身体を弄ぶような真似をしたら……分かってるな?」

 

「わ、分かってるよ」

 

「ラ、ラウラさん。 気遣ってくださるのは大変ありがたいのですが……叱るの元に戻ってからでお願いします」

 

しかし、ずっとこのままにしている訳にもいかず……ひとまず学院長だけに報告して欲しいとシャロンにお願いされ、シャロンは1度ラインフォルト本社のルーレに戻って行った。

 

そして生徒会長であるトワに状況を報告し、助力を乞うことなった。

 

「——なるほど。 にわかには信じられないけど、状況は把握出来たと思う。 それで、えっと……リィン君?」

 

話には聞いたが確信は持てず、恐る恐るアリサ(リィン)に問いかける。 リィンは申し訳ない様子で「はい……」と返事をする。

 

「本当にリィン君なんだ……で、こっちが……アリサちゃん?」

 

「ええ、そうなんです……」

 

がっくりと肩を落とし、リィン同様にアリサも答える。

 

「う、うーん……えっと……ラウラちゃんとフィーちゃん?」

 

「うむ」

 

「……ん」

 

「え、えっと……それで、レト君にエマちゃん?」

 

「はい」

 

「は、はい……」

 

名前を呼ぶ度に別の人物が返事をするので余計に動揺してしまうトワ。

 

「なんかすみません……」

 

「えっ!? あ、ううん、大丈夫! アークスの誤作動だもん。 仕方ないよ。 それより皆の方こそ大丈夫?」

 

「はい。 俺達は大丈夫です。 精神は入れ替わりましたけど、それによって身体に不調が起きるというのは、今のところないみたいなので」

 

「そっかぁ……よかったぁ……」

 

「いえ。 すでに肩と腰が——」

 

「わあああああっ!?」

 

何か言おうとしたレトの口をエマが大声を出しながら塞ぐ。

 

「あはは……でも、何かあったらすぐに言わなくちゃ駄目だよ?」

 

「ありがとうございます。 会長と話していたら、なんだか気が楽になりました」

 

「えへへ、どういたしまして。 私も皆が早く元に戻れるように協力するから、出来ることがあったら遠慮なく言ってねっ!」

 

というわけで……トワは、クッキーを作ったので誰かにお裾分けしにヘイムダルに向かったミリアムと、同じく競馬場に向かったクロウ以外の他のVII組のメンバーをVII組の教室に呼び、元に戻る方法がないか検討することにした。

 

強制ではないにも関わらず、集まってくれた皆にリィン達は感謝の気持ちでいっぱいになる。 この質問に対して真っ先に手を上げたのはマキアスだった。

 

「はい、マキアス君」

 

「はい。 まずは現状をしっかりと確認した方がいいと思います。 何故こうなってしまったのか、原因は本当にアークスの誤作動だけなのかを今一度——」

 

「阿呆が。そんなことを呑気に考えている時間があるとでも思っているのか?」

 

途中で口を挟んだのは、腕を組み不遜な態度でマキアスを見るユーシスだ。

 

「なっ!? それはどういう意味だ!?」

 

「現状をよく考えてみろ。 こいつらの状態は非常に不安定だ。 不確定要素も多い。 脅すわけではないが、いつ何が起こってもおかしくないんだぞ?」

 

「そ、それはそうだが……」

 

「ならばもっと効率的な物事を考えるべきだ。 早々にこいつらを元に戻す方法をな」

 

「だ、だからこそ、そのために現状の確認をする必要が——」

 

「ちょ、ちょっと2人とも! 今は言い争っている場合じゃないでしょ?」

 

エリオットにそう論され、2人はばつが悪そうに口をつぐんだ。

 

「うん、君達の意見は分かったよ。 原因については、シャロンさんの方がラインフォルトに直接出向いているから、それで何か分かればと思うけど、現状では戦術リンクの感応が高過ぎたのが原因だと見ているみたい」

 

「だからもう1度その感応現象を起こそうとしたんですが……」

 

「結果は失敗でした」

 

リィンはギムナジウムでの元に戻るための試みを説明した。

 

「俺達はもう1度同じ事を繰り返せば、元に戻れるんじゃないかと考えていました。 でも身体と武器が合わなくて、結果的に失敗しました」

 

「一応それぞれの身体に合う武器の発注も考えたが、色々と問題が浮上してな。 現状ではやはり手詰まりだと言うほかにないだろう」

 

そこに食いついたのは、アリサとエマだった。

 

「し、仕方ないじゃない! あなた達はまだ女の子同士だからいいでしょうけど、私なんてリィンとなのよ!?」

 

「わ、私としましても……このまま放置しておくには行きませんし……」

 

「いや、そんなに嫌がらなくても……」

 

「そりゃあ、まあそうだけど……」

 

「ま、まあ仕方ないよ。 アリサちゃんだって女の子だし。 で、でも別にリィン君のことが嫌いだからとか、そういうことじゃないんでしょう? そうだよね、アリサちゃん? エマちゃんも」

 

「えっ!? そ、それはまあそうですけど……」

 

「はい。 嫌ではないんですが……」

 

2人はどこか良いずらそうに顔を逸らしてしまう。

 

「……やはりどうにも慣れないな」

 

「あはは、まあ僕も未だに信じられないからね」

 

恥じらうアリサ(外見はリィン)と困惑するエマ(外見はレト)の姿を前に、頭痛を覚えるマキアスと苦笑いのエリオットだった。

 

「ところでガイウス、お前はどう思う? 先程から意見を述べていないようだが?」

 

今まで考え込んでいたガイウスは質問されると、考える素振りを見せた後頷いてから口を開いた。

 

「俺はこれも風と女神の導きだと思っている」

 

「ほう、その根拠はなんだ?」

 

「ああ、俺達はこのクラスに来てから、今までに様々な事を経験してきた。 困難にぶつかったことも多々あったと思う。 だが俺達はそれを乗り越え、前に進んできた。 学んだことも多い。 だからこれも何かしらの試練なのではないかと思えるんだ。 実際に精神が入れ替わったリィン達にしろ、それを支える俺達にしろ、それは同じだと俺は考えている」

 

「なるほど。 お前らしい意見だな」

 

「心配するな。 たとえ時間がかかったとしても、きっと俺達なら乗り越えられるはずだ」

 

「ガイウス……」

 

その一言に、全員が感銘を受けていた。 が……

 

「あ、あの、なるべく時間をかけないようにお願いしたいのだけど……」

 

「は、はい……」

 

アリサとエマだけは、収まりそうな雰囲気に異を唱えていたのだった。

 

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